Il mio chef 〜僕と令嬢と喫茶店〜   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
ピザまんに指を突っ込んで火傷した、なちょすです。
シリアスがスランプならいつも通りのコメディチックな日常でいいじゃないか⋯って事で今回です。
頑張りますっ!うぇいっ!!

それでは⋯わたシェフ第6話、どうぞ!


06.来訪、Guilty Kiss

「ねぇ弾。」

 

「なんだい、鞠莉。」

 

「今日後輩が来るの。」

 

「へぇ⋯は?どこに??」

 

「ここ以外あるの?」

 

 

今日は土曜日。もはや彼女が毎週の様に家に来るのにも慣れてしまった。まぁ料理を教えるっていう理由があるからしょうがないと言えばしょうがない⋯けども、だ。

どうしてこうも僕の知らないところで話がポンポン進んでるんだ⋯!

 

 

「あの⋯聞いてないんだけど。」

 

「言ってなかったっけ?」

 

「一言も聞いてないよ⋯!」

 

「ほ〜り〜、だ〜ん♪」

 

 

ほっぺを横に引き伸ばすが、反省の色が全く見えない。

女子高の後輩が男子大学生の部屋に来るって、響きだけだとヤバくないか?男1:女の子3ってどんな比率だよ。

 

⋯いつも通りだった。

 

 

「何も準備してないよ⋯。」

 

「あぁ、大丈夫よ。2人ともいい子だし私お菓子とか持ってきてるから!」

 

「準備万端ですか。」

 

 

そんな話をしてると、玄関からインターホンが。

 

 

「ごめんくださーい。」

 

「マリー!来たわよー!!」

 

「あ、来たわね!弾、出ていってあげて?」

 

「何で僕が⋯?」

 

「ふふっ、いいからいいから☆」

 

「はぁ⋯どうなっても知らないよ?」

 

 

渋々引き受け玄関へと歩みを進める。気乗りしないなぁ⋯。

玄関に居たのは、パッと見ただけで美人だって思えるほどレベルの高い女の子2人。そう言えば鞠莉、スクールアイドルやってたんだっけ?それなら後輩や果南達が美人なのもなんか納得だ。

 

 

「いらっしゃい。」

 

「え?あの⋯えっと⋯ごめんなさい、間違えました!」

 

「おかしいわね⋯マリーがここに住んでるって聞いたのに⋯。隣の部屋かしら?」

 

「いや、合ってるよ⋯。」

 

『え??』

 

「あの金髪娘なら奥でお菓子食ってるからさ⋯!」

 

 

部屋の奥から爆笑してる声が聞こえる。

全部知ってて僕を遣いに出したんだな。

ていうか何でここで暮らしてることになってるんだ⋯!

は!いけない⋯目の前の2人がすっかり置いてきぼりになってしまっている⋯。そろそろ当事者に出てきてもらわないとこの現場は収まりがつかないだろう。

 

 

「鞠莉、頼むからそろそろ来てくれー。」

 

「あっはははは!!いや〜笑わせてもらったわ!」

 

「マリー!!紛らわしい事しないでよっ!!本気で焦ったじゃない!」

 

「え?え??ここってどっちの部屋⋯と言うか、彼氏さんですか??」

 

「それは無いよ⋯ここは僕の部屋だし彼女とは同じ大学で、ここで料理を教えてるだけだから⋯。」

 

「え?私と昨日あんなに熱い夜を過ごしたのに??」

 

「え、あ⋯///」

 

「生々しいわね⋯///」

 

「これ以上誤解を招くなっ!!」

 

 

いつにも増してフリーダム過ぎる!

取り敢えず2人には部屋に上がってもらってくつろいで頂こう⋯。鞠莉とは対照的っぽいし、どっちも良い子って言ってたしね。

 

 

「改めまして、僕は小鳥遊 弾。大学2年生で沼津に住んでるよ。よろしくね。」

 

「あ、えっと⋯桜内 梨子です。大学1年生で、鞠莉さんとは同じ部活でユニットを組んでました。」

 

「クックック⋯私は堕天使ヨハネ。天界より追放されし美しき堕天使!!」

 

「よっちゃん、出てる出てる⋯堕天使が出ちゃってる。」

 

「はっ!?⋯津島⋯よ、善子⋯です。///」

 

 

う〜ん、癖が強い。

 

 

「まぁ2人とも美人さんなのは分かるけどさ。」

 

「え、あ⋯ありがとう、ございます⋯///」

 

