ベルがサイヤ人なのは間違っているだろうか   作:ケツアゴ

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第四話

「その後、悲鳴を上げて走り去っちゃって。お姉さんのティオネさんはニヤニヤしながら肩を叩いてくるし、ギルドへの説明もあってその後会えなかったので……」

 

「むぅ。さっぱり分からん」

 

 巨大な花のモンスター、食人花と呼ばれるようになったモンスターとの戦いがあった日の夕食時、(戦いたいという)思いを伝えた相手に逃げられて困惑するベルと、話を聞いて同じく困惑するミアハ。女性二人はそんな男性陣に呆れた眼差しを送っていた。

 

「えっと、ベル。会いたかったって伝えたのよね?」

 

「手合わせしたいって言ってないんですよね、ベル様?」

 

「え? うん、そうだけど……ええ!?」

 

 同時に溜息を吐き出す二人。意味も分からず困惑するベル。この日の夕食はこの様にして過ぎていった。

 

 

 

「新薬が必要かなーって思ってたけど無駄だったようね」

 

「あっ、新薬ってどんな薬だったんですか、ナァーザさん」

 

「……元気になるお薬」

 

 それは体力を回復する回復薬(ポーション)とは違うのかとベルは思い、ミアハは何故ベルに必要と思ったのか分からない。意味を理解したリリとナァーザはまたしても溜息を吐くのであった……。

 

 

 

 

 

 

「ギルドの内部調査?」

 

 送られてきた書状を読んでミアハは遂に来たかと眉間に皺を寄せる。恩恵を受ける前からLv.4を悠々越えた力を持つベルの秘密(やや認識の違いはあるが)が漏れれば神々の好奇心を刺激するからと策を練って平凡な下級冒険者だと認識させてきたが、食人花の死骸を調べた事で強さに疑念を持たれ、Lv.の詐称を疑われた様だ。

 

「ミアハ様、ごめんなさい。僕が軽率な真似をしたせいで……」

 

「いや、気にすることはないぞ、ベル。お前は恥ずべき事はしていない。寧ろ秘密のために助けようとしなかった方が誹りを受ける行為だ。……まあ、腹を括る時が来ただけだ」

 

 落ち込むベルを励ましたミアハは覚悟を決め、ギルドへ向かう為に普段着から正装に着替える。借金を負ってファミリアが没落してから着ることは無かったが、今が着る時だとナァーザが解れや虫食いを直してくれた。

 

 

「では行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

「……此度はあらぬ嫌疑を掛けて申し訳御座いませんでした」

 

 背中のステイタスをギルドに公開したベルだが、当然不正など行っていないので潔白が証明される。ただ、普段から飛んだり、現場に居合わせた少女、アイズ・ヴァレンシュタインの証言にあった魔法が存在しない事に疑問が出たが、ミアハがこう言い切った。

 

「今回疑念を持たれた強さも、その二つもベルがオラリオに来る前に恩恵とは別の理由で手に入れた物だ。神の力が関係せぬ以上、何も話す義務はない」

 

 過去に別のファミリアに同様の疑惑が掛かった際も無実が証明され、ギルドは多額の賠償金を払った上にそのファミリアが裏で行っている事を黙認するしかなかった。弱小ファミリアが相手とはいえこれ以上事が大きくなれば他のファミリアにも強く出られなくなるとしてギルドはこれ以上の追求を避けるしかなくなった。恐らく普段は穏和なミアハが強く出たのも関係しているのだろう。

 

 結果、ベルの疑惑は間違いだった事だけが公表され、暫くは神の間でギルドへの信頼が揺らぐ事になった。そしてベルへの注目も少しは薄れたが、とある神は逆に興味を引かれるのであった。

 

「……欲しいな。ミアハの所には勿体ない人材だ」

 

 実は彼の所の下級冒険者がベルと食人花の戦いを僅かに目撃しており、今の時点でLv.3はあるのではと証言した。普通なら一笑に付すが、話半分に聞いても収集欲を刺激された男神は早速策を練りだした……。

 

 

 

 

 

 

「あっ、ティオナさん! おーい!」

 

「べ、ベル!?」

 

 ギルドから帰って直ぐ、気分転換に軽い運動がしたくなったベルはダンジョンに潜っていた。全力で飛べば走るよりも早く十八階層まで到達可能であり、ナァーザがダンジョン内部で採れる果物を使ったソースを作りたいと言っていたのを思い出したのも理由だ。

 

 その道中、ミノタウロスの群れを一蹴する集団の中にティオナを見つけたベルはつい嬉しさの余り降り立って話し掛けてしまったのだが、ティオナは彼の顔を見るなりビックリした顔になった後、真っ赤になって隣の姉の背中に隠れる。

 

 この少女、今まで団長であるフィンに四六時中求愛している姉のティオネと違い恋愛ごとにはてんで縁がなく興味もなかった。だが、一度会ったばかりの相手にずっと会いたかったと初めて言われ、その実力や所属もあって恋愛ごとに耐性のない彼女はどうして良いか分からない。

 

 尚、ベルが恋愛感情を向けているというのは誤解である。

 

「おや、君は……成る程」

 

 外見やティオナの反応からベルが誰か思い当たった小人族(パルゥム)のフィンとハイエルフのリヴェリアは少々興味深そうな視線を送る。

 

「あっ、ごごご、ごめんなさい! ティオナさんを見掛けたのが嬉しくってつい!」

 

 相手が大手ファミリアという事もあって慌てるベルは更なる誤解を積み上げる。ティオネは更に羞恥の色を濃くする妹の姿に僅かに安心し、同時にベルを警戒していた。未だギルドの発表を聞いていない彼女からすればランクの詐称をしているかもしれない相手。だが、恋愛と無縁だった妹が枕に顔を埋めて足をバタバタ動かしている姿に複雑な想いだ。

 

(まあ変な奴だったら力尽くで……)

 

 サイヤ人と似通った思考回路のアマゾネスらしい結論であった。

 

「少しビックリしたけど気にすることはないよ。此方もミノタウロスの件で迷惑を掛けたしね。それで妙な疑惑が掛かったそうだけど大丈夫なのかい? ……団長として団員に近付く相手は選ばないといけないからね」

 

 最初の友好的な態度から一変して表情は変えないまま威圧感を出すフィンだが、ベルは特に臆した様子もなく、逆に彼の強さの一端を感じ取ってワクワクしてさえいた。

 

「はい。誤解も解けたし気晴らしに十八階層まで行く途中です。じゃあ、僕はこの辺で。ティオナさん、また会いましょうね」

 

 本来奥手なベルだが、この時は戦いたい相手として認識しており、相手も自分と同じで戦いが好きだと何となく察して居たので平気でこのような事が言えた。当然、ティオナは真っ赤である。

 

 

「随分と惚れられてるわね、アンタ。……本当に詠唱もなしで飛んでるわ。しかも、ベートの全力と同じくらいの速度じゃない?」

 

「リヴェリア、ハイエルフの君でも魔力は感じなかったかい?」

 

「……ああ、アレは間違いなく魔法ではない。スキルか特殊なアイテムか……我々が知らない未知の技術なのか」

 

 リヴェリアの言葉にアイズは既に見えなくなったベルが向かった先を見つめていた……。

 

 




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