ベルがサイヤ人なのは間違っているだろうか   作:ケツアゴ

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短いです


第十二話

『此より挑むは熾烈なる試練 決して手の届かぬ高み』

 

『されど報酬はなく 無為なる闘争』

 

『だが我は挑もう 其処に強者が居る故に』

 

『バトルアリーナ!』

 

 ベルが詠唱を終えると足下に下向きの門が現れる。円形の枠の中心にある丸い門はベルが近付くと左右に割れ、ワクワクした様子で飛び込むと閉じた。

 

 

「ミアハ様、これってどんな魔法なのですか?」

 

「うむ。術者と縁の有る強者の虚像と戦えるらしいぞ。外には被害もなく、大怪我を負っても精神疲労(マインドダウン)で済む。代わりに内部では経験値は入らんそうだ」

 

「……要するに強い方と戦えるだけの魔法だと」

 

 妙に活き活きとした表情で入っていったと思ったら、そういう事かと呆れるリリ。前のファミリアの同僚がアルコール中毒の屑なら、今は戦闘中毒のお人好しかと思うと心労が溜まって来た。こっちに改宗(コンバート)してから幸せだと理解してはいるが、それでも精神的に疲れるリリであった。

 

 

 

 

 

 

「……此処は」

 

 朧げな記憶だがベルは其処が何処か理解していた。サイヤ人はフリーザの部下として地上げ屋のような仕事をしていたが、幼くって体の弱いベルも見限られる前に一度だけ遠征に連れていかれた事がある。それがこの星だ。大して高く売れそうになく、星の住民も知能の低い獣だけだとの事だったが、何の手違いか別の部隊まで来ていた。

 

 

 

「おいおい。ベジータちゃんの弟じゃんか。戦闘力が百五十もないとか幾らサイヤ人でもカス過ぎんだろ」

 

 目の前に立つのは面長で筋骨隆々な大男。赤色のパイナップルの様な髪形をした、精鋭部隊ギニュー特戦隊の一人だ。

 

「リクームさん……」

 

 ベルを見下し、今から戦う……いや、彼からすれば戦いなどではなく虫を手で払う程度の作業を行うのを心底面倒臭そうにしていた。

 

「まぁ、良いや。ほれ、さっさと掛かって来な。先手は譲ってやるよ」

 

 これがリクームのやり方だとベルは知っている。相手に散々攻撃をさせておき、平然と立ち上がって心を折ってから甚振る。仲間のバータからでさえ嫌な奴と呼ばれていたのを。

 

「行きますっ!」

 

 だが、それでもベルは心が躍る気分を感じていた。絶対に勝てないと分かっている圧倒的強者に挑む。サイヤ人の心がこの星に来てから味わえなかったその思いに興奮しているのだ。

 

 指をクイクイと動かし待ちの態勢に入ったリクームに対し、ベルは顔面に膝蹴りを叩き込むが、微動だにしない、そのまま頭上に飛び上がり、背後に回って腰に手を回って蹴り飛ばす。一切踏ん張らないリクームの体は前方へと飛んで行き、低空を飛んでそれに追いつくと真上に蹴り上げ、追い越すと両手を組み合わせて叩き落す。先程からの攻撃で逆にベルの手足がダメージを受ける中、気を一気に練り上げる。

 

「ん? おいおい、戦闘力がほーんのちょっぴり上がってるな」

 

「ギャリック砲っ!!」

 

 今撃てる最大威力のギャリック砲を仰向けに倒れるリクームに放ち、限界を超えて気を練り上げ続け放出を続ける。飛行を続ける力さえ使い切り、何とか着地した時、土煙の中から無傷のリクームが立ち上がった。

 

 

 

「へへーん! お前みたいなカスはとっとと掃除してやるぜ。お命頂戴、とおっ!」

 

 予想通りだとベルは思っていた、もう立つのが精一杯な程に体力を使っており、ポーズを付けたリクームが地面に拳を付けて大技を出す動作に入るのを見るしかなかった。

 

「リクーム…ウルトラ…ファイティング…ミラクル…アターック!!」

 

 広範囲全方位に向かって放たれる圧倒的破壊力のエネルギー波。ダメージを受けたと感じるよりも前にベルの意識は閉ざされた。

 

 

 

 

 目が覚めた時、ベルはベッドの中で寝ており、隣の椅子にはミアハが座っていた。

 

「目が覚めたようだな。錐揉み回転をしながら飛び出して来たから驚いたぞ、ベル。……それでどうだった?」

 

「楽しくって……凄く勉強になりました」

 

 起き上がり、グッと拳を握り締めるベル。まだまだ自分は弱者だと改めて認識し、強くなりたいという欲求が更に高まる、何より教えてくれる者が誰も居らず、そもそも使える者さえ居ない気を使った戦闘は僅か数秒でも得る物があったと、そう感じていた。

 

「……むぅ、あまり使うなと言いたかったが、無駄のようだな」

 

「すみません。でも、一度戦った人以外はランダムで選ばれるから……家族に会えるかも知れないと思うと」

 

「そうか。リリ達も心配している事であるし、無理はするなよ?」

 

 それだけ言うとミアハはベルが頷いたのを見るなり部屋から去っていく。

 

 

 

 

「さて、リリ達への説得をせねばな」

 

 少し頭が痛む思いをしながらミアハはベルの部屋の扉を振り返る。家族について語った時のベルの顔を思い出せば説得するしかないと思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうも尾行は無いみたいですね。売上を持っていますし、早く帰らないと」

 

 配達の帰り、リリは街中を歩きながら後ろを気にする。アンナを送り込んだカジノのオーナーの手のものがここ数日の間、出かける度に尾行していたが、今日は居ないようだ。今までの生活によって尾行や逃亡のスキルが上がったリリは尾行を見抜く技術も身に付けていた。

 

 ミアハ・ファミリアのホームは少し街中から離れた場所にあるので少し警戒しながら路地裏を歩いていた時、アンナがガラの悪い男と話をしているのが目に入った。慌てて物陰に隠れ、そっと耳を澄まして盗み聞きをする。

 

 

 

「まだ情報は手に入らないのか。あのような強さ、何かカラクリがあるに決まっているだろう」

 

「ご、ごめんなさい。もう少しだけ……」

 

「早くしろ、お前の両親がどうなっても良いのか? 何なら色仕掛けでもして聞き出せばいいだろうに。どうせ散々遊んでいるんだろうが」

 

 男はアンナの態度が気に入らないのか苛立ちはじめ、最後には服に手を掛けた。

 

 

「どうせ今後はあのドワーフの妾になるんだ。ここで俺が色々教えてやる!」

 

「い、嫌っ!」

 

 アンナは抵抗しようとするが、男はランクアップを果たした恩恵を受けているのか抵抗を物ともしない。前までのリリなら見捨てただろう。だが、今の彼女は見捨てる事が出来なかった。

 

(もう! リリはベル様に毒されてしまったようですねっ!!)

 

 リリの魔法は変身魔法。あまり体形の違うものには変身できないが、同じ種族なら問題ない、そう今から変身するのは小人族(パルゥム)の英雄にしてロキ・ファミリア団長フィン。

 

 

「そこの君、待って……」

 

 物陰で変身し、脅して追い払おうとした時、リリの横を疾風が通り過ぎる。リリの背後から飛び出したりリューが一撃で男を叩きのめした。

 

 

 

「脅迫によりファミリアの団員の情報を探らせようとし、堂々と婦女を暴行。……これで公の機関が乗り込む口実が出来ましたね」

 

 




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何故リクームさん? ギニュー特戦隊の歌にはまったからです
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