蒼樹先生に別の作画をつけたかっただけの小説 作:おもち
プロットもなにもないので、かなりおかしい所もあるかもしれません。暇な方はアドバイスなどいただけると嬉しいです。
小さい頃から僕は、絵を描くことが好きだった。
きっかけは両親がそこそこ有名な画家であったことが関係している。
物心ついた時から僕の回りには両親が描いた絵があり、幼いながらに感銘を受けた僕は両親の道具を借り、絵を描き始めた。
幼い頃というのは熱中すると止まらなくなってしまうもので、近所を歩きまわって描きたいと思ったものを描くという、ただそれだけのことを僕は繰り返した。
時にはお日さまが沈むまで熱中してしまい、両親に怒られることもあったが、そんなことは気にせずに絵を描き続けた。
ずっと絵を描き続けていた僕に、普通の親なら、もっと別の遊びもしなさいとか、体を動かせとか言ってきたかもしれないが、何だかんだ言いながら両親も画家だ。
息子が絵に興味をもってくれたことが嬉しかったのであろう。遅く帰ってくることを怒りはしたが、絵を描くこと自体を止めることはなかった。
そんなこんなで絵を描き続けた僕が高校生となった時。
普通の人が友人関係や習い事などに使っている時間を、絵に費やしてきた僕には、友達というものが一人もいなかった。
別にそれ自体を悲しむことはない。
確かに、周りの人達が放課後になり遊びに出かけているのを見ると、羨ましいという気持ちが無いわけではなかったが、それよりも僕にとっては絵を描くということのほうが大事だった。
世の中には優先順位というものがあるのだ。だから、僕は悪くない。
そんな、ある意味開きなおりのようなことを考えている残念な僕だが、絵の世界ではそこそこ有名になっていた。
それは、単純に僕が絵の賞をたくさんとっていたことが原因だ。
対人関係を犠牲にして得た、僕の絵の技術はそこそこ高かったのだ。
それにくわえて画家の息子である僕は両親に直接教えを受けられるわけだし、遺伝によってそこそこ才能もあるらしく、同年代と比べればかなり上手いといえるレベルまできていた。
将来は画家になる。
その時の僕は当たり前のようにそう考えていたし、周りもそう思っていたと思う。
しかし、人の夢なんてものは、ふとしたタイミングで変わってしまうもので……結果的に言えば、僕は画家志望ではなくなった。
ずっと絵しか描いてこなかった僕が、他にしたいこと……それは漫画だ。
きっかけを言うとそれは、高3の時の進路相談の日の帰りによったコンビニ。
そこの雑誌コーナーで僕はふと週刊少年ジャンプという雑誌が目に入った。
普段は立ち読みなどしない僕だが、その日はどんな気分だったのか、気まぐれにジャンプを手に取り、ピラリとページを開いた。
衝撃だった。今まで絵を描くことに夢中になってきた僕は、意外なことに漫画を読んだことがなかった。
今時、高校生にもなって漫画読んだこと無いとか、そんなことあるのかよと思うかも知れないが、それほどまでに僕は絵を描くことだけに夢中になっていたのだ。
ともかく、そんな僕にとって初めての漫画は衝撃的だった。
絵が生きている。そんな感想をもったのを覚えている。
ただの紙切れであるはずのものの中で動いているキャラ達に僕は夢中になった。
読み終わり、棚に雑誌を戻した僕はダッシュで学校に戻った。
職員室の扉を開け、自分の担任がまだ帰っていなかったことを確認すると、僕は担任の元まで向かって行き、
「僕、漫画家になります! では!」
ただそれだけを伝えて僕は職員室を出た。
当然、いきなりそんなことを言われた担任は後日、必死に説得をしてきたが、僕の決意は固かった。
頑なな態度に担任はあきらめたのか、それ以降は何かを言ってくることはなかった。
担任に対してはそれで終わったが、肝心なのは両親の説得だ。
両親はきっと、僕が画家になることを期待しているはず……そんな期待を裏切ってしまうことに、強い罪悪感を感じるが僕はもう決めたのだ。
夕方、家族で食事をとっている時、僕は箸を置き、一息おいて話をきりだした。
僕が画家ではなく、漫画家になりたいということ。そしてそれに対する熱意を余すことなく両親に伝えた。
きっと反対されると思っていた僕に、両親から返ってきた言葉は、意外なことに承認の言葉だった。
そうか……頑張れよと短く言う父親に肩透かしをくらった気分になりながら、僕は短く感謝の言葉を返した。
その時の両親の心境は未だに想像することはできないが、きっとそこには言葉以上の思いがつまっているであろうことは容易に想像できた。
こうして、両親の承諾は得られた僕だが、現時点でまだ漫画については、
何一つ進んでいない。とりあえず、何かを描かないと始まらないと思い、ネットで漫画に必要な道具を一通り揃えた僕は、すぐに漫画に取りかかった。
まずは、作画……これは得意分野だ。漫画の絵はこれまで描いてきた絵とは全然違うが、少し練習していくうちにすぐ慣れた。人物はもちろんのこと、背景などもかなりうまくかけていると思う。
まだ覚えなくてはならないこともあるが、それも時間の問題だろう。
順調に進んでいた作画に比べて、全く進んでいないのはストーリーだ。
漫画を読んだことが無かった僕が、ストーリー作りの経験などあるはずもなく、色々と考えてはみるが、全く浮かんでこない。
どうやら僕にストーリー作りの才能はなかったらしい。そんな無情な現実が突きつけられる。
大きな壁にぶち当たった僕だが、これはある意味わかっていたことだ。国語は昔から苦手だったし、本などもあまり読んだ記憶はない。しかし、漫画というのは一人ですべてのことをやる必要はないのだ。
