今回は半分以上が(おそらく)3人称です。文章がおかしい可能性があるのでそういったところがあれば感想欄に報告お願いします。
駆け抜けた場所は地獄だ。
いや、地獄だったが正しいのかもしれない。夢にまで見た外の世界は地獄だし、同じくらい壁の中は地獄だ。
そんな事は分かっていた事だし、結局この先もここが地獄であることは変わらない。
むしろその証明のように人は死ぬ。
仮に俺が無敵の超人だとして、人は救えるのだろうか。
それは無理だ。
俺がいくら強くて、この世に殺せない巨人がいないとしてもだ。
何せ俺は――――――
他者を救うことなんて一切考えていないのだから。
横を飛ぶリヴァイ兵士長は転がる死体を一つ一つ確認する。近くには項の部分を齧りとられたように横たわる大きな巨人の姿も確認できる。エレンか?
俺には分からないが、死体はリヴァイ兵士長の知り合いなのかもしれない。顔色は窺えないが、悔やんでいるのかもしれない。
「お前にはどう見える」
勢いよく気の上に戻ってくるリヴァイ兵士長は俺に声を掛ける。
正直何の話をしているか分からないが、この惨状の事をだろうと言う解釈で話を繋ぐ。
「さぁ」
「…何も感じないか?」
「人が…いや、生きている物が死ぬことに一体何を感じろと?」
俺の言葉を聞いたリヴァイ兵士長の顔は変わらない。顔色さえ変えないポーカーフェイスに特に感じる感想も無く、返事を待つ。
しかし、リヴァイ兵士長はそれから特に反応を見せることなく俺に向かって「そうか。」というと飛び出す。
人類を救う奇跡の対象であるエレン探しの続行だろう。
いや、そう考えるとこの死体はエレンを守っていたのだろう。結果的に死んだわけだが。
御苦労さん。
足音も感じていたので納得できる距離に“そいつ”はいた。
全身ボロボロで現在も進行して切られている。たしか…鎚の巨人だったか。先程とりあえずこんな呼び方をしておけと言われていたが、中々のセンスだと思う。たしかにあの顎は鎚のようだ。
よく見ると顔の周辺は傷が少なく攻撃の通りが悪いように見える。
近くに居るのは…ミカサか。
執拗なまでに攻撃を繰り返すミカサに一切怯まず逃亡を続ける鎚の巨人。
どこかにエレンが囚われているか、もしくは食われたか殺された。と考えるのが妥当か。
一瞬の事だ。リヴァイ兵士長が飛び出したかと思うとミカサを攫って帰って来た。
どうやらミカサの話曰くエレンは口に含まれている。それでいて殺すのならば潰すことで十分だと。だからエレンは生きているという。
「エレンを食うことが目的かもしれん。そうなればエレンは胃袋の中だ…普通に考えれば死んでるが…」
「生きてます」
「…だといいがな」
巨人と一定の距離を離しつつ睨み合うリヴァイ兵士長とミカサ。というより一方的に睨んでいるように見える。
「…そもそもは、あなたがちゃんとエレンを守っていれば、こんなことにはならなかった。ハンクだってそう」
「…」
「…お前は、あの時のエレンのなじみか。そうか」
特に言うことは無い。
確かにそうかもしれないし、違うのかもしれない。別にどう思われてもいいという気持ちもあるが…もやもやする。いや、苛立ちか。
結局リヴァイ兵士長の案でエレンを救出することに重点を置く。
硬化能力のせいで仕留めきれないのは俺も見ていて知っている。
しかし、
「俺が砕く」
「…駄目だ。それをするつもりなら今すぐ戻れ、邪魔だ」
「俺があんたの指示に従う理由は無い。俺は俺だ」
「面倒な奴だ。エルヴィンはすぐ俺に面倒を押しつけたがる。…いいかハンク。お前は今クソにも劣る発言をしている。理解しろ」
「もしミカサの発言通り口内にエレンが居るのなら、あの堅牢な口周辺を砕くのは立体起動では無理だ」
「なら頭を使え。やりようによっては不可能じゃない」
「…なら、俺は俺のやり方でやる」
「くだらない問答をする時間は無い。…お前の案は一旦置いておく。俺のやり方が駄目なら別の案を考える。お前の“それ”は使わせない」
「…」
何を躊躇う必要があるのか。
誰も損をしない方法だと思うが。ミカサは俺を見て不思議そうにしている。
別に大したことじゃない。
俺とリヴァイ兵士長で削る。振り回す腕は触れただけでミンチになりそうなほどの圧力を以て空間を制圧する。
