ここはBLゲームの世界、幼馴染はヒロイン   作:日田

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次はもう少し時間かかります。


3話

「あ、やっちまった」

 

 クソッ、オレとした事がやっちまった。予備があると勘違いしてた。買いに行くか。いや、流石に火から目は離せない。仕方ない、葵に頼むか。

 

「おーい、葵」

「んー、どうした? 司」

 

 リビングに行くと仰向けに寝転びながらテレビを見ている葵を発見。えらくダレている。

 

「醤油切れてんの忘れてた。買ってきてくんね? 」

「ふっ、この三浦 葵、買ってきてみせよう! 」

 

 半開きだった目がカと見開かれ跳ね起きで立ち上がる。さっきまでの怠惰な雰囲気が嘘のように消えてやる気で満ち溢れている。

 

「どうした? ただ醤油買いに行くだけだぞ」

「よく聞いた。最近、司が私をあんまり頼ってくれないという事実に気がついた。だから頼ってくれて嬉しい」

 

 どこか気障な笑みを浮かべる葵。そうか、オレは葵を頼ってないのか? よくよく考えるとそうかもしれない。中学の頃は勉強をみてもらっていたが高校に入って短いというのもあるが全然みてもらってない。

 オレとしては構わないが葵は不服だったらしい。

 ……しかし、勉強をみるのとスーパーへのお使いが同列でいいのか。

 

「じゃ、私行ってくるから! 」

「お、おう」

 

 返事をしようかと思ったが、言う間もなく出ていった。葵らしいといえば葵らしいがなーんか引っかかる。

 

「ん? 」

 

 視線を下げて床を見るとチラシが落ちている。おかしいなきちんと片付けたはずだが。

 忘れたか。

 

「これか、」

 

 捨てようと拾い上げると葵がダッシュした理由が分かった。

 

『ジェット戦隊チョコ 大特価! 1つ10円!! 』

 

 ジェット戦隊とはこの3月まで放送していた特撮で()()()()()()()()だ。

 中でも悪名高いのは怪人をジェットエンジンに張り付け焼き殺すという酷いものだ。少し擁護しておくと怪人も人間を同じ方法で殺しているので因果応報だったりする。あとはレッドが人質に取られた友人ごと躊躇いなく怪人を爆殺していた。少なくともPTAとBPOに通じない程度には既存のヒーロー像からかけ離れていた作品だ。

 ぶっちゃけオレもストーリーは面白くなかった。まあ、ぶっ飛んだ行動は楽しかったが、しかし葵は琴線に触れたらしく毎週楽しみに見ていた。

 

 まあ、買うのはいいが晩メシ前に食わないだろうな。食べてたら今度の晩飯はキノコ祭りにしてやる。

 

 やることも無いしとりあえずテレビでも見とくか。

 

────────────────────────────────────────

 

「ふうんふ♪ふふ~♪」

 

 うむ、余は満足じゃ。

 

 広告を見つけたのは家に帰って来てからだったのでもう置いてないと思って気分下がっていたけど一杯余っていた。いや、運がいい。嬉しくてつい一箱(30個入り)買ってしまった。

 

 早く帰らないとな。何個か開けてしまったので思ったより時間を食ってしまっている。まあ、私としてはレアシールが出たからいいが、司は待たせてしまっているので急がないと。

 

 公園を通り抜けようとしていると小さな人影が視界の端に掠める。

 もう6時を回っているのにどうしたのだろうか。当然放っておけないので声を掛ける。

 

「少年、どうしたの? 早く家に帰らないと」

「あ、う〜」

 

 声を掛けると俯いて沈黙してしまう。どうする、男の子といえど幼稚園児か、小学校低学年くらい。見捨てるなんてできない。

 とにかく、どうしたのか聞き出さないと。

 

「どうしたの? お姉ちゃんに教えてくれない? 力になるよ」

「えと、その」

 

 膝をついて視線を合わせる。何か伝えようとしてくれているが緊張か焦っているのか上手く文章にできないみたいだ。

 

「ほら深呼吸、深呼吸。すーはぁー、すーはぁー」

「すーはぁー、すーはぁー」

「落ち着いた? 」

「う、うん」

 

 流石、私だ。いとも簡単に子どもを落ち着かせるとは中々出来ることじゃないわ。もしかして、幼稚園の先生とか私に向いていたりして。

 ああ、違う違う。どうしたか聞き出さないと。

 

「それで、どうしたの? 」

「みーくんがおりれないの」

 

 男の子が大きな木の方を指を差さす。

 

「にゃー」

 

 鈴がついた黒猫が地上3mくらいの所で鳴いていた。なるほど、飼い猫が高い所に登って降りれなくなったのか。

 いや、どうする。流石に3mジャンプなんてできない。枝や節があれば登れるがまっすぐ生えているし枝が殆どない。頑張りすぎですよ公園事務所さん!

