この世界で ~白くあり続ける為に~   作:璃鶯

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第13話 ~事の結末は~

 

ま、そんな感じだったんだけど・・・

 

「なあ、アスナ、お前結婚した事あるの?」

 

キリトの馬鹿が雰囲気ぶち壊しました。

アスナはキリトにフォーク突きつけてます・・・

 

「ち、違う違う!!

 ほら、さっきロマンチックだとかプラスチックだとか・・・」

 

バカキリト・・・ 

 

「誰もそんな事言って無いわよ!!

 ロマンチックでプラグマチックって言ったのよ!!」

 

と言いながらキリトの脛蹴っ飛ばしてますね。アスナ・・・。

キリト、プラグマチックの意味わかってるのか?

一応言っておくか・・・。

 

「あー、キリト、プラグマチックってのは、実際的って意味だからね?」

 

「じ、実際的? SAOでの結婚が?」

 

「そうよ、だってある意味身も蓋もないでしょ? ストレージ共通化だなんて。」

 

ストレージ共通化ねぇ・・・

・・? ストレージ 共通化・・・ 

グリセルダさんとグリムロックさんって、結婚してたんだよね・・・

グリセルダさんのストレージにあるモノって、彼女が死んだらどうなるの?

 

「ねぇ、アスナ、離婚する時はアイテムとかってどうなるの?」

 

「え・・・?」

 

まぁ、そんな質問すれば当たり前か。

 

「ええっとね・・・確か、いくつかオプションがあるのよ。

 自動分配とか、アイテムを1個ずつ交互に選択していくとか・・・他にも幾つか、

 私もよく覚えてないけど。」

 

「詳しく知りたいね・・・」

 

「あぁ、 そうだ、ハク、試しに俺と結婚して見ないか?」

 

アスナの前でそれは駄目だと思うけど・・・。

まぁ、それが手っ取り早いかな?

 

「まぁ、良いけど。 自分の持ってるアイテムとかコルとか覚えて置かないと。」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!!

 2人とも、何考えてるの!!」

 

「「ん?」 アイテム分配について確かめる為に、ハクと結婚する。」

 

「バカなの!? そんな気軽に結婚申請出すものじゃないでしょ!?

 それに、ハクも何考えてるの!! 

 あっさり受けようとするなんて、結婚をなんだと思ってるの!?」

 

あ、そうか、アスナは、私が政略結婚の駒として扱われてるのを知らないんだ・・・。

結婚なんて、特に良い物とも思わず今までいたからなぁ・・・

 

嘘にはならない程度に返して置いた方が良いよね・・・。

 

「ん~・・・ 結婚すれば、自由と引き換えに相手との仲が手に入る。

 その程度かな?」

 

「あ、そうか・・・お前・・・」

 

ああ、キリトには前話したから、思いだしたのかな?

アスナは・・・

 

「ぇ・・? 何で、なんでハクはそんなに結婚にこだわら無いの!?

 好きな人と一緒に結婚出来たら幸せとか、そういう風には思わないの!?

 ハクだって女の子なんでしょ!?」

 

自分では出来る限り良い方に考えて言ったけど、

アスナには不服だったのか・・・

 

でも、私の中では、結婚なんて唯言われるがままの相手とさせられるだけだから、

むしろ嫌な事としか認識してないんだよ。

ごめんね・・・。

 

「アスナ、少し落ち着けって、

 ハクにだって、事情って物があるから・・・。

 俺とハクが結婚を試すのがダメなら、ヒースクリフに聞いてみよう。昼飯の時、

 いろいろ知ってたから、教えてくれるんじゃないかな?」

 

「うん、それで良いよ。 でも、何時昼飯なんて一緒したの?」

 

「了解・・・ 昼ご飯は、キリト君が今日の昼に団長を呼び寄せて、

 美味しくない醤油抜きの醤油ラーメンを奢ったの。

 

