Il mio chef 〜僕と令嬢と喫茶店〜   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
なちょすです。
推しが出ます。
20話までいくかなぁ⋯ずるずる伸ばすのもなぁ⋯。

わたシェフ第12話、どうぞ。


12.報せ

暑い⋯。

ウミネコが甲高い声で鳴いている夏の日。僕の目の前に広がるのは、真っ白い砂浜とどこまでも続く青い海。

天気にも恵まれ、雲はいつもより空高く漂っているようにも見える。

折角大学で休みに入ったのに、見事に僕のスケジュールは鞠莉に管理されていた。

だから僕に自由は無いのさ⋯。もう慣れたけど。

 

 

「弾、今日は私の幼馴染みも来るからね。」

 

 

そう口を開くのは果南。

今僕と鞠莉は彼女の家で経営している、淡島のダイビングショップに来ている。

何でもダイビングを体験させてくれるらしい。

 

 

「千歌っちと会うのも久し振りね〜♪」

 

「鞠莉の後輩でもあるのかい?」

 

「そうよ!私達がやってたスクールアイドルのリーダーなんだから♪」

 

 

じゃあ結構しっかりした感じなんだろうな。

だってこのメンバーと善子ちゃんや梨子ちゃんをまとめあげるなんて只者じゃ無いでしょ。

それこそ普通じゃないレベルで⋯普通じゃ、ない??

 

 

「鞠莉ちゃーーーーーん!!!」

 

 

振り返ると同時に、1人の女の子が目に入る

元気な声で、走ってくる女の子。

ミカンみたいな髪の色に、ピョンと飛び出たアホ毛。

それはいい。

ただ⋯何で⋯何で⋯!!

 

 

「久し振りーーーーーっ!!♡」

 

「うぼぁああっ!!」

 

 

こっちに向かって飛び込んでくるんだぁぁあっ!!

 

盛大な音を立てて、『千歌っち』ごと吹っ飛んでしまう。

虚弱体質を舐めないで頂こう。

⋯死にそう。

 

 

「会いたかったよ鞠莉ちゃ〜ん!♡」

 

「あ〜⋯千歌?それ別人。」

 

「ほぇ?」

 

「⋯⋯⋯げほっ。」

 

「うわぁああっ!?ご、ごめんなさいっ!!///」

 

「もう、千歌っちってば相変わらずおっちょこちょいね♪」

 

「弾死んでるんじゃない?」

 

 

何で⋯こんな目に⋯。

と言うか、鞠莉から食らったタックルよりヤバイ⋯。普通に考えたら分かるよな、僕。

あのメンバーをまとめるリーダーが普通じゃないことぐらい⋯。

 

 

「げ、元気があるのは⋯いい事だよ⋯⋯。」

 

「うぅっ⋯///」

 

「ほら千歌っち!そこのモヤシはほっといてマリーの元へカモーン!☆」

 

「なんて言った⋯金髪⋯。」

 

 

こんな目にあった上にモヤシ呼ばわりされるとは思わなかった⋯後でめちゃくちゃモヤシ食わせてやるからな、鞠莉。

何にしても、思ってたリーダーと全然違ったな。もっとこう⋯ダイヤみたいなのを想像してたけど、妹感が凄い。

 

 

「えっと⋯お客さん、でしたか??」

 

「お客さん⋯と言えばそうかもしれないけど、僕は──」

 

「小鳥遊 弾!私や果南と同じ大学の2年生で、私のダーリンよ♡」

 

「だ、ダーリン⋯さん?///」

 

「鞠莉。後で覚えときなよ。」

 

「エッチ♡」

 

「お望みならいくらでもやりますけど?」

 

「えっ、あ、いや⋯別に⋯///」

 

「こら。後輩の前でヤラシイ話してるんじゃないの。見なよ、千歌を。」

 

 

言われた通り千歌ちゃんの方を向くと、両手で頬に手を当てながら真っ赤になっている。

これは流石に反省しなきゃな⋯。

 

 

「はっ!!あ、あの!そうとは知らずに突っ込んだりしちゃってすいませんでしたっ!!」

 

「いやいや、気にしなくて良いよ。慣れっこだから⋯。」

 

「でも⋯あの⋯鞠莉ちゃんが⋯。」

 

「は?」

 

 

鞠莉のほっぺはパンパンに膨れ上がっていた。

あれどうしたんだ⋯?

あ、なんか拗ね始めた。⋯⋯そういう事か⋯。

 

 

「鞠莉。」

 

「ツーン。」

 

「おいで?」

 

「⋯⋯⋯⋯ん。」

 

 

トコトコ歩いてきた鞠莉にガッツリハグされる。

 

 

「別に離れたりしないよ?」

 

「⋯そんな事言ってないし。」

 

「悪かったよ⋯帰ったら何食べる?」

 

「⋯⋯弾の料理。」

 

「はいはい、畏まりましたよ鞠莉さん。付きっきりで手伝ってね?」

 

「うん。」

 

 

人のこと言えないけど、あんまり離れると拗ねてしまうらしい。

本当に⋯変な所ばっかり似てるよなぁ⋯。

 

 

「あんな鞠莉ちゃん初めて見た⋯。」

 

「凄いでしょ?あれ毎日やってるんだよ。こっから弾が撫でまくって復活するまで一連の流れだから。」

 