 せめて幹がもう少し小さかったらへばりついて登れるのに。

 

 男の子の親御さんを連れてきてもらうのが1番だけど、最初の様子からして降りてくるまでテコでも動かないだろうな。……好きだよ、友のために意地を張る姿。ジェットレッドみたいだし。

 

 ここは司を呼んで肩立ちするか。ケータイ、ケータイ。……しまった! 飛び出してきたから忘れてきた! い、今更何もできないじゃ示しがつかない。

 どうする葵。考えろ葵。今日はあっち向いてホイで最後に1勝できた。運勢がいいに決まっている。

 

 そうだ、何か足場になるものさえあれば。

 

 おっ! 周りを見渡すと丁度いい()を見つけた。やっぱり運がいい。

 

「よし、あそこにいるお兄ちゃんにも力を借りよう」

「うん」

 

 近くのベンチを指さして男の子の手を取って近づく。よし、着いてきてくれている。

 

「すー、すー」

 

 ベンチには顔をバンダナで覆って寝転んでいる青年がいる。顔は見えないがウチの制服を着ているのでまあ大丈夫だろう。流石にホームレスだったり話が通じなさそうな相手には頼もうとしないからな。

 しかし、胸元で手を組んでいるせいで寝息が聞こえないと死んでいるようにみえる。

 

「もしもし、ちょっと良いですか?」

「んー、誰ー? のりー? 」

 

 肩を揺すりながら起こすとのそのそとした動きで起きてくれた。てか、のりって誰だ。

 

「あらら、美人ちゃんじゃん。どうかしたのー? 一目惚れとかかなー? 」

「違いますー! 」

「あ、いた」

 

 調子乗った返答にデコピンで制裁を下す。顔も見えないのに一目惚れっておかしいだろ。

 ちょっと長めな茶髪にヘラヘラした雰囲気。かといって軽薄さ感じさせない。あまりあったことのないタイプの人だ。

 というか、間延びした声だなおっとりしてるのかな? 聞いている人に安心というか落ち着かせる効果がありそうな程だ。

 

「じょーだんだよ。冗談。そのボーヤ関係かな? 」

「察しがいいな。その通り」

 

 木の根元に歩きながら手早く説明をする。

 

「あー、あの子かー」

「みーくん! 」

 

 相も変わらず地上3m付近で鳴いているみーくん。呟かれた声に流石に真剣味が含まれる。

 

「さ、そこにしゃがんでくれ! 」

 

 時間がずいぶん経っているし、急いだ方がいいな。男の子のお母さんも心配だろうし。

 

「あー、うん。それはいいけど」

「どうしたの? 」

 

 なんだろ歯切れが悪いな。身長は175は超えてるし問題ないと思うんだけどなあ。

 

「だって君スカートでしょ? 」

「あ、」

 

 そうだった。今日、思ったより暑かったからスカート履いてたんだった。うん、仕方がない。

 

「私は気にしないからいいよ」

「うーん、俺が気にするんだけどなあー」

「なに? 見るの? 」

 

 そうだとしたらもっとゴツいお兄さんたち呼ばないと。具体的には悲鳴を上げて。

 

「ま、そっちがいいって言うならいいか。下向いておくから乗ってー」

 

 ツッカケを脱いで肩に足を乗せる。

 

「よし、うん。大丈夫。上がって」

「はいは〜い、それはいいけどさ〜」

 

 おや、なんだ問題でもあったのかな?