しかし俺たちの立体起動の機動力はそれよりもワンテンポ速い。当然当たる時は当たるのだろうが、振り回しているだけの腕に当たるような技量はリヴァイ兵士長は持ち合わせていない。
俺にも見えていて当たらない。時折近くを唸りを上げながら通り過ぎていくのに驚くが大したことではない。
ミカサは距離を見計らいつつ隙を狙っている。
木にアンカーを飛ばし急接近、口の筋肉を削ごうとするが顔をずらされ関係ないところ斬る。だが、それを読んでいたかのように反対側から突如現れたリヴァイ兵士長が切り裂く。
砕けた。砕けたのはリヴァイ兵士長の刃。
単純に硬化されただけだ。腕を振り回すだけだが、防御に関しては一定の技能を感じる動き。顔を動かした後両側の頬を硬化させ筋肉を裂かれるのを防いでいる。
まだだと思うがかなりの距離を移動している。森から出られたらお終い。立体起動の扱いがどんなに上手くとも障害物、もしくはなにかアンカーが使えるよう大きな物体がないと効力は半分も出せない。そうなれば本当の詰みだ。
それが分かっている俺たちの攻撃は熾烈になって行く…が、通らない。
ガスとて無限ではない。ミカサは牽制に徹しているため余力があるが全力で攻撃を繰り返す俺とリヴァイ兵士長…少なくとも俺のガスは帰還まで持つかどうか怪しくなってきた。
ミカサも攻撃に転じる回数が増えてきている。
ただ…このメンツで落とせないとなると、どうすればいい。
口への攻撃を集中している分項はガラ空きかと思いきやそうではない。体格からは想像できない速度で反応し攻撃、さらには硬化による防御を繰り返す。
リヴァイ兵士長の指示が来る。
――同時攻撃。
同時に両頬と項を攻撃することで一撃を確実に当てることだろう。ただ、両頬を同時に切り裂かなければ効果は薄いような気がするが最悪項さえ切り取ればこいつは死ぬ。
天に祈る暇なんて無い超高機動戦。
攻撃の指示が出た。
「…!!」
「!!!」
「っ!!!」
三者三様の反応。
少なくとも、歓喜ではない。
響き渡る鋼の砕ける音。それは絶望の音となる。
“三人の持っている刃が全て砕けた”。
目に追えないほどの超高機動での移動で視界を奪った。一撃一撃が必殺ならタイミングをずらしながらの移動は相手を混乱させるには十分なはず。そこからの同時攻撃。
読まれたわけではない。故に動きが一瞬止まったのだ。勝ったと思った。
“勝っていなければおかしかった”。
この鎚の巨人と称された巨人は、上半身だけとはいえ―――――――――
―――――――――完全に硬化させて見せた。
「…クソが」
「リヴァイ兵長!!!」
リヴァイ兵士長の呟きにミカサが声を出す。まだ、諦めてはいない。
分かっているさ。
絶望するには遅すぎるが…まだ、終わらない。
リヴァイ兵士長、ミカサ・アッカーマン…そして、ハンク。
それぞれが最高クラスの兵士だと言われれば異論がある者は少ないだろう。
人類最強の兵士と言われるリヴァイ。
今期の卒業生で1位、さらにはその技能値の高さは一般の兵士100人に相当すると言われるほどの少女、ミカサ・アッカーマン。
そしてこと刃物の扱いに置いて、立体起動の技能値においてはミカサ・アッカーマンと同等の評価を持つハンク。
まともな連携など練習したことも無い3人ではあるが、差異はあれど同等の技能値を持っているからこそのある種連携を取っていた。
攻めの起点はリヴァイ。ミカサとハンクを上回る圧倒的速度と超人的な技量で全身の筋、または隙を見て顎の筋肉を狙う。当然一人で出来ることなど限られているのであくまでも起点。
攻撃の主力はハンク。リヴァイほどではないが早い動きと一瞬で大ダメージを与える鋭い斬撃は巨人に対して圧倒的なダメージを与えられる。
救出の要はミカサ。飛び抜けた部分がない代わりに超高度な部分で平均的技能値を持つミカサは、2人と1体の様子を窺いつつ一瞬の隙を狙って一定の速度を保ちつつ駆け抜ける。
この3人がしっかりと自分の役目がこなせているのなら巨人にとってこれほど恐ろしいモノも無いだろう。
だが、しかし…
状況は均衡していた。
この3人が挑んでまともにダメージを与えられない、巨大な鉄槌の様な顎を持つ巨人。通称鎚の巨人はまさに真の化け物だった。
疲弊していく3人を嘲笑うかのように、マイペースに森の外を目指す巨人。しかも、口内に居るとみられるエレンの救出できるタイムリミットは限界が近かった。
