ベルがサイヤ人なのは間違っているだろうか   作:ケツアゴ

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第十四話

「えー! そんな魔法を覚えたんだ。いーなー!」

 

 ダンジョン十一階層の奥にてベルをデートに誘ったティオナは彼の魔法の詳細を聞いて羨ましがっていた。霧が立ちこめ木が点在する周囲の風景は惨状と化しており、穴だらけの地面や無惨に薙ぎ倒された木々を見ればデートの内容もお察しだ。

 

「何故かナァーザさんやリリには呆れられてるけど、僕よりずっと強い人達だから勉強になるんだ。……ビルス様は次元が違いすぎだけど」

 

 幼い頃、遠目に見ただけでトラウマになった破壊神の恐怖を思い出してベルは身を震わせる。もっとも怖かった父が良いようにされている姿は彼の心に刻まれて居たのだ。

 

「ビルス様って?」

 

「ほ、他にも色々な人が居てさ。決めポーズを誉めたら機嫌が良くなって気のコントロールの実戦形式で理解できていなかった所や、宴会芸に使えるって言って踊りを教えてくれた人も居たよ」

 

「あっ! それで最近強くなったんだ。あたしが弱くなったのかもって悩んだんだからね」

 

「ティオナさんが弱くなるわけないよ。行動力があって迷い無く大胆に行動できて、僕、そんな所が凄いって思ってるんだ」

 

「そう? ありがとう、ベルー!」

 

 誉められるなりティオナはベルに正面から抱き付く。僅か、ほんの僅かに存在する膨らみが押し当てられてベルが慌てふためく中、そっと小声で耳打ちがされた

 

「ベル、気付いてる?」

 

「……ダンジョンの途中から尾けてきてる人達ですよね? ……多分Lv.3位かな?」

 

 濃い霧の向こうから二人の様子を伺っていた者達の存在に気付いていた二人は小声で数度やりとりをし、取りあえず放置する事にした。何かしてくるならその時に対処すれば良い、そう判断した二人がダンジョンから出ると既に夕日が沈み掛ける時間帯。多くの冒険者がホームに帰る中、途中まで帰り道が同じだからと一緒に帰っている途中、ティオナが急に立ち止まった。

 

 

「あっ、そうだ! 何時までもさん付けじゃ他人行儀だし、あたしは呼び捨てで良いよ」

 

「え? う、うん。分かったよ、……ティオナ」

 

 流石に呼び捨ては恥ずかしいのか照れながらも了解するベルにティオナは機嫌を良くし、丁度分かれ道に到達したので手を振って別れる。帰り道、ティオナの足取りは軽やかだった。

 

 

 

「……うーん。なんかムズムズするなぁ」

 

 一方、ベルは尾てい骨の周辺をさすりながらホームへと帰っていく。その背中を遠くから観察する複数の者達に少し警戒しながら。襲ってくる様子はないが、ジッと見られるのは少し変な気分であった。

 

 

 

 

 

 

「……あー、今日はホンマ疲れるわー」

 

 この日の晩、明日は遠征出発日という事もあって参加する団員がギリギリまで特訓を続けてロキの所にステイタスの更新にやって来ていた。部屋の前には行列ができ、ティオナも幹部ではあるが並んで漸く順番が回ってきた。

 

「最近更新忘れてたし楽しみだなー」

 

「まぁ、この前の更新の時、一気に伸びたし、体を慣らすからって次の更新を先延ばしにしとったからな。ほれ、脱いで寝転べや」

 

 ベッドに寝転んだティオナの背中に血を垂らしてステイタスの更新を行うロキだが、何故か直ぐに紙に書き写そうとしない。ティオナが不思議に思って振り向くと、拳を握りしめて震えていたロキが勢い良く立ち上がって拳を振り上げた。

 

 

 

「ティオナ、Lv.6来たぁああああっ!!」

 

 ティオナ達曰く、深層でも禄な経験値は得られず、同等の姉妹での戦いも数をこなしすぎて判定が厳しくなっているらしいが、短期間で成長を続けるベルとのデートという名の殴り合いは上質な経験値をティオナに与えていた。結果、遠征直前にランクアップという事態に発展したようだ。

