ベルがサイヤ人なのは間違っているだろうか   作:ケツアゴ

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後日談的な

この後は構想していない  イシュタル編は少しだけ


第七話

「うわっ!?」

 

 タケミカヅチ・ファミリア団員の一人である命が飛び上がって太股でベルの顔を挟み、見えた下着にたじろいだ隙に地面に頭から叩きつけられた。

 

「そこまで! 一本!」

 

「ふぅ。漸く一本とれましたね。……ベル殿?」

 

「だ、大丈夫です……」

 

 タケミカヅチの号令と共に額の汗を拭う命や団長の桜花。アポロンの一件が終わって早数日、賠償金で新築するホームが完成するまでの間、毎朝のようにベルは命達と稽古をしていた。狭い円の中で両手を使わずに足で防ぐか避けるかのみのベルに二人で攻撃を仕掛けるのだが、対人経験の少なさから拙い技を身体能力で補うベルに翻弄され、今日になってようやく一本が取れた。

 

 尚、先ほどの技はフランケンシュタイナーと呼ばれる技の同類であり、タケミカヅチは命に教えた事を同郷の女神から叱られていた。

 

「今日も良い天気だな、タケミカヅチ」

 

「ああ、そうだな。しかしベルは不思議な奴だ。あれ程までに強いのに対人経験が異様に少なく見える。まあ、俺の子供達にも良い刺激になるし、一から教えるのも楽しいぞ。……まだ頭が痛むな」

 

 アポロンにミアハが要求したのはファミリアを解散してオラリオから出て行く事と財産の没収だったが、ホームの襲撃によって受けた損失と借金の返済、少し大きめに作り直すホームの建設費用を除き、殆どを参加自由の宴の費用に当てた。今後ちょっかいを出してくれるなと他の神の機嫌をとり、同時に襲撃に関与しなかったアポロンの眷属に賭けで負けた者が怒りを感じないようにとの意図がある。

 

 ナァーザとリリは甘いと呆れ、ベルは賛同した。罪は罪だから襲撃の犯人には罪を償って貰うが、落とし前自体はベルが付けたからだ。

 

 そしてこれを機に団員を募集するかしないかの話になったが、ミアハの判断によって延期になった。

 

「薬の調合を一から教えるにしても、私とナァーザだけでは商品の製作も考えれば手が足りん。リリが売り物になる物を作れるようになるまで待つとしよう」

 

 ダンジョンに潜る人員については満足に戦えるのがベル一人という事もあり、負担を考えて此方も延期。取りあえず数十人前の炊事を任せられる者を金で雇うという案が話し合われている途中だ。

 

 

 

「さて、久々に技の稽古を付けてやろう。桜花から掛かって来い!」

 

「宜しくお願いします!」

 

 タケミカヅチは武神だ。神の力は封じていても技は錆び付きはしない。事実、恩恵によって身体能力が異常に上がった桜花達でさえ翻弄される。

 

 この様にホームが完成するまで居候したタケミカヅチ・ファミリアの面々と交流を深めつつベルは技を身につけていった。

 

 

 

 

 

 

 

「へえ。ベルさん、もっと強くなっているんですね。……フレイヤ様も戦っているときの魂の輝きが素晴らしいって喜んでいたそうですよ」

 

「そうですか。女神様が……」

 

 この日、普段使っている装備の整備があるからとダンジョンを休んだリリは用事を済ませた後、シルと喫茶店で話をしていた。たわいもない世間話で、内容の多くは注目されているベルについて。特に秘匿事項も話しておらず何も問題はない。

 

 只、リリの瞳は何処かの女神への魅了と良心の痛みが込められてはいたのだが……。

 

 

(リリは一体何をしているのでしょうね。これじゃあ酒欲しさに行動する前のファミリアの皆と変わりませんよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日一緒に潜ったときに見せて貰った命さんの魔法、もっと長く使えれば修行に使えるのになぁ……」

 

 Lv.5の階層主クラスでさえ動きを封じ込められる魔法を思い起こしながらベルは十八階層に辿り着く。今日はギルドの掲示板で見つけた依頼の為にやってきた。彫刻に使うので水晶を採取して欲しいとの事だ。取り敢えず手頃な大きさの物を地面からもぎ取って持ち帰ろうとしたベルは、ついでに他の依頼であるバグベアーのドロップアイテムを集めようと奥へと進む。水辺周辺で何かが水中で動く音を耳にしたベルはバグベアーかもと思い飛び出した。

 

 

「あっ、ベル!」

 

「ティオナ…さん?」

 

 だが、水音の正体は普段から水浴びに来ているティオナ。当然、全裸だ。ついでに言うならばアマゾネスは基本的に恥じらいがない。隠すべき所を隠さずに立っているティオナを真正面から見て固まったベルの顔は耳まで真っ赤になった。

 

「ごごごご、ごめんなさーい!」

 

「待って! ねぇ、今からあたしと戦おうよ!」

 

 慌てて走り去ろうとしたベルの手をティオナが掴んで引き止める。当然後ろを見れないベルだったが、思わぬ言葉に振り向いてしまった。

 

