ベルがサイヤ人なのは間違っているだろうか   作:ケツアゴ

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GW無関係の疲れとマーベルにはまって遅くなりました 明日も続き借りるので遅くなりそう


第十六話

 満天の月が空を覆う雲に隠されて一筋の月光も差さぬ大地に陣取り、篝火で周囲を照らして今か今かと待ちわびる者達の姿が其処にあった。

 

「折角大枚はたいて外に出たってのに月見酒も出来ないのか。……まあ、良いさ。その分、あの餓鬼で楽しませて貰うからね」

 

「ゲゲゲゲゲッ! なら、あの神様で楽しまないかい? イシュタル様ぁ」

 

 本来オラリオに住む神はオラリオから出るのはタブーだ。眷属である冒険者が他の国や街に寝返らない為であり、今のイシュタル・ファミリアの様に大勢の上級冒険者を引き連れての外出は本来なら無理だが、普通ではない手段を用いて現状に至る。

 

 イシュタルがベルをおびき寄せる時間が来るまで酒でも飲んで暇を潰そうとする中、団長であるフリュネが獲物に所望したのは檻に入れられたミアハだ。今はナァーザとリリと共に薬で眠らされている。そんな彼を蹂躙したいと語るが、イシュタルは首を縦には振らなかった。

 

「駄目だ。万が一眷属を助けるために神の力を解放されたら厄介だからね。『激怒兎(デストロイヤー)』を捕まえたら首を刎ねるなりして送還するよ」

 

「……ちっ! でも、あの小僧は構わないだろぅ?」

 

「聞き出す情報を全部聞き出したら好きにしな」

 

 歓声と共に色めき立つアマゾネス達。獣のような目を光らせ哀れな獲物が来るのを待ちわびる。そして遂にその時が訪れた。

 

「上だっ! 真っ直ぐ降りてくる!!」

 

 最初に気付いたのはアイシャだった。今回の作戦に気乗りしていなかった彼女は警戒の振りをして適当にサボっていたが、見つけたからには黙っていられない。心に刻まれたトラウマでイシュタルに逆らえない彼女が指さした先には夜闇に紛れる黒いフード付きのローブで全身を覆ったベルが上空から急降下していた。

 

「構えなぁっ!」

 

 空からの奇襲は予想みとばかりに準備されていた飛び道具を一斉に構えたアマゾネスの視線はベルに集中する。だが、それこそがベルの狙いであった。

 

(よし! ミアハ様達は気を失ってる。好都合だけど……矢っ張り許せないや」

 

 怒りに震える手が顔の前に翳され、飛び道具の射程に入る瞬間、その技は放たれた。

 

 

 

「太陽拳っ!!」

 

 

 

 この時、漆黒の闇を大地に降臨した太陽が眩く照らした。多くの者が朝が来たのだと誤認する程の眩しい光。ベルから放たれたその光をイシュタル達は至近距離で目にしてしまう。

 

「ぎゃぁあああああああっ!? 目が、目がぁあああああああっ!!」

 

 両手で目を覆い苦しむ中、ベルの手が鉄製の檻を掴み、片手で持ち上げる。目が眩みのたうち回っているイシュタル・ファミリアの面々を放置して檻を担いで飛び上がり、もう片方の手で気弾を放つ。集団の中央に向かって放たれたソレは地中へと突き進み炸裂。音を立てて崩れていく足場に翻弄されるイシュタル達を放置してベルはオラリオまで一気に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「今日は妙だな。何時もなら外のモンスターが現れるのに……」

 

「楽なのは良いじゃないか。彼女に捨てられたばかりの俺の心じゃ激戦は辛い……ん?」

 

 オラリオの門番達が何かに怯えたかのように姿を見せないモンスターをいぶかしんでいた時、上空から風を切る音が聞こえてくる。思わず見上げた時、薬の効果は切れたが高速飛行に堪えきれずに気絶した三人が入った檻を担いだベルが目の前に降り立った。

 

 

「あの、皆を宜しく御願いしますっ!」

 

 元々は他の何かを入れるためだったのか強固な金属で作られた檻の鍵を拳を叩き込んで破壊して三人が出られるようにしたベルは、細かい説明をせずに門番に後を任せて再び飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「糞っ! やってくれたじゃないか。こんな事ならリスクを犯しても春姫を連れて来るんだったよっ!」

 

