CCさくらの兄に転生 ~妹は誰にもわたさない~(ネタです) 作:GGアライグマ
カードキャプターの初仕事を終えたさくらは、魔力を消費したのが堪えたらしく、泥のように眠った。明日の朝食はさくらの当番だが、たぶん起きられないので、俺か兄ちゃん(昔は内心年下扱いしていたが、最近はかっこいい大人の風格が出てきたからこの呼び方にも違和感がない)が作ることになるだろう。
翌日、予想通りさくらは起きられず、桃矢も事情を理解していたので、ジャンケンに負けた俺が朝食を作った。お詫びとかは必要ないが、どうしてもと言うならキス一回でチャラにしてもいいかな。まあそんなことを言ったら引かれるから言わないが。
「おい。あんまり甘やかすなよ。調子に乗るからな」
怖っ。
黙って朝食を食べていると思ったら、突然こういう言い方してくるからな。しかもでっかいし、目付き悪いし、ケンカ強いし。魔力もぶつけてくるし。
ビクってなっちゃうよ。
「はい……」
畏まる俺。さくらとのムフフな妄想でいい気分だったのも一瞬でなくなった。
まあ、桃矢の狙いの1つはそれだろうけど。開けっ広げに言うと、俺がさくらを襲わないように釘指してるんだろうね。信用ないなあ俺。10年間紳士だった実績があるのに。キスやハグはしまくったけどね。赤ちゃんの頃に。でもその頃は父さんも母さんもキスしてたぞ。桃矢は恥ずかしがって一回しかやらなかったけどな。恨むならその頃の自分を恨め!
学校の時間はあまりすることがない。勉強は余裕だし、同級生とは話が合わないし。だから授業中は父さんに借りた大学の本を読み、休み時間はぶらぶらしている。たまにパフォーマンスをすることもある。鉄棒で大車輪とか。運動場で3回転半ひねりとか。魔力があるからできるんだよねえ。この学校の女子小学生はレベルが高いから、ちやほやされるとそこそこうれしい。さくらはあんまり誉めてくれないけどね。物心つく前からずっと見せつけてきたから、感動が薄れたらしい。
昼休みはさくらと共に知世の愛妻弁当をいただいている。最高級の食材でも構わず出てくる素晴らしさ。且つ、味も丁寧に付けられていてすごく美味しい。知世は家柄、種々の専属講師がいるのだろうが、それにしたって多才ですごい。ひょっとしたら俺以上に有能だ。思考も歳の割に大人っぽくて話しやすい。しかもさくら並にかわいいからな。将来結婚するならこの子だろう。逆玉ってやつよ。
その知世は、さくらに見てもらいたいものがあると言って、さくらを家に呼んだ。「よければお兄さんもどうですか?」と言われたので俺も着いていくことに。
なっがい高級車に乗せられて、それはそれは大きな、まさにお屋敷という西洋風の家に到着する。ピシッと並んだ怪しげな黒服サングラスに迎えられる。
そのまま映画を見る部屋に連れていかれ、大画面でさくらの勇姿が映される。昨夜、フライを手に入れた帰り道だ。さくらは闇の杖に跨がって空を飛んでいる。しかしパジャマ姿で、バランスが安定せず危なっかしい。うわっ、やばっ。ケロッピが助けないと落ちたんじゃないか? こんなんで大丈夫なのか? まあ慣れれば、それに封印で疲れてなければ、大分ましになるかもしれないが。
「ほえええ!? どうして!? こんな恥ずかしいところ見られちゃったよおー!」
「恥ずかしくなんかありません! 素敵ですわー! さくらちゃん」
「どうしよう。ケロちゃん。お兄ちゃん」
「まあそういうこともあるだろう」
「ええーっ! どうしてそんなに余裕なの!」
「まあ、あれだ。知世は信用できるからな」
なんか上手く口が回ったな。
「まあ、お兄さんったらお上手」
口に手なんて当てて小さく笑う知世。どきりとしちゃうよな。そういうことされると。この子の前だと鼻下(正確にはそこも鼻だから唇の上と言うべきかもしれない)を擦るのがクセになっちゃうぜ。
「ところで、ケロちゃんさん?」
知世はさくらの発言を聞き逃さなかったらしい。人形のふりをしているケロッピを見ながら言った。