「良いんですか!? ……あっ」

 

 今度は至近距離でティオナの全身を目にしてしまうベルであった……。

 

 

 

 

 

「じゃあ、この魔石が地面に落ちたら開始ね」

 

 開けた場所で五メートルほどの距離を開けて向かい合うベルとティオナ。指で弾かれた魔石が宙を舞い、落下すると同時に二人は動く。一瞬で距離を詰め、互いの額が正面からぶつかり合い、上体を戻すと同時に膝蹴りが再び衝突する。最後に拳と拳が正面からぶつかり、同時に後ろに跳んだ。

 

 

 

「あ痛たたたたた~。君、あたしより頑丈じゃない?」

 

「それを言うならティオナさんの方が僕より力が強いです。今、少し押し負けました」

 

 ティオナは少し赤くなった拳を振り、ベルは痺れる拳を押さえる。先程のは開始の挨拶同然。今からが本番だ。ティオナは腰を落とし、しなやかな動きで矢の如き跳び蹴りを放つ。顔面目掛けて迫る蹴りを上体を反らして避けたベルの眼前で足が高々と上げられ、強烈な踵落としが襲ってくる。

 

「くぁっ!」

 

 咄嗟に滑り込ませた腕で防ぐも骨にまで響き、ベルの足が僅かにぐらつく。その瞬間、ベルの頭をティオナの両手が掴んで地面に引き倒した。そのまま着地したティオナは瞬時に振り返ってベルの頭を踏みつけようとするも転がって避けたベルは飛び上がって距離をとった。

 

 

(……やっぱり強い。でも、負けるもんか!)

 

 ベルはその場で数回飛び跳ね、激しい足踏みから一気に直進した。

 

「速っ!」

 

 咄嗟にガードを固めるティオナだが、直前でブレーキを掛けたベルは彼女の背後に回り込む。ガードに集中して出た一瞬の遅れ。ベルが渾身の一撃を振り向いた横顔に叩き込むのに十分だった。体勢を崩しながらもティオナは一撃で逆転が可能な威力の上段蹴りを放つも屈んで避けられ腹部に一撃を入れられる。

 

「てあっ!」

 

 足が地面に付くと同時の踏み込みからの強烈なアッパーも避けられ、ベルの方が自分より速いと思った瞬間、足の甲を踏んで押さえつけられ、胸部に強烈な肘打ちが叩き込まれた。

 

「ゴホッ! うん。やっぱり君は強いよ。でも、勝負はこれからだよー!」

 

「望むところです!!」

 

 

 そして、勝負は此処から熾烈さを増していく。ティオナに蹴り飛ばされたベルが木をへし折りながら飛んでいき、ベルの乱打によってティオナが水晶に叩き付けられ背後の水晶が砕けるまでベルの拳は止まらない。互いに防御も回避も考えず、より多く相手に一撃を与えようとする。

 

 その最中、ティオナの動きはダメージが有るにも関わらず速さを増していく。これこそが彼女の真髄。スキル名『大熱闘(インテンスヒート)』ダメージを受ける程、死に追いやられる程に自らを強化する。

 

 

「行っくよぉおおおおおおおっ!!」

 

 激しさを増していくティオナの猛攻。だが、ベルも同様に強さを増す。相手が強いほどに自らを強化するスキル『難敵高揚(ザ・サイヤ)』はティオナが強くなればなる程、ベルをより強くしていた。

 

 アマゾネスとサイヤ人。共に好戦的な種族の死闘、互いに時間など忘れ続けていたが、やがて終わりが訪れる。同時に響く打撃音。二人の拳は同時に突き刺さり、ベルは膝を付いてティオナはそれを見下ろして笑う。

 

 

「あはははは。あー、楽しかった! 今回はあたしの……負けだね」

 

 パタリと音を立てて倒れるティオナ。大の字になった体にはもう立ち上がる力が残っていない。激闘を制したベルは拳を握りしめ、高々に吼える。

 

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 その姿を見ながらティオナはフィンに対するティオネの気持ちを完全に理解する。今まで色恋とは無縁だった少女の胸は今確かに高鳴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? ティオナ、アンタ今日は何時もの服でダンジョンに行ったんじゃなかったの?」

 

「実はダンジョンでベルと戦ったら使い物にならなくなっちゃって。そしたらベルが上着を貸してくれたんだ。……あたし、負けちゃった。でも、気持ちがいいんだ。これが恋なんだね、ティオネ」

 

 ベルの服を自分の体ごと抱き締める妹の顔を見ながらティオネは思う。少し安心したけど、面倒なことになりそうだと……。

 

 

 

 

 

 

「……これは」

 

 その頃、ベルのステイタスを更新したミアハは言葉を失う。あの程度など試練に値せんとばかりにアポロン・ファミリアとの戦いの後でも微量しか上昇しなかったベルのステイタスが急上昇しただけではなく、新しいスキルまで手に入れていた。

 

 

 

 

戦闘王子(プリンス・オブ・サイヤ)

 

・誇りをかけた戦いの最中ステイタスに補正

 

・理性を保てる




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