 

「なんで、そんなに顔を強く挟んでるのかなー? 」

「保険」

 

 信用はしているが、裏切られるのは嫌なので保険だ。これなら顔を動かしてもすぐに分かる。……意外と髪がチクチクしたり頭の形分かるな。

 

「あはは、その方がいいよ。大丈夫、下向いてるから。じゃ、いくよー」

 

 ようやく、肩立ちをして枝に届く。

 

「みーくん。ほら、みーくん。こっちにこーい」

「……」

 

 来ない。まあ、犬じゃないしね。仕方がない。なら次の手段だ。前足ならぎりぎり届く。足を持って無理やり引きずり降ろせばいい。

 

「よし捕まえ、っく」

「にゃ」

「もう一度」

「にゃにゃ」

「……」

「にゃー」

 

 何だこの猫!? 掴もうとしたら足だけ上げて避ける。

 

 こうなったら上がるか。

 

「あれ? 」

 

 当然足に力を入れて踏ん張るなんて出来ない。なのでみーくんのいる枝の根元を手で持つ。そして、懸垂の要領で体を引き上げる。浮いた足で幹を掴み。枝を支点にして半円を描く様に駆け上がる。コンパスみたいな感じかな。

 足が枝に乗る位置に来たら手を離して折り曲げた膝で支える。空いた手でみーくんを捕まえる。

 

 よし、上手いこといった。体柔らかくてよかった。しかし、みーくんのヤツ油断してたな。ふふふ、残念ながらそんじょそこらの人とは違うのだよ。

 

「スゲー」

「うわー」

 

 歓声が心地いい。最近何だか貶されてばっかりだった気がするから殊更いい。やっぱり私って凄いんじゃないだろうか。今ならジャンケン10連勝も余裕な気がする。

 

「にゃー」

「もう、こんな所登るんじゃないぞ」

 

 おとなしく捕まっているみーくんを軽く小突く。鳴き声は心なしか沈んでいる。

 

「えーと、それでどうするのかなー? 」

「まず、みーくん下ろすから」

 

 どうやってと聞かれそうだったので行動で示す。今度は膝を引っ掛けて体を下にする。空中ブランコでよくあるパフォーマンスのやつだ。

 お互いに手を伸ばしていればなんとかならないでもない距離なので問題なく渡す。

 

「みーくん! 」

「にゃー」

「よかったねー」

 

 おい、あのにゃんこ私と違って男の子には腕の中に飛び込んだぞ。

 べ、別に嫉妬なんてしないけどね。本当に嫉妬なんてしないよ。ただちょっと悔しいだけだから。その悔しさを隠すなんて事も造作もありません。そう、2度目の人生を歩んでいる私は15才にして大人の余裕があるから。ちょっと負けず嫌いなだけで、子供と子供の様に張り合うなんてありえない。

 ホント、葵ちゃん近所でも正直者で有名ですから。猫畜生に好かれるのがなんぼのものだっての。

 

「おねえちゃん、なんだかかなしそう」

「触れないほうがいいよー。みんな心に悲しみを持っているんだよ」

 

 ……降りよう、虚しくなってきた。

 

「降りるからちょっと下がってー! 」

 

 よし、ちゃんと2人とも下がったな。枝に鉄棒のようにぶら下がる。ここでこのまま降り──ません。幹を蹴って横っ跳びする。

 

「よっと! 」

 

 もちろんそのままではない体を丸めて最初の膝、次に肘で受ける。そのままだと痛いので横に回転しながら衝撃を分散する。

 う、思ったより分散できてない。ちょっと痛いし、3,4周したせいで気持ち悪い。下が芝生でよかった。ありがとう管理人さん。だが、顔には出さない。カッコがつかないしね。

 

「待たせたな」

 

 決まった。完璧と言ってもいい。あれ? なんだろ歓声がない。

 

「ねえちゃんのパンツ真っ白だ」

 

「あ、」

 

 すっかり忘れてた。なんの為に最初に話していたんだ。チラリと青年の方を見ると苦笑された。流石にこれで怒ることは出来ない。よし! なし! ノーカン! 今のは私の記憶から消えました。なかった事にします。

 

 それにしても今日は暑いな。茹でダコになりそうだ。

 

「おねえちゃん、ついでにおにいちゃんもありとう! 」

「にゃー」

 

「どういたしまして」

「まあ、ボーヤが喜んでくれて嬉しーよ」

 

 ま、まあ一件落着だし、致し方がない犠牲と割り切ろう。

 そうだ! こんな時ぐらいしかしないしアレするか。

 

「んー? 」

 

 ふう、青年は察しが悪いな。男の子はどうだ。お、分かっている目だ。

 

「「イェーイ」」

 

