神弓 「んっ····ここは?」
神弓は目が覚め、周囲を見回した。
見覚えのあるベッドや家具に気付き、ここは自分達の部屋だと認識やっと認識した。
神弓 「私···いつここに帰ってきたっけ····?」
昨日の事を思い出そうとするが、何故か記憶が曖昧でよく思い出せなかったが、まぁ雨風辺りに聞けばいいかなと、記憶を探るのを諦める。
神弓 「あれっ?そういえば、雨風は?」
神弓は上から下のベットを覗き込み、そこには布団を持って猫のように丸まっている雨風が見えた。
雨風はまだ寝ているようで、目を瞑り、小さな吐息を出している。
神弓 「まだ寝ている。あっ、えっと····今の時間は?」
神弓は壁に立て掛けている時計に視線を移し、時計の針はちょうど六時を指していた。
神弓 「今六時かぁ。ここの起床時間がわからないから、早めに準備した方がよかったり?」
準備をする為、ベットから降り、ふと部屋の奥の方に見覚えの無い二つの段ボールが置いてあった。
神弓 「昨日、段ボールなんてあったっけ?よし、開けてみよっか!」
神弓が段ボールの蓋を開け、中には自分と雨風の着ている制服や、その他雑貨が入っていた。
ちなみに雨風と神弓の制服は、提督の着ているような海軍制服のミニスカートタイプである。
神弓 「うんと、二つあるから。これが私の分で···これが雨風の分かな?あっ!そうだ、雨風起こさなきゃ。」
神弓はベッドへ行き、雨風を起こす。
起こされた本人は、とても眠たそうな様子で着替え、支度をする。
着替え終わると同時に、部屋のドアをノックをされる。
そしてドアが開かれ、廊下から瑞鳳が入って来た。
二人が起きている事に瑞鳳はちょっと驚いた様子を見せたが、すぐにいつも通りに話しかける。
瑞鳳 「二人ともおはよう!」
神弓 「あっ、瑞鳳さんおはようございます。」
瑞鳳 「一応起こしに来たけど、もう着替えは終わってるの?」
神弓 「はい。」
瑞鳳 「なら他の準備はあったりする?ちょっと工廠に行かなきゃいけなくて。」
神弓 「そうですね····私は特にはないですね。雨風は?」
雨風 「ない。」
工廠に向かう途中、朝早いからか、他の艦娘には一度も出会わなかった。
そして工廠にはいつもの明石と夕張の他、提督が待機する。
提督は三人に気づき、近づく。
神弓 「おはようございます。」
雨風 「(コクリ)」
提督 「おはよう。フフッ、それにしても雨風は相変わらずね。」
提督は普段の雨風にある意味安心感を持つ。
神弓 「すいません、こんな性格なんです。」
提督 「いいのよ別に、そういう子は他にも結構居るから。それより朝の事を伝え忘れていたわね。ごめんなさい。」
神弓 「いえいえ、大丈夫ですから。」
提督が謝り、それを神弓は急いで否定する。
そんな光景を見ている雨風は、本題を聞こうとする。
雨風 「今日の予定は?」
提督 「ハイハイわかっているわよ。しっかし、雨風は会議とかに重宝しそうわね。冷静だし、落ち着いているから。」
雨風 「性格···仕方ない。」
提督 「別に貶している訳じゃないのよ。」
瑞鳳 「あの、提督そろそろ時間が···」
またまた話の逸れやすい提督を瑞鳳が止める。
こうして見ると、瑞鳳の役目は事務より提督を止める事の方が多いのでは?そこでようやく提督が説明を始める。
提督 「ま少し話が過ぎたみたいだから、ちゃんと説明するね。あと数分後に起床の音楽が鳴るからその時に起きて、その十分後に鳴る音楽までに中央の広場に集合かな。とにかく音楽が鳴ったらすぐに広場に集合って訳。神弓、雨風、覚えた?」
神弓 「了解です。」
雨風 「(コクリ)」
などと話していたら、放送から音楽が流れだした。
すると、今まで静かだった鎮守府に明かりがつき、ざわざわと騒がしくなっていく。
提督 「本当だったら私も今起きていたはずだったんだけどね。」
神弓 「どういう事です?」
提督 「昨日は徹夜で戦術を考えていたのよ。」
提督の言葉に疑問を持った神弓が聞く。
それを聞いた神弓が提督の顔を覗き込むように見て、確かに目の下にクマができているのに気がついた。
瑞鳳 「提督、頑張りすぎよぉ。」
瑞鳳が心配する声を上げるが───
提督 「そりゃあ、凄まじい戦力になる子達が増えたなら、新たな新戦術を使いたいに決まっているじゃない!!」
瑞鳳の心配を無駄と言えるほど目が輝いている提督を見て、瑞鳳は半分諦めたため息をつく。
瑞鳳 「はぁ·····提督がそんな性格なのは知ってるから諦めているけどね。うん、あっ!提督、集合時間!」
提督 「あっヤバッ!じゃあ行ってくるね!雨風と神弓は後の事は明石に聞いてちょうだい!」
と言うと、二人は広場に走って行った。
神弓と雨風は顔を見合わせてお互い言う。
