11月7日・・・キリトの誕生日の事はかなり前のような気がしてるけど、
まだ一ヶ月しか経ってないんだよね・・・。
キリトは、ユイちゃんと一緒に暮らすようになってから、
無茶な事はあんまりしなくなって何より・・・。
でも、キリトは今日、75層ボスに偵察隊が全滅させられて、
ボスの情報が何もないままボス戦に挑む事になっていた・・・
鏡を使っても、誰もいないボス部屋の中のボスまでは覗けないし、
覗けても情報を伝える事は出来ないんだから仕方ない。
ユイちゃんは、
キリトに家で待っていろと言われたので、私と一緒に鏡で様子を見る事に。
そして今、ボス部屋の扉が・・・ ―――開かれた。
*―――――――――――――――――――――*
ボスがいない・・・鏡でボス部屋を見渡すと・・・
「上っ!」
叫んでも、聞こえる訳無いのに。
だけど、天井に張り付いて、攻撃のタイミングを見計らってるボス・・・
“ザ・スカル・リーパー”
髑髏の刈り手・・・
“
経帷子を着て、手に
“死神”の意・・・。
そして、そのスカルリーパーも、骸骨で、前に2本の巨大な鎌を持つ・・・
巨大な
ぼ、ボス戦参加してたら死んでたわ・・・精神的な意味でも。
*―――――――――――――――――――――*
一瞬、何が起こったのか分からない・・・それくらいの時間の間に。
有り得ない・・・私見たいに、敏速値を重視しすぎたプレイヤーじゃない。
ちゃんと、それなりの防御力がある装備のプレイヤー。
なのに、
どういう攻撃力よっ!
そして、それを見る、キリトの顔は・・・
何かを思い出して悲しむような。そんな顔をしていて。
一撃でHP全損なんて見ちゃったから、私の時でも思い出しちゃったかな?
今はそんな時じゃないから、集中してっ!
*―――――――――――――――――――――*
そして、何と言うか・・・
ヒースクリフとキリトがボスの鎌2本を受け止め続ける・・・と言う・・・
無茶苦茶を成功させ、周りの他のプレイヤーが、側面からボスに攻撃をし続けた。
危ない真似するなよキリト・・・
集中とかの次元じゃないよね・・・それ・・・。
ヒースクリフは死なないだろうしねっ!
*―――――――――――――――――――――*
そして、1時間以上にも及ぶ戦いの末・・・
スカルリーパーはポゴリンとなって消え去った・・・
「終わったねぇ・・・」
「はいっ、パパもちゃんと生きててくれましたっ!」
そう言えば、ユイちゃんはキリトに死なないでって約束してたっけ。
万が一ユイちゃんとの約束破ってたら許せないねっ!
・・・生きてるから良いけど。
鏡から聞こえて来る声は、死んだ人の数を数え、驚愕する声。
15人・・・
多いね・・・まだ24層も残ってるのに・・・
いや、100層は問題無いね。私だもん!
レベル、180越えたけどね・・・ヒースクリフに負けたくなくて・・・。
目指せ、レベル200っ!