 でも、ハクはもっと結婚に夢と言う物を持った方が良いと思う・・・女の子なんだし・・・」

 

「醤油抜きの醤油ラーメン? 何それ。

 結婚に夢の方は・・・まぁ、努力するよ。」

 

*―――――――――――――――――――――*

 

アスナがヒースクリフにメッセージを飛ばしてから、数分後・・・。

 

さっきアスナが言った、自動等価分配、交互選択分配。

パーセンテージで偏らせた自動分配も可能。慰謝料って事か・・・

 

しかし、彼は良く知ってるねぇ。攻略本でも持ってるんじゃなかろうか。

ある訳無いけど。

 

でも、アスナが読み上げた文だと、相手と同意の上でないと離婚出来ない仕組みだよね・・・。

裁判所なんてこの世界には無いし。

 

その疑問は、その続きで読み上げられたメッセージによって解決した。

 

「ちなみに、無条件での離婚は、

 アイテム分配率を自分ゼロ、相手百に設定した場合のみ可能となる、

 その場合、離婚成立・ストレージ分割時に相手方が持ちきれないアイテムは

 すべて足元にドロップする。キリト君、くれぐれも一方的に離婚されそうになったならば

 宿屋の部屋などに避難しておく事をお勧めする。以上だ 

 

 ・・・ですって。」

 

最後の一文に笑いを堪える必要があったんだけど・・・

それより大事なのは、

自分ゼロ、相手百。

それは、相手の同意を得ずに、強制的に離婚した場合・・・

同意無しで、離婚・・・

それは、相手と死別した時にも適用されるんじゃないだろうか・・・。

 

そうすると、グリセルダさんの持っていた指輪は・・・グリムロックさんに・・・

 

指輪は、グリムロックさんが奪ったって事・・・。

 

「っ・・・!!

 

 アスナ、ヨルコさんの場所教えて!!」

 

「え? え、ええ・・・」

 

アスナは、ウィンドウを可視化にしてくれたので、それを見て、

 

「キリト、一緒に来て! アスナは、グリムロックさんを探して!

 ヨルコさんの近くにいるから!!

 

 セツっ! 行くよ!!」

 

「「え?」」

 

ごめん、答えてる時間無い!

キリトの腕をつかんで、無理やり巨大化したセツに乗せる。

 

「や、やめろっ! セツはやめろっ!!」

 

「暫く我慢してっ!!  セツ、とりあえず転移門までっ!!」

 

*―――――――――――――――――――――*

 

「うわぁぁあああああ!!」

 

「煩い! 落ちないでよね!!」

 

と言う訳で、キリトと私を乗せたセツは、ヨルコさんのいる場所まで走ってて・・・

見えたのは、ヨルコさんと男性1人に鎌をあてているローブ姿の人と、

カインズさんに包丁みたいなダガーをあてているローブ姿1人、

それから、もう一人ローブ姿の人。

 

ローブ姿の人3人は、たぶん笑う棺桶(ラフィンコフィン)の・・・

ザザ、ジョニー・ブラック、PoH

 

セツが、一際高く跳躍し、彼らの前に着地する。

 

「さてと、ギリギリセーフかな。 お疲れ、セツっ!」

 

「おい、ハク・・・ やっぱり・・・」

 

「キリトも予想できてるでしょ? あってるはずだよ。

 

 お久しぶり。PoH。」

 

「相変わらず、趣味悪い恰好だな。」

 

「手前ェに言われたかねぇな。」

 

キリトに言われたのだから、PoHの言葉は間違って無いな・・・。

 

「ンの野郎・・・! 余裕かましてんじゃねぇぞ! 状況解ってるのかコラァ!」

 

ダガーを振り回しながら言う配下を片手で制し、PoHは右手の包丁を指先でぐるぐる回した。

 

「コイツの言う通りだぜ、キリトに白姫よ、格好良く登場したのは良いが、

 いくら手前ェ達でも俺達3人を2人で相手出来ると思ってるのか?」

 

彼らも白姫って二つ名を知ってるのか!!

