Il mio chef 〜僕と令嬢と喫茶店〜   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
そしてお久しぶりです、なちょすです。

『もうこの作品は書かないって言ってたじゃない!!』

言いました。でもですよ⋯誕生日ですよ?マリーのですよ??ちょ田舎も良いけど、やっぱり彼と絡ませたい⋯そんな作者でした。一日遅れたけどね!!怒
最終回から大体2ヶ月後、いってみましょ!!


Special EP:4年目の梅雨

鞠莉が帰ってきたあの日。

あれから早いもので2ヶ月が経とうとしていた。僕も、昔住んでたアパートを離れ、今はこの喫茶店で暮らしている。

僕らはまた会えると信じていた。その結果、こうしてまた会うことが出来たんだ。

その間に僕は何度の梅雨を過ごしたのだろう。

何度この6月を1人で過ごしたことだろう。

 

何度⋯大切な人の誕生日を祝えなかった事だろう。

 

彼女は帰ってきた。全てを成し遂げて、全てを始めた。父親の会社を継ぎ、世界を渡り歩き、ようやくここへ帰って来たんだ。何でも彼女が継いだことにより、僕に会いに来るのも全て自由になったとの事。昔あんなに人の父親に啖呵切ったのは、今となっては何とも歯がゆい思い出だ⋯。

まぁそんなこんなで今の鞠莉だが⋯。

 

 

「だーん⋯珈琲⋯。」

 

「飲み過ぎだよ。少しは抑えときな?」

 

「いーのー⋯大体、働き過ぎだと思わない?朝からずーーーーーっと退屈な机に座って、たまに出張だとか会議だとかで席を外したかと思ったら契約先のご機嫌取り⋯こんなんにもなるわよー⋯。」

 

 

絶賛荒み中だ。

まぁ⋯荒み、とは違うかもしれないけれど⋯。彼女の仕事は今口にした通り。オフの日はこの店で一緒に働いて⋯ゆっくりしろって言っても聞かないからこうなるのに。

 

 

「明日はオフなんだろ?しっっっかり休んでもらうからな。」

 

「やー⋯弾と働くー⋯。」

 

「残念ながら明日は定休日だからね。意地でも休んでもらうよ。」

 

「頑固者⋯。」

 

「どっちがさ。さ、そろそろ店仕舞いだ。珈琲入れておくからゆっくりしなよ。」

 

「そんなの悪いし私も───。」

 

「休みな。」

 

「っ⋯分かった⋯。」

 

 

少し強めに言ってあげないと、この不器用な彼女はきっと止まらないだろう。口を窄めてションボリしてる姿を見ると、それが何だか可愛らしいような可笑しいような⋯。

ポスっと彼女の金色の髪の上に手をやる。

 

 

「⋯⋯何?」

 

「明日、何しよっか?」

 

「⋯何でもいいよ。」

 

「つれないね〜お嬢様。それじゃあそんな君にはスペシャルな癒しを⋯ってね?」

 

「え?」

 

「ふふ、ちょっと待ってな?」

 

 

そう言って僕は厨房に戻る事にした。向かったのは冷蔵庫。本当はもう少しだけ早く出そうと思ってた。予想以上にお客さんが入っちゃったから遅くなっちゃったけれど、喜んでもらえるかな?

 

 

「はい、どうぞ召し上がれ。」

 

「これ⋯ケーキ?どうしたのいきなり??」

 

「いきなり⋯ねぇ。さて、ここで問題です!今日は何月何日でしょうか?」

 

「6月13日だけど⋯。」

 

「何の日?」

 

「何のって⋯普通の1日よね?仕事してこうやって弾と駄弁って⋯。」

 

「僕にとっては特別な日だよ。まぁ、1番は鞠莉だけれど⋯。」

 

「私⋯?」

 

 

このキョトンとした顔⋯嘘でしょ?本当に気づいてないの??僕が4年間頭を抱えてたというのに⋯僕って重いのか?いや、そんな事は無いはず⋯いやでもなぁ⋯。

 

 

「どうしたのよ唸り出して⋯。」

 

「僕って重いか?」

 

「さぁ⋯体重知らないし。」

 

「いやそっちの話じゃ⋯まぁいいや。鞠莉、幾つになった?」

 

「幾つって⋯1⋯2⋯3⋯。」

 

「その指で数えるのすっごい可愛らしいと思うけど、そうじゃない。だからその⋯はぁ⋯これ、あげるよ。」

 

「?これ⋯どうしたのよこのネックレス!」

 

「⋯⋯日⋯とう⋯。」

 

「What?」

 

 

何だろう⋯改めて言うとなると恥ずかしいな⋯。

まぁでも⋯今日は特別だから。

 

 

「誕生日おめでとう、鞠莉。」

 

「あ⋯。」

 

「気づいてなかったろ?」

 

「うん⋯ごめん⋯。」

 

「ごめんよりお礼を言われたい⋯なんて、図々しいかな?」

 

「そんな事ない!ありがとう⋯。付けてみていい?」

 

「付けてあげる。後ろ、ゴメンよ。」

 

 

彼女の手からネックレスを取り、後ろへ回る。少しでも僕が付けやすいようになのか、彼女は後ろ髪を少しだけ上へとあげた。透き通った白い肌。彼女の(うなじ)が必然的に見え、久しぶりにドキッとしたのは内緒だ。だって絶対からかわれるでしょ?