*―――――――――――――――――――――*
それどころじゃなくなっちゃったよ・・・
キリトがヒースクリフ=茅場さんだって事を見抜いて・・・
理由は、鎌を受け止めていた時、
HPがイエローギリギリに入ってから、一気に動きが早くなったからだそうだ。
そして、ヒースクリフは、自分が茅場だと言う事、
99層のボスである事、
その事を、95層で打ち明ける予定だった事を打ち明け、
キリトに正体を見破った報酬と称して・・・
99層、100層ボスとの連戦のステージを与えると言った。
ヒースクリフと、100層ボス(=私)を倒せれば、このゲームはクリアされるとも。
そんな事言ったら、キリトが受けない訳ないじゃん・・・
たとえどんなに不利だってわかってたって・・・。
*―――――――――――――――――――――*
・・・予想通り・・・
キリトは周囲の静止も振り切って、茅場さんとの戦闘を開始した。
ソードスキルを使ってはいけない事位、解ってるみたいね・・・
あとは焦って使っちゃわない事・・・。
「ママ・・・。
私、先にパパのメモリーに退避しています。
茅場さんは・・・ヒースクリフさんは、私を作ってくれた人です。
そんな人と、パパが戦うのを、見ていたくないんです・・・。」
そういえばそうだね。茅場さんはこの世界の全て・・・
NPC、モンスター、果てには植物等まで・・・
全てを作った人。全ての“命”を作った人・・・。
なんだか凄い偉大に見えてきちゃったよ・・・。
「だから、パパがこの部屋に来たら、
・・・
伝えて下さい。」
「了解っ!分かったよ、絶対伝える。」
「はいっ!」
その言葉を最後に、ユイちゃんは金色の光となって消えた。
ユイちゃんは、解っているんだろうね。
キリトが現実に帰るには、ヒースクリフと、そして私をも殺さないといけないって事を。
*―――――――――――――――――――――*
ヒースクリフの盾にも攻撃判定がある・・・
ヒースクリフとキリトの戦闘中に分かった事。
そして、彼の盾は、キリトの二刀流をも受け止め続けていた。
無茶苦茶だよ・・・
キリトの二刀流は、月夜の黒猫団が壊滅した後当たりに出現した・・・
あの時のクリスマスの時から、もう1年近く。
あの時、キリトから二刀流の存在を聞いて・・・
そのスキルを見せて貰った時は、純粋に“凄い”としか思えなかった。
攻撃は最大の防御・・・
二刀流を見た時は、その通りだと思った。
なのに、ヒースクリフは、その剣全てを受け止め続けた。
そして、遂に・・・
キリトが、ソードスキルを発動させてしまった。
―――――《ジ・イクリスプ》―――――
二刀流最上位ソードスキル、27連撃。
だけど、それを作ったのは、茅場本人。
どの場所から、どの様に攻撃されるのか、すべて分かっている。
そして、全ての剣が受け止められ、左手の白剣が砕け散る。
そして、ヒースクリフの持つ剣が、キリトの体を切り裂いた。
キリトのHPは0になった。
・・・だけど・・・
だから今まで、何があっても使わなかった。
だから。今使う。
―――――「蘇生、キリト」――――――
*―――――――――――side:Kirito――――――――――*
これで終わり。そう思った。焦って、ソードスキルを使ってしまった時から。
白い剣を折られて、その思いは一層強まって。
《You are dead》
その文字を見た時。
今まで死んでいった人達の事を思った。
ディアベル、テツオ、ササマル、ダッカー、ケイタ、サチ。
そして・・・ハク。
ハクはどう思って、この字を見たのだろうか。
そういえば、月夜の黒猫団が壊滅した時、その時は、皆は俺を恨んでるだと思ってた。
だけど、ハクが俺を恨んでるとは・・・思えなかった。
俺のせい。それでハクが死んだのに。
ハクと恨みは、どう考えても結びつかなかった。
ハクなら、これで俺が死ぬ事を、怒るんじゃないか・・・
そう思う位に。
その時、声が聞こえた。真っ暗な闇の中で、頭に直接響くような声。
聞こえるはずない声
―――蘇生、キリト―――
―――負けないで、頑張って、勝って―――