まぁ、最近はもう諦めてるけど、

 

って、違う・・・

状況は、“現時点”では、彼らの言う通りかもしれない。 だけど。

 

「セツ、私に化けて。」

 

そう言えば、セツは私に猫耳を付けただけの姿になる、後は、セツにダガーを渡す。

 

「セツは、人に化ければ剣を扱う事が出来るし、

 プレイヤーには使えない魔法の用な物まで使う事が出来る。

 私達に劣らず、立派に戦ってくれるよ。」

 

「つまり、状況は3対3だ、

 

 それに、10分もすれば援軍として攻略組30人が駆け付ける。

 お前たち3人で、それだけの数、相手に出来ると思ってるのか?」

 

あれ、来るのは精々十数人のはずじゃ・・・

ハッタリ上手いね、キリト。

でも、それが効いたのか、彼らは武器を収めて帰って行った。

 

キリトがウィンドウを操作してるのは、クライン達に来なくて良いって伝える為だろうね。

 

「また会えて嬉しいです、ヨルコさん、

 そして、初めまして、カインズさん。」

 

「本当は、後できちんとお詫びに伺うつもりだったんです・・・

 と言っても、信じて貰えないでしょうけど。」

 

「いいえ、アスナとのフレンドを解消しなかったりしてる時点で、

 分かりましたから。」

 

「初めまして、では無いですよ、ハクさん、チャクラムを投げられた時は、慌てましたし。」

 

「な!? ハク、そんな事してたのか!?」

 

「あ~・・・

 転移結晶使われそうだったから、ノックバック発生させようと・・・

 外しましたけど。」

 

「はぁ・・・まぁ、良かったんじゃないのか。結果的には。」

 

うぅ・・・アスナとのデュエルに勝って、チャクラム貰ってやる・・・

 

「ハク・・・キリト。助けてくれた礼は言うが、なんで分かったんだ?

 あの3人が襲ってくる事が。」

 

「あぁ、分かった訳じゃないんだけどね・・・

 有り得るって思ったから。

 

 違ってたら違ってたで、それで良いし、

 今回は合ってたから、助けれた。 それだけだよ。」

 

まぁ、理由を教えたら、彼らはかなりの衝撃を受けるだろうね・・・・。

 

「おかしいって思ったのは、つい30分前なんだけどね。

 ヨルコさん達が使った2つの武器は、グリムロックさんに作って貰った物でしょ?」

 

私の質問には、カインズさんと眼を見交わしたヨルコさんが答えてくれた。

 

「“圏内PKを偽装する”と言う私達の計画には、

 継続ダメージに特化した貫通属性武器が必要でした、

 

 しかし、そんな特殊な仕様の武器を置いている所は見つからなくて・・・

 鍛冶屋さんにオーダーすれば、武器に銘が残ってしまいます。

 その日魯に訊けばオーダーしたのが私達である事が解ってしまいます。」

 

続きは、カインズさんが話してくれた。

 

「だから、僕たちは已む無く、ギルド解散以降初めてあの人に・・・

 リーダーの旦那さんだったグリムロックさんに連絡を取ったんです。

 僕たちの計画を説明して、必要な貫通武器を作ってもらう為に。

 

 居場所は分からなかったけど、フレンド登録だけは残っていたので・・・

 

 グリムロックさんは、最初は気が進まないようでした、

 彼女を安らかに眠らせてあげたいって・・・

 

 だけど、僕らが一生懸命頼んだら、やっとあの2つの武器を作ってくれたんです。」

 

やっぱり、彼らは、グリムロックさんを指輪事件の被害者の1人とみているんだろう。

 

「残念だけど、グリムロックさんがあなた達の計画に反対したのは、

 グリセルダさんの為じゃないんだよ。 圏内PKなんて派手な事件を演出して、

 大勢の注目を浴びれば、誰かが気づいてしまうかもって思ったんだ、

 