 

 だが、此処で少し問題がある。フィン達もそれで頭を悩ませていた。

 

 

 

 

「うーん。ランクアップは嬉しいけど直前って言うのがね」

 

「他の団員の経験値稼ぎの為に幹部は浅い階層では控える予定だが……どうする?」

 

 ランクアップの恩恵は大きい。数十数百の成長の余地など無視しても大丈夫な位にだ。それ故に感覚のズレが発生する。待ち受ける強力なモンスター相手にそれは致命的になりかねなかった。

 

「……所で中庭で凄い音がしてるけど僕の気のせい……じゃないよね?」

 

 フィンとリヴェリアが相談する中、団員であるラウルが飛び込んできた。

 

 

 

「大変ッス! 慣らしの為って言ってアイズさんとティオナさんが戦っているッス!!」

 

「「……あの馬鹿」」

 

 頭がズキズキ痛み、胃がキリキリ痛む中、二人は止めるために動くのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

「……ロキ・ファミリアの所のと?」

 

「ああ、決闘したかと思うと仲良く話して、最後には『大切断(アマゾン)』が抱きついてたよ。……ありゃ少なくても女の方は惚れてるね」

 

 ベルを調べるように命じたアイシャからの報告を受け、イシュタルは舌打ちをする。ロキ・ファミリアは前々から目障りだったが、狙っている相手に関わるようでは更に邪魔だ。

 

「確か今日から遠征だったね。おい、常連客の神や取引先のファミリアのリストを用意しろ。宴を開くよ」

 

 

 

 

 

 

 

「イシュタル・ファミリアから神の宴の案内? ミアハ様、断って下さい」

 

 昼前に届けられた神の宴の招待状を見てナァーザは躊躇無く言い放つ。イシュタルからの案内などにミアハを行かせたくなく、実際今まで性に合わないと行かなかった。だが、最近になって媚薬を中心に大量の取引も有るのも事実。故にミアハも困っていた。

 

「私も出来れば行きたくないが、イシュタルはプライドが高いからな。断ればどうなるか…‥。むぅ、困った」

 

 眉間にしわを寄せながら招待状に目を通した時、最後に書かれた項目が目に入る。男性の団員の参加も一人まで可能。主神が多忙な際は団員だけでも参加下さい、との事だ。

 

 

「ベル、(貞操が)危なくなったら逃げて。あっ、ミアハ様は不眠不休で新商品の開発をするから行けないから」

 

「今後の取引の為です。頑張って下さい」

 

「えぇっ!?」

 

 結果、ベルが一人で行く羽目になるのであった。だが、この時彼らは知らなかった。この宴に女神の陰謀と嫉妬が渦巻いていることを。この世界の危機に大きく関わるという事をまだ知る由も無かった。

 

 

 

 それはそうとして、今日も戦闘経験を積むために魔法を発動するベル。性質上連続使用は出来ないので発動をした事による魔力の成長は低い上に、虚像に言われたように魔法に対する理解も進んでいない。そんな中、現れたのはまたしても知らない相手だった。ただ、その顔は知っていた。

 

 

「えっと、下級戦士の方ですよね?」

 

 サイヤ人の特徴として顔の種類が少ないという物があり、階級別に育てられるためか同じ階級の者は顔が似ているのだ。ベルは聞いた後で更に弱い自分に怒らないかと思ったが、相手に怒った様子はなかった。

 

 

「オラも詳しくは知らねっけど、どうやらそうらしいな。でも、落ちこぼれだって努力すりゃエリートを超えられるかも知れねぇんだぜ? オメェ、ベジータの弟なんだって?」

 

「は、はい。ベルといいます」

 

 

 

 

 

 

 

「オッス! オラ悟空!」

 

 そのサイヤ人は片手を上げて笑うと直ぐに拳を構える。ベルも彼と同様に構え、稽古が始まった…‥。




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