―――・・・待ってるから・・・―――
その声と共に《You are dead》の字が消えて、光が見えた。
目の前に立つ、驚いた顔をしたヒースクリフも。
そうだ。俺は此奴を倒して、100層のボスも倒さないと。
あの声も。
聞こえるはず無い、ハクの声もそう言っていた。
――――勝たないと――――
そう思っただけで。手に持ったままだった、黒い剣を前に突き出すだけで、
真っ直ぐ、その黒い剣はヒースクリフの体に突き刺さり、彼のHPが0になり、消えた。
そして、その消えた場所に、ワープポイントのような靄が発生した。
100層ボスの所までだろうか。
周りの声がなにか言っているようだったが、全てを振り切って。
手に、黒い剣だけを持って、その中に入った。
*―――――――――――――――――――――*
出た先には、巨大な扉があった。
フロアボスの部屋の扉のようだったが、今までの扉と違い、赤黒い色をしていた・・・
“紅玉宮”
確かに赤いな・・・
ボスも赤いのだろうか・・・。
剣を握りしめてその扉を開けると・・・
*―――――――――――――――――――――*
中にいたのは、1人の少女だった。真っ白い少女。
和服も、羽織も、肌も、髪も。 その、名前すらも。
「久しぶりだねっ! キリトっ!」
笑いながら出した、その声すらも、白く輝いて聞こえるようだった。
有り得ない。彼女が生きている訳無い。この世界では、死んだら現実でも死ぬ。
それが絶対の条件。
そして彼女は、あの時、確かに死んだはずだったのに。
「先に言って置くけど、私は幽霊じゃないよ。
そして、死んでも実際には死んでないって訳でもない、
私以外の死んだプレイヤーは、現実でも亡くなっているよ。」
なら、どうしてお前が此処にいるんだよ
「私だけが、特例で生かされた・・・
理由は、
私を殺せば、この世界はクリアされ、
生き残った全てのプレイヤーはログアウトされる。
私が生き残る為には、私以外の全てのプレイヤーが死ぬ事・・・とかなってるけど。
行う気、無いしね。」
何を言っているんだよ。
それじゃあ、お前は、生きて帰れないって事じゃないか。
折角生きてたって言うのに。なんで・・・。
「だからね、キリト・・・ごめんねっ!」
その瞬間、何かが何本か飛んできて・・・俺の体に刺さって・・・
「1層でも売ってるような最底辺のピックだから、ダメージは殆ど無いよ・・・
ただ、あれから1000まで上げた製薬スキルで、
この城で手に入る最上位の麻痺毒を塗って置いたから、
数十分は動けないはず・・・ごめんね。」
「――っ 何で・・・」
「これから私がする事を止めさせない為・・・だね。
それと、ユイちゃんからの伝言。キリトのメモリーに退避してるから、
キリトが現実に帰って、展開してくれるのを待ってるって。」
なんで、ハクがユイの事知ってるのか。
そして、これからする事って・・・なんだよ。
「この世界がクリアされる条件、それは、
“
“
そう言いながら、ハクは倒れている俺に近づいて来て、来ていた羽織を俺の顔に被せた。
視界が真っ白に染まって。
「ごめんね。キリト。他に方法が思いつかなかったんだ。これ以外に。
だけどね、勝手なお願いだけどね、
キリトは、現実に帰って・・・生きて・・・
私は帰れないけど、その分、生きて。 生きてね・・・」
その後に聞こえて来たのは、
そして、その後に聞こえて来た、無機質な声・・・
―――11月7日 15時5分 ゲームはクリアされました―――
――――ゲームはクリアされました―――――
麻痺がかかっていた筈だったが、体は動かせた・・・
視界を白く覆っていた、白い羽織・・・それを払って、あたりを見渡すが
見えるのは赤い色をした装飾の付いた壁や床。
白い髪をしたプレイヤーの姿など。何処にも見えなくて。
―――繰り返します、11月7日 15時5分 ゲームはクリアされました―――
その声は、ゲームはクリアされたと言っている。
だけど、ゲームクリアの条件は、ハクが死ぬことだと・・・。
あの時聞こえた死亡エフェクト音は、誰の物だった?
