セイバーウォーズ 〜ロクでなしとのコスモ時空〜 作:アサシンと思ったうぬが不覚よ!
では、どうぞ。
「で、そういうわけで俺らは転送塔に向かってるわけだが」
そう言って隣で走っているエックスを見ると、どうも頰がひきつってしまう。どうにかそれを抑えながら、一つ尋ねる。
「おまえはどうして付いてきてるんですかね」
「だから言ったじゃありませんか。アルトリウム探しはおそらく難航するのであなたのお世話になりたいと」
「あの謎のヘンテコ物質のことだろ⁉︎なんだよあれ、魔術界に喧嘩でも売りに来たいのか!」
そう言って吐き捨てるように、どこか諦めるようにグレンが叫ぶ。隣のシスティーナが驚いてビクッと肩を揺らした。
「ヘンテコとは失礼な。いいですか?説明しますよ。
アルトリウムとはこの宇宙に遍在するエネルギー粒子。大抵のことはこれで何とかできます。
ちなみにサーヴァントユニバースというのは原典という重力から解き放たれ、好き勝手することを許されたアメリカンでパラレルなファンタジーワールドのことです。
わたしはそこで新円卓とともに世界破壊を画策するキャプテン☆ニコラや黄金大帝コスモギルガメスなどのヴィラン集団との激闘を繰り広げているのです!」
えっへんと胸を張る。その仕草は大変可愛らしいのだが、あいにくとその姿にほのぼのできる精神状態ではなかった。
「おう、もうその話はわかった。それよりも気になるのがさっき飲ませてくれた薬みたいなものだ」
そう言ってグレンは目に見えて不安を露わにする。
よく考えてみてほしい。ここまでの話を聞いて安心してもらった
「ああ、コスモ☆エリクサーと謎の物質αのことですか。コスモ☆エリクサーはその名の通りなんだか
謎の物質αは宇宙船から漏れ出した謎の物質。ノー・公害、ノー・リスク、ノー・テスラ。何かの燃料のようだが飲んでも美味しい。まさに夢の万能エネルギーのことです」
「ちょっと待て!その説明を聞くと不安しか湧いてこないんだが。その前に前者はともかく後者は絶対飲ませる必要がなかっただろ!」
傷を癒してくれたことには感謝するが、これとそれはまた話が別だ。というかその間についている謎の星マークはなんだ。いかにも不安を掻き立てる印をどうしてつけるのだ。
それらは口には出さず静かに頭を抱える。
「せ、先生!気丈に頑張ってください!」
今はすごく白猫が天使に見える。どうしてだろう、天使はルミアじゃなかったのか。ああ、楽園はここにあったのか……。
「先生ー!現実逃避しないでください。そろそろ転送塔に到着しますよ」
そう言われて前方を見上げると高くそびえ立つ塔が見つかる。
頭のスイッチを戦闘のそれにへと切り替える。パチリ、何かが切り替わる音がした。
そのほんの少し前、エックスが一つたずねた。
「にしても見ず知らずの私を信用して良かったのですか?」
そうエックスが小首を傾げて聞いてくる。
「ああ、あくまで今の関係はお互いの利害が一致しているからこそ成り立っているものだ。お互いに不利益を被ることは避けたいはず。そうだろ?」
そうエックスは自分の世界に戻るため、自分たちはルミアの奪還のために行動している。そういう意味ではいまの関係は好ましいもののはずだ。
何かが喉に詰まったかのような表情を浮かべる彼女を傍目にグレンはさらにその速度を上げていった。
ゴーレムの多くが
◆
「あ、あいつ……ありえねぇだろ。あんなにいたゴーレムが」
「先生……、いまなんかあの剣からビームが出てきたような気がするんですが……」
「いや、そんなはずはない。あれほどの威力だと
「えっ、けど今あの剣ブォンブォン鳴ってる剣から閃光が……」
「ああ、多分気のせいだろう」
「えいっ!やっ!
