蒼樹先生に別の作画をつけたかっただけの小説   作:おもち

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まず初めに、投稿期間がとてつもなくあいてしまい本当に申し訳ありませんでした。
その理由については、単純に書いては消してを繰り返しているうちに創作意欲が削がれてしまったからです。
楽しみにしていただいていた方、本当にすみませんでした。



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窓から降り注ぐ日差しによって、眠っていた意識が覚醒する。

冷房が効いた室内では暑さは感じないが、その日差しの強さから外は灼熱地獄であることが容易に察せられる。

意識を覚醒させるために伸びをしようとすると、手が痺れていることに気がついた。

どうやら自分は作業途中で腕を枕に寝てしまったらしい。

痺れているのが利き腕ではないことにひとまず安堵しつつ、痺れをとるように腕をプラプラと振り、椅子にもたれかかりしばし時を過ごす。

混濁した意識の中でぼーっと外を眺めていると、この階層では聞こえるはずのない蝉の声が聞こえるような気がしてならない。

そんなことを感じながら、覚醒しきれていない意識の中で物で散らばっている作業台を整理する。作業しやすいように常に整理するように心がけてはいるのだが、疲れてくるとどうにもそういった所まで意識がむかなくなってしまう。

整理を進めていく中で、ある紙の束に気づく。

ネームと呼ばれるそれは、漫画の下書きのようなもので毎週青木さんからfaxで送られてくるものだ。

表紙に赤羽様へと綺麗な字で書かれている所に青木さんの丁寧さを感じる中で、その下に書いてある数字に眠っていた意識が覚醒するのを感じた。

 

「13位…」

 

新妻君への邂逅から数ヶ月経ち、彼の作品は上位をキープする中で、自分達の作品は徐々に順位を落とし、二桁順位が多くなってきた。

そして今目の前にある今週の結果…それは過去最低の順位だった。

この結果を見るのは初めてではないのに、見るたびに悔しさがこみ上げてくる。

 

なんで順位が下がっているのか…色々と考えたりしているが、絵しか描けない僕にはいまいちわからない。

打ち合わせの時に相田さんに聞いてみたが、返ってきた答えは今はまだ我慢の時期だというものだった。

相田さんに言わせてみれば、この段階で順位を気にして無理にあれこれ変えても仕方がない、今は自分達の作品というものを知ってもらって徐々にファンを増やしていけばいいということだった。

 

相田さんの言いたいことは分かるのだが、順位が落ちれば打ち切りも当然あるだろうし、何よりも順位が下がるということは自分達の作品がつまらないと言われているようで、悲しい。

自分なりに色々と考えて実行してみてはいるのだが、結局僕にできることは描くことだけだった。

絵をもっと細かく、そして丁寧に…当たり前のことだが、それを追い求めるのは大変だ。

何が大変かといえば一番は時間が足りないと言うこと。

新人という立場で締め切りに間に合わないことなどはあってはいけない。その中で絵のクオリティを高めようとすると、必然的に絵を描くこと以外の時間を減らしていく必要がある。

起きていられるギリギリまで描いて、作業台で寝てしまうというのがここ最近では当たり前になっていた。

しかし、そんな生活をしていても順位というのはついてこず、現状というものがある。

 

そんな状況を改めて確認しつつ、人間としての尊厳を保つためにひとまず洗面台へと移動して顔を洗う。

そうすると自然と自分の顔が鏡から目に入る。

 

「僕ってこんなに目つき悪かったかな…」

 

衝撃からか、思わず独り言が漏れてしまう

特に特徴のない顔なはずだったのが、ここ最近の睡眠不足からか隈がひどい。

それに伴い目つきも悪くなったように感じる。

そんなことを思うが、男の僕はメイクなどは特にしないのでどうすることもできない。

結局隈を消すことは諦めて、アシスタントの方がくるまで原稿を進めていくことにする。

そんな風に気持ちを切り替えて作業台へと戻りペンを握った時、ピンポンとインターホンの音が鳴る。

 

「赤羽せんせーい!はいりますよー」

 

インターホン越しに聞こえるのは女性の声。活発な印象を与える声だ。

 