あの時、俺以外にいた人なんて、1人しか。
――――ハクしか、いなかった――――
*――――――――――side:Haku―――――――――――*
解ってる。また死ぬのは、キリトを更に傷つける事だって。
だけど、他の方法なんて、判らなかったんだよ。
本当は、あの時、100層のボスを引き受けた時。
その時から、自殺する予定だった。
鏡ごしに、キリトを見た時、少し揺らいだ。
だけど、やっぱり自殺以外の方法なんて無かった。
キリトの・・・
この部屋に入って来た時の目を見た時、全ての覚悟は決まった。
キリトだってわかっているはず。ボスは、レイドを組んで戦うような相手。
100層のボスなら、まずレベルすら・・・
114レベルのキリトでは、まず太刀打ちできない相手である相手だって事も。
だけど、あの時のキリトの目は、そんな事を物ともしない・・・
どんな相手でも絶対に負けないって目だった。
だからこそ、私もやる事しっかりやろうって思った、予定通りに。
使い魔達は・・・少し悲しかったけど、逃がして置いた。
使い魔のメニューの奥深くにあるそのコマンドは、その名のとおり。使い魔を逃がす物。
一声鳴いて、白い光となって消えて行った皆。怒ったり、悲しんでたりはしなかった。
“こうなると思った”
そんな感じだっただろうか。
ありがとうね。 セツ、キリカ、アサギ。
そして、その後、毒を飲んでHPを調節・・・
残り10位まで下げた。キリトは気付いていなかったみたいで、何も言われなかったけど。
そして、キリトを麻痺状態にさせた後、
羽織を掛けたのは、もう一度死ぬ所なんて見てほしく無かったから。
そして、言いたい事だけ言ってから・・・
最後に用意しておいた毒を飲んだ。
キリトが来た瞬間、HPが5倍に増えて、敏速値、筋力値が3倍になったけど・・・
HPは全回復したりせず、残りHPはそのまま5倍の50となったので、
麻痺毒と同じく、最高レベルの毒。50程度のHP、すぐに0にしてくれた。
《You are dead》
この字を正式サービス始まってから、2回見た人は私だけだね。
皆は、どんな思いでこの字を見たのだろうか。
ディアベルさんや、月夜の黒猫団の人達、攻略中、死んでいった皆、
ラフ・コフ討伐で、私が殺した人達、
そして、ヒースクリフに殺された時のキリトは。
あの時、私は特別な事はしていない。
3の付く年のサンタさんからの贈り物・・・それを使っただけ。
それには、時間は書いてあったけど、
距離は書いていなかった。なら問題無いはずだったから。
私が、蓮池の淵から垂らせたのは、たったそれだけの糸。
だけど、キリトはそれを無駄にする事無く・・・皆と一緒に、登って来てくれた。
最初に上がり終わったのはキリトだけだったけど。他の人も皆、登って来れるだろう。
皆は、これで現実に帰れるはず。
私は、今度こそ脳を焼かれる・・・仕方ないね、皆を現実に帰す為の代償か。
*―――――――――――――――――――――*
しかし、私はまだ死なず・・・水晶の板の上のような上の場所に立っていた。
周りに広がるのは、綺麗な夕暮れと、少しずつ崩れていく鉄の浮遊城。
「中々に絶景だろう。」
「そうだねぇ。とっても綺麗・・・・」
ん・・・?私は誰に・・・・
「茅場さん・・・あの時キリトに殺されたんじゃ・・・?」
「何、君達と少し話してみたかっただけだ。」
「君達? 私しかいないけど?」
「もう一人はキリト君だ。もうじき来るだろう・・・。
その前に、1つ聞きたい事がある。」
・・・なぜ、自殺した?」
それなら簡単に答えられるねっ!
「私一人の命 or 生きてる他の全プレイヤーの解放。
どっちが大きいかなんて一目瞭然だと思うけど?」
「ふむ・・・死ぬのが怖いとは思わなかったのかね?」
「74層のボスに殺された時に、一回死ぬ覚悟したから。
経験済みの事をやるのは楽なのよ。」
「ハク・・・? それに・・・茅場明彦・・・?」
その時には、キリトもここに来ていた。何時の間に・・・
「ふむ、ようやく来たかね・・・」
「―――っ! 茅場!」
・・・まさかキリト、茅場さんに対して怒ってる・・・?
