蒼樹先生に別の作画をつけたかっただけの小説 作:おもち
多分おかしいところたくさんあると思うので、後から直すと思います。
青木優梨子にとって、男とは嫌悪の対象でしかなかった。
話す内容は下品だし、何よりも自分を見てくる時の目が嫌いだった。
青木はその可憐な容姿から、男性がよってきやすかったが、近づいてくる男性はどれもが下心が籠った目で見てくる。
そんな視線が嫌で嫌で堪らなくて、元々性格としては、引っ込み思案で内気な少女だった青木だが、男性を自らに近づかせまいと、どんどんキツイ性格になってしまった。
高校三年生になった今では、自らに話しかけて来る男性はもういない。
自らの男性に対する態度が好ましいものでないのは青木も分かってはいたが、別に直す気はなかった。
自らの人生において男性の力など必要ないと青木は本気で思っていた。
青木が漫画というものを描き始めたのもそれが原因だった。
漫画という世界でなら自分の理想を描くことができる。
現実に対する嫌気からか、青木は漫画というものに没頭した。
勉強の合間に、暇を見つけてはストーリーを考えた。
それが本当に楽しかったのを青木は今でも忘れはしない。
高校で美術部に入ったのも、漫画を描くためで、自らのストーリーを表現するためだった。
ただそれだけで始めた美術部だったが、真面目な性格の青木は入ったからには賞をとるつもりで、頑張って活動をした。
毎日真面目に絵を描いて、腕もどんどん上達していき、顧問に手放し誉められるレベルまで青木は成長した。
そして、そんな時に顧問にこんなことを言われた。
コンクールに出してみないかと。
正直青木はコンクールには興味がなかった。
元々美術部に入ったのは漫画のためで、美術で結果を残すためではなかったからだ。
しかし、美術部として活動していく中で青木は、自らの絵のレベルが知りたくなった。
ここで、賞を取れば漫画を描くときの自信になるかもしれないという考えもあって、青木はコンクールに応募する事にした。
元々負けず嫌いだった青木は、コンクールに出すために毎日残って絵を描いた。
納得するものが出来るまで何度も書き直して、遂に完成した。
それは、青木自身が見ても良くできていて、今までに一番のものだと確信出来るものだった。
それを、顧問に持っていきコンクールに応募した。
その時の青木は賞は取れるだろうと思っていて、結果に対する不安なんてものは一つもなかった。
そして、結果発表当日。部室で結果を見た青木は茫然とした。
賞を取った人達の名前の中に、青木の名前はなかったのだ。
項垂れる青木に顧問は慰めの言葉を掛けてくれたが、青木はそれどころではなかった。
なんでなんでという気持ちが自らの中を巡って、まともに思考が出来ない。
思えば、こんなに明確に落とされたことは、青木の経験ではなかった。
小さい頃から勉強などでもずっと一番だった青木はこの時初めて負けた。
ただひたすらに悔しい。そんなことを思う中で、顧問がふと、入賞者の名前の中から一人の名前を指指した。
「大賞はやっぱり、赤羽君ね」
その顧問の言葉に青木は反応した。
やっぱり?まるで、そうなることが分かっていたかのような顧問の言葉に青木は問い詰める。
聞けば、コンクールの常連で毎回一番上の賞をとっていく人物らしい。しかも、その人物はこの学校の生徒らしく、顧問が反応したのはそのためだった。
同じ学校で自分より絵がうまい男子……青木は認めたくないと思った。
しかし、自分よりも結果が上なのも事実。
どうしたらいいか分からなくなる青木に、顧問はあるファイルを青木に見せてきた。
それは、赤羽という人物のこれまでの入賞作品をまとめたもの。
青木はそれを手に取り、しばらくボーッと見つめる。
これを見るべきなのかという迷いが青木の中で迷いが生じるが、意を決してページを開く。
瞬間、青木は負けたと思った。さっきまでは、まだ結果としてだけだった。審査員の目が節穴なんだという気持ちもあった。
しかし、この作品達を見たとたんに青木にそんな気持ちはなくなった。
自分は負けるべくして負けたのだと、納得してしまった。
悔しいという気持ちは、最早なかった。
そこから青木は赤羽という人物を調べるようになった。
過去の作品はすべてチェックしたし、経歴も調べれるだけ調べた。同じ学校ということで何度かクラスの前まで覗きにいったこともある。
赤羽という人物は黒髪で優しげな顔をした目立たなそうな男だった。
クラスの外から見る赤羽はいつも一人だったが、悲しそうな感じは少しもしなかった。
話しかけるチャンスだったはずなのに、青木はそれができなかった。
それは、今までに男性と関わって来なかった経験のなさか、それとも、今まで男という存在を払いのけてきたというプライドか、はたまた両方か……とにかく、青木が自ら赤羽に近づくことはなかった。
