蒼樹先生に別の作画をつけたかっただけの小説   作:おもち

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速く投稿できるように頑張りました。
何だかだんだん方向性も固まって来たので、ゆっくりでも投稿していきたいと思います。




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集英社

 

日本の漫画界でトップの売上を誇る、まさにラスボスと言っても過言ではない場所だ。ジャンプが特に有名だが、他にもたくさんの雑誌を手掛けている。

僕らが今回持ち込みを行うのは、集英社の看板……ジャンプだ。

 

これは僕が青木さんにお願いしたことで、青木さんは最初にマーガレットに投稿するつもりだったそうだが、どうしても僕はジャンプで勝負したかった。

 

それは、初めて読んだ漫画がジャンプだったということもあるし、僕達の漫画家としてのレベルを計りたかったという気持ちもある。

 

日本一の漫画雑誌で、どこまで通用するのか知りたい。僕が初めて読んだ漫画の中の主人公のように、僕も挑戦をしてみたかったのだ。

 

青木さんは少し悩んでいたようだが、作風としても少年漫画よりだということで納得してくれた。

 

自動トビラを通って受付へと足を動かす。ここまで来たら決意はできた。

 

僕達の作品はおもしろい、それを描いた本人が信じなくてどうするんだ。そう自分に言い聞かせて、受付の前に立つ。

受付に持ち込みに来たことを伝えるとすぐに、奥へと通された。

廊下を通っていくとすぐに開けた場所にでる。

 

 

 

そこは、たくさんの仕切りがある部屋だった。ひとつひとつが小さな部屋みたいになっていて、それぞれに机とイスがおいてある。数字がそれぞれに割り振られており、僕らは受付に言われた数字の部屋でこれから来る人物を待っていた。

 

これから来る人物に思いを馳せながら、五分ほど待つと……一人の男性が入ってくる。その男性は少しぽっちゃりとした、眼鏡をかけた人で優しそうな印象を受けた。

僕らは立ち上がり、礼をする。男性はそんな僕達を見て、よろしくと軽く声をかけ、座るように言ってくる。

向かい合わせで男性が座り、僕らに対して自己紹介をしてくる。

 

「週間少年ジャンプの相田です。よろしく。君達が赤羽くんと青木くんだよね?」

 

「はい、そうです。こちらこそよろしくお願いします」

 

「早速だけど原稿読ませて貰うよ」

 

そう言われた僕は原稿を渡す。それを受け取った相田さんはすぐに目を通し始める。

読む速度は、少しゆっくり。じっくりと読んでくれているようでそこは少し安心できた。

 

待っている間に、僕達の今回の作品について考える。

作品のタイトルはBranched world

分類としてはファンタジー。

世界の設定としては、様々な種族が存在する世界。

エルフや人魚、妖精などがいる世界で人間として生まれた主人公の少女が、相棒のドラゴンの背に乗って色んな国を旅していくというもの。

様々な種族がいるように様々な国があり、色々な種族が共存する国や単一の種族だけの国もあり、同じ種族の国であってもルールや文化は違ったりする。

そんな色々つまった世界は青木さんワールド全開といった感じを受ける。

様々な種族を描いていくのは、僕も楽しくて、この作品が大好きだ。

ジャンプに載っている連載作品にだって負けないと個人的には思っている。

 

しかし、評価するのは僕ではなく、編集者や読んでくれる読者であり……つまらないという評価だってある。

だからこそ、まずは今読んでくれている相田さんにどう評価されるのか、僕はそれが気になる。

ちらりと横を見ると、青木さんも緊張しているようだ。普段は他人の評価など気にしそうにない彼女もやはり、自分の作品が評価されたいとは思っているのだろう。そんなふうに僕は感じた。

 

トントンと音が響く。相田さんは読み終えたようで、真っ直ぐと僕らの方を見ていた。

 

「君達は初めての持ち込みだよね……?」

 

「はい、そうですけど……」

 

「そうか……」

 

そこから少し間が空く。すぐに評価が来ると思っていた僕は、謎の間に逆に不安になる。

もしかして、相当ひどい評価なのだろうか。そんなことが頭によぎる。

青木さんも同じのようで、少し不安そうに僕を見てくる。

 

不安そうな僕達に気づいたのか、相田さんはようやく評価を告げる。

 

「正直に言うと面白い。高校生の初持ち込みでここまでのものは、僕には経験ないよ」

 

「ならば、すぐに本誌に載せて貰えるんでしょうか?」

 

青木さんが質問をする。すぐに本題へと移るのは、彼女らしさを感じる。

 

「取り敢えず月例賞に出そうと思う。そこで結果が良かったら連載用のものを作っていこう」

 

「月例賞って何ですか?」

 

僕は初めて聞く言葉に、つい疑問を口にしてしまう。

その疑問に相田さんは驚いた顔をする。そんなにまずいことを僕は言ったのだろうか。

 

「失礼を承知で聞くけど、赤羽君は漫画を描き始めてどのくらい?」

 

「2ヶ月と少しですけど……」

 

「そうか……分かった、ありがとう。じゃあ説明するよ。月例賞っていうのは毎月応募があった漫画の中からおもしろいものを数本選んでいくんだ。簡単に言うとね」

 

「なるほど……そこで結果が良ければ連載出来るんですか?」

 

「いきなり連載って訳じゃない。一回読み切りで一話完結のものを描いて結果を出して、そこから連載用の原稿を三話作る。それが良かったら連載だ」

 

「分かりました……相田さんは僕達の漫画は連載までいけると思いますか?」

 

「正直……僕にも分からない。この作品は面白いけど、少しジャンプの読者層とは離れているし……どこまで受け入れて貰えるか……。

 でも、面白いのは事実なんだ。僕も連載に行けるように頑張ってみるよ」

 