「お前のせいで・・・ ――ハクがっ・・・」
やっぱり・・・はぁ。
「あのさ、キリト。私が死んだの茅場さんのせいじゃないからさ・・・
勝手に自殺した訳だし。今此処にいれるのも、
ボスとして生かしてくれた茅場さんのおかげな訳で・・・」
「・・・ハク君は私の事恨んだりしてないのかね?」
「ん? 私は別に・・・この世界で死んだら現実でも死ぬ・・・
そんなルールを作ったのはあなただけど、それは現実でも同じ・・・
モンスターに殺されて死ぬのが嫌なら、圏内に閉じこもっていれば良い。
それをしないで、街に出て殺されたのなら、悪いのはその本人・・・
私がボスって時も、ちゃんと拒否権あったしねぇ。」
「なに!?ハク、拒否権あったのか!?」
「あったよ? 私は拒否しなかったけど。」
「なんでボスになんかなったんだよ!!」
「ならなかったらその場で死ぬって言われたんだよ!
折角だったらもう少し長生きをって事!」
と言うかさ、なんで茅場さんはこの世界を作って、
それをデスゲームにしたの?」
これは、ずっと聞きたいって思ってた事。聞けて良かったね。
「なぜ・・・か。
私も長い間忘れていたよ・・・なぜだろうな・・・
フルダイブ環境システムの開発を始めた時・・・
いや、その遥か以前から、私はあの城を・・・
現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を、
作り出す事だけを欲して生きてきた・・・
空に浮かぶ鋼鉄の城の空想に取りつかれたのは、何歳の頃だったかな・・・
この地上から飛び立って、あの城に行きたい・・・
長い長い間、それが私の唯一の欲求だった・・・。
私はねぇ、ハク君、まだ信じているのだよ・・・
何処か別の世界には、本当にあの城が存在するのだと。」
「そうだと良いね・・・いや、きっとあるよ・・・
だけど、如何してあの城は崩れているの?」
「あれは比喩的表現・・・だな。
現在、アーガス本社地下5階に設置された
SAOメインフレーム全記録装置で、データの完全消去を行っている・・・。
もうすぐ、この世界のなにもかもが消滅するだろう・・・」
「・・・あそこにいた人達は・・・どうなったんだ?」
キリトに同意・・・
「心配には及ばない、先ほど、生き残ったプレイヤー、
全6147名のログアウトが完了した・・・」
「死んだ連中は・・・今までに死んだ四千人はどうなったんだ・・・。」
「彼らの意識は帰って来ない・・・
死者が消え去るのは、どこの世界でも一緒さ・・・」
私も、死んだ人の中に入るんだろうなぁ・・・。
「さて・・・私はそろそろ行くよ・・・」
最後に茅場さんはそう言ってから、背を向けて歩き出して・・・
煙となって消え去った・・・。
私は、水晶の板の淵に座って、城が崩れていくのを眺めた。
「キリトも、座ったら?結構綺麗だよ。」
そう声を掛けると、黙って隣に座ってくれたのが、少し嬉しかった。
「2年も経ってるんだから、現実もだいぶ変わってるだろうね・・・
混乱しないように、気を付けなね。キリト。
・・・キリト・・・?」
返事がないから、キリトの方を見ると。
両目から流れる涙を、必死でコートの袖で拭っている姿が目に入って。
「え・・・ええと・・・キリト・・?
あの、ど、どうかした・・?
め、目にゴミが入ったとか・・・」
言ってから、自分でも何言ってるんだよ・・・って思った。
キリトがこの状況で泣くなんて、私のせい以外に何もない。
「ね、キリト。君は優しいねぇ、だけどね。大丈夫だよ。
忘れると良いよ・・・私の事全て。
君にとって、私は、オンラインゲームで仲が良かった友達の1人ってだけ。
すぐには無理でも・・・いつかきっと忘れられるよ。 ね?」
忘れちゃえば、私の事で泣く必要も、悲しむ必要もなくなる。
私がキリトに向ける感情と、キリトが私に向けてくれている感情は違う。
私のは“愛情”でもキリトのは“友情”。その違い。
「違う・・・」
絞り出すようにキリトの口から出てきた言葉は、震えていて。
「ハクは・・・俺にとって、ハクはただの友達なんかじゃ・・・
友達なんかじゃ・・・無い・・・」
「じゃあ、親友って事・・・?