ケロッピは全く動かないまま器用に汗をかいていく。が、突然クワと眉間を寄せた。魔法のことがバレたのだから隠すよりも言うことがある、とでも思ったのだろう。
「だーっ! もうしゃあないわい! 黙ってもらうよう頼みィ!」
「まあ! お人形さんがしゃべりましたわ!」
「人形ちゃう! 封印の獣ケルベロスや!」
「まあ! ケロちゃんさん! お偉いのですわね!」
すごいなこの娘。全くペースを乱してない。
「だからケロちゃんさんやない! ケルベロスや!」
「はい。ケロちゃんさん」
「だアホォー!」
活きがいいな。ケロッピ。
怒鳴るケロッピに、微笑む知世。そしてほえほえほえ、と萎びるさくら。
いい絵だ。和む。
しばらくして、復活したさくらに知世が話しかけた。
「さくらちゃん。秘密にするのは構いませんわ。でも1つ条件があると言いますか、お願いがあるのですが」
「お願い? 別にいいけど」
「ありがとうございます! では!」
にっこりと笑い、パチンと指を鳴らす知世。
間髪入れず黒服がぞろぞろやってきて、俺は目隠しされた。服の寸法を計るのだろう。
ほえー、と慌てるさくらに、知世は告げた。街の平和を守る魔法少女がパジャマではしまりませんわ。どうぞ私が一から製作したさくらちゃん専用のコスチュームを着て下さい。それを着て街の平和を守るさくらちゃんの姿を撮らせてください。と。
「ダメだよ知世ちゃん! 危険だよ!」
「承知していますわ。無茶はしません」
あ、知世が目を細め続ける状態になった。これ譲らないってことなんだよなぁ。知世は基本的に相手を立てるけど、押し通すときは強いよなあ。押しに弱いさくらでは勝てるはずもなし。
「お兄ちゃんもなんか言ってよ!」
「えっ」
あ、ここで俺に振るんだ。ふーん。まあ適当に言っとくか。
「まあ、様子を見ながらでいいんじゃないか? 本人がこれだけやりたそうなんだから」
「ええっ! 本当に危ないんだよ! 知ってるでしょお!?」
「うーん」
でも、クロウ・リードの予知では安全だったんだろう? アニメでも無事だったし。しかし、俺というイレギュラーをクロウが予測できたかは分からんから、やっぱ危険なのかなあ。
チラと知世を見てみる。
相変わらず目を細めたままだ。ただし困ったように眉を顰めている。本当は困っていると言うより、図々しさを紛らわしせるためにやっているのかもしれないけどね。でも、結局譲る気はないんだろうなあ。ま、それでいいと思うよ。いざという時は俺が助ければいいだけだし。
「ほらお兄ちゃん。言ってあげて」
「そうだな。よし。知世。お前の身は俺が守る。安心して撮りに来い!」
「ええーっ! 違うでしょーっ!」
「まあ! お兄さん! ありがとうございます!」
さくらには盛大に突っ込まれたが、知世は表情をパッと明るくして近づいてきた。
多少気恥ずかしくて、また鼻の下を擦っていると、不意に、知世が俺のもう片方の手を丸い両手でぎゅっと握った。
「あっ」
「お願いしますね。梅雄さん」
至近距離でにっこり微笑む知世。
「う、うん……」
あかん。近い。せっかくかわいい子の笑顔で眼福なのに、恥ずかしくて目をそらしそう。さくらならもう慣れたんだがなあ。
「ってお兄ちゃん! さくらを守ってくれるんじゃなかったのお!」
あっ、そうか。なるほど。そういう問題もあるなあ。
「あんさん、そらさくらがかわいそうやでぇ。まあさくらの護衛はワイに任してくれてもええけどな」
「ケロちゃんだけじゃ嫌だよ!」
「おい! ワイは封印の獣やで!」
がるるるる、と歯を見せ合う一人と一匹。
うん。まあ、本来ケルベロスだけで十分だったからな。俺は二足のわらじで問題ないだろう。
「さくら、安心しろ。お前も俺が守る。知世も俺が守る。これで問題なし!」
「それって一番ダメなやつでしょお!」
「守る、背負うという表現で言うなら、女子小学生くらい片手で1人ずつ持てる。両手に華でいいじゃないか。さくらだけに」
「何上手いこと言おうとしてんねん!」
その後、夜の学校に表れたシャドウを知世と協力して捕獲し、知世は協力者兼撮影者として認められました。