 人質や数の利、逃げられたり戦闘に巻き込まれたりするリスクから連れてこなかった切り札の存在を口にしながらイシュタルは差し出されたタオルで顔を拭く。足下が崩壊して土砂に呑まれた為に全身土まみれて体中が痛む。怒髪天をつく勢いで怒り狂う主神を怯えた眷属達が遠巻きに見守る中、タオルを見たイシュタルの手が止まり、目は見開かれている。

 

 今顔を拭いたばかりのタオルには血が付いていた。思わず頬を撫でるとヌルリとした感触と共に頬に痛みが走る。側近に常に携帯させている鏡を見たイシュタルの顔から血の気が引く。美の女神であるイシュタルの顔に傷が付いていた。

 

「直ぐに薬を……」

 

「……さない。絶対に許さない。絶対に許してなるものかっ!! 私は本気で怒ったぞぉおおおおおおおおっ!!」

 

 張り上げた声が周囲に響き、普段は抑えている神気が溢れ出す。イシュタルを侮っているフリュネでさえも後退りするほどの怒気が溢れ出す中、静かな声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……許さないのは僕の方です。僕は怒ったぞっ! イシュタルゥウウウウウウウウウっ!!」

 

 イシュタル達の前に舞い戻ったベルは濃厚な神気を当てられても怯まず怒気を放ち返す。高まった気が上昇気流を発生させ土砂が上空へと舞い上がる中、フリュネが前に進み出た。

 

 

 

「ゲゲゲゲゲッ! なめた真似をしてくれたじゃないのさ。アタイも流石に……」

 

「ド、ドドリアさんっ!? あっ、違った」

 

「あぁん? このアタイにそっくりな知り合いでも居るってのかい? それなら傾国の美女って噂になってるもんだがねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

「いえ、ドドリアさんは男です。ヒキガエルとオークを足して二で割って全身をピンクで染めた様な見た目をしていて……あっ」

 

 怖い知り合いに会ったと間違えた為か緊張感が薄れたベルは口を滑らし、失言に気付く。そのドドリアと間違えた相手の前で見た目をなんと説明したか気付いたのだ。

 

 

 

 

「えっと……ドドリアさんの故郷では美人かも知れませんよ?」

 

 間違ったフォローを重ねた時、誰かが思わず吹き出す。フリュネの怒りが臨界点を突破した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

「ぶち殺してやるよぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 大戦斧を振り上げ飛びかかってくるフリュネに対し、ベルは手の平を上にして右手を挙げる。練り上げた気は円盤状になって飛ばされた。

 

 

「気円斬っ!!」

 

「……はっ?」

 

 フリュネの腕に掛かっていた重量が突如減少する。第一級冒険者が持つに相応しい装備である斧の刃は根本から上が切断されて地面に落下する。フリュネが柄だけになった武器を見て呆然とする中、ベルの左右に広げた手の平に溜められた気が眩く輝いた。

 

 

 

「やっぱり悟空さんから習った技だけじゃなくって兄さんの技も使わせて貰いますっ! ファイナルフラァァァァァァァッッシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

 

 突き出された両手から放たれた気功波は余波でイシュタル達を転がしながら突き進み、空を覆う暗雲を吹き飛ばす。それと同時にベルはローブを脱ぎ捨てた。

 

 

「僕をおびき寄せた理由は大体察してる。だったら見せてあげるよ。僕の、戦闘民族サイヤ人のちからをねっ!」

 

 満月を目にしたベルの体に異変が起きる。牙が延び体は膨らみ、全身に白い体毛が生え始める。血のように赤い目は鋭くなり、威圧感が一気に増す。

 

 

 

 

「これこそが僕の奥の手。さあ! 今の僕の戦闘力はさっきまでの十倍だっ!!」

 

 

 イシュタル達の前でベルは大猿へと変身し、雄叫びが広く轟く。足を踏みならす度に地面が揺れイシュタルはマトモに立てて居られなかった。

 

 

「化け物めっ!」

 

「その化け物に喧嘩を売ったのは……」

 

 イシュタルを見下ろしていたベルが急に固まり、即座に平伏す。怪訝に思ったイシュタル達が振り向いた時、その二人が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやまぁ。白い体毛とは珍しい。アルビノでしょうか?」

 

「確かサイヤ人の城で見たこと有るな。生意気にも向かってきた兄貴と違って物陰で震えていたよ、確か。……ねぇ、君。ちょっと質問に答えてくれないかな?」

 

 




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