 パチンと小気味よい音が響く。青年も見てようやく合点がいった様子だ。そうだ、ハイタッチだ。良い事したんだし喜ばないとな。

 恐らく今、私はとても良い笑みを浮かべている。当然だ、良い事をして人を笑顔にできたならこれに優る事はない。正に笑顔であるに相応しい出来事だ。

 青年も理解してくれたようで両手を上げて私たちとハイタッチした。

 

「さて、じゃあ帰らないとな。家はどこなの?」

「あ、そうだった。お母さんにおこられる」

「あはは、私も行って一緒に怒られよう。……それに、急に怒ってくれる事もなくなっちゃう事もあるんだよ」

「んー、じゃあ、俺も一緒におこられようかなぁ」

 

 ふふん、そうと決まったら早くこの子の家に行かないとな。

 

「茂ぅぅー!! やっと見つけた。何してたの!? 」

「あ! お母さんだ! 」

 

 いいことだけど、出鼻をくじかれた気分だ。まあ、当たり前といえば当たり前か。もう、6時も回ってるし、こんな小さな年頃だと心配で探す親の方が多いに決まっている。というかこの声どこかで聞いたことのあるような。

 

「こら、茂。勝手に家出って、あら? 三浦さん? 」

「泉のお母さん? 」

 

 oh、この男の子が泉の弟だったとは。そういえば今年新1年生だって泉から聞いてた。泉の家に遊びに行った事は何度もあるがニアミスを繰り返して一度も会っていなかった。こんな風に出会うとは世間は意外と狭いらしい。しかし、最初に名前を聞いていたらよかった。それだったら最初から気がつけてもっと上手いこと運べただろうにな。

 

「あれ?知り合いかなー」

「うん、友だちの家の子だったみたい」

 

「これはどういう事かしら。おしえてくれない、三浦さん」

 

 かいつまんで説明するとなんとも言えなさそうな表情になる。まあ、勝手に出ていったのは悪いが、理由は悪いことじゃないし、私と青年が弁明を求めていることも多少は影響していると嬉しい。

 

「はあ、まあ今回は怒らないでおくわ」

「やった! 」

「調子に乗らない。次勝手に家から出たらお小遣い抜きだからね! ありがとうね、三浦さんに、ええと、」

 

 言いよどむ泉のお母さん。あれ? よく考えると私も名前を知らない。名前も知らない相手と肩立ちするなんて、もしかして、私が世界初? 凄くないかな? 司に自慢してみようかな?

 

「あー、すっかり忘れてました。清水です。清水 空」

「そう、清水君に三浦さん、茂の世話してくれてありがとう。ほら、茂もお礼言いなさい」

「ありがと! おねえちゃんにおにいちゃん! 」

 

 もうさっき言ったんだけどな。まあいいか。お母さんに引かれながら何度か振り返る度に手を振って去っていく茂君を見えなくなるまで見送る。

 よく見たら服も結構汚れているが清々しい気分だ。やっぱりいい事をした後は気分がいい。

 

「じゃあ、俺も帰るかなー」

「そうだな私も急いで帰らないと、あれ? 」

 

 急ぐ? なんで急がなくちゃいけないんだ。

 

『醤油切れてんの忘れてた。買ってきてくんね? 』

 

 あ

 

「あああああああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!! 」

 

 忘れてた!?

 

「い、今何時!? 」

「7時前かな」

 

 家出てからもう一時間以上経ってる!!

 

「私もう帰るからじゃあ!!! 」

 

 怒ってるだろなあ、どうしよう。と、とにかく急がないと!

 

「じゃあねー。ま、学校で会ったらよろしく三浦 葵ちゃん。それと、敬語。俺はいいけど、しないと怒る人もいるから気をつけてね〜」

 

 清水がなにか言ってるが構っている暇はない。全力で自転車を漕ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどねー、確かに面白そうな娘だよ。政親(のりちか)

────────────────────────────────────────

 

「おっせーな。なにしてんだか」

 

 こういう時に限ってスマホも忘れてる。迎えに行くにしても入れ違いは嫌だしなあ。もしかし、男引っ掛けてたりしてな。ねえか。

 

〜♪〜♪

 

 あ? 森野からメールだ。珍しいな。何も書いてない、空メールか? 違うファイルが添付されてる。

 

【葵が見たこともない男と肩立ちしている写真】

 

「んんん?????? 」

 

 葵が帰ってくる30分間あまりの間意味不明な写真に頭を絞ったりしたのはまた別の話。




泉「(見つけたけど面白いことになってるから覗いてよ)」パシャ
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