相田さんの言葉に少し、自信が出てくる。長年漫画を見てきた人に評価されると、やっぱり嬉しかった。

若干ホッとしている僕達に、相田さんは立ち上がって、懐から何かを取り出す。

 

「これは、僕の名刺。後ろに僕個人の電話番号も入ってるから何かあったら連絡してきて」

 

そう言い出された名刺を僕達は受けとる。これは、もう解散の流れなのだろうか。

 

「あの、もう終わりですか? 何かアドバイスとか、ダメ出しとかされるかと思ったんですが……」

 

思わず、そう聞いてしまう。当然の疑問だったので聞かずにはいられなかった。

 

「ああ、この作品は完成度高いし、僕がどうこう言って逆に世界観を崩しちゃいけないからね。

 連載になれば話は別だけど、今回は取り敢えずそのまま賞に出すから、これで終わり。

 気を付けて帰ってね。では」

 

そう言うと足早に相田さんは去っていってしまう。残された僕達は、緊張から解放されて姿勢を少し崩す。

 

「ふぅ、もっとダメ出しされるかと思って不安だったけど……好評みたいで良かったね青木さん」

 

「私は別に、不安になってなんかいません」

 

横にいる彼女はさっきまでの様子が嘘のように、凛々しいいつもの顔だった。

さっきまでとの変わりように、何だが逆に面白く感じる。

 

「本当かなぁ? 僕には何だか不安そうに感じたんだけど」

 

「そんなことはありません。赤羽さんが、勝手にそう思ってるだけです」

 

中々に不毛な言い争いだが、意固地になっている彼女は、見ていて何だか面白い。

やり過ぎると完全に機嫌を損ねてしまうので、ここは僕が引くことにする。

 

「そうだね。僕の思い違いだったよ。でもさ、褒めて貰ったのは嬉しかったでしょ?」

 

「それは……まあ」

 

「僕も嬉しかったよ。僕達が面白いと思ってたものは、他の人もちゃんと面白いと言ってくれた。

 連載になったら、もっとたくさんの人にも見てもらえる。

 漫画家ってやっぱり夢があるね」

 

「それは、あなたが画家になっていても同じなんじゃないですか?」

 

彼女の言葉に僕は驚く。

彼女に僕が、画家志望だったことは言っていないはずだけど……何故彼女は知っているのか。

そんな疑問を彼女にぶつけると、すぐに答えが返ってくる。

 

「そのぐらいは知ってます。私、一応美術部なので、絵の世界ではあなたは有名です」

 

彼女が美術部だったことに、驚きを感じるが今はそれはいいだろう。

 

「え……でもコンビを組む時には、あなたの絵も見たことないとか言ってなかったっけ?」

 

「それは……少し考える時間がほしくて嘘を吐いたんです。

 いきなりあんなこと言われたら誰だって迷います」

 

そう言う彼女に僕は納得する。確かに、誰だっていきなり言われたら迷うだろう。

一人で納得している僕に、彼女は続けて切り出す。

 

「ずっと疑問に思ってたこと聞いてもいいですか?」

 

「うん、いいよ」

 

「赤羽さんは何で漫画家になろうと思ったんですか?」

 

「驚いた……青木さんは僕自身には興味ないと思ってた」

 

これは本心だ。彼女は僕が描く絵についての質問はしてきても、僕個人に対して何か聞いてきたことはなかったからだ。逆はあったが……。

 

「そんなことはありません。私は興味がない人とコンビを組んだりしません」

 

男だったら少し勘違いしそうなことを言う彼女だが、彼女の性格からして恋愛的な意味の言葉ではないだろう。

彼女が言う興味はたぶん人間的興味。僕というおかしな人間に対するものだろう。

 

「話を戻しますよ。

赤羽さんは、画家としての道がすでに出来ていたはず、画家でもたくさんの人に見てもらえるのは変わらないはずなのに、何故漫画家なんですか?」

 

「そうだね……初めは生きたキャラクターを描きたかったから。

 でも……今は何だか違う気がする。

前だったら、キャラクターを描ければ満足だったけど……今はたくさんの人に面白いと思ってもらいたいと思ってる。

だから、僕はたぶん憧れかな」

 

「憧れですか?」

 

「うん、初めて漫画を読んだときは、ただ生きたキャラクター達に憧れたけど……きっとあれは面白い漫画に対する憧れだったんだ。

 同じ絵を描いてるのに、たくさんの人を笑顔にできる漫画に、僕は憧れたんだ」

 

今、言うまで気づかなかったことだがこれがたぶん、僕の本心だ。

考えてみれば簡単なことだった。生きた絵を描きたいだけなら、たぶん画家でもできた。あの時の僕はそれが漫画というストーリーがあるものだからこそだと思っていたが、できたはずなんだ。

今日だって、あんなに緊張したり評価が気になったのは、面白くないと言われたくなかったから。じゃなかったら別に緊張なんてしないはずだ。

 

だんだんと自分の行動と思いが繋がっていく。なんでこんなことがわからなかったのだろう。自分のアホさ加減に呆れるが、大事なことは確認できた。

僕は、本気で漫画家になろうとしている。描ければ満足じゃない、もっと上を目指している。

 

今までの僕は、本当の意味で漫画家になっていなかった。上手く説明はできないけれど、僕の漫画家としての始まりは今日からだ。

 

この日、僕は初めて漫画家として一歩踏み出した。

 

 




登場した作品のタイトルは適当です。設定はキノの旅からパクってます。
主人公が漫画を描く理由をもっと明確にしたかったので、この話を書きました。
アドバイスなど、いただけると非常に嬉しいです。
あと、青木さんが美術部というのも適当です。すみません
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