「玄関開いてるから入っていいよ」

 

僕はインターホン越しに答える。

そうするとすぐにガチャリと玄関のドアの開く音がして、その後すぐに僕がいる作業部屋へとドタドタと騒がしい音が近づいてくる。

そして作業場のドアが開かれる。

 

「先生!おはようございまーす!…って隈すごっ!」

 

入室の勢いそのままに挨拶をしてくれたのは、アシスタントの一人である加藤さんだ。

茶髪でつり目が特徴的な彼女は、元気がよくていつも朝からテンションが高い。

 

「おはよう加藤さん…隈のことは気にしないで…」

 

彼女のテンションに寝起きの僕は少し面食らうが、普通に挨拶を返す。

 

「先生!あんまり無理しすぎちゃダメって言ったじゃないですか!またギリギリまで原稿描いてたんですか?」

 

「うん…ちょっと描き直したい所が出てきちゃってさ。」

 

いつも僕の健康を気にしてくれている彼女に少しだけ悪い気持ちになりながら答える。

そんな僕に対して彼女は呆れたように苦笑した。

 

「先生は言っても聞かないのは分かってるのでもういいです!それよりも…!それよりもですよ先生!」

 

「それよりも…?」

 

「先生は私に言ってないことがあるんじゃないですか?」

 

言っていない事…果たしてそんなことがあっただろうか?

首を捻りながら色々と考えてみるが、いまいちピンとくるものがない。

そんな僕に対して痺れを切らしたのか、彼女はもうっ…と言いながら腕を振りながら言葉を続ける。

 

「新しいアシスタントさんですよ…!今日からなんですよね?」

 

それを聞いてあぁ…と納得する。そういえば彼女には言っていなかった。

なんでも自分で描きたがりの僕は、これまでアシスタントの方を増やすようなことはなかったのだが、相田さんが少なすぎるアシスタントに気を使って増やしてくれたのだ

 

「加藤さんはなんで新しいアシスタントさんがくるって知ってるの?」

 

僕が言い忘れていたから、彼女は新しいアシスタントがくることは知りようがないはずなのだが…

 

「さっきそこで会ったんですよ!道に迷ってる感じだったので声かけてみたら目的地が先生の家だったので…詳しく聞いてみたらアシスタントで来たって…びっくりしちゃいましたよ…!」

 

私怒ってます…と言いたげなじっとりとした目を向けながら話す彼女に対してごめんごめんと軽く笑いながら流す。

 

「で…そのアシスタントさんはどこかな…?一緒に来たんじゃないの?」

 

僕の言葉に対して彼女はハッと分かりやすく口を開けて驚く。

 

「あぁ…!先生に文句言ってたら忘れてました!玄関で待ってくれてるので呼んできます!」

 

そう言った彼女は玄関の方に顔を向ける。

普通そういうことを忘れるかな…と自分が彼女に連絡を忘れていたことを棚に上げながら思ってしまう。

 

「真城くーん!入ってきていいよー!」

 

新しいアシスタントさんらしい人の名前を呼ぶ彼女。

真城…聞いたことがあるような…そんなことを思い記憶を探るが、探りきる時間もなく作業場のドアが開く。

 

「失礼します…今日からお世話になる真城 最高です。よろしくお願いします」

 

ドアから顔を覗かせながら挨拶をする彼。

その見覚えのある姿に僕は驚く。

 

「亜城木夢叶の真城君!?真城君が新しいアシスタント!?」

 

「はい…そうですけど…」

 

「大丈夫…?」

 

「アシスタントの経験はないですけど…ある程度のことはできるつもりです。」

 

僕の主語のない質問に対して、真城君はアシスタントとしての能力を心配されたと思ったらしく、少しだけ不満げに答えてくれた。

 

「あぁごめん。真城君の腕を心配してるわけじゃないんだ…僕が言いたかったのは真城君はこんな所でアシスタントしてるよりも自分達の作品を描いた方がいいんじゃないかと思ったんだ」

 

編集部で見た彼ら…亜城木夢叶の漫画家に対する思いは本物だった。

だからこそアシスタントとして真城君が僕の所に来ていることが信じられない。

 

