「お二人とも、立場とか周辺への被害とか考えてらっしゃいますか? 考えてらっしゃいませんよねぇ? 考えていたらこーんな事になりませんもんねぇ!」
最近ベルの様子がおかしいと感じていたリリは早朝にホームを抜け出して町外れに向かう彼を尾行、ティオナと会っているのを目撃した。すわ逢い引きかと少しドキドキしたが始まったのは模擬戦。拳と拳、膝と膝が激突する度に周囲に余波が広がり地面が弾ける。踏み締める毎に足下が沈み、避けられて地面に向かった拳によって大穴が開く。
「……」
デバガメよろしく観察しようとしていたリリは固まり、石礫が飛んできた辺りで無言で立ち去るとスコップなどの整地の道具を持って戻ってきた。
「あの、お二人様、少しお話を…お話……聞けって言ってるでしょうがぁあああああああああっ!!」
リリも最初は我慢した。普通に止めようと話しかけるも戦闘に夢中で聞いていない。それでも普通に話し続け、最後にキレた。早朝に響きわたる絶叫と共に二人の間に投げ込まれた小袋の名は
そして話は冒頭に戻る。悶絶する二人の前に臭いを我慢しながら涙目で立つリリは言った。正座しろ、と。有無を言わさぬ威圧感に二人は従うしかなく説教が始まったのだ。
「ティオナ様は余所のファミリアの方ですからこれ以上は言いませんが、ベル様は別ですからね! 大体、そんな事だからランクアップもしていないのに『
あの一件から町中を歩くとその二つ名で呼ばれ、アマゾネスからは熱の籠もった視線を向けられる事があった。なお、ミアハの友神が宴の席でスカウトした元アポロン眷属の少女二人には再会するなり悲鳴を上げられた。敵対した時、凄く怖かった様だ。
「アポロン・ファミリアとの件からでしょ? あたしは知らなくってダンジョンに潜ってたから見れなかったけど、ウチの団員も影響されて奮起する人が多いよ」
「ロキ・ファミリアの人かぁ……」
宴の途中、話し掛けてきたベートの事を思い出す。囲んでくる人達にワタワタしていた時、不機嫌そうな声で言ってきたのだ
『おい、雑魚みてぇにビクビクしてんじゃねぇぞ』
それだけ言って去っていったのだが、後でフィンから、彼なりにベルの強さを認めた上でそれに相応しい態度を取るのが強者の義務だと言いたいのだと教えられた。
「所でティオナ様。ベル様と模擬戦をしている事を仲間の方々は知っているのですか?」
「大丈夫大丈夫! 同じ部屋のティオネには気付かれないように出て来たからバレてないよ」
正座を一旦止めさせ荒れ果てた地面を均す途中、リリから問い掛けられたティオナは自信たっぷりに答えた。
「えぇ! あのティオナさんが恋ですか!?」
「ちょっ! 声が大きいわよ、レフィーヤ。相手は敵対していないファミリアとはいえ他の派閥なんだから。……どうも例のベル・クラネルに一騎打ちを申し込んで負けたらしいのよ」
ロキ・ファミリアのホームの廊下でティオナについて知らされたレフィーヤが大声を出してティオネに口を塞がれる。口元に指を当てて静かにする様に指示したティオネは話をしやすい様に自室へ連れ込んだ。
「ほら、アマゾネスって強い男が好きでしょ? 彼奴、今まで恋愛のれの字も知らなかったのに一騎打ちで負けちゃってから燃え上がったのよ、恋の炎がね。どうも様子からして毎朝模擬戦でもしてるらしいわ」
ロキが言うにはステイタスが急上昇しているみたいだし、上質な経験値を稼いでいるのね、と呟くティオネに対しレフィーヤは混乱した様子。それ程までにティオナと恋愛が結びつかなかった。
「そ、それで他にその事を知る人は?」
「アイズも知ってるわ。あの子、ベル(が使う力)に興味が有るみたいで、自分も(模擬戦に)付き合って貰いたいって言ってたわ」
「ア、アイズさんが、そんな……」
レフィーヤにとってアイズは憧憬の対象であり、もっと仲良くしたいと思っている相手。それが知り合ったばかりの男と付き合いたい、しかも他の仲間と一緒で良い、等と理解しきれなかった。潔癖なエルフである彼女なら特に……。
「お、おのれ! あの女誑しがぁああああああっ!!」
この後、アイズに真相を問い質しに行くレフィーヤだが、アイズも重要な部分を除けたまま肯定し、結果、レフィーヤはベルを打倒すべく鍛錬に一層力を入れるのであった。
「……何か面白くなりそうだから放置しておきましょう。やばくなったら止めれば良いし。しっかし、あのティオナが恋ねぇ。明日にでもデートに誘うって言ってたけど、どうなるのやら……」
妹の恋の行く末が楽しみであり不安でもあるティオネはやや暴走しがちな友人の姿を眺めながら空を仰ぎ、次に視線の先に思い人の姿を捉えた。
「団長ー! 今からデートしませんかー!」
妹同様に猪突猛進気味な彼女は恋に関しては自重しない。今日も猛烈なアタックを繰り出していた。
「ひゃっほー! お宝置いてけー!」
ダンジョン中層『大樹の迷宮』にてティオナは大はしゃぎで木竜《ウッドドラゴン》に襲い掛かる。先の遠征で失った
(ティオナさん、気合い入っているなぁ)
ティオナに
「ティオナさん、凄かったです!」
「えへへ、そう?」
惜しくもドロップアイテムは無かったが誉められれば嬉しい。特に好きな相手からなら尚更だ。姉がフィンに良いところを見せたがっていた気持ちを今理解したティオナは一層張り切った。
「ほらほら、ベルの為に作ってきたんだ~! はい、あーん!」
「ちょっと、ティオナさんっ!?」
「ねぇねぇ、ちょっとおぶさって良い? 飛ぶのってどんな感じか知りたくってさ。ほら、外じゃ目立っちゃうし」
「む、胸が当たってますって!? わ、分かりましたから体をもっと離して……うひゃっ!?」
この様に勇気を出してアタックを進めながら辿り着いたのは二十四階層。異常なまでに発生したモンスターを一蹴しながら進んだ先で大規模な戦闘の痕跡を発見した。
「うーん。誰が戦ったのか気になるね。こっちに向かったみたいだし、行ってみようか!」
ティオナはベルの手を取ると駆け出す。二人が向かったのは
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