セイバーウォーズ 〜ロクでなしとのコスモ時空〜   作:アサシンと思ったうぬが不覚よ!

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書いてて思うこと、キャラが安定しねぇ!
あとで書き直すかもしれません。


リミテッド/ゼロオーバー
祭と食事と暗躍と


「はぁっ、まじか」

 

 そうやってグレンはため息をはく。いま、グレンの頭を悩ませているのは他でもない。魔術競技祭についてだ。

 

 魔術競技祭──それは、今現在のこの学院を騒がしくさせている一つの要因でもあったりする。

 この行事はその名からわかる通り、学院生徒たちが日々修練してきた魔術によって切磋琢磨して競い合うことを目的に開催されている。ただ普通に競い合うだけでない。

 毎年、一部の種目──決闘戦などというクラスの代表者同士で戦うといった種目以外は例年変更されているのだ。

 

 ロクでなしであることに定評があるグレンはこの祭を静観するつもりでいた。

 そう、い()のだ。

 

「最近はセンジのところに食べに行っているからマシだとしてあいつの食費はまじでバカにならないからな。こういうときに借りを返してもらおう」

 

 ブツブツと愚痴を吐く。

 無理もない。実に彼の先月の給料の実に七割が彼女の食費で消費されたのだ。そのときばかりは()()セリカも慈悲をくれたくらいだ。

 

「うん、だれか悪口を言っているな?」

 

 背中に寒気が走り、慌ててその思考を中断する。危なかった、具体的なことは言えないがなにか命の危機にさらされていた気がする。うん、シャレにならないね!

 

 教室のドアの前に立ち、最高にちょうどいいタイミングで登場するために機会をうかがう。耳をそばだてるとかすかにドアの中の声が聞こえた。

 どうやら教師がいないのにもかかわらず、自分たちで司会進行を進めている殊勝な生徒がいるらしい。感心しながら中での会話に耳を傾けると────

 

 

 

 

  ◆

 

 

 

 

「飛行競争に出たい人ー。……じゃあ、変身の種目に出たい人は?」

 

 ここ、アルザーノ帝国魔術学院のとある教室では教師がいないのにもかかわらず、学び舎にあるまじき静謐な空気が漂っていた。

 クラスの中心的立場であるフィーベルが競技祭の希望種目を聞いているが、芳しい反応は得られていない。

 

 選出方法は自主性を重視することから、クラスにおいて挙手制となっている。しかし、それらの意図は今は意味をなさずクラスメイトは沈黙を保っていた。

 ちなみに、彼女の親友であるティンジェルさんが書記である。なお、彼女もこの状況を打破するために、みんなに積極的になるように呼びかけたが、芳しい反応は得られなかった。

 

 それも無理はないだろう。俺のようにことお祭りごととなった積極的に動く方だと自負しているものでもこの有様なのだ。

 

「えーと、センジくんはなにか出たい種目はないかな?」

 

 ティンジェルさんは一人に聞き、それを皮切りに意見発信が活発になることを望んだみたいだ。

 

「うーん、特にないな。知っての通り俺は魔術が不得手だから」

 

 そうやって返事をする。

 また、心の中ですまないと謝る。だれも意見を言いださない閉塞的な時間が流れる。

 

 

 誰もがどこかで分かっているのだろう。

 

 

 ただ、それを誰もが認めたくないだけだ。

 

 

「ほ、ほら。去年参加できなかった人だって今年は参加できるのよ?」

 

 そんななかでもめげずに参加を促すフィーベルさん。少なくとも今年じゃなければそのセリフは素晴らしいものであったに違いない。

 ……だが、時期が悪かった。そんな誰かの気持ちを代弁するかのように、ギイブルが口を開く。

 

「────つまり、女王陛下がご来臨なさるのに、わざわざ無様を晒しに行くわけがないだろう。お情けで全員に出番を与えようとするからこうなるんだ」

 

「貴方……それ、本気で言ってるの?」

 

「もちろん」

 

「なるほど。つまりギイブルくんは全クラスメイト分の種目をこなすために人柱となるのですね!」

 

 突然、席を立ち上がり口を開いたエックス改めアルトリア=ペンドラゴン。

 

「ペンドラゴン……それは本気で言っているのか?」

 

「もちろん!私はそのうちに弁当を堪能しておくので悪しからず!」

 

 絶句したように口を開くギイブル。

 

 だが、一度転がりだしたこの展開は止まらない。もう閉塞的な空間(シリアス)はこりごりだとギャグ空間(コスモ)を展開していくエックス。

 

「シロウ、ということで弁当は幕の内弁当をお願いしてもいいですか!」

 

「別にいいが、それだとまた買い出しに出ないといけないぞ」

 

「任せてください!困ったときにはアマゾネス・ドットコム。

 安心安全、特異点だろうが異聞帯だろうが余裕で届けれますとも」

 