「弾ってばもう口説いてるの?」

 

「なわけないだろ?そんな事出来るだけメンタルは強くないよ。」

 

「ふ〜ん⋯。」

 

 

何でほっぺを膨らまして拗ねてるんだろうか。今日の鞠莉は本当に掴み所が分からない。

 

 

「あの⋯。」

 

「ん、どうしたの善子ちゃん。」

 

「本当に付き合ってない⋯んですか?」

 

「うん。」

 

「そうですか⋯。」

 

「あ、話し方とか気にしなくていいよ。タメでも何でも好きな風に話してくれた方がこっちも気を使わなくても良いしね。」

 

 

書いて字のごとく、『善い子』とはこんな感じなんだろうな。にしても落ち着かない⋯果南やダイヤならある程度慣れてきたし同年代だから普通に接してるけど、2人は年下。呼び出した本人は何故だかおこ。

どうすればいいんだこの状況。

 

 

「鞠莉。」

 

「何よ〜⋯。」

 

「料理しよう。折角だし最近腕前上がったのを見せる良い機会じゃない?」

 

「⋯する。」

 

「よし。じゃあ2人はくつろいでてよ。今軽くなんか作っちゃうからさ。」

 

「あ⋯はい。」

 

「ほら行きますよ鞠莉さ〜ん。」

 

「ん〜⋯。」

 

 

鞠莉の手を取り台所へ連れていく。困ったお嬢様だよ本当に⋯。

 

 

「⋯ねぇリリー。」

 

「なに、よっちゃん?」

 

「マリー、妬いてるわよね。」

 

「⋯言っちゃダメだからね?」

 

「あれで付き合ってないって嘘でしょ⋯。」

 

 

 

 

 

 

「どうしたのさ鞠莉。何からしくないよ?」

 

「ん〜⋯何かしらね。私も分かんないのよ。」

 

「なんだいそりゃ?」

 

 

台所にやってきた僕等は、料理の準備をしながらなんて事無い会話をする。今日の鞠莉は少々気難しいから、出来れば理由を聞いておきたいってのも本音だったからね。

 

 

「さぁ⋯なんかこう⋯モヤっと?ムカムカ〜っと?何か良く分からないの。」

 

「ん〜⋯なら僕にも分からないな。ま、とにかくだ。君が呼んだんだし、大事な後輩なんでしょ?」

 

「うん⋯。」

 

「じゃあ楽しくやらないとね?料理は作り手の感情がそのまま出るんだ。僕はいつもの鞠莉が作ってくれる料理が好きだよ?」

 

「弾⋯うん、そうよね。やるってなったらバッチリご馳走しなくちゃ!!」

 

「ははっ、それでこそだよ。⋯まぁ見た目はゲテだけど。」

 

「このタイミングでそういう事言う!?」

 

「他にタイミングあったかい?」

 

「ぐぬぬ⋯!そこまで言うならあの2人をあっと驚かせてあげるわよ!!驚かせたら後でマリーの買い物に付き合ってもらうからね!」

 

「はいはい、分かりました⋯。」

 

 

これで明日辺りの予定も決まってしまった。普通の料理だったらまだどうなるか分からないんだろうけど、あの果南やダイヤですら料理を見た瞬間顔がしなしなと萎えたんだ。

後輩達には申し訳ないけど、鞠莉が味を取るのか見た目を取るのか⋯そのどちらであったとしても彼女達は驚くだろうし、僕の予定が覆ることは無い。

 

 

「弾!サンドイッチ出来たわよ!!」

 

「見た目は普通だね。」

 

「当然デース!♪さ、早く戻りましょっ!梨子ー!善子ー!!」

 

「⋯頑張れ、2人とも。」

 

 

軽く台所を片付けて部屋に戻った頃には、3人で楽しそうに会話をしていた。同じユニットで同じ高校の後輩。なんだか彼女達の何気ない青春の1ページを見ているみたいだ。

そして机の上には鞠莉が作ったサンドイッチ。

 

 

「あれ?まだ食べさせてあげてないの?てっきりそろそろ悲鳴が聞こえてくるものだと思ってたけど⋯。」

 

「あなたが居ないと始まらないからよ♪」

 

「今悲鳴って言った?」

 

「私達⋯何食べさせられるの⋯。」

 

「2人の味好みにtasteした特性サンドイッチ!さぁさぁ召し上がれ!」

 

『んぐっ!?』

 

 

