GIRLS und PANZER SISTER‘S   作:海野入鹿

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戦車道、再開します!
ぐうたら姫vs悪の組織


 美沙姫がここ大洗女子学園に入学してから一週間が過ぎようとしていた。

 そしてもう一人、運命の渦に翻弄されたかの様にこの場所に導かれた少女も転校して来ていた。

 後に語られる“大洗の奇跡”へと少女達を導いた戦女神(バトル・プリエステス)と、その傍らで戦場を混乱に導いた戦姫(バトル・プリンセス)の物語は今、幕を上げる。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

~大洗女子学園・生徒会・会長室~

 

「会長、準備整いました」

 

 うっすらと日差しが差し込む会長室で、三人の少女が少し緊張した表情で言葉を交わしていた。

 最初に発言した少女は、河嶋桃。

 黒髪のボブカットとつり目がちな瞳が知的な印象を映す、生徒会の広報担当で右目のモノクルが一番の特徴であろう。

 

「でも、これでは情報操作では無いでしょうか?」

 

 異議を申し立てたのは小山柚子。

 茶色がかった髪をポニーテールにした、母性を強く感じさせる少女。

 ちなみに生徒会副会長でもある。

 

「だーいじょぶ、だいじょぶ」

 

 呑気な声を上げるのは、生徒会長の角谷杏。

 だが、彼女の次に発せられた言葉は少し沈んだ物だった。

 

「全生徒へ向けてはそれで良いとして、でもさ、西住ちゃんの方は少し待とっか。あの子の転校の理由を考えるとさ」

 

 そう言って寂しそうな笑みを浮かべる。

 

「承知しました。では、田尻の方は?」

 

 直立姿勢で桃が問いかける。

 問われた杏は、今の今までしていた表情を一変させると

 

「ああ、そっちは大丈夫。なんなら今から拉致りに……、いやいや勧誘にいこっか」

 

 そう言って満面の笑みで生徒会長室を後にした。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 美沙姫達、新一年生の浮かれていた気分も一段落し、クラスメイト達とも気兼ねなく話せる様になっていた。

 そんな日常の昼下がり、学食でお昼ごはんを食べ終えた美沙姫はクラスの自分の席でのんびりとだらけていた。

 

「美沙姫さんの~、髪は~、きれいですわね~」

 

 ゆったりした言葉遣いで話しながら美沙姫の髪を梳かすのは二階堂蘭子。

 黒髪のボブカットで、動作の一つ一つが優雅で流れる様な動きを見せる、大和撫子やお嬢様と言った言葉が良く似合う少女。

 

「そうだよねー。髪型もお姫様みたいだし、どこの美容院行ってんの?」

 

「ははっ」

 

 この問いに、美沙姫は乾いた笑いを口にしつつ目を反らした。

 さすがに床屋で姉と大喧嘩をした結果だとはとても言えない。

 そして、質問したのは小林寿子と言う少女。

 明るい茶髪をベリーショートにし、入学早々自動車部へと入部した無類の車好き。

 将来の夢は、ル・マン24での優勝と、F1のワールドチャンピオンらしい。

 人懐っこい性格の様で、最初に美沙姫に話しかけたのも彼女だった。

 皆がのどかなお昼休みを過ごしていたまさにその時、教室の扉が乱暴に開かれ何者かが乱入して来た。

 人数は三名、恐らくは上級生だと思われる。

 その者達は教壇の前で横一列に並ぶと、中央のツインテールの少女がグルリと教室内を見渡し頷いた。

 それが合図だったのか、向って左側に立っていたモノクルを掛けた少女が口を開く。

 

「一年C組、田尻美沙姫。前へ」

 

 凛と張った声だった。

 しかし、誰も立ち上がろうとはしなかった。

 

「一年C組、田尻美沙姫。前へ」

 

 もう一度声がかかる。

 が、同じ結果だった。

 モノクルの少女は、苛立った様な表情を浮かべながら美沙姫達の前まで来ると

 

「一年C組、田尻美沙姫。前へ」

 

 同じ言葉を繰り返す。

 だが美沙姫は涼しい表情で左右に視線を向ける。

 まるで誰かを探している様に。

 モノクルの少女は机に激しく手を叩きつけると

 

「田尻美沙姫! お前の事だ!」

 

 しかし美沙姫はニッコリとほほ笑むと

 

「田尻さん? 人違いですよ、せんぱい。わたしは足立です。田尻さんはたぶん、まだ学食じゃないでしょうか」

 

「え? そ、そうなのか」

 

 モノクルの少女はギョッとした表情をした後、背後に控えるツインテールの少女に助けを求める様な視線を向けた。

 ツインテールの少女は一度目を瞑ると不敵な笑みを浮かべながら、美沙姫の前まで来ると囁く様に口を開く。

 

「田尻ちゃーん。いや………………ミサキチちゃん。あんまり駄々をこねてると保護者の方に連絡が行くよ。例えば……お姉さん、とか」

 

 この発言で、美沙姫の背筋に悪寒が走る。

 

「ま、まさか、お前達は紅茶格言の回し者か……」

 

「なんだ、その缶入り飲料の様な名前は」

 

 美沙姫の姉に対しての悪態にモノクルの少女が突っ込みを入れた。

 

「いやー、そう言う訳でも無いんだけどねぇ。あっと、私は生徒会長の角谷杏だ。そう言う訳で、小山、河嶋」

 

「「はい!」」

 

 杏の号令で柚子と桃は美沙姫を両側から拘束した。

 

「「確保!」」

 

「しゅっぱーつ」

 

「へ?」

 

 杏の掛け声と共に美沙姫はずるずると引きずられ教室を後にした。

 ずるずると、ずるずると美沙姫は連行され続けていた。

 

「はーなーせー!」

 

「黙って同行しろ!」

 

 河嶋桃の檄が飛ぶ。

 

「はーなーせー!」

 

「黙って歩いた方がいいと思うよ。ね。ね」

 

 小山柚子が優しくたしなめる。

 

「まーまー。ミサキチも落ち着いて」

 

角谷杏生徒会長が仲裁に入る。

 

「うるさーい! はーなーせー! 紅茶格言の手下どもー!」

 

 ギャーギャー、ワーワーと四人が仲良く言い争っている光景は全校生徒の注目の的となった。

 一年生の教室の前を、二年生の教室の前を、そして三年生の教室の前を通り過ぎて行く。

 入学七日目、田尻美沙姫は学校中で知らぬ者は居ない存在になった。

 ………………悪い意味で。

 

 




最終章の続きが気になって仕方がない。
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