ムッツリって。

 

 

「はい、出来たよ。」

 

「ん⋯似合う、かな?」

 

 

そう言って振り向いた彼女の首元には、僕のあげたネックレス。決して僕のセンスがいいとかっていう話じゃない。あれから4年が経ち、大人びた彼女の姿に⋯直ぐに声なんか出なかった。

 

 

「ちょっと、何か言ってよ。」

 

「いや⋯その⋯有りだなって⋯。」

 

「⋯⋯ぷっ⋯あっはは!何それ!普通『似合うよ』とか『綺麗だね』とかなのに⋯!『有りだな』って何よ!あっははは!」

 

「し、しょうがないだろ!?ぱっと出たんだよ!」

 

「はー笑った笑った!やっぱり弾は弾のままね!でもありがと♪とってもHappyになったヨ?♡」

 

「⋯そうですか。」

 

「照れてる?」

 

「照れてないですー。」

 

「嘘。耳まで真っ赤の癖に♪」

 

 

一旦こうなるとからかいが止まらない所も全然変わってないな⋯。まぁ⋯照れてるさ。照れるともさ。好きな人に贈り物をして、それで幸せって言われたんだ。それも飛びっきりの笑顔で。

これで照れない人間なんて居るもんか。

 

 

「じゃあ弾のお手製ケーキが冷めないうちに食べちゃいましょ!」

 

「ケーキは冷やしてるんだから冷めてるよ。それに、それで終わりじゃないんだ。」

 

「へ?」

 

「はい。」

 

「熊のぬいぐるみ⋯普通に可愛い⋯。」

 

「それが2年目の贈り物。で、このブレスレットが3年目で⋯。」

 

「待って待って!まさか⋯。」

 

「4年分あるよ。」

 

「⋯弾って変な所で真面目と言うか⋯馬鹿よね。」

 

 

馬鹿⋯久しぶりに言われたよ。真面目ならまだしも⋯馬鹿って⋯。

 

 

「泣いてる?」

 

「な、泣いてなんかいないさ!とにかくっ!今年のプレゼント⋯の前に、聞きたいことがあるんだ。」

 

「何?」

 

「1ヶ月前⋯鞠莉が言ってた事を聞きたい。今日みたいにお疲れモードの時に言ってた事。」

 

 

『あーあー⋯弾と暮らせれば楽なのになー⋯。』

 

 

「⋯言ったわね。」

 

「あれ、本気?」

 

 

さっきまでのケラケラ笑っていた顔から一変して、彼女は真剣な顔で僕の顔を見つめてくる。それを逸らすなんて事はしないし、彼女が何を言うのかは想像つかない。

 

それでも、鞠莉なら⋯。

 

 

「⋯本気よ。確かに、もう会社を継いじゃったから自由じゃないかもしれないし、私にも色々責任があるわ。でも⋯そんなの関係無く、私は貴方と居たい⋯弾の近くに居たいの。初めて貴方にあって、離れ離れになって、また会って離れての繰り返し⋯もう、離れたくないの。」

 

「⋯⋯そっか。良かった!」

 

「え?んむっ!?」

 

 

その言葉が嬉しかった。

思っていた事を彼女は口にしてくれた。

だから、これはお礼を兼ねた軽いキス。とんだキザ男に見えるかもしれないけど、僕なりに精一杯喜んでるんだから勘弁して欲しい。

 

 

「ちょっ、何なのよ!!///」

 

「んー⋯嬉しかったからかな?」

 

「何よそれ⋯。」

 

「鞠莉⋯僕も、同じ気持ちなんだ。けどそれ以上に怖かった⋯立場の変わった君に迷惑をかけるんじゃないかってさ。本当に、この臆病な性格だけはいつまでも治らないらしい。」

 

「弾⋯。」

 

「だから⋯鞠莉が良ければ、なんだけどさ⋯。」

 

 

喫茶店の制服のポケットから、小さな箱を取り出す。

豪華な宝石でも、さっき上げたアクセサリーの類でも無い、何て事は無い小さな贈り物。

 

 

「鍵⋯?こ、これって⋯!」

 

「鞠莉⋯僕と、一緒に暮らして下さい。」

 

「ぁ⋯。」

 

「あっ!勿論無理にとは言わないよ!?そりゃ暮らせたら嬉しいけれど鞠莉だって忙しいだろうし、暇な時来るぐらいの合鍵というか⋯何ていうか───。」

 

「っ⋯。」

 

「おわっ!⋯鞠莉?」

 