 結婚相手が死別した時、ストレージのアイテムがどうなるかに。」

 

「え・・・・?」

 

私の言葉に、意味が分からない、と言うように、彼らは首をかしげた。

 

無理もないよね、アインクラッドでは、幾ら仲が良くても、結婚まで行くのは少ない。

そして、離婚する人はもっと少ないだろうし、

ましてや死別なんてもっと少ない。

 

「いい? グリセルダさんのストレージは、グリムロックさんと共通だったんだ。

 グリセルダさんを殺しても、指輪はグリムロックさんのストレージに入るだけなんだよ。

 

 そして、彼はその指輪を売って、そのお金をシュミットさんに渡したんだ。」

 

「グリムロックが・・? あいつがメモの差出人だったのか?」

 

しかし、ヨルコさんは、それを否定した。

 

「そんな、嘘です、そんな事が!! あの2人はいつも一緒でした、

 グリムロックさんはいつだってリーダーの後ろでニコニコしてて・・・

 

 それに、そうです、あの人が真犯人だって言うなら、

 なんで私達の計画に協力してくれたんですか!?

 あの人が武器を作ってくれなければ、私達は何もできませんでした。

 指輪事件が掘り返される事も無かったはずです。違いますか?」

 

ヨルコさん・・・ごめんね・・・

 

「貴方たちは、グリムロックさんに計画をすべて話したでしょう?」

 

「えぇ・・」

 

「なら、彼は計画がすべて成功したらどうなるか、知っていた。

 つまり、罪の意識に駆られたシュミットさんが、此処で懺悔し、

 ヨルコさんとカインズさんが問い詰めるという、最終幕までね。

 

 それを利用して、共犯者のシュミットさん、

 解決を目指すヨルコさんとカインズさん。

 この3人をまとめて消せば、指輪事件を永久に闇に葬れる。

 

 笑う棺桶の3人が来たのは、

 それが目的で、グリムロックさんが情報を流したから。だよ

 

 聖竜連合の幹部が、仲間無しで来てるってね、

 たぶん、グリセルダさん殺害実行を依頼した時からのパイプがあったんだ。」

 

3人とも、月明かりの下でもはっきり分かるくらい顔が蒼白になっていて・・・

 

ヨルコさんは、一切艶の無い声で囁いたのは

 

「グリムロックさんが・・・私達を殺そうと・・・?

 でも・・・何で・・・

 

 そもそも、なんで結婚相手を殺してまで、

 指輪を奪わなきゃいけなかったんですか・・・・?」

 

と言う疑問、それは、私には分からない・・・

そこで、キリトが言った言葉、

 

「ハク、アスナが来た。」

 

なら、彼も一緒のはず。

 

「ヨルコさん、その疑問は、本人に聞いて下さい。」

 

アスナは、1人の男性の背に剣を突き付けながら、歩いてきた、

彼がグリムロックさんか・・・

先入観のせいもあるけど、香港とかのマフィアみたいですよ・・・。

黒ずくめの服とか、丸メガネとか、黒い帽子とか。

 

彼は、シュミットさん、ヨルコさんとカインズさん、そして小さな墓標を見てから言った。

 

「やぁ、久しぶりだね、皆」

 

その声に、数秒経ってからヨルコさんが応じた

 

「グリムロックさん・・・ 貴方は、あなたは本当に・・・」

 

グリセルダさんを殺して指輪を奪ったのか、

そして、事件を隠ぺいする為に更にこの場の3人も消し去ろうと言うのか。

 

言ってはいないけれど、誰でもそう問うているのは明らか。

 

その問いには、暫く答えなかった 

 

アスナが、レイピアを鞘に納めて、私の横にいたキリトの隣に移動するのを見届けてから、

彼は口を開いた。

 

「誤解だ、私はただ、事の顛末を見届ける責任があろうと思って、

 この場所に向かっていただけだよ、そこの怖いお姉さんの脅迫に素直に従ったのも、

 誤解を正したかったからだ。」

 

