Il mio chef 〜僕と令嬢と喫茶店〜   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
前話から立ち直りました、なちょすです。
今回はのんびりと過ごしてサクッと終わります。
珈琲片手にお読み下さい。

わたシェフ第11話、どうぞ。


11.ウェイトレスのマリーデース☆

「いらっしゃいませ〜♡二名様、ご来店デース♪」

 

 

僕とマスターだけで営業してたこの喫茶店も、今日ばかりは華がある。

決まった制服とかは無いけど、私服に腰エプロンを付けただけでもなかなか様になってるのが、彼女のスペックの高さを物語っているよね。

どこから情報が出たのかは分からないけど、見た事ない金髪のウェイトレスが居るっていう話が広がってて大賑わい。

マスターと2人でカウンターに居るってのも新鮮だなぁ⋯。

 

 

「いや〜本当助かるよマリーちゃん!」

 

「ふふっ、お役に立てたようで何よりです♪」

 

「どう?弾君と一緒に働かない??」

 

「マ・ス・ター⋯?人は雇えないって僕は散々言われてきたんだけどなぁ⋯??」

 

「だ、弾君⋯怖い、怖いから⋯。まぁでも、実際問題私も年だしねぇ⋯。引退も考える頃かなって⋯。」

 

「そんな事言わないでよ、マスター。」

 

「弾君⋯。」

 

「まだ珈琲の入れ方教わってないからね。それまではダメだよ?」

 

「あ、あれ?そっちなの⋯?」

 

「弾ってたまにこういう所あるわよね。」

 

 

そりゃそうだ。口に出したら絶対からかわれるし。

まぁでも⋯。

 

 

「だーん!サンドイッチ2つ追加ー!!」

 

「りょーかーい!」

 

 

そんなのも、楽しいかもな。

 

 

「ふふっ、弾君⋯この間までとは別人だね?」

 

「えっ。そ、そうですか??」

 

「マリーちゃんの事目の敵にしてたし〜、引きつった笑顔で接客してたし〜、ずっと仏頂面だったし〜⋯。」

 

「あの⋯すみません⋯勘弁してください⋯。」

 

「もしかして、何かあった?」

 

「何で嬉しそうな顔してるんですか。」

 

「そりゃあアレよね〜弾!私達もう付き合ってるし〜。」

 

「えっ!?そうなの!?水臭いじゃない弾君〜!!」

 

「⋯⋯⋯鞠莉。」

 

「この間だって2人でバーニングnightを過ごしたけど、弾ってば凄いがっつき様で⋯。」

 

「鞠〜〜〜莉〜〜〜⋯!!」

 

「若いっていいわねぇ⋯♪」

 

 

この金髪は⋯!

どうしてこうポンポンと口が軽いんだ⋯!よりにもよってこの間の話まで出すとは⋯。

そっちがそうくるなら、こっちにも考えがあるからな?

 

 

「⋯⋯最初にスイッチが入ったのは誰でしたっけ?」

 

「なっ⋯///」

 

「物欲しそうな顔でずーーーーーーっと僕の名前を呼んでた可愛い可愛い女の子って⋯⋯誰だっけ?鞠・莉・ちゃん?」

 

「Shut up!!///」

 

「ぐはっ!!」

 

パッシィンっていう乾いた音とともに頬に衝撃が走る。こんないい音はアニメとかドラマでしたか聴いたことがない。

真っ赤になりながらも彼女が全力で飛ばしてきたビンタ⋯。くそぅ、これで元浦の星女学院生三人娘からのビンタがコンプリートじゃないかっ⋯!

 

 

「いきなり何するんだよっ!」

 

「大っぴらに話しすぎ!///」

 

「最初に始めたのはそっちだろう!?」

 

「限度ってもんがあるわよっ!!///」

 

「その限度も一発目で超えてたわっ!!」

 

「まぁまぁお2人さん⋯痴話喧嘩はそこまでにして、珈琲でも飲むかい?」

 

『頂きますっ!!』

 

 

マスターの珈琲には逆らえない。

実際問題、マスターが引退したらこの店はどうなるんだろう。この珈琲も、店内で流れるジャズも⋯過去のものになってしまう。

いくら常連さんがいるからと言って、それでどうこうできるわけじゃない⋯。

 

なんか⋯やだな⋯。

 

 

「何難しい顔してるの、弾君?」

 

「いや⋯店の事考えてて⋯。」

 

「嬉しいねぇ〜⋯弾君がそこまで熱烈なファンだったなんて。」

 

「そう言えば弾は昔から通ってたのよね?」

 

「あぁ。この店は良い意味で変わってないよ。この雰囲気も、マスターの珈琲も⋯。」

 

「そっか⋯なら、弾君には早く珈琲の入れ方覚えてもらわないとね?」

 

「え?」

 

 

珈琲の入れ方⋯?

