とりあえずここだけ注意してほしいのは、三人称に挑戦してる部分があります。
どうぞ。
結局アルミンは、説得に成功した。
いや違うな。説得に成功したと言うより、撃たれそうになったところを出てきたピクシス指令に助けてもらったと言った方が正しいだろうか。
そして、エレンが巨人化することで大岩を持ち上げ穴を塞ぐ。
この作戦が成功すれば、これ以上壁の内側へ後退しなくて良いそうだ。
そして希望も見えてくる。
「エレンの護衛には私達精鋭と、ミカサ・アッカーマンで行く。いいな?」
「…」
「どうした、ミカサ?」
「私は、ハンクを連れていくことをお勧めします」
「なに?」
エレン巨人体は大きく、そしてなぜか巨人の姿をしているのにもかかわらず巨人に狙われる。
エレンの力は強力だが、それ故リスクもある。大きな体は狙われやすい。
それに岩を運んでいる間は無防備だ。小さく見積もっても15Mサイズでは片手間で運べるような大きさではない岩を運ぶ間は、完全に大きな的だといってもいい。
だからエレンを守るための護衛が付いていくことになった。
その選出メンバーにミカサが俺を推薦したのだ。
だが、イアンと呼ばれていた隊長の反応は芳しくない。
―当然の反応だな。
一緒にいてミカサの実力は重々承知しているのだろうが、俺はそうではない。
きっと精鋭たちからは“たまたま近くにいたからエレンを守ろうとした友達思いの奴”程度の認識なのだろう。
「ミカサ。お前を連れていくのは、お前の実力が俺達精鋭と比べても遜色ない・・・いや、それ以上だと考えてもいいほどだと認識しているからだ。仮にこいつの実力が訓練兵団で上位にあったとしても、それは“訓練兵団”という新人達の中での話だ。実戦では違う」
「…ハンクは」
「ん?」
「いえ、ハンクと私が本気で殺し合えば、5回に3回は私が殺されます」
俺としてはミカサと殺し合うのは不毛極まりないので行いたくはないな。
…そういえばさっきはエレン諸共殺そうとしたんだったか。
あの場でエレンを殺したら、その後こいつに命を狙われ続ける可能性があったのか。
そう考えるとあの案は微妙だったのか?いや、あれが最善だ。どう考えてもエレンをどこぞへと行かせるくらいなら、あの程度のリスクはリスクに含まない。
最悪刺し違えてでもミカサを殺せば、その後はどうにでもなった可能性もあったしな。
思考がずれた。こんなこと、考えるだけ本当に無駄だ。
「…それでもだ。格闘訓練のようなものとは違う」
「ハンク」
「…なんだ」
ミカサがこちらを見て言葉を投げかけてくる。その視線につられて精鋭部隊の連中もこちらを見る。
あまり俺を見るな。…気分が悪い。
「今日壁が壊されてから、何体巨人を倒した?」
「知らん」
周囲の精鋭たちはどうせ大した数殺していないんだろ?と言った様子だ。
一瞬腕を見たのも気に食わない。
巨人を殺した数で競うのも小さいが、視線が気に食わない。知ってか知らずか無意識か。兎にも角にもそんな目で俺を見るな。
まぁ、よくないな。腹立たしい。
「15から先は覚えてないな」
「…何人で?」
「班員は全員食われた。班員と一緒には1体も殺していないから一人でだ」
数を言うと、息を飲む音が鮮明に聞こえる。
何体も同時に出てきたら俺の人生の垂れ幕が下りるだろうが、2、3体なら同時に出てきたところで大した脅威ではない。奴らの強さはある程度以上の数で同時に襲うことと、奇行種と言う行動の読めない奴がいることだ。
俺は奇行種にぶつからなかったが、もしも当たっていたら無傷とはいかなかった可能性が高いだろう。
行動が読めないというのはそれだけ辛い。
「ミカサ。こいつには本当にそれだけの実力があるのか?」
「あります」
「こいつの実力はどの程度だ」
「私が巨人を狩りに行くとして、一人仲間を連れていくとすれば必ずハンクを連れて行きます」
「…わかった」
イアンは俺を見ると、一瞬目を閉じそして開く。
瞬きとは違う、瞑想のような動き。
「ハンク。君の同行を許可しよう。…期待しているぞ」
そういえばこいつは一度も俺の事について言わないな。
それに俺の腕を見た時も特に反応がなかった。
そういう反応、嫌いじゃない。