「もう大丈夫?」

 

「大丈夫⋯。さぁ皆揃ったし泳ぎに行きましょう!!☆」

 

「ね?」

 

「恋人って凄いなー。」

 

 

横から投げやりな言葉とやり取りが聞こえる気がするけど何も聞いてないぞ。

取り敢えず果南からダイビングに必要な最低限の知識を教えて貰い、船でポイントまで移動する事に。

 

 

「ん〜!!シャイニィイイイイイイ!!」

 

「元気だねー!鞠莉ーー!!」

 

「当たり前でしょーーー!!♪」

 

 

船の上に2人で立ち、声を張り上げる。船のエンジン音と体を過ぎ去る潮風がとても心地よかった。

砂浜で感じていた炎天下の熱は何処にも無い⋯この広い海を、果南が操縦する船が駆け抜けていく。

それだけで、世界の全部が手に入った気がした。

千歌ちゃんは果南の所に居るから、今この船の先端にいるのは僕達2人だけ。

 

 

「弾ーーー!!」

 

「何ーー??」

 

「私⋯貴方と────」

 

 

一際大きな波を乗り越え、水しぶきが彼女の周りで跳ね上がる。

ちょっぴり赤い顔で、彼女は僕に何かを言った。それが何かは分からなかった。

たまたま聞こえなかったのか⋯彼女が聞こえないように言ったのかは分からない。

でも⋯。

 

 

「ポイントついたよー。」

 

「じゃあ沢山泳ぐわよー!!♡」

 

「鞠莉⋯。」

 

「行こ、弾♪」

 

「あぁ⋯そうだね。」

 

 

何故か⋯彼女のそばに居たくなったんだ。

 

海の中では常に2人1組。何があるか分からない海の中では、決して離れてはいけない⋯言わば相棒だ。

僕と鞠莉。千歌ちゃんと果南の2人組に分かれて海へと入る。

海の中で聞こえるのは、自分の呼吸音。それ以外は何も聞こえない。

ライセンスの無い僕達はそんなに深場に潜る事は出来ないものの、自分の何mも下に海底がある景色はやっぱり怖いものがあるな⋯。

 

 

「⋯⋯⋯♪」

 

 

隣で泳いでる鞠莉は手馴れたもので、随分楽しそうに泳いでいる。

先人を切る果南と千歌ちゃんに付いていくと、珍しい来客が現れた。

 

 

「っ!っ!っ!!♡」

 

 

現れたのは1匹のイルカ。昔から淡島周辺には良くイルカが現れることで有名だ。人懐っこいのか、ダイバーとして経験の長い果南だからか⋯1人と1匹は楽しそうに海の中で触れ合っている。

まるで現代の人魚姫だな⋯。

 

 

「⋯⋯⋯♪」

 

「⋯⋯⋯??」

 

 

果南に手招きされたから鞠莉と近づいていく。するとイルカは僕達の周りをぐるぐる回り始めた。

可愛いな⋯。なんかもう⋯可愛いな。自分の語彙力に腹は立つけど。

戯れている鞠莉とイルカの方をずっと見ていると、視線に気づいた1人と1匹が同時に僕の方を向いてくる。

畜生、可愛いな⋯。

結局この日は散々イルカと遊んで、淡島へと戻る事にした。

 

 

「あー楽しかった!!♡」

 

「イルカすっっっごい可愛かったね!!♪」

 

「あぁ、本当に可愛かったよ。」

 

「弾ってば、また鞠莉のことばっかり見てるでしょ〜♪」

 

「なっ⋯!?」

 

 

別に鞠莉の事ばっかり見てたわけじゃないんだけど⋯あのイルカと振り向かれた時は確かにグッとくるものがあった。あの時ほど水中カメラが欲しいって思ったことは無かったさ。

 

 

「なになに〜?弾ってばそんなにマリーに夢中だったの〜?」

 

「ぐぅっ!⋯⋯⋯夢中でした。」

 

「ありがと♡」

 

 

鞠莉の顔が近づいてきたと思ったら、頬に一瞬だけ柔らかい感触が当たる。

分からないわけが無い。今のは⋯。

 

 

「わ〜〜〜⋯///」

 

「はぁ⋯全くこの2人は⋯。」

 

 

⋯今日の僕はダメな日だ。多分1日中彼女に主導権を握られることだろう。

それでも悪くは無いけど⋯船の上で言われたことを、ちゃんと聞ける日が来ればいいな。

 

 

「か、果南さん!鞠莉さんっ!!あ、千歌さんもこんにちはっ!」

 

「あれ?ルビィちゃん。」

 

「どうしたのー?」

 

 

赤い髪にツインテール。千歌ちゃんよりも妹っぽいこの子がルビィちゃん⋯ダイヤの妹か。

でも何だか様子が変だ。

 

 

「あの⋯お姉ちゃんが⋯!お姉ちゃんがぁっ⋯!!」

 

「落ち着いてルビィ。ダイヤがどうかしたの?」

 

こんなに焦って、今にも泣き出しそうなんだ。まさか、ダイヤの身に何かが⋯!

 

 

 

「お姉ちゃんが⋯⋯風邪を引いちゃったんですっ!!」

 

 

 

『⋯⋯⋯はい?』

 







次回、『13.生徒会長と理事長』
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