 いや、それはおかしい。

 

 このように言ってはいるものの、ギイブルは案外いいやつなのだ。口が悪いというか、口に毒舌フィルターがかかっているというか。

 とにかく、悪いやつでないのだが勘違いされがちなのだ。

 

「……はぁ。なんにしてもこれじゃ決まらないわね」

 

 ギイブルの矛先がエックスに向き、そのエックスの矛先が俺に向いたことにより、口撃から解放されたフィーベルさんがそう呟く。

 改めてどうしようかと隣にいたティンジェルさんに彼女が相談しようとする。

 

 まさにそのときだ。

 

「──ここは俺に任せろ!この、グレン大先生にな!」

 

「ややこしいのが来たぁ……」

 

 奇しくもギイブルも俺もフィーベルさんも意見が一致した瞬間であった。

 

「まだ決まっていなかったのか。よし、白猫、リストをよこせ」

 

「だから私は猫じゃありません!」

 

「はいはい。TENSAI妄想少女ね。

 で、だ。そんな話は置いといて、ここからは俺の超カリスマ的判断力でお前らを優勝へと導いてやる。遊びはなしだ、全力で勝ちに行くぞ!」

 

 ドヤ顔でそう宣言する。ちなみにフィーベルさんはなぜか横でわなわなとしながら固まっていた。

 

「ど、どうして先生がそのことを……っ!」

 

 

 

 グレン先生は普段の態度によらず、その指摘はとても的確であった。

 普段の講義の様子から得意分野をしっかりと把握しているのか、種目の特性と得意分野が鋳型にはまるように的確に埋めていく。そして、あっという間に種目全出場枠を埋めてしまった。

 

「納得いきませんわ。どうして私が決闘戦の選抜からもれているんですの!」

 

「だってお前、呪文噛むじゃん。知識はすごいけどよ……その癖(ソレ)はちょっと決闘戦向きじゃねえ。

 けど、今言った通り知識を始めとする勉強面では文句なしだ。だからこそお前を暗号早解きに当てたんだ。

 ……他に異議のある者は?」

 

「はい、質問です」

 

「なんだ、センジ」

 

 グレンが赤髪の少年を指名する。

 

「この神秘料理三番勝負ってなんですか?」

 

「俺が知るか!そもそもそれ魔術関係あるのか?」

 

 そう、今年の種目の中で一際異彩を放つこの種目はなんだろうか。周りを見渡すも、そのよくわからない名前に皆困惑している様子だ。

 

「あー、私も結構競技祭の前例を調べて見たけど今年が初めての種目みたいわね」

 

 どうやらフィーベルも知らないようだ。

 

「グレン先生とあろうものが、まだまだですね」

 

 しかし、"料理"と名のつく種目についてエックスが知らないわけがなかった。

 

「それは、私が帝国宮廷魔道士団特務分……いえ、知り合いと少しばかり取引をしまして無理やりねじ込んだ種目です」

 

「いや、お前何やってるの!」

 

 グレン先生のツッコミを完全に無視してエックスは続ける。

 

「ルールは簡単。それぞれに屋外キッチンが当てられ、料理を3品作ります。その際の食材はキッチンの中央に設置された大きなテーブルから好きにとってオッケーです。そして!その出来上がった食事を審査員が食べて点数を競うというものです!

 あ、ちなみに私はそこの審査員の一人なので」

 

「それ魔術関係なくね?」

 

「大丈夫です、そのあたりの問題も解決しました!

 食材を取る際には()()()()()()を使って食材を手に入れにいっても大丈夫です!あとは料理に魔術を使ったりするのもいけますね。ちなみに道具の持ち込みは禁止です。あと言うことと言うと、調理に入ると他の人からの直接的な妨害──魔術の行使など──は許可されていませんね。あとは、過剰な殺傷力のある魔術は禁止くらいでしょうか。

 ということでシロウ!これはあなたのためにある種目と言っても過言ではありません!是非、参加しましょう!そうしましょう!」

 

 エックスの期待が込められた眼差し、グレンの「それに俺も混ぜてもらって食費を……!」という切実な眼差し、フィーベルのなにかを望んでいるような眼差し、クラスメイトの羨望の眼差しを受けて俺は天を仰いだ。

 

「────な、なんでさっ!」

 

 彼の受難は続く。




本章の主題はリミテッド・ゼロオーバーです。

グレンは原作(=zero)を超えてもらうつもりですねー。

シロウを投入したのは正義の対比です。
ロラン=エルトリアがかいた正義の味方と、グレンこと正義の味方の弟子、帝国から去った"元"正義。そのなかでのシロウのあり方に期待下さい。

あとは、原作とは違うアーサー王とのFateを描きたかったのも一つ。

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