ほんのちょっぴりシリアス。
その日の晩俺はなかなか寝付けなかった。
頭の中がなんかずっと考え事をしてるのだ。
考えてる事は頼光さんのこと。
夕方の鍛錬から気になって寄り道したときに聞いてしまったあのことで俺はいっぱいいっぱいになっていた。
従者の人たちが話してた内容。あれって本当のことなのかな?頼光さんが人じゃなくって神様の血を引いてるっていう話。
てか、神様っているの?ツナ気になります。
真面目にやります。
いやまぁ、悪霊とか鬼とかの物の怪の類がいるぐらいだからなぁ。神様ぐらいいるかも、ワンチャン。
夕飯の時も頼光さんとはそのことでどこかよそよそしくなったりして、なんか初めて会ったお見合いの二人みたいな感じになった。・・・あ、あのご趣味は?
いや、ごめん真面目にやる。
これじゃあ頼光さんの事言えないなぁ。
避けられてる、が避けてるに変わるかも。
嫌だなぁ、なんかそれは。
ただでさえ頼光さんに避けられてる状況が何ヶ月も続いて参ってるのに、その上俺から避けるのは二重苦だ。
しかも確証かどうかも分からんことでそうなるのはごめん被る。
あ、でも満仲様との不仲みたいな話は詳しく知りたい。
一年前まで寺に預けられてたとか、今になってかなりぶっ込んだキーワードだって気づいた。
正直、頼光さんが人間かどうかなんて関係ないんだ。
だって頼光さんは頼光さんなんだから。
月並みの言葉で悪いけど、それ以外に言えない。
頼光さんと関わって半年が経ったけど、俺の印象は初めから今になっても、タレ目巨乳のサラサラロング美人お姉さんだ。
・・・うっわ最低だな俺。
と、とにかく自分のことでダメージ受けててもしゃぁない。
頼光さんとのことをどうするか考えよう。このままじゃ絶対にダメだ。ダメダメだ。
・・・とりあえず、鍛錬のあと水飲むの諦めたからといって夕飯のときにがぶ飲みした水が今になって効いてきたのでトイレ行ってきます。
月が綺麗ですね。
夏目漱石のエピソードで有名な愛の告白の言葉。
これって返し方に困るよねぇ。
意味とか分かんなかったら、あっそっすね。みたいなことになりかねない。
だから皆はしっかりと愛してるよってストレートに告白しようね。家族になろうよ!でも可。
なんて、トイレから帰るときにみた満月でそんなこと考える俺まじきもティ。あ、これキモイのほうだから。キモチいいの方じゃないから。自分に酔ってなんかいませんから。
てか告白とかしたことないんですけどね。
・・・はぁ、こんなくだらないこと考えるよりさっさと部屋に戻って寝よ。
あぁ、でも今戻ってもまた考え事しそうだからちょっと散歩してからにしよう。程よく疲れて寝付けが良くなるかもだし。
そうと決まるや否や、グルッと屋敷を回ってみよう。
なんだかんだ言って、半年ここに住んでるけど未だにこの屋敷の全容が分からないんだよね。広すぎて。
良い機会だし、ここのことに詳しくなろう。
前に案内とかされたけど、全部回りきれなかったしな。
そう思って、廊下の角を曲がった先で出会ってしまった。
・・・・・・頼光さんに。
しかも泣いてる頼光さんに。
オフッ、どないしましょう。
今、頼光さんと出会ってもまた夕飯のときみたいに気まずい感じになっちゃう。
あぁでも頼光さん泣いてるし、ほっとけない・・・。
うーん・・・。ん?、てか頼光さんこっちに気づいてない?
・・・・・・よし、撤退だ。戦略的撤退だ。
ば、ばか。逃げじゃないし。戦略的撤退だから!
よし右向けー右。ピッピっ。
ガッ。
あっ、足ぶつけちゃった。
「だ、誰ですか!?」
や、やっちまった。
その後俺は頼光さんの隣に拳2個分ほど空けて座った。
気づかれたのに逃げようとするほど人間腐ってはいないつもりだ。さっきまで逃げようとしていたやつの言うことじゃねぇけどな。あっ、違う撤退だった。
というか気まずい!気まずいよ!
さっきからお互いに黙りあっちゃってるし。
かれこれ10分は経ってるし。
んー、俺から話しかけた方がいいのか?