「先生!エックスさんが分身しました!」
転送方陣のある場所である転送塔前。それはグレンが予想したルミアの居場所。
そこではいかにも重要なところだとばかりゴーレムがまるで掃いて捨てるほど存在していた。
そう、存在してい
もはやグレンの目は死んだ魚の目から死んでから一週間経った魚の目へと逆戻りしていた。彼は水のようにあきらめ、何か悟りでも開いたかのような穏やかな笑みを浮かべ始める。
そんなグレンの心境など知って知らずか、エックスは圧倒的な戦いを目の前で繰り広げていた。ちぎっては投げ、ちぎっては食べとそれはもう異常な光景である。
「よしっ、本気で行きましょう」
よく透き通るその声で高らかに詠いあげる。
「なっ、まだ本気じゃなかったのか?!」
「聖光の剣よ……」
持ち主の魔力に呼応するように剣の煌めきが増して行く。
それはすべての人々が願う幻想の結晶。
それは星の内部で結晶・精製された『
「せ、先生!あのエックスさんの持っている剣が光って……!」
「セイバーばっかり増やす神を滅するべし!」
聖剣の理はここにあり。
それは創造神の片割れへの反抗の証。それは世界を相手にしても叶えたかった、誰にも譲れないただ一つの願い。
「あっ、あれは!選ばれし王のみが放たれるというあの伝説の────ッ!」
「白猫、落ち着け。てかなんで説明口調なんだ?」
「ミンナニハナイショダヨ!」
剣の輝きが最高潮に達した時、彼女は高らかに祝詞をあげた。
それは遥か先で常勝の王によって握られた剣によるものだろうか。グレンは自然と萎縮せざるを得ない。
「──《セイバー忍法・ハンドブレーキッ》!」
そう、それは彼女が自分よりはるかに格下だと判断した時にのみ放つ伝説の技。
要するにただの手加減である。
「もうあいつ絶対楽しんでるだろ」
もはや誰も彼女を止められまい。
グレンは疲れたようにため息をついた。
「グレン先生!ここは任せてください」
そう言ってエックスは手に持っていた剣を輝かせるとそのまま前に振り下ろした。
光線がほとばしり、地面が抉れる。輝きが収まった後にはそこには深い斬撃跡が残っているだけだった。
「ああ、恩にきるぜ」
「エックスさん。どうか死なないで」
「ええ、どんと任せてください!」
そう言ってグレンたち二人は転送塔の奥へと消えて行った。エックスは自らの宝具と一つである無銘勝利剣を構える。
その剣が持ち主の意思に呼応するかのように煌めきを増して行く。
それは遥か彼方の願いを束ねたもの。それは人々の幻想の現し身。それを握るは伝説に語られる常勝の王。その一撃は──
「さあ。ゴーレムたちよ、行きますよ!皆さん、八連双晶は足りてますか──!」
最後の最後で台無しだった。
◆
アルザーの帝国魔術学院自爆テロ未遂事件。
のちにそう呼ばれることになるそれは、一人の非常勤講師と一人の
関わった敵組織のこともあり、それらの事件は魔術の実験の暴発ということで内密に処理された。
(しかしねぇ、まさかルミアが三年前に病死したはずのあの王女とは……)
事件の次の日の午後、もう非常勤でなくなったグレンはいつものように学院の廊下を歩きながら、そうひとりごちる。
(あとは、はぁっ。もう一つの厄介ごとも押し付けやがった)
長々と重たいため息をつく。
それは日々の重労働に疲れて帰っているくたびれたサラリーマンのようだ。
所変わって、アルザーノ帝国魔術学院の二年次生二組の教室にて。
「と、言うわけで……だ。
本日から新しくお前らの学友となるアルトリア=ペンドラゴンだ。まぁ、よろしくしてやってくれ」
グレンがそうやって口上をついてエックスを教室に姿を出させると、おぉ、と生徒たちの感嘆の吐息が上がった。男子からも女子からも等しくその姿に色めき立つ。
「おぉ……」
「……う、美しい」
「あの凛然とした佇まい……素敵」
「なんだか物語から出てきたような娘ね」
物語から出てきた。それは確かに彼女を表すのに適切な言葉かもしれない。その事実を知る人はこの教室には誰もいないが。
「め、滅茶苦茶かわいい子だなぁ、アルトリアさんって」
「てか、このクラスの女子、そうじてレベル高すぎだろ……」
「決めた。俺今日からアルトリア派になるわ。お前はどうする、シロウ?」
「そこのシロウ!うるさい!」
「な、なんでさ!」
案の定といえば案の定だが、新しい編入生──しかも容姿が人並みはずれて優れているとなったら少女を前にして、教室内は男子を中心に騒がしくなりつつあった。
「あー、まぁ、とにかくだ」
グレンはクラスの生徒たちの注意を強引に集めた。
「お前らも新しい仲間のことは気になるだろうし、アルトリアに自己紹介をしてもらおうか。つーわけで、ほら」
「待ちわびましたよ!
はい!あれは誰だ?美女か?セイバーか?もちろん私ことヒロインXだよ!出身地はサーヴァントユニバーs……」
「だあぁああああああ──ッ!あぁあああああああ──ッ!」
突如、グレンが奇声を上げてアルトリアと呼ばれた少女を横抱きにかっさらい、猛スピードで教室の外へと駆けて行った。
「えーと、いまなんて……?」
「うーん、よく聞こえなかったけど……エックスがどうとか」
グレンの突然の奇声のせいで生徒たちはあまり何を言っているのか聞き取れなかったようだ。
教室の外からはどったんばったんといった心配になるような効果音が響いてくる。
そして、たっぷりと数分後
「…………アルトリア・ペンドラゴンです。出身地は確かイテリア地方。年齢は15歳。趣味は世の中のセイバーを撲m……」
「はいっ!ということでアルトリアさんです!みんなよろしく!さあ、みんな授業に入るぞ──!」
生徒たちの頭には疑問符が乱舞する。
「ええい!うるさいぞ貴様!そうまでして私の授業を邪魔したいのか!」
「システィ?あの人前の事件で私を助けてくれた一人だよね?」
「あ、あー。まあそう言うことになるのかしらね」
どうも収拾を着けれそうにないらしい。
「せめて、せめてどうか皆さん、エックスと呼んでください────ッ!」
魂からの叫びが辺りに響き渡った。
「ハン、かくして彼らは
「おー、おー、こんなところにいたのか。夕日に向かってたそがれちゃって、青春してるね」
「色々と馬鹿か貴様は。そもそも俺たちが青春などと
燃える虹に染まる美女。夕日に輝く麦畑を思わせる美しい髪。十人中十人が美人だと答えそうな女がそこに立っていた。
「ほぅ、言ってくれるじゃないか。その口、黙らせてもいいのだぞ?」
「フン、言論統制か圧政者め。そもそも物書きが恐いのは締め切りだけだ」
「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素から成りしものは──》」
「失敬、言いすぎた。だからよせ。本気でやめろ。俺は肉体労働が何より嫌いなんだ!」
それは屋上での一幕。
青髪の童話作家と金髪の
アンデルセン……書くのが難しい。
キャラ崩壊してませんかね?