僕にできないのなら、できる人を探すまで、適材適所という言葉は便利なものですっきりと僕の気持ちを割りきらせてくれる。元より僕は漫画の中で動く自分のキャラクターが見たいのだ。それを操る人物は別に僕である必要はない。
その日から、僕のまだ見ぬ相棒探しが始まった。
翌日、朝一番に教室に入ると、登校してきたクラスメイトに原作者に興味がないかと聞いて回った。
友達付き合いをしてこなかった僕が、いきなりそんなことを言い出したことに対して周りは、ひどく驚いていたようだが、僕はそんなことにかまっている余裕はなかった。
諦めずに原作者を探し続け、クラスメイトだけでなく他学年の生徒に対してもアプローチをかけた僕だが、結局、その日のうちに見つかることはなかった。
はぁ……とため息を吐きながら放課後の廊下を歩いていた僕は、目の前にノートが落ちているのに気がついた。
誰のノートだ……そんなことを思った僕はすぐに、拾い上げる。
ノートを半ばまで持ち上げた僕は、偶然にも半開きになったノートの中身を見てしまった。
そこにあったのはまさしく漫画だった。
少女漫画っぽい画風で可愛らしい絵に、しっかりとコマが割り振られており、中でキャラクター達が自由に動いている。
つい、見いってしまっていた僕は、他人のノートであることも忘れて、どんどんと読み進めてしまう。
結局、数分後……僕は全てを読んでしまっていた。
他人のノートを許可なくじっくりと読むという、普通にやってはいけない行為に罪悪感が沸いてくるが、それ以上に僕の中には喜びがあった。
彼女……彼という可能性もあるが……ともかく、このノートの持ち主と漫画が描きたい。そんな衝動に駆られ、急いでノートの名前を確認しようとした時……
廊下の端から誰かが走ってくる音が聞こえた。
どんどんと近づいてきた音は僕の前でたちどまった。
それは少女だった。泣きぼくろが特徴的な茶色がかった髪の少女は世間一般で言えばとても可愛らしい容姿をしていた。
何か探しものをしているらしく、地面を右に左に見ていた彼女だが、目の前に僕がいることに気付くと、顔を上げ、僕の顔を見るなり少し驚いた仕種をした。
といってもそれはほんの一瞬のことで、彼女は僕のノートを持っている方の手に視線を集中させた。
そのまま、少しの間お互いに固まるが、彼女のほうから言葉を切り出してきた。
「すみません、それ私のノートなんです。返してもらえますか?」
半ば想像出来ていたが、このノートは彼女のものらしい。
こんなにも早く会うとは思わなかったが、これはチャンスだ。僕はそう思った。
「君は漫画が好きなんだね」
脈絡のない僕の言葉に、彼女はノートの中身を見られたことを察したのか少し怒ったような雰囲気に変わる。彼女が何かを言い出そうとするが、その前に僕は言葉を続けた。
「勝手に見てしまったことは謝る。本当にすまない」
僕はしっかりと腰を折り、彼女に謝る。意外とあっさりと謝罪したことに彼女は驚いていた。
「そのうえで、言わせてもらう。僕と一緒に漫画家になってくれないか?」
僕ははっきりとそう言った。その言葉は、彼女にとっても予想外だったのかポカンとした顔をしている。
僕の熱意を伝えるのは今しかない。そう思った僕は、彼女の顔をしっかりと見て話し出す。
「僕は、漫画を描くために今、原作者を探してるんだ。そして、君のノートを見た時、思ったんだ。僕はこの人と一緒に漫画を描きたいって……。
初対面の奴に言われても迷惑かも知れないけど、僕は本気だ。僕には君の力が必要なんだ。だから、頼む……」
絞り出すような声で頼み込む。
僕の本気さを感じたのか、じっと彼女は考えこむ。
「すみませんが、今すぐには決められません。あなたの絵すら私は見たことないので」
確かに、画力も分からない相手と組まないか……そこまで考えた所で、僕は持ってきていたカバンを漁り出す。
あった……カバンの中から一冊のスケッチブックを取り出すと彼女の前へとつき出す。
「これは、僕の描いた絵だ。これを判断材料にしてくれないかな?」
そういって渡したスケッチブックを彼女は無言で受け取り読み始める。
その中には僕が描いたキャラクター達がつまっている。可愛らしいタッチの妖精から、伝説の勇者、果てはドラゴンまで、僕が思い付く限りのありとあらゆるキャラクターがそこにはいた。
これを見せても駄目だったなら、僕にはもうどうすることも出来ない。
祈るような気持ちで、黙って読み進める彼女を見つめる。
そうして、スケッチブックがめくられる音だけが響く中で、彼女がついに最後のページを読み終わり、僕にスケッチブックを返してくる。
それを受け取った僕は、ただ彼女の言葉を待つ。
「これからよろしくお願いします」
彼女はそれだけを僕に告げた。
ずいぶんあっさりとした言葉に、僕はつい思ったことを言ってしまう。
「本当にいいの? 初対面の男とこれから一緒に漫画を描くんだよ?」
「別にいいですよ。私は実力主義ですから。あなたと描くものの方が私だけの作品より面白いのなら、私はあなたと組みます」
そこまで僕の絵を評価してくれていることに、内心驚いていると……
「
「ヘ?」
「私の名前です」
そこまで言われて僕はまだ自己紹介もしてなかったことに気がついた。
完全に順序が逆になってしまったが今さら考えてもしょうがない。僕は青木さんの方をしっかりと見て自己紹介を始める。
「僕の名前は
こうして僕達の物語は始まった……
蒼樹 紅さんの本名は青木優梨子だということをさっきwikipediaで知りました。ニワカにもほどがありますね。
続くか分からないので、最後は打ちきりエンドな感じで終わらせました。