毎度思うんだけど、なんでこの子は人のペースで食べさせてあげないのだろうか。

そんな事してると片っぽの顔が見る見るうちに赤くなっていく。

 

 

「あ〜⋯梨子ちゃん?」

 

「⋯っ!っ!!」

 

 

涙目で頭を横に振り続けている。そんな姿が妙に可愛らしいと思えるのは、隣の金髪少女に毒されてきたからだろう。

 

 

「あちゃ〜、そっちは善子味ね。」

 

「何入れたんだよ⋯。」

 

「タバスコ。」

 

「鬼かっ!」

 

 

急いで梨子ちゃんに水を持ってくる。あっちが善子ちゃん味ってどういう事なんだ。あれか?弄りがいがあるとかそういう類なのか?

 

 

「はい梨子ちゃん、水。」

 

「あ、ありがと⋯ゲッホゲッホ!!⋯ございます⋯。」

 

「梨子味はどう、善子?」

 

「梨子味って⋯いや、普通に美味しいわ。」

 

「な、何だって!?」

 

「きゃっ!」

 

「有り得ない⋯見た目も味も美味しい鞠莉の料理なんて⋯!」

 

「マリー、いつも何食べさせてんのよ⋯。」

 

「愛妻料理♡」

 

「そこ!誤解を生ませない!!」

 

 

あんなに懸念していた事が呆気なく覆された。多分誰よりも僕が驚いたことだろう。

そりゃそうだ。小原 鞠莉の手から生み出されたあの料理の数々⋯それが後輩が来たことにより治るなんて今でも信じられない。

 

 

「リリー、こっち上げるからそっちの私味頂戴。」

 

「え?タバスコ入り食べるの?」

 

「大丈夫ですよ、小鳥遊さん。よっちゃん、辛いの凄い強いから。」

 

「んーーーーーー!!♡マリー、これ最高よ!」

 

「当然でしょ〜?☆」

 

「⋯苦労してるね、梨子ちゃん。」

 

「あはは⋯慣れました⋯。」

 

「あ、弾も食べてみたら?意外といけるわよ?」

 

「いやぁ、僕は⋯。」

 

 

隣からの視線が痛い。何でか分からないけどずっと見られてる気がする。僕が何をしたっていうんだ⋯。

 

 

「遠慮しておくよ。しっかり鞠莉が作れる事も分かったし、それは彼女が君達の為に作ったやつだからね。鞠莉には後で作ってもらうさ。」

 

「弾⋯♡」

 

「⋯本当に付き合って無いんですよね?」

 

「何か見せつけられてるみたいで腹立つ。」

 

 

どうすりゃいいんだ!!

 

結局この後は話をしたり、昔の事を聞いたり⋯梨子ちゃんが壁ドンフェチって言うのはびっくりしたけど、慣れてくるとこの2人も意外と人懐っこい性格なのが分かった。

正直言って楽しかったよ。

夕方になり、2人がそろそろ帰るとのことだったから手土産を持たせて見送った。部屋の中には、また僕と鞠莉の2人きり。

 

 

「やっぱり良いわね〜後輩って♪」

 

「そうだね。ねぇ鞠莉⋯。」

 

「何?」

 

「実は簡単な料理くらいなら出来たりするのかい?」

 

「⋯まぁね。結構前から☆」

 

「そうかい⋯出来ればそれを普段から出して欲しいんだけどな?」

 

「それは無理ね♪」

 

 

即答で返された。ちょっとイラッとした僕なんかそっちのけで、彼女は僕の顔を見ながら口を開く。

 

 

 

「だって⋯せっかく会えたのに、一緒に居られなくなっちゃうでしょ?」

 

 

 

いつかと同じ⋯どこか寂しげな表情。

その顔は、僕の胸を締め付ける。

どうして君はそんな顔をするのさ。

僕等は初めて会って、大学は一緒だ。会おうと思えばいつでも会えるし、喫茶店にも来れば良い話じゃないか。

 

鞠莉⋯何をそんなに強がってるんだよ。

 

 

「さ、約束通り明日は買い物に付き合ってね⋯弾♪」

 

「あ、あぁ⋯。」

 

 

そんな疑問と言葉は、口から出る事は無かった。

きっといつか分かる日が来る。けど⋯それを黙って待つだけの日々で本当に良いんだろうか。

拭いきれないモヤモヤを抱えたまま、部屋の奥へ戻っていく彼女の背中を見つめることしか出来なかった。




ギルキスは強い。

次回、『07.これはデートじゃない』
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