 

予告も無しに飛び込んで来る彼女を抑えきれず、尻餅をつく形になった。鞠莉は胸に顔を埋めたまま、言葉を発することは無い。でも⋯。

 

 

「泣いてる?」

 

「だ、だって⋯うれ、しくて⋯!そんな素振り、見せなかったのに⋯!」

 

「⋯言えないってこんな事。それで⋯さっき聞いちゃったけど、返事が聞きたいな?」

 

「グスッ⋯!わたっ、私ぃ⋯!!弾と暮らしたいっ⋯!!一緒、がいぃ⋯!!」

 

「⋯ありがと、鞠莉。」

 

 

それから彼女が泣き止むまで、ただただ抱きしめ続けた。言葉を交わすことも無く、ずっと。

ただ一つ誤算があったとしたら⋯そうだな。

 

 

「ふふっ鼻水、拭きな?」

 

「うぅ〜〜〜⋯⋯!!」

 

「⋯めっちゃ制服に付いてる。はい、チーンして。」

 

「ぢーーーんっ!!」

 

 

凄いな。これが若社長でお嬢様とは⋯。

 

 

「ん、もう大丈夫⋯。」

 

「そか。じゃあケーキでも食べよう。嬉しい言葉も聞けたことだしね?」

 

「うん⋯ありがとう、弾。弾の誕生日に目一杯お返しする。」

 

「お、ありがと。」

 

「でも私弾の誕生日知らない⋯。」

 

「昨日だよ。」

 

「⋯⋯⋯は?」

 

「昨日。」

 

 

初めて鞠莉の誕生日を知った時、僕も驚いたさ。まさか1日違いとは思わなかったからね。まぁ⋯このプルプルした可愛らしい彼女が次に何を言うかは想像つくさ。

 

 

『何で言ってくれなかったのよっ!!』

 

「真似しないでっ!!///」

 

「あっはは!鞠莉は分かり易いなぁ。」

 

「Shut up!どうするのよ⋯何も用意してないのに⋯。」

 

「いや〜、鞠莉が暮らしてくれるなら別にいいかなって。」

 

「それじゃダメなの!!貰ってばっかりだし⋯全然フェアじゃない⋯。」

 

「そう言われてもなぁ⋯あっ、じゃあ時間が欲しい。」

 

「時間⋯?」

 

「あぁ。明日の鞠莉の時間。」

 

「明日?私の時間?何言って⋯ちょっ、何?何??」

 

 

戸惑う鞠莉をよそに、頭の天辺に小さなリボンを結ぶ。何だろう⋯この姿は誰にも見られたくないな⋯。

 

 

「僕のプレゼントは鞠莉って事で。じゃ、寝よう。」

 

「は!?///いやいやいや、意味分かんないわよっ!!///」

 

「?いや、結構いい時間だしそろそろ休もうかと⋯。」

 

「あっ⋯そ、そうよね!///明日はせっかくの休日なんだもん、しっかり休みましょ!///」

 

「⋯なぁ鞠莉。何考えてた?」

 

「なっ、何も考えてなんて⋯」

 

 

足早に去ろうとする彼女の手を掴み、自分の方へと引き寄せる。顔が見えなくたって彼女が何を考えてどんな顔をしてるのか目に見えるようだ。耳まで真っ赤にして、胸を通して伝わってくる心臓の音は、いつもより早めのテンポを刻んでる。

 

つまり⋯そういう事だ。

 

 

「嘘つき。」

 

「ん⋯!や、やだっ、耳⋯ヤダ⋯!///」

 

「期待⋯してたんでしょ?」

 

「してな、いっ⋯!///」

 

「じゃあ何であんなに恥ずかしがったり、慌てたり、果てにはこんなに心臓がバクバクしてるのさ?」

 

「それは⋯。」

 

 

⋯駄目だ。この4年で、どうも僕は鞠莉に対する耐性が無くなってしまったらしい。こんなに胸が苦しいのは⋯多分、『初めて』を過ごした時ぶりだ。

 

寂しかった時間を埋めたいのか、強すぎる独占欲か⋯どっちにしたって、やっぱり僕は重い男なんだろう。それならそれで構わない。

 

 

「鞠莉⋯僕は、『スイッチ』が入ったみたいだ。」

 

「へ⋯?や、あの⋯弾⋯??///」

 

「先に謝るよ。多分止められないからゴメン。」

 

「だ、だから待ってって───。」

 

 

言葉を続ける鞠莉に、さっきとは違う口付けを交わす。

そこから動けなくなった鞠莉を部屋まで運んで⋯後は想像にお任せするよ。

 

ようやく祝えた誕生日。次の日に怒りながら照れながらと、忙しくも祝ってくれた彼女に感謝を込めて、これからはずっと一緒に居られる事に⋯心の底から安堵したのだった。




何故かこの2人はスケベ方向になる不思議。
ありがとうございました。


P.S.3rd最高でした。
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