「…やるべき事をやるだけだ」
「そうか」
どうやら俺は、想像以上にミカサに信頼されていたらしい。
エレンより俺の方が優先されるのか。
…いや、単純に前提条件からして違うか。エレンを危険に巻き込まない選択と、戦力を重点に置いた判断だな。
殴り損ねたビビり野郎の代わりに巨人を狩ろう。
「…」
「ミカサ!!」
怒号が響き渡る。それは誰の声だろうか。
巨人化したエレンはおもむろにミカサへと殴りかかり始めた。
助けようかとも思ったが、今のエレン巨人体は、知能の無い巨人同等のようだ。
あの程度なら助けるまでもない。
頭部にしがみつくミカサに拳を振るうと、エレンは自分の頭部を自身の拳で破壊してしまい地面に座りこんでしまった。
失敗か。
誰もが頭にこの言葉が浮かんだだろう。かく言う俺もその一人だ。
そしてこのまま全てが終わるんだろうな。
壁の穴が塞げなければ人類はもう死ぬしかない。
畜生、イライラする。
「オイ!?何迷ってんだ!?指揮してくれよ!イアン!?お前のせいじゃない!ハナっから根拠のない希薄な作戦だった。みんな分かってる。試す価値確かにあったし、もう十分試し終えた!!」
精鋭の一人がそう言葉を発する。そして、俺たちは撤退すると。
露骨に不機嫌…いや、殺気立ち始めるミカサをイアンがなだめる。
そして、少しの言葉をリコという兵士と交わした後ついに爆発した。
「では!」
「どうやって!!」
「人類は巨人に勝つというのだ!!」
勝ち方を教えてくれと。
人間が人間のまま、人間を死なせず、巨人という強敵を倒す。
それを実現できることが出来れば、この上なく美しい事なんだろう。
「私が知ってるわけない…」
そうさ。誰も知らない。
どんなに偉そうなことをいっても誰も知らない。
保守的思考のビビり指揮官だって、俺達を信じたピクシス指令、賢いアルミンも、エレンのために命を賭けるミカサ。
そして、巨人になったエレンですらそう。
誰も知らないからこそ、何かを投げ打って戦うしかない。
今この場で賭けられる者は、自分達の命。
それをまるで道端の小石のように使って、エレンのために戦うしかない。
きっとみんな知っていたことだ。自分の命は、世界から見たら大した賭け金ではないことくらい。
でも、忘れることで前を向いてきた。暗い過去を振り返る事をせずに、前だけ向いて。
それが幸せだと、正しい事だと。そう思っていたのだろう。
その実態は、前を向いている振りをして、進んでいる振りをして、ずっと佇んでいたんだ。ぬるま湯の中でも停滞を、進歩と信じて。
「それが、俺たちに許された足掻きだ」
結局作戦は続行。
…足掻きでも犬掻きでも、連中は前に進んだようだ。
イアンか。凄い男だな。
俺も、やることをやろう。それが俺の、今回の足掻きだ。
「およそ10M級4体出現!!」
「ミカサ後ろを頼む。エレンのところに向かわせるな!!ここで食い止めるぞ!」
さすがに、混沌としてきたな。
巨人は穴からどんどん入ってくるため、殺しても殺してもきりがない。
見飽きない顔のレパートリーだと感心している暇もないくらいだ。
「面白い顔でこっちを見るな」
精鋭班は実力者揃いだが、駐屯兵団は経験が薄いせいかイマイチ実力が分かりづらい。
入ってきた10M級の背後を取ると回転するように項を削ぎ落す。
それと同時に、空いているもう一方のアンカーを次の巨人に射出。
すぐさまアンカーを巻き、急接近と同時に項を削ぐ。
巨人が倒れるとその音に気付いたのか残りの巨人が俺を見つけるが、関係ない。
所詮、でかくて強くて、ときどき早いだけの肉の塊だ。
近くの建物へ立体起動で飛び乗り、刃を交換する。すると俺へ向かってきていた巨人は、精鋭班に囲まれて切り刻まれてしまった。
「…凄い技能だな」
俺の隣にはイアンが居て、話しかけてくる。
巨人はまだ居るが、エレンに近い巨人はある程度処理したので問題ないだろう。
「どうも」
「ミカサがお前を推薦した理由が分かった。お前がいなければもっと被害が広がっていただろう」
「…」
「ふっ。クールだな」
「どういう反応を返したらいいかわからないだけです」
「とりあえずありがとうとでも言っておけ」
「…」
「まぁ、考えておいて追々わかるようになればいい。次が来たぞ」