親友でも同じ事だよ?」
「違うっ!!
俺、・・・俺、ずっとハクの事好きだったっ!ずっと!
どんなに時間が過ぎたって、忘れられる訳無いっ!!」
・・・予想の斜め46°位だよ・・・。
だけど、いい事聞いたねっ!
「ね、キリト、私も君の事、大好きだったよ。ずっと。
キリトには友達としか思われて無いと思ってたから、黙ってたけどねっ!」
キリトも私の事が好きだった・・・
これ、冥土の土産にしようっ! スキップしながら黄泉路下れるよっ!
「ね、キリト、名前教えてよっ! 現実での本当の名前っ!」
「え・・?名前は、桐ケ谷、桐ケ谷 和人・・・先月で16歳・・・」
桐ケ谷 和人・・・か、うんっ!覚えた!
だけど・・・
「キリトより私のほうが年下だったのか・・・
私は、桜小路 玲霞。 2月で16歳になる・・・」
いや、学年的には同じか。うん。
「桜小路・・・玲霞・・か。 ・・・覚えた・・・。
でも、ハク・・・俺の事・・・その・・・す、好きって・・・えっと・・・」
「なによ・・・自分から言って置いて・・・。」
その時、頭に1つの考えが浮かんで・・・
打ち消そうとしたけど、崩れていく城をみて・・・
あと少しで全て消えるって分かっちゃったから、実行してみた。
私より少し高い所にある、キリトの唇に、自分の唇を押し当てた。
時間は1秒くらいだっただろうけど、私にとっては大事なファーストキスだねっ!
冥土の土産2個目っ!
「なっ!? ハク・・・お前っ・・・」
「・・・嫌だった?」
「い・・・嫌じゃない・・・けど・・・」
「ならいいじゃんっ! ほら、アインクラッドが・・・完全に消えちゃうよ。」
私の、その言葉が聞こえたように、
城の・・・その最上部にあった、赤い宮殿が崩れていく・・・
ああ、そういえば、あそこを“白玉宮”にしてくれって言いたかったのに、
言うの忘れてたよ・・・はぁ。
「ねぇ、キリト、現実に帰っても・・・元気でねっ!」
そう言った瞬間、目から水が流れ落ちるのが分かった。
我慢してたのにな・・・。
「――っ! ハクっ!」
え? と思った時には、キリトに抱きしめられていた・・・
「あ・・・あの?キリト・・・?」
「ごめんっ・・・ごめんっ・・・ハク・・・君を現実に返してあげられなくて・・・」
さっき泣き止んだと思ったのに、キリトはまた泣き出してて・・・
まぁ、私自身も、泣いてるんだけどね。
キリトともう会えないのは寂しいねっ!
「別に良いよ。キリトは帰れるんだし。
何度も言うけど、現実でもしっかり生きなねっ!
それから、月夜の黒猫団の皆のお墓参りしてあげなよっ!」
そう言った瞬間、世界が白く染まった。終わりかなっ?
お土産は計3つ!スキップしながら黄泉路下っちゃうよっ!ってね!
*―――――――――――――――――――――*
――――――だけど、黄泉路を下る事は出来なかった―――――――
*―――――――――――――――――――――*
巨大な樹に吊るされた大きな金色の鳥籠の中。
仮想空間と言う檻の中の更にその中に作られた檻。
ナーヴギアに殺されず、私を捕らえたのは、別の人。
茅場さんに捕らわれた時とは違う。出る方法が無い世界。
此処に来る人は一人だけ。私を捕らえている張本人。
出る事の出来ない檻の中。
―――出れないなら無理やり出てやるっ!―――
・・・~今度こそ終わった世界。しかしそれは、新たな世界への幕開け~・・・
アインクラッド編、終了!
75層ボス戦での被害が1名多いのは、
血盟騎士団のところをスルーしてしまった為に死ななかった人の分です。
現実世界に帰ってきてたらなんかややこしそうなので。
キリトのレベルが原作より高いのも、必死でレベル上げしていたからです。
そして、フェアリーダンス編、突入っ!