モンハン世界で料理屋を開いてみた 作:想い月
俺は転生者である。こいつは、何を言ってるんだ? と思う人が大半だろう。俺も転生したばっかりの頃は何が起きたか理解するのに時間がかかった。
数年が経ち俺は自分が転生した世界がわかった。そう、その世界は………モンスターハンターである。
それを知った俺は、喜んだ。男の子なら一度は夢見るだろう。画面の向こうに存在するかっこいいモンスターに会ってみたい、アイルーが調理する豪快で美味しそうな料理を食べてみたいと。そして、何よりもハンターになりたいと!
結論から言うと俺はハンターにはなれなかった。この世界がモンスターハンターだとわかった俺は色々な努力をした。体を鍛えたり、調合の仕方も、ハンターの養成所にも行ったりした。しかし、俺の体はハンターに適さなかった。確かに鍛えた分だけきちんと体力や力は付いた。けれど、ハンター達とは比べ物にならない位に俺の体は弱い。俺の前世の記憶にあるアスリート位の身体能力は身に付けたが、それ止まりである。その位で務まるほどハンターという職業は甘くはなかった。現に教官から、お前ハンターのセンスないからやめとけや(意訳)と言われる程であった。
それから二年後、二十歳になった俺は料理店を開く事にした。ハンターになれないなら、ハンターに関われるお仕事に就けば良いじゃないという考えだった。少し、町外れに作られた俺の店。名前は【狩人】。メニューは本日のオススメのみ。まぁ、たまにハンターの方達が食材を持って来て、これで旨い飯作ってくれ! と言ってきたりするが、それはそれで楽しいので気に入っている。
俺の店はそこそこ繁盛していて、常連のお客さんも出来ていた。その日は、常連のハンターさんが珍しく酒に酔っていたらしく上機嫌に
「ハンターになったからにはよぉ、何かでっけぇーことしてーよなぁ! 例えば、ミラルーツとか討伐しちゃったりぃ?」
ガハハ! と笑った後に店主はどう思う? と聞かれて思わず苦笑いを溢してしまった。この世界ではミラルーツはお伽場の存在であり、実在はしていないと考えられている。その存在が実際にいるとわかっている俺からしたら何とも答えにくい質問だった。当たり障りの無いように、お話してみたいですね、出来れば他の古龍の方達とも、と答えたら、目を丸くし笑いながら流石店主だなと言われた。
今思えばこれがフラグだったのかもしれない。その日も何時も通りに開店して、お客さんと談笑して、そろそろ店を閉めようかと外に暖簾をしまいに行ったら彼女はそこにいた。髪は汚れを知らない純白の白色で肩の位置程の長さで、瞳は此方の事を全て見透すかの様な深い紅色、身長は女性にしては高めの170位でスレンダーな体つき。人とは思えない程の何かを感じさせられた。一言でまとめれば、めっちゃ美人(とてつもないオーラ付き)が店の前に立っていた。そして、こう言ったのだ
「お店はまだやっていますか?」
「いやぁ、あの時は焦ったね、まじで」
「いきなり、どうなされたんですか?」
思わず声に出してしまっていたのか、すっかり常連さんになった彼女を見る。俺が見ていると彼女は此方をみて首を傾げていた。
「なぁに、君と初めて会った時の事を思い出してね」
「ふふ、あの時の店主さんは随分と呆然としていましたね」
口を大きくあけて暫く固まってましたもんね。彼女も当時の事を思い出したのだろう。クスクスと笑っている。
「忘れてくれって頼んだんだけどなぁ」
「無理ですね。諦めて下さい」
そう言いきった彼女に肩をガックリと落とす。その様子を見て再び笑う彼女。笑っている彼女を見てこれは絶対に忘れないなと諦める。そうこうしている内に完成した料理を彼女の前に差し出す
「はい、お待ちどう。本日のオススメのサシミウオのムニエルです」
「今日も美味しそうですね」
それではと言いながら一口サイズに切ったムニエルを頬張る。食べたら美味しいと小さく囁き夢中で残りを食べていく。その様子を見ているだけで自分も自然と笑顔になる。
「あまり此方をみないで下さい」
「おっと、失礼」
少し彼女の事を見すぎた様だ。恥ずかしいのか少し頬が赤くなっていた。これ以上は見てられないなと思い俺は厨房に引っ込んだ。暫くすると、カチャカチャとしていた音が無くなったので外に出ていく。
「お粗末様でしたっと」
「本日の料理もとても美味しかったです」
「そりゃあ良かった」
これお代の変わりにどうぞ、と渡された物をみて頬がつりかける。毎度ありと言ったら、彼女は店の外に出るために扉に手を掛ける。
「またのご来店をお待ちしてます」
彼女は一度振り返り笑顔を此方に見せてから店から出ていった。
主人公:モンハン世界に転生したけどハンターとの身体能力の差を感じて挫折しちゃってお店開いた人、彼女の正体に気付いてるけど気付きたくなかった。お代変わりの物をどうするか検討中
彼女(ミラルーツ):実在している事を知っている主人公の事を見極めるためにきたのにガッツリ胃袋捕まえられてしまった龍。自分の正体に気付いているのに接し方が他の人と変わらない主人公を好ましく思っている