神弓 「提督って忙しいね。」
雨風 「トップだから、仕方ない。」
その後、明石に演習についての説明を受けた。
演習は二時間後に行い、相手の編成は不明だが艦隊数は六に設定。
演出開始地点にはそれぞれブイが浮いて所から開始し、勝利条件は大破及び戦闘不能の判定になる事。
その判定は妖精さんが行い、その都度連絡が届く。
明石 「以上だけど····問題ない?」
雨風 「ない。」
神弓 「はい。」
明石 「えっ!」
何故かすぐさま明石は驚き、意外そうな素振りを見せる。
でも、すぐになんとも言えない様子に変わった。
明石 「───わかったわ。提督にはそう伝えておくから、何かあったら私に言ってよ。」
雨風 「····なら、艤装を触りたい。」
明石 「別に構わないわよ。あー、うんそこの扉の部屋にあるはず。」
雨風は明石の指示した方向の扉にトコトコと、駆け足で移動する。
何をするのかなっと、神弓も一緒に付いてく。
部屋に入った雨風が、自身の艤装に搭載されてた中くらいの連装砲を弄っていた。
神弓 「何やっているの?」
雨風 「荷電粒子砲の調整。」
神弓 「なんでする必要があるの?前回の射撃演習で荷電粒子砲特有の綺麗な放物線を描いてなかった?」
神弓は、前回の射撃では荷電粒子砲の弾道は基本に忠実な弾道を描いていた為、外から見る限り問題はなさそうだったからである。
でも、雨風は首を左右に振る。
雨風 「神弓···違う、私の荷電粒子砲は拡散型。」
神弓は納得したように大きく頷いた。
神弓 「あぁ、なるほどね。」
ここで神弓はやっと、雨風の言う調整の意味が理解できた。
前回の綺麗な弾道自体は確かに問題なかった。
しかし分裂せずに標的に着弾した。
途中で拡散し、広範囲に被害を与える光弾の調整を行っている。
神弓 「ところで、原因は?」
雨風 「装置の調整不足。すぐ終わる····」
と言うと、雨風はほんの十分程で作業を終わらせた。
その後、鳳翔が再び軽食を持って来てくれたので、軽食を食べてゆっくりしていると、明石が開始前の報告に来る。
明石 「そろそろ始まるから、艤装を着けてくれる?」
雨風 「わかった。」
二人は艤装を取り付け、桟橋に向かおうとした時、明石に引き留められた。
明石 「一ついい忘れていたわ。ダメージ受けたらぁ、傷を負ったり服が破れたりするから、気をつけてなさいよ。」
神弓 「···んっ?····あれ?····それって、場合によっては服が脱げるって事ですか!」
明石の追加の説明に、目を見開いて驚愕した神弓。
明石 「大丈夫よ。安心して誰もが通る道だから。」
神弓 「嫌ですよ!そんなの恥ずかしいです!」
明石に神弓は顔を真っ赤に染めて訴えたが───
明石 「初めては皆そんなものよ。でもまぁ、何回あっても慣れないといえば慣れないわね。」
雨風 「····神弓、行くよ。」
明石 「本当に貴方は変わらないわね····」
明石は苦笑いをして、二人を送り出す。
気分の落ち込む神弓と、雨風は桟橋に向かい、そこでは夕張が待機してた。
夕張 「はーい!二人ともぉー、おはよー!」
神弓 「おはようございます。」
夕張「話は明石から伝わってるよね?それでブイの位置はっと───」
夕張からブイの座標を教えてもらってから、海に出て移動を開始する。
夕張の座標通りへ通りに進むと、神弓のレーダーに反応が表示された。
神弓 「うーん、反応的にこれかな?ねぇどうする?」
雨風 「偵察機を出す。」
神弓 「うん分かった。」
神弓は艤装のヘリポートを展開した。
そのヘリポートの中央のエレベーターが下がり、再び上昇したエレベーターの上には、平皿を重ねたような一機の円盤が登場する。
神弓 「ハウニブー発進!」
ヘリポートから円盤が垂直に浮き上がり、即座に目にも止まらぬ速さで反応のあった方向に飛行していく。
そして送り出してすぐ、ハウニブーから報告が上がる。
神弓 「ブイを確認、周辺に異常なし。進路変更の必要なし。」
水上を走り、ブイの地点に到着して上空を見上げれば、そこにはハウニブーが空中で静止して警戒に当たっていた。
神弓はハウニブーを回収すると、鎮守府に報告をする。
神弓 「来た。開始は五分後だって。」
二人は演習に備えて最終チェックを行う。
神弓 「よし、異常なし。雨風は?」
雨風 「問題ない。」
二人は待つ。
一秒、また一秒·····時間が過ぎていく。
始まる時を待つ····そして始まった。
艦娘たちの常識を破壊する戦いを────
さぁ提督達はどうやって雨風達に勝つのでしょうか?雨風達には質で劣っています。どのような戦法で来るのでしょうか?勝利の女神はどちらに向くのでしょうか?戦法で勝負する提督側か、性能で勝負する雨風側か。