無表情ながらも明らかに焦りの色が目立つリヴァイ。必死の形相で食らいつくかのように剣を振るうミカサ。淀んだ、死人の様な目をしていながらも、超機動で攻めるハンク。
誰もが諦めていない。連携もすでに乱れ、必死に攻勢に出て少しでも時間を稼ぐ、そしてエレン救出のチャンスを掴もうとしている。だが、“2人”が感じるものは絶望でしかない。
「エレン!!!!起きて!!!」
叫ぶのはミカサ。もし、声が届きエレンが口内で巨人化すれば一発逆転も考えられる。15M級の巨人への変化への莫大な質量の増加は如何に強靭かつ超硬度を持つあの顎でも耐えられないだろう。
だが、無情にも反応は無い。いくら声を掛け、刃が砕けようとも顎にダメージは無い。攻撃を繰り返すミカサは…涙を流している。迫りくる絶望は少女の心を抉るのに十分すぎるほどだった。
「クソったれが!!!」
焦れている。人類最強の兵士は明らかに焦れている。柄にもなく声を張り上げ、腕部などを狙い筋を断つ。足止めは出来る。だが、先がない。巨人もそれが分かっているのか防御は本当に必要最低限。手足を狙われる分には構わないと完全にされるがままだ。
いくら時間を掛けようが援軍には期待できず、下手に数多く兵士が来ても足手まといにしかならない可能性がある。
「…」
ハンクは何も語らない。時折腕をチラリと見ては筋を、そして口筋を狙う。
その目は明らかに濁っていて感情が感じられない。他者に、いや、巨人に見せる感情など殺意で十分だと視線で語る。
「エレン!!!!」
「エレン!!!起きて!!!」
叫び声に合わせて巨人の眼前に何かが飛び出した。
驚愕の表情を向けるミカサと対照的に、リヴァイは苦い表情だ。
飛びだしたのは当然ハンク。勢いを殺さずにハンクは躊躇い無く巨人の目に両腕を突っ込んだ。
瞬間、動いたのはリヴァイ。
「…口からも離れているし、エレンは死なないだろう」
そうハンクが呟く。小さく呟いたその言葉は当然誰にも聞こえていない。眼前に居る巨人には聞こえたのか、手を伸ばすがすでに遅いとにやりと笑うハンク。するとと同時にハンクの元へ到達したリヴァイは、一瞬で“ハンクの義手のみを切り落とした”。そのままハンクを抱え巨人の手からも逃れ、離脱する。
切り落としたと言っても義手の両腕は巨人の眼球の中ではあるが。
「…なにをっ!」
「黙っていろ」
言うが早いかアンカーを飛ばし、ハンクを抱えたまま急速に巨人から距離を取るリヴァイ。
その動きに迷いはなく、ミカサは呆然とするしかないが我に返ると同時に声を荒げる。
「兵長!!!エレンは!!!」
ミカサの言葉は、巨人の頭部から放たれた閃光と爆発によってかき消された。
「…え?」
視線を向けると先程の巨人の頭部はほぼ完全に吹き飛んでおり、残っているのは大量の血液と涎を流す下顎のみ。
呆然とするミカサにリヴァイはハンクを放り投げるとすぐさま口の上に飛び乗る。ぐちゃりぐちゃりという血液と涎を踏みならしながら嫌そうに手を突っ込み…エレンを引きずり上げる。
意識を失ったエレンに目を向け、安心したように嘆息すると項へ目を向けるが巨人の両手が完全にかばっており手を出すことが出来ない。それに熱気とともにジュウジュウと肉が盛り返していることから再生も始まっている。
これ以上の戦闘行為は無駄だと判断するとすぐさま立体起動に移り、
「引き上げるぞ。最低限の事はやった。これ以上の戦闘は無駄だ」
そうミカサに告げると飛び去る。ミカサもハンクを抱え、飛ぶ。
抱えられているハンクはというと、意識はあるようだが特に言葉を口にすることはなくただただ抱えられている。
その目は何を語るわけでもなく、いつも通り全てに興味を無くしたように濁っている。
今回は半分以上が3人称でした。…たぶん。
オリジナル巨人は、とあるコンセプトに基づいて作られてます。ですので「なんだこいつチートじゃねぇか。」みたいなことになっていると思いますが、その辺はご了承ください。
この作品もキリがよくなったら「進撃の剣人Q&A」でもしようかと思ってますので秘話とかはそこで話しますね。
なれない3人称は言葉が変なところとかあったと思います。
というかあります(確信)ですので誤字脱字報告、感想評価まってまーす。でわでわー。