ここはBLゲームの世界、幼馴染はヒロイン   作:日田

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5話

「あー、部活どうすっかなあ」

 

 4月も最終週。下校や部活で足早に去っていく生徒の中1人いくつかのパンフレットを片手に掲示板の前で頭を掻いていた。

 葵の事で色々あったからすっかりタイミングを逃していたが、ゴールデンウィークまでに入らないと流石に遅れ過ぎなので今週中にはきめないとまずい気がする。が、当初考えていた運動系の部活はパスだ、パス。碌な事にならないのが見に見えている、主に葵関係で。

 特に、テニス部はありえない。

 

 先日、五十嵐たちと映画に行ったときにどうも葵は西園寺に会っていたみたいだがその内容は口を割らせる事は出来なかった。こうなるとテコでも動かないのが葵だ。ただ、悪事は許さないのでそういった心配はないと思う。

 しかし、沈黙は肯定と同意義なのを知らないらしい。口は閉じていても目と身体が雄弁なので隠せていない。

 目を逸して、汗をダラダラ垂らしているヤツの話を信じるほどオレは葵じゃねえ。

 かといって文化部もどうだという感じだ。家庭科は論外として絵心はないし、音楽もしたいとは思わない。

 そこで、目をつけたのが研究会や同好会だ。正規の部活に加えこの学校には多くの研究会、同好会がある。その中で自分に合うものを選ぼうというのがオレの考えだ。公式非公式問わず多くあって自分に合ったものを探しやすい。

 もっとも、部活に比べ予算や許可が少ないので、パンフレットではなく掲示板といった場所に張り出して勧誘する訳だ。なのでオレはこうして正門前の掲示板に来ている。

 なになに、フットサル、バスケット、クリケット、自転車バスケット、アルティメット、クイズ研、洋裁、アニ研、オカ研、仮装同好会、マン研、三味線、雅楽、ツーリング、エトセトラエトセトラ……

 

「多すぎるだろ……」

 

 3枚もある掲示板が完全に埋まってる。それも、生徒が滅茶苦茶に貼ってるせいで探すもの一苦労だ。てか、こんだけ入る程の教室あるのか?

 まあ、いいや。とっとと探さないと日が暮れる。

 

「お? 」

 

 30分ほど見ていると琴線に触れるものが見つかった。

 

「釣り同好会か」

 

 いいんじゃないだろうか。思い返せば、釣り趣味があるのは周囲でオレだけだし、共通の趣味を持った友人なんていなかった。こういった場所で釣り仲間を作って一緒に行くというのもいい気がする。

 そうと決まれば行──

 

「うわ!? 」

「おっと」

 

 活動教室に向かおうと振り返った瞬間後ろにいた誰かとぶつかる。

 

「わりぃ」

「い、いえこちらこそすいませんでした」

 

 こっちはなんともなかったが、ぶつかった奴は尻餅をついてしまったので手を貸す。別に男に手を貸す趣味なんてないが、片手に大切そうにファイルを抱えているので立ちにくそうだからだ。決してホモではない。もしここに思い込みの激しい幼馴染がいたら手は出していない。いや、オレが出す前に世話焼きな奴が出すに決まっている。

 

 手を掴んで立ち上がった男子の様子を確認する。何ともないと思うが一応だ。もし、後で何かあってもめんどうだからだ。

 

「じゃあな」

「はい、ありがとうございました」

 

 なんともない様なので軽く手を振って釣り同好会の部室に向かう。

 

「……まだ何か? 」

 

 おかしいな。別れの挨拶もしてこれでお別れのはずだ。なのに、なんで腕掴まれてるんだ。すっごい嫌な予感がする。

 

「あの、もしかして、まだ部活に入ってなかったりしますか? 」

「ああ、まあ」

「でしたら、僕の入っている映画研究会なんて、如何でしょうか? 」

 

 やっぱりそういうの。別に映画が嫌いと言う訳じゃないが、研究会に入るほど好きじゃない。観たいものがあったり、誘われたら行く程度のもの。見た感じ、悪い奴じゃなさそうだが、それはそれ、これはこれ。悪いが断らせてもらおう。

 

「悪いが、うっ!? 」

 

 振り返ってみるとキラキラと輝く目と目が合う。溢れんばかりの期待が滲み出て輝いている。辛い、滅茶苦茶断り辛い。いや、ダメだ。きちんと断ろう。中途半端な考えで入ったら後々面倒くさい事になるに決まっている。

 