否定しますか・・・

確かに、PoHらに情報を流したと言う証拠は無いが、

しかし指輪事件の方はシステム的に言い逃れようが無いはずなのに・・・

 

「嘘だわっ!!」

 

アスナが、強く否定した、

 

「あなた、ブッシュの中で隠蔽してたじゃない、

 私に看破されなければ、動く気も無かったはずよ!」

 

「仕方ないでしょう、私はしがない鍛冶屋だよ、このとおり丸腰なのに、

 あの恐ろしいオレンジ達の前い飛び出していけなかったからと言って、

 責められねばならないのかな?」

 

彼は穏やかに、言い返してきた。

 

シュミットさん、カインズさん、ヨルコさんは、無言で彼の言葉を聞いていた、

まだ半信半疑なんだろうね、

かつてのサブリーダーが、凶悪なレッドプレイヤーに依頼て、

自分たちを殺そうとしたなど、思えないだろうし、

信じたくないだろう。

 

アスナが、まだ何か言い返そうとするのを、キリトが制し、

口を開いた。

 

「初めまして、グリムロックさん、俺はキリトっつう・・・まぁ、ただの部外者だけど。

 確かにあんたがこの場所にいた事と、

 ラフィン・コフィンの襲撃を結びつける材料は今は何もない。

 彼らに訊いても証言してくれる訳ないしな。」

 

 だけど、指輪事件、これは必ずあんたが関わってる、いや、主導してる。

 なぜなら、グリセルダさんを殺したのが誰であれ、

 指輪は彼女とストレージ共有していたあんたの手元に残ったはずだからだ、

 あんたはその事実を明らかにせず、指輪をひそかに換金して、半額をシュミットに渡した、

 これは、犯人にしか有り得ない行動だ、

 故に、あんたが今回の圏内事件に関わった動機もただ1つ

 

 関係者の口を塞ぎ、過去を闇に葬る事だ、という事になる、違うか?」

 

流石キリトっ!言う時はしっかり言うねっ!

何て場違いな事を考えてる・・・隙は無く。

 

「成程、面白い推理だね、探偵君、 

 でも、残念ながら1つだけ穴がある。」

 

「「なに?」」

 

グリムロックさんの言い分に、反射的に問いかけてしまった私とキリトは悪くないはず。

 

「確かに、当時私とグリセルダのストレージは共有化されていた、

 だから、彼女が殺されたとき、そのストレージに存在していた全アイテムは私の手元に残った。

 

 と言う推理は正しい、 しかし・・・

 

 もしもあの時、あの指輪が、ストレージに格納されていなかったとしたら?

 つまり、オブジェクト化され、グリセルダの指に装備されていたとしたら・・・?」

 

「あっ・・・」

 

グリムロックさんの言葉に、アスナが微かな声を漏らした・・・

 

だけど。

 

「ねぇ、ヨルコさん、

 グリセルダさんが死んだって分かったのは、何時?」

 

私の問いに、困惑しながらも答えたてくれた彼女のの言葉は、私を満足させる物だった。

 

「帰って来ない事を不思議に思って、フレンドリストと生命の碑を見に行ったのは、

 彼女が死んでから2日後の事でした・・・」

 

「グリムロックさん、グリセルダさんが死んだ時、貴女の前にはこう表示されたはずです。

 

 “グリセルダと離婚しました”って」

 

「「えっ?」」

 

アスナとキリトは、2人そろって驚いてる、そりゃそうか。

 

「この情報は、私がアルゴから買いました、

 貴方は、彼女からいきなり離婚されて、何も気にしなかったと?そういう事ですよね?

 

 普通なら、離婚された理由を知ろうとして、彼女が死んだ事に気が付くはずです、 

 そして、死んだことが分かったら、すぐにギルドの皆に伝えるはず、

 

 なぜ、それをしなかったんですか?