「描こうにも話の方が出来ていないので…」

 

「なるほど…真城君が作画担当で高木君が話担当なわけだ。僕たちと一緒だね」

 

「はい。同じ作画担当として勉強させていただければと思って」

 

「うーん僕が真城君の勉強になるかなぁ…漫画を描き始めたの多分真城君の方が早いし…あんまり参考にならないかも…」

 

「そんなことないです…正直絵に関しては僕より断然上手いと思います…」

 

そうやって僕を褒めてくれる真城君だが、顔を見るとそのことをあまり認めたくないのか、悔しそうに顔を少しだけ歪めていた。

それを見て僕はこの話題をあまり続けるのは良くないと判断して話を変える。

 

「とりあえず、この間あった時はあんまり話も出来なかったし自己紹介からしようか。僕は赤羽 結城。さっきも言ったけど作画を担当してる。それでこっちにいるのが加藤綾子さん。連載が始まった時からアシスタントをしてくれてる」

 

僕の自己紹介のついでに加藤さんについても紹介する。彼女は僕からの紹介を受けて改めて元気よくお願いしますと挨拶をした。

 

「じゃあ真城君にやってもらうことを説明するね。基本的にはベタとトーン貼りがメインで時々背景なんかも描いてもらいたいんだ。真城君は説明しなくてもここらへんはできると思うけど分からないことがあったら僕か加藤さんに遠慮なく聞いてね。

あと、食事関係は領収書持ってきてくれればこっちで処理するから領収書を忘れないようにお願い」

 

本当に最小限の説明だが、作画担当で実際に漫画を描いている真城君にはこのくらいの説明で充分だと思った。

そしてその考えはあっていたようで、こんな説明でも真城君は特に不満もなく理解してくれた。

 

「とりあえず説明はこんな感じで…真城君なにか分からないことある…?」

 

「仕事内容はいつもやっていることなので大丈夫です。でもちょっと気になることがあって…」

 

「なになに?なんでも聞いてよ」

 

「アシスタントは僕と加藤さんの2人だけで大丈夫なんですか…?なんか週刊連載のアシスタントってもっと多いイメージだったんですけど」

 

その真城君の質問に僕はどう答えるか少し困る。僕は他の人がどのくらいアシスタントを雇っているか知らないので、相対的な比較ができない。

しかし、そんな風に悩んでいる僕に助け舟が入る。

 

「先生が固まっちゃってるんで私が答えるね!普通はもっと多いんだけど、先生はなんでも自分で描きたがりだから他の人と比べると少なくても大丈夫なんだよね。だからアシスタントの仕事はめっちゃ楽!」

 

「僕の前であんまり楽とか言わない方がいいと思うけど…」

 

「先生が困ってたの助けてあげたんだからそれくらい許してください!」

 

「う…まぁそれはありがとう…」

 

確かに困っていたのは本当だったので、素直にお礼の言葉を返した。

 

「まぁ…とりあえず仕事についてはこの人数で充分回るから安心して。他に何か聞きたいこととかある?」

 

「いえ…大丈夫です」

 

「よかった…じゃあ始めようか…机は加藤さんの前のやつ使ってね」

 

「はい、分かりました」

 

真城君が聞きたいことはもうなかったようなので、話を切り上げて作業を開始しようと自分の机に腰をかける。

ネームを手に取り、確認作業をする。その時嫌でも目に入る順位…

 

(このままだと真城君達にも簡単に追い抜かされちゃうのかな…)

 

なぜか頭に浮かんだ漠然とした不安。

それは嫌だなと、思ってしまった。

 

(誰かと比べたことなんてなかったのに…なんでだろう…)

 

今の僕には分からなかった。

 




現在の状況については、次の話自体はすでにほとんど書けているのですぐに投稿できると思います。
また、感想のほうも見させていただいてはいたのですが、書き続けられるか分からない状況であったので、変に期待させても申し訳ないと思い返していませんでした。
感想頂けたこと自体は凄く嬉しかったです。

今後については完全未定です。完結まで書ききると宣言出来ないことを、謝罪させていただきます。
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