しかし、近づくはずのなかった二人の距離は、ある出来事で近づいていく。それは、青木はまだ知らなかった。
◆
それは、ある日の放課後。
この日青木は、人生で最大のピンチだった。
何が起きたかというと自分の漫画を描いたノートをどこかに落としてしまったのだ。
これは、本当にまずい。
もしも誰かに見られてしまったら……そこから起こる弊害を考えると恐怖しかない。
これまで平和に過ごして、三年生にもなったのに、それが崩れてしまうかもしれない状況に青木は最悪の気分だった。
廊下を精一杯早歩きで進んでノートを探していく。
学校を探し回って息が切れるが、そんなことは気にしていられない。
何度曲がったかわからない廊下を曲がり、少し進むと一人の男性が立っていた。
普通の男ならば、青木が気にとめはしないが、その男は青木が負けた男...赤羽だった。
このタイミングで初めてまともに顔を合わせることに、青木は複雑な気持ちになる。
顔をあげて、赤羽の顔を見ようとするが、そこであることに青木が気がついた。
赤羽の手に自らのノートがあったのだ。
しばしの間固まる。
そうして、しばらく時間が過ぎるが、ずっとそうしている訳にもいかず、青木は決死の覚悟で話しかけた。
それは私のノートなので返して欲しいと。
それを聞いた赤羽の返答は少しずれたものだった。
「君は漫画が好きなんだね」
赤羽のずれた言葉にしばし驚くが、すぐに意味に気づいた。
目の前の人物は青木のノートを読んだのだ。
そうでなければ先程の返答と意味が繋がらない。
怒りの気持ちが上がってくるが、それを分かっていたかのように赤羽は青木に謝った。
それに少し戸惑うが、すぐに赤羽は言葉を続ける。
それは、自分と漫画家のコンビを組まないのかというものだった。
それを聞いた青木が思ったのは、何故?という疑問だった。
画家としての赤羽の腕を知る青木は漫画家としてコンビを組もうという赤羽に意味が分からなかった。
青木は断ろうと思った。しかし、言葉がでない。
それはコンビを組もうと言う赤羽の目を見てしまったから。
どこまでも真摯なその目は、今までに青木が触れあってきた男とは違うものだった。
青木の心が揺れる。
自分はどうするのがいいのか.....青木にはそれが分からない。
渋る青木に赤羽は、あるノートを見せてきた。
それは、たくさんのキャラクターが描かれたノート。
絵画として見てきた赤羽の絵とは全然違うその絵は、青木が描きたいと思っていた漫画のキャラ達のイメージとぴったり一致していた。
その絵を見た青木は、思わず言った。
「よろしくお願いします」
こうしてコンビは結成された。
◆
そこからの毎日は青木にとっては楽しい日々だった。
自分のストーリーを自らを負かした人物が描いてくれるのだ。
自分が嫌っていた男性とコンビを組んで、なおかつそれを楽しんでいる自分に青木は信じられない気持ちになる。
しかし、不思議と嫌な気持ちはない。
大好きな漫画の発売日を待つような気分に、青木はなっていた。
そんな心の中と裏腹に、青木の態度は冷たいものだった。
なんの感情も持っていないような声を赤羽に向かって出してしまう。
男性を排除して生きていた青木の男性に対する接し方は、簡単に変えられるものではなかった。
嫌われたらどうしよう……青木は変わらない自分に嫌気がしながら、そんなことを思う。
しかし、そんな青木の不安をよそに赤羽の反応は予想と違うものだった。
青木がどれだけ厳しいことを言っても赤羽は真摯にそれを受け止めてくれる。
そして、言われたところは次の週にはもう改善されている。
今まで青木の毒舌を受けた男はすぐに離れて行ったのに、赤羽はそんなことを気にすることなく接してくれる。
青木はそんな赤羽に甘えてしまい、どんどん厳しいことを言ってしまう。
青木がダメだしをして、赤羽がそれを素直に受け入れる。
そんな関係を二人は続けていく。
二人の距離は変わらないが、漫画はどんどん完成されていく。
そして、夏休みの始めには、集英社への持ち込みも行った。
青木はジャンプではなく、マーガレットに持ち込みをしたかったが、赤羽がジャンプに投稿したいということで、そちらを優先した。
そのジャンプでの持ち込みで一番青木が心に残ったのは、編集からの評価ではなく、赤羽が漫画家を目指した理由だ。
画家からわざわざ漫画家への転向の理由。
ずっと気になっていたそれを青木は赤羽にぶつけた。
赤羽は、少し考え込むが答えは返ってきた。
憧れ……それが赤羽が漫画家を目指す理由だった。
そんな理由で、とは思わない。
画家としての凄さを知っている青木はむしろ納得した。
納得はしたが、青木は赤羽という人間が分からなくなった。
もっと詳しく知りたいと思うが、青木は距離を縮める方法が分からない。
二人の距離がどうなるか、それは誰にも分からない。
アドバイス、感想書いていただけると嬉しいです