 

 理由は、彼女がその時亡くなったのを分かってるから、違いますか?」

 

そう言うと、彼はその場に膝をついた。

認めるんだ、なんやかんやで言い逃れしようとするかと思ったのに。

 

ヨルコさんは、泣きながら彼に言った

 

「なんで、なんでなの、グリムロック。なんでリーダーを、奥さんを殺してまで、

 指輪を奪ってお金にする必要があったの」

 

「・・・金? 金だって?」

 

グリムロックさんが、膝立ちのまま、笑って、

 

そしてメニューウィンドウを呼び出し、オブジェクト化されたそれは、

やや大き目の皮袋。

持ち上げたそれを、グリムロックさんは無造作に地面に放り投げた。

 

重い響きに重なって、澄んだ金属の音がいくつも響いた、

その音で推測できた、中身がかなりの額のコル金貨であると・・・

 

「これは、あの指輪を処分した金の半分だ、金貨1枚だって減っちゃいない」

 

「え・・・?」

 

戸惑ったように眉を寄せるヨルコさんを見上げ、そして私達を見渡し、

彼は乾いた声で言った。

 

「金の為ではない、私は、どうしても彼女を殺さねばならなかった、

 彼女がまだ私の妻でいる間に。

 

 グリムロック、グリセルダ。頭の音が同じなのは、偶然じゃない、

 SAO以前にプレイしたネットゲームでも、常に同じ名を使っていた。

 そして、システム的に可能ならば、必ず夫婦だった。

 なぜなら、彼女は、現実世界でも私の妻だったからだ。

 

 私にとっては、一切の不満も無い理想的な妻だった、

 可愛らしく、従順で、ただの一度の喧嘩もしたことが無かった。

 

 だが、共にこの世界に捕らわれたのち、彼女は変わってしまった。

 

 強要されたデスゲームに怯え、恐れ、竦んだのは私だけだった、

 

 彼女のどこにあんな才能が隠されていたのか、戦闘能力に置いても、状況判断力に置いても、

 グリセルダ・・・いや、ユウコは大きく私を上回っていた、

 それだけではない、彼女はやがて、私の反対を押し切ってギルドを結成し、メンバーを募り、

 鍛え始めた、

 

 彼女は、現実世界にいた時より、遥かに生き生きとし、充実した様子で・・・

 

 私は認めざるを得なかった、私の愛したユウコは消えてしまったのだと。

 たとえゲームがクリアされ、現実に帰れたとしても、

 おとなしく従順な妻だったユウコはそこにはいないのだと。

 

 彼女は私に語ったよ、向こうに戻れたら、もう一度働きたい、

 いずれ起業もしてみたい、とね、私の畏れが、君達に理解出来るかな。

 もし向こうに戻った時、彼女に離婚を切り出されでもしたら・・・

 

 そんな屈辱に、私は耐える事が出来ない。ならば・・・

 ならばいっそ、まだ彼女が私の妻でいる間に、

 ユウコを、永遠の思い出の中に封じてしまいたいと願った私を、誰が責められるだろう・・・?」

 

結婚って怖いね・・・

性格が変わった程度で、そこまで嫌な物なのか。

私はどうなるんだか、SAOに来てから、こんなに性格変わっちゃってるのに。

 

でもさ、それで人を殺すって・・・ 

奥さんの事、本当に好きだったのかな・・・。

 

「屈辱・・・だと? 奥さんが言う事聞かなくなったから・・・

 そんな理由で、あんたは殺したのか? 」

 

キリト、相当怒ってる・・・当たり前だけど。

人を殺すってのは、そんなに簡単に行って良い事じゃない。

 

「そんな理由? 違うな、十分すぎる理由だ、君にもいつか分かる、探偵君。

 

 愛情を手に入れ、それが失われようとした時にね」

 

「いいえ、間違っているのはあなたよ、グリムロックさん」

 

そう反駁したのは、アスナ。

 

「貴方がグリセルダさんに抱いていたのは、愛情じゃない、ただの所有欲だわ!!」

 

