ベルがサイヤ人なのは間違っているだろうか   作:ケツアゴ

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第十八話

 命がランクアップした事による中層への進出。タケミカヅチ・ファミリアは孤児を養うための出稼ぎに来ており、稼ぎは大きい方が良い。だが、ダンジョンはそんな彼らに牙をむいた。上層部では考えられない数のモンスターの数や魔力を扱う個体によって追い詰められ、千草という重傷の仲間を抱えた一行が遠くで戦っている者達に押し付けようとするのは当然であった。

 

 

「くっ! お前達、反転だっ!」

 

 だが、リーダーである桜花が見捨てることが出来るのは名も知らない相手だけ。主神の友神の眷属になって既に顔見知りだったダフネとカサンドラだと分かった以上は無理だ。

 

「邪魔。怪我人連れて先に行って」

 

「こ、今度ご飯を奢ってくれたら良いですから」

 

「……すまん!」

 

 一旦は戦おうとした桜花は二人の言葉、そして血の気の引いた千草の顔を見たことによって迫り来る群れを二人に任せて逃走した。

 

 そして日を跨いでも戻ってこない二人を心配したヘスティアは救出について行くと言い出し、ヘルメスの提案によってベルにも協力要請が来たらしい。

 

 

「友神の眷属のピンチだ。俺もついて行くぜ」

 

「……申し訳ありません。このバ神、言ったら聞かないもので」

 

「バ神っ!?」

 

 

 ヘルメスまで同行すると言うことに対してアスフィが謝る中、救出チームが結成された。

 

 

 

 

「はあっ!!」

 

 ベルが放った気功波は通路全体を覆い尽くしながら突き進み、魔石ごとモンスターの群れを消し去る。床や天井、壁も削り取られ暫くモンスターは現れないだろう。

 

「これ、私達が行く意味無いですよね?」

 

 この場の誰もが浮かべた感想をアスフィが口にする。先程からベルだけで中層のモンスターすら蹴散らして、既に十六階層まで来ていた。ヘスティア達が唖然とする中、ヘルメスは値踏みするような笑みを浮かべてアスフィに小声で話し掛ける。

 

 

「間近で見ると此処までとはね。……彼が言っていたこともあながち嘘じゃないのかな?」

 

「宇宙人、とかいう嘘っぽい話ですか? まあ、同じ人間とは思えない力ですよね」

 

「あっ、もしかして空を自力で飛べることに嫉妬かい? まあ、切り札だったからね」

 

 ヘルメスが軽口を叩く中、モンスターはベルの姿を見た途端に悲鳴を上げて逃げていく。やがて十七階まで辿り着いた時、目前の壁がひび割れ、巨人が頭を覗かせる。階層主ゴライアスは獲物を発見し、全身を壁から出そうと咆哮を上げる。

 

 

 

「ギャリック砲っ!!」

 

 そして姿を現す前に上半身を吹き飛ばされた。警戒した者達は沈黙だ、沈黙しかない。

 

「さあ! 十八階層に二人を捜しに行きましょう!」

 

「あっ、はい……」

 

 大穴が空いた壁と灰になったゴライアスに言葉を失いながらも一行は十八階層へと降りていった。

 

 

 

 

 

「二人共っ! 良かった、無事だったんだねっ!」

 

「「ヘスティア様ぁっ!?  って、『激怒兎(ベルセルク)』ゥゥゥウウウウウウッ!!?」」

 

 リヴィラの町付近で直ぐに見つかったダフネとカサンドラは流石は元アポロン・ファミリアの上級冒険者といった所だろう。多少の怪我はあっても特に荷物も失っておらず、金がないからか野営をしていた。二人を見つけるなり駆け寄って行くヘスティアに驚き、ベルの姿にもっと驚く。ちょっとだけベルは傷付いた。

 

 

 

「悪かったって。ほら、戦争遊技の時にボッコボコにされたじゃない」

 

「あれ以来アルミラージどころか普通の兎すら怖くって……」

 

「こらっ! アンタは余計なこと言わないのっ! それにしても神様がダンジョンに来るって無茶しすぎ。まあ、それほど心配したって事なんだろうけど。桜花、千草は大丈夫?」

 

「ああ、お陰様でな。今回の探索には置いてきたが怪我は治った」

 

 皆で火を囲み持ち込んだ食料を口にする。救出が最優先だったので荷物は最小限であり、急な依頼だったので持ち込める食料にも限度がある。実際、ミアハ・ファミリアに気軽に食べられる保存食のストックは殆ど残っていなかった。

 

 

「あっ……」

 

 つまり、ベルの膨大な必要摂取量には全然足りなかったのだ。響き渡る腹の音。

 

「ベル君、君は成長期だから仕方ないさ。ほら、好きなだけお代わりすれば良いよ」

 

 そんなレベルじゃない、とベルの食事量を知る面々が一斉に思う。特に接点が無く、宴の時も勧誘で大忙しだったヘスティアは知らないので呑気に言ってしまったが、ベルにだって遠慮という言葉の知識くらい有る。保存食で作った簡易なスープは食べたいが、残り全部食べても到底足りなかったし、体を使う以上は他の者も多少は一般人よりも多く食べる。

 

「しょ、食料探してきます!」

 

 リヴィラの街の店は高いので買いに行くという選択肢はない。結果、ベルは空きっ腹を抱えて食料探しに向かった。まだ八人前しか食べていないので大急ぎだ。

 

 

 

 

 

 

「あっ! ベル発見っ! 久し振りー!」

 

 広大な十八階層を巡り、通常ならば向かわない場所にある穴場の果実を採取し、途中で謎の門や地面に隠れた新種のモンスターを倒したベルが最後にキャンプ場所近くまで戻って来た時、嬉しそうな声と共にティオナが抱きついてきた。Lv.6の一切の遠慮も手加減もない全力のタックル。ゴライアス程度なら悶絶間違いなしの強力な不意打ちをベルは正面から受け止めた。細身の体は巨岩の如き不動でティオナを止め、少しくらいなら後退すると思っていたのか彼女はビックリしている。

 

「久しぶりだね、ティオナ…さ……」

 

 途中までさん付けしそうになったのを堪えれば喜色が更に増してより強い力でベルを締め上げる。ミノタウロスなら胴体が千切れるかも知れない締め付けだが、ベルはただ抱きつかれただけのように赤くなるだけだ。

 

「こんな所で会えて嬉しいな! ベルは探索? あたし達は色々あって足止め食らってさ。食料を探しているところなんだ」

 

「僕はミアハ様の神友の眷属が帰ってこないからって探しに来てて……そうだ! これ、僕が集めた食料だから受け取って!」

 

「い、いいよ! 流石に悪いからさ」

 

 差し出された果物を押しそうにしながらも断るティオナ。今回の件は自分達の問題だからと返そうとしたが、ベルも引き下がる様子はない。

 

 

 

 

「受け取って。僕、(友達として)大好きなティオナの助けになりたいんだ」

 

「うぇっ!? あわわわわわっ!? う、うん。ありがとう……」

 

 フィンへの恋を語るときのティオネ以上に乙女の顔になったティオナはオズオズと差し出された食料を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ! ティオナのファミリアもキャンプしているなら顔を出しても良いかな?(友達とはいえ別ファミリアだし)ちゃんと君との関係もあるから挨拶しておきたいんだ」

 

 

 




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