それってつまり⋯。

 

 

「引退するんですか!?」

 

「あ、そう来た?」

 

「それ以外何が⋯。」

 

「ん?言ってなかったっけ??弾君がある程度出来るようになったら、このお店を預けるって。」

 

 

はい??

預ける⋯?それって、僕がマスターになるって事⋯??

 

 

「⋯⋯一っ言も聞いてません⋯!!」

 

「あちゃー、やっちゃった☆」

 

「良かったじゃない弾!ウェイターからマスターに昇格なんて滅多に無いんじゃない?」

 

「喜ぶべきか、悲しむべきか⋯そんな大事な事を言わなかったこの人を叱るべきか⋯!」

 

「弾君、お顔がscaredだよ?」

 

「何鞠莉みたいな事言ってるんですか⋯。」

 

 

半分は本当に嬉しかった。自分がこの店を続けていける。マスターの想いと一緒にやっていけるんだから。

けど⋯不安の方が大きいよな。人は変わっても常連さんは変わらない。僕のせいで店の評判を落としたりとかしたら、それこそ申し訳が立たない⋯。

 

 

「因みにある程度っていうのは⋯?」

 

「んー⋯珈琲とか営業云々もそうだけれど⋯何の為にやりたいか。それを君がはっきり見つけた時、かな?」

 

「何の為に⋯?」

 

「店の事とか私の事を気にして継ぎたいって言うんじゃなくて、君が本当にどうしたいか⋯何の為に、誰の為にやりたいのか。それがハッキリしたら、いつでも明け渡してあげる。」

 

「何の為に⋯誰の為に⋯か。」

 

 

あやふやな答えが頭の中で繰り返される。元々この店が好きで、マスターの為に働いてきた。

そのマスターが、自分の事は気にするなっていうんだ。今まで働いてきた理由じゃない、別の理由⋯すぐ浮かぶってのが無理だな〜⋯。

 

 

「ふふっ、そんな簡単に出てこられても私が困るからね?まだ珈琲の入れ方教えてないんだから。」

 

「ははっ⋯そうですね⋯。」

 

「マリーが味見してあげよっか?弾珈琲。」

 

「缶コーヒーみたいだね。」

 

「弾の入れる珈琲なんだもん、それくらいは名乗っていいでしょ?それとも『喫茶 小鳥遊』にする?」

 

「う〜ん⋯流石に恥ずかしいからパスで。」

 

「あ!じゃあマリーがシェフとして手料理を⋯。」

 

「客を減らしてくれるのかい?」

 

「何よ!!練習すればいいんでしょ!?」

 

「ふふっ、楽しみだな〜弾君の店♪」

 

 

マスターの言う通り、鞠莉が来てくれるなら助かる。口には出さないけど僕だって嬉しいし、そんなに幸せだって思える事は無いだろう。隣でマスターと笑い話してる彼女と目が合う。

優しく微笑んでくるその顔が好きで。

きっと何もかもが伝わってるって⋯そう思えてきて。

喧嘩もするし、一緒にバカはやるし、泣いたり笑ったり大忙しだけど⋯。

 

鞠莉とならきっと⋯⋯何でも出来る気がするな、なんて。

そう、思えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日までは(・・・・・・)

 

忘れちゃいけなかった。

僕と彼女は違う世界の人間だって。

 

忘れちゃいけなかった。

長く続く幸せなんか無いんだって。

 

住む世界も、考え方も、周りの環境ですら僕等は違う。

 

再会は奇跡的だった。

 

だからこそ、僕等は出会ってはいけなかったのかもしれない。

 

 

 

 

⋯⋯⋯鞠莉。

 





次回、『12.報せ』

早いですが、段々スパート掛けてます。
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