「やっぱり、ダメですよね。気にしないで下さい。2人しかいなくて1年なんて僕しかいなくて追っちゃってました。最初に入ろうとした部活も人数いなくて、入って2日で廃部になっちゃってこのままじゃいけないと思ってて。あっ、すいません。こんな事関係ないですよね。迷惑ですよね」

「…………」

 

─────────────────────────────────────────

 

「ありがとうございます! 見学ていっても興味を持ってくれたなんて嬉しいです」

「いや、いいって、この後に予定なんてなかったし家帰るだけだったからな。ハハ、ハハハハ」

 

 断れるかよ! そんな話をされたら見捨てれるかっての! いや、ただの見学だけだ。ただ、見学するだけ。終わったらもう少し考えるとか言って逃げればいいさ。

 

「そうだ。僕、5組の鈴掛 聖児です」

「オレは1組正村 司だ」

 

 なんでもない挨拶だが罪悪感が凄い。ニコニコと純粋に喜んでくれている姿を見ると今考えている事をなしにしようかと思ってしまう。

 今更だがオレは純粋な性格をしている相手が苦手だ。理由は云わずがな。

 

「ここです。多目的室です」

「へえ、なんか意外だな」

 

 研究会や同好会は旧校舎とか放課後の空き教室を利用しているものだと思っていたがどうも映画研究会は違うらしい。

 

「はい、なんでも結構昔からあって先生たちからの顔覚えも良かったみたいです、去年までは」

 

 感心しようとしたけど今物凄く不穏なワードが聴こえた。

 

「先輩! 新しい部員を見つけました! 」

 

 聞こうとしたオレの言葉が喉を出る前に扉が開かれる。てか、今物凄く聞き捨てらならない事を言われた気がする。てか、コイツ純粋なんじゃなくて強かなんじゃないか? とにかく、否定しないと。

 

「おい、ちょっ──」

「んー、本当かい? 」

 

 が、なんとも間延びした声に遮られる。中にいたのはバンダナで髪を抑えた学生だ。緑色の校章からして2年生だろう。多目的室の椅子を揺らしながら何かのプリントで作った紙飛行機を飛ばそうとしている所のようだ。

 ……どっかで見たことありそうな気がするが全然思い出せない。

 

「あのどっかで会った事ありますかね? オレら」

「んー、ないと思うけどなあ。けど、同じ学校なら廊下ですれ違うぐらいはあるんじゃないのかなー」

「まあ、そうッスね」

 

 納得のいく答えだがなんだろう。こう喉に刺さった小骨みたいな違和感を感じる。

 

「まあ、座ってよ。軽く説明くらいするよー」

 

 ここで聞いたら入る流れになりそうだが気になる。絶対にどこかで見た事がある。

 

「ほら、先輩もこう言ってますし、ささ」

 

 鈴掛が椅子を引いて退路を塞ぐ。……聞くだけだ。聞いてまたの機会で、にすればいい。

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

 説明された内容はとてもまともだった。普段は映画を見つつ内容や映像技術について話し合う。また学祭では自主制作した短編を上映するか、見た映画の所感やあらすじを纏めた文集を配布する。また、長期休暇にはロケ地に旅行に行くことも。本当にすごく健全でいい活動だと思うが、

 

「でも映画取るほどの人数いないっすよね」

 

「……」

「うんまあ、去年まではいたんだけどねー」

 

 閉口する鈴掛だが、先輩は変わった様子はない。さっきと同じ様な調子だ。

 

「卒業した前の3年生だけど20人いたんだ。そしたらさー誰もまともに勧誘しなくてね」

「で、こうなってしまったって事か」

 

 在り来りではあるが順当な理由だ。きっと危機感が薄かったんだろう。自分たちの代は大丈夫だったからなんとかなる。そういった甘い考えが今現在の状況を作り出してしまったと言った所か。

 

「はは、正にその通り」

「先輩、なんでそんな余裕なんですか……」

 

 ついでにこの先輩のユルイ性格も問題ありそうだ。鈴掛が焦っていたのも分かるってもんだ。

 

「んー、これでも悩んだんだよー、寝ちゃったけど。聖児には悪いけど人が来ないならなくなってもいいって思ってたし」

「勘弁して下さい。入った瞬間廃部はもう嫌ですよ」

「はは、分かってるよー。だからこうしてきちんと説明してるじゃないか」

 

「仲いいっすね」

 

「こんな先輩でも慕ってくれてる後輩は嬉しいもんだよ。それで、どうする? 」

 

 断ればきっとこの先輩は少し悲しそうにするが同じ様な調子でそれも良しとするだろう。……少し逸らすとキラキラと期待に輝かせる鈴掛の目。

 