「…了解」
早く起きろよエレン。
時間も人員も有限だぞ。
「死守せよ!!」
「我々の命と引き換えにしてでもエレンを扉まで守れ!!」
立ったエレンは岩を持ち、扉へ向かう。
そのエレンを、文字通り命を賭けて守ろうとする精鋭たち。
エレンに近づこうとする巨人たちは精鋭たちに全く反応を示さなくなり、ついには食いつかれるまで接近するという者たちまで出てきた。
―高速で近づいて、一瞬で切り殺す。
ハンクは、エレンを守りこそすれど精鋭を守ったりはしない。
エレンの近くにいる巨人を文字通り瞬殺していく。
エレンの近辺の巨人の多くは立ち止まり、しゃがんでいるのが多い。
エレンの近くにいる巨人が立ち止まっているのは、精鋭たちが囮になっているからである。
しゃがんで手を伸ばしたり、人を食って立ち止まっている巨人などハンクにとっては的でしかない。
エレンの歩いている場所には建物がないため一撃離脱戦法になってしまい、巨人を効率よく倒せていないのも犠牲者が多くなってしまっている原因だろう。
多くの人員が死んでいく中で、エレンは一心不乱に岩を運ぶ。
誰もが思っただろう。
―もっとだ!もっと早く!!!!
急いでくれればそれだけ被害も減る。当然の願いだ。
そして、死んでいく仲間たち、その命を糧に進むエレンの姿はたしかに美しかった。
だが、美しさに隠れた世界の影は当然全て上手く行かせはしない。
「…ぐっ!」
掴まれたのは、ハンクだった。
それを目撃したエレンは足を止めようとするが、その気配を察したハンクの反応は残酷だった。
―この世界が残酷なら、ここで死ぬのは俺だろう。
「と、ま、る、なあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
「ハンク!!!!!」
アルミンの上げる叫び声、ハンクの願い。あとは、岩を下ろすだけ。
「う、あああああああああああああああああああああああ!!!!いけえぇぇエレン!!」
響き渡る少年の声に共鳴するかのように、岩は下ろされる。
そうこの日、人類はたしかに巨人に勝利した。
多くの命と引き換えに。
同時に舞い降りた自由の翼は、俺には遠く、眩しく見えた。
「…」
「え?」
「どうした」
さすがの俺も、遭遇しただけで目を見開かれて驚かれるのは心外だ。
人を心配した直後にされるあの顔の5割増しと言ったところか。
「…え?なん、で?」
「…ハンク、何で生きてるの?」
「…斬新な質問だな。それは、俺がどうして生命活動を行っているかという質問か?それとも、ハンクと言う名を持つ俺がどうして生きているのだろうかという質問か?」
「そ、れじゃ、い、み、一緒…だよ…」
ライナーに倣って冗談と言う物を行ってみたが、これは何が楽しいのだろうか。
アルミンのその反応はある程度想像できなくもないが、ミカサまでそのような顔をするとはな。
困ったものだ。対人でも対話能力などミカサ並かそれ以下の俺にはどうすればいいのかよくわからん。
「…泣くな」
「うっ…うっ…」
「ミカサ…お前まで泣くとは思わなかったぞ」
「…泣いてない」
「…そうか」
俺のとった行動は単純明快。
ただ近づいて、頭に手を置いて声をかけた。
頭を撫でると人は落ち着くらしいが、俺の義手で撫でられても堅いだけで意味がなさそうなので置くだけにしておいた。
結論からいえば、俺は生きていた。
掴まれはしたが、駐屯兵団の精鋭たちに助けられた。
どうやら俺は巨人を殺しているうちに、そこそこの人数を助けていたらしくそいつらに助けられたのだ。
―残酷な世界にも、救いはあるのだろうか。
あれば良いのだがな。
「アルミン。今俺に抱きついたらお前を殴り殺す可能性がある。注意しろ」
「えぇ!?」
「…なんで?」
「巨人に掴まれてアバラがかなり軋んでいる。抱きつかれたら痛いだろ」
「…」
「…なぜ残念そうなんだ。…まさかアルミン…お前…?」
「…同性、愛」
「ち、違うよ!!!」
用事があり、急いで書いた部分もあるのでちょっと文章変なところがあると思います。
そういうところがあればどんどん報告してください。
では、誤字脱字および感想待ってます。
でわでわー。