そして起こった静寂。

それは、今まで黙っていたシュミットさんによって破られた。

 

「この男の処遇は、俺達に任せて貰えないか。

 私刑にかけたりはしないから、」

 

其の声に、数刻前の怯えた響きは無かった。

 

「良いよね? キリト、アスナ。」

 

2人は、小さくうなずいた。

 

「任せたよ、皆さん。」

 

シュミットさんは、グリムロックさんを立たせて、丘を降りて行った。

 

その後に、ヨルコさんとカインズさんは、私達の横で立ち止まり、

深く一礼したあと、

ヨルコさんが口を開いた

 

「アスナさん、キリトさん、ハクさん、本当に、何とお詫びして・・・

 何とお礼を言って良いか。 皆さんが居なければ、私達は殺されていたでしょうし・・・

 グリムロックの犯罪も暴く事ができませんでした。」

 

「いいや、この作戦を考えたのはあなた達だよ、

 見事に引っかかった、良く考え付いたね、

 元々、あなた達が実行しなかったら、何も分からなかったよ。」

 

「いいえ、暴かれるとは思っていませんでしたし、」

 

2人は、もう一度深く頭を下げ、丘を降りて行った。

 

その場に残った私達は、その場に立ったまま彼らを見送り続けた。

 

「ねぇ、2人とも。」

 

不意にアスナがポツリと呟いた。

 

「もし、君達なら、仮に誰かと結婚した後になって、相手の隠れた一面に気付いた時、

 どう思う?」

 

その質問に、キリトが答えたのは、

 

「ラッキーだったって思うかな、だ、だってさ、結婚するって事は、

 それまで見えてた面はもう好きになってる訳だろ?

 だから、その後新しい面に気付いて、そこも好きになれたら・・・

 に、2倍じゃないですか」

 

最後が敬語になったのが気になるけど。

へぇ、面白いじゃん。キリトらしい。

 

「ふうん、変なの」

 

アスナ、そんな言い方しなくても・・・

 

「ハクは?」

 

っ・・・言わなきゃダメかぁ・・・

 

「そうだねぇ・・・

 その新しい面ってのが、どんな面かにもよるね、

 良いと思える面だったら、それで良いし、

 好めないと思ったら、直せないかなとか思うかな。

 

 あとは、その面がどう言う時にどう言う目的で出るかも考える。」

 

「「へぇ・・・」」

 

なんなの・・・2人そろって・・・

 

「ま、いいわ、そんな事よりお腹空いたわ、さっきも食べそびれちゃったし。」

 

えぇー・・・ なんか私の言葉で変な所あった?

不安なんだけど・・・ ノーコメントって・・・

 

「そ、そうだな・・・」

 

キリトまで・・・

 

「2日も前線から離れちゃったわ~ 明日からまた頑張らなくちゃ」

 

「ああ、今週中に今の層は突破したいな。」

 

はぁ、まあ良いけど・・・

 

「だったら皆で昼寝しないようにしないとねっ!」

 

「「ハクだって寝てただろ(じゃない)!!」」

 

そう言って皆で歩き出す・・・

 

そして、一回だけ、グリセルダさんの墓標を振り返って見ると・・・

 

 

急いでキリトとアスナの腕を掴んで、

 

「「何?」」

 

と言われたけど、無視してグリセルダさんのお墓の方を指す。

 

すると2人は、

 

「お墓がどうかしたのか?」

 

え?

 

もう一度振り返ってみても、確かに其処にあったのは墓標だけで。

 

さっき見た、淡い金色に輝きながら立っていた、

美しくも凛々しい女性の姿は何処にも無くて。

 

「いいや、私の見間違いだった見たい。」

 

そう言うしか無かったけど、あの人はきっと・・・

 

仮想の世界でも、全てがデータで説明できる訳じゃないはずだから。

 

 

 

・・・~彼女はこの結末を見届けていたはずだから~・・・

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