「はあ、分かったよ。入る」

「やったー! 良かったですね! 先輩」

「おやー、有り難いよ」

 

 ……まあ、いいか。面白そうだし、このまま見棄てるのも後味が悪い。釣りは1人でやればいい。時偶付いてくる葵もいるしな。

 

「はいじゃあ、これ入部届け。公認だから書いてねー」

 

 渡された入部届けを書いていると、鈴掛に聞こえない程度の声で囁かれる。

 

「いいのかい? 他に入りたい部活あったんじゃないのかな? 」

「……何でわかるんスか? 」

「んー、最初に来た時、顔に冷やかしでって書いてたよ」

 

 おかしいな。嘘ついてもそんなにバレるような性格じゃない。チラリと目を見るとさっきまでののほほんとしたものでなく深くまで覗き込まれる様な輝きを宿している。ただ、それは悪意あるものではなく好奇心半分善意半分といった感じだ。きっと鈴掛にオレの様に捕まったヤツも居たんだろう。

 

「そっすか。まあ、有ったのは事実ですけど面白って思ったのは事実なんで気にしなくていいっすよ」

「いい性分だけど、大変な性格だ」

「まあ、これも性分みたいなもんで。これくらい出来ないと背負えないヤツいますし」

「んー、その子もいい子みたいだね」

 

 なんで、葵の性格まで分かるんだよ。見た目から想像できないくらいには人間観察が得意みたいだ。これは出し抜いたりする事になったら大変そうだ。

 

「はい、書き終えましたよ」

「確かに」

「良かった! 家庭科部みたいにならなそうです! 」

 

「え゛!!?? 」

 

 聞き間違えだろうか。いや、聞き間違えだそうに違いない。

 

「ん? どうかしましたか? 」

「いい、今なんて」

「へ、ああ。言ってませんでしたっけ? 僕、家庭科部に入るつもりだったんですけど僕以外に入る人いなかったんでなくなったんです。だからこうして、映研に入ったんです」

 

 おいおい! 嘘だろ!? なんでそんなバカな! 

 鈴掛の顔を見る。サラッとした金髪に泣き黒子。優しげな表情。イケメンというというより庇護欲を掻き立てるような整ったか顔。

 油断した。家庭科部部に入らなかったら大丈夫だと思ってたがこんなエフェクトが存在するとはッ!

 

「んー、どうかしたのかな? あー、俺は清水 空よろしねー」

「あ、いや、その」

 

 やばいどうする。なんかカッコつけて入るって言っちまってる、あ? 清水、清水

 

『そうなんだ。泉の弟を助ける時に清水が足場に立ってくれたんだ』

『ああそう。そのお菓子の空き袋は? 』

『これは、その』

『明日はきのこ祭りだ』

 

 思い出した! あの時森野から送られてきた写真に居た男だ! 後ろ姿だったから全く結びつかなかったのか。それに葵なら普通にある事だからスルーしてたが、間近で見たら結構なイケメンじゃねえか!

 

 クソッ!逃げないと、どうするどうする!

 

 

─────────────────────────────────────────

 

「むう、司でないなあ。今日は一緒に帰ろうって言ったのに」

 

 1人で帰るのも嫌だしどうしよう。取り敢えず探すかな。それに謝りたい事もある。最近の私は無理に司をホモにしてた気がする。ここはゲームだけどゲームじゃない。私もいるんだし司の趣向が一緒とは限らない。きちんと謝ろう。

 

「離せ! 用事ができたんだ!? 」

 

 お、向こうから司の声だ。なんだ思ったよりすぐ近くだな。それにしても騒がしいな。

 

「用事ってなんですか!? お願いします! お願いします! 入りましょうよー! さっきまでの乗り気だったじゃないですか!? 」

 

「司ーこんな所に電話にも出ってって」

 

「煩い!オレは、ここ、か、ら」

「あれ? 」

 

 角を曲った先に司は居た。ただ男子生徒と抱き合いながら。それもアニメでメイン攻略対象としていてたはずの鈴掛とだ。

 

「えーと、なんか忙しそうだから、私先に帰るね」

 

 

 

 

「ち、違う! おい、葵!?お前絶対に勘違いしてるからな!? 」

「何が違うんですか!? 入りましょうよー! 」

「分かった! 入るから離せ!? 早く誤解とかないとッ」

「本当ですか!でも、離しませんよー!離したら逃げそうですから」

「バカッ! そんなこと言ってる場合じゃねえって! 葵、まて葵!?」

 

「んー、なんだろうなあー。この状況」

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