なんで泣いてたんですか?とか。それともここで聞くか、なんで俺のこと避けてたんですかって。
でもなぁ、そんなん聞ける雰囲気じゃないんやけど。
・・・ヘタレって言ったやつツナくん怒らないから出てきなさい。
「・・・ツナは何も聞かないのですか?」
「・・・へっ?」
あっ、やべ。急に話しかけられたから変な声出ちゃった。修正しないと。
「聞いてもいいのでしょうか?頼光さんにとっては聞かれたくないことなのでは・・・」
「・・・ここまで来たのです、理由くらいなら話します。いえ、話さなければならないのです。」
話さなければならない、か。これは茶化していい雰囲気じゃないな。
だったら。
「・・・何故こんな所で泣いてたんですか?」
俺がそう聞くと頼光さんはポツポツと話し始める。
内容はこうだった。
頼光さんは実の父親である源満仲様に疎まれていて、それが原因で生まれた時から寺で過ごしていた。
だがある日父から遣いが送られてきて、初の顔合わせをしたそう。
だが、初めて顔を合わせたときに満仲様からは視界に嫌なものでもいれたかのように見られたらしい。
そこで頼光さんは気づいてしまった。
自分は実の父親から愛されていない、と。
だから自分は寺に隔離されて、今も顔を合わせているにも関わらず、自分のことを見てくれていないのだと。
そういったことがあったため、それを忘れようと夜深くに、ときたまこの縁側に座って月を見るらしい。
そして無性に泣きたくなり、泣くのだそうだ。
・・・1人で。
そんな場面に俺が出くわしたらしい。
「・・・満仲様から疎まれてる理由とはなんなのでしょうか。」
俺は頼光さんから話を聞いてどうしても気になったことを尋ねた。・・・尋ねてしまった。
「・・・っ。そ、それは。」
「もしかして、頼光さんが人間じゃないことに関係しているのですか?」
「!?ど、どこでそれを!?」
ここまで聞いてなんとなく分かった。
従者の人たちの言ってたことは本当だったんだ。
それで、それが原因で満仲様から疎まれてるのも分かった。
・・・頼光さんは実の父親から愛されていないと考えてる。俺にはそれが本当かどうか分からない。
だったら言わなきゃ。
俺が思ってることを頼光さんに言わなきゃ。
「たまたま従者の人たちがそういった会話してるのを聞いてしまって。頼光さんが神様の血を引いてると。」
「そ、そうですか・・・」
頼光さんはまた泣きそうな顔をした。
まるで知られたくなかったことを知られたみたいに。
「でも、僕には関係なんてありません」
伝えるんだ。
「・・・え?」
頼光さんはどこか驚いた顔をした。驚いた顔でも可愛い。
でも今は無視。
「それより頼光さんに聞きたいことあります。」
「え、あ、はい。」
気の抜けた返事が返ってくる。
「頼光さん、ここ数ヶ月僕のことを避けてましたよね。その理由を聞かせてください」
「さ、避けてたって・・・、別に私にはそんなつもりは・・・」
「いえ、避けてました。その理由もなんとなくですが分かりました。神様の血を引いてるのが関係してるんですよね?」
「・・・・・・」
そっと、頼光さんは顔を逸らした。
ビンゴか。
「話してくれませんか?頼光さんから僕に聞かせてください」
「・・・ですが」
「それとも話したくないですか?・・・僕のことは信用できませんか?信頼できませんか?」
俺は頼光さんの臣下だ。
渡辺綱なんだ。
「僕は頼光さんの臣下です。頼光さんのことを絶対に裏切らないし、嫌いになんてならない。だから頼光さんが神様の血を引いていようが関係なんてないんです。」
「頼光さんは頼光さんなんですから」
「っ!わ、私は・・・・・・私は。」
・・・またまた泣きそうにしている頼光さん。
ちゃんと伝わっただろうか。
俺の思ってること。
頼光さんが父親から疎まれているというのなら、実の家族から愛されてないというのなら。
「頼光さん」
俺がなればいいんだ。
「僕と家族になりましょう」
父と娘の関係は無理だけど。
せめて姉と弟のような感じになろう。
・・・・・・あれ?なんか告白みたいになった?
無理やり取ってつけたような文章。
でも書いてて結構楽しいんだよな。