黎明の光より   作:砂門

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第十話〜子どもたちを救え!

NOside

 

 

「覚悟しろよ」と吼えたヴァジュラは、薙刀を手にインフィニティの群れに突撃する。ヴァジュラを先頭に、クシティとサーガラ、ヤトと続く。

 

 

「俺が片っ端から蹴散らす。クシティとサーガラは子どもを探せ!」

 

「了解です」

 

「俺も子どもを探す。解毒剤があるからな」

 

 

ヴァジュラは薙刀に魔力を込めると、勢いよくそれを横に薙ぐ。それだけで群がっていた研究員たちが吹き飛ばされていく。Aランクを誇る筋力を持ち味とするヴァジュラが振るう薙刀の威力は、吹き飛ばされた研究員たちを怯えさせるには十分だった。

 

 

「ヤトさん、子どもの居場所は?」

 

「真っ直ぐ突っ切ってくれ」

 

「承知しました。っ、退きなさい!!」

 

 

サーガラは、前方を塞ごうとするインフィニティの研究員たちを水の鞭で一気に薙ぎ払う。クシティは纏めて岩石の中に閉じ込め砕く。ヤトはまだ動こうとする研究員を毒で麻痺させた。毒による激痛で踠く研究員たちを傍目に見ながら走った。

 

 

「あなた、本当に毒使いなのですね」

 

「ヨミに近づくインフィニティは尽くぶっ殺す」

 

「ヨミさん?」

 

「ああ、幼馴染なんだ」

 

 

・・・友だちレベルではなさそうなんだが

ヨミとヤトの怪しげな関係に対し、少しだけ疑念を抱くヴァジュラ。研究員たちを次々と薙ぎ払いながら、ヤトの呟きに耳を傾ける。一方のヤトは、薄紫と赤のグラデーションとなった長髪を靡かせ、ヴァジュラやクシティが気絶させた研究員たちを次々と麻痺状態にしていく。

 

 

「あれ、なんの毒だよ」

 

「スズメバチの毒だ。アイツらの毒はカクテルだからな。ま、致死量まではいってねぇから心配すんな」

 

 

・・・こいつ怖ぇよ

致死量とまでは行かない毒で、アナフィラキシーショックを引き起こし、研究員たちは動けずにいた。激痛に踠くことしかできない。

 

 

「でもまぁ・・・子どもが受けた痛みよりはどうってことねぇよな」

 

「溶けていたと聞きましたが?」

 

「ああ、内部から。薬漬けにでもしてたんだろ。アイツらカスだな」

 

 

体を蝕む毒は、子どもたちを内側から溶かしていく。解毒剤を作り出すことも出来る毒使いがいてくれてよかったと思う。さらに、協力して作ってくれた医者にも感謝してもしきれない。

 

 

「マジで腹立ってきたぜ。だが・・・うちの主はもっと怖いぜ、覚悟してろよ」

 

 

次々と現れる研究員たちを反射的に薙ぐ。払う。潰す。麻痺させる。そのコンボを決めていく。彼らはそこに誰もいなかったかのように進んでいく。最強のギルドプンダリーカは、雑魚など見るまでもなく倒し尽くせる。

毒の槍や矢であろうと、腕を硬質化させられるヴァジュラには効かず、岩の盾を作れるクシティにも効かず、水のなかで毒を溶かすサーガラにも効かない。さらに

 

 

「この毒、食らってみなさい!」

 

 

毒に満ちて紫色に変色した水のなかに研究員を閉じ込める。出たくても出られず、気絶するまで出してもらえない。絶望の顔を見せる研究員たち

 

 

「えっぐいな」

 

「飲んだら死んじゃいますよ、多分」

 

「大丈夫ですよ、そうだ。ヤトさん、使ってみては?」

 

「ああ、そうだな。効くか分かんねぇし」

 

 

ヤトは、容赦なく落とされた研究員に解毒剤を注入した。激痛に踠いていた男が急に落ち着いた。

 

 

「効果抜群らしいぜ」

 

「凄いですね」

 

「お褒めに預かり光栄だ。おっと、悪ぃな」

 

 

ヤトはようやく痛みから解放された男を例の毒で攻撃した。再び痛みに踠き、絶叫していた。そんな声に振り向くことは無い。

 

 

「なっげぇな!」

 

「これ、本当に抜け殻なんですか!?もう」

 

「洞窟自体シュヴァルツなんじゃないかと思えてきましたよ」

 

 

そのとき、三人が同時に止まった。急に前の三人が止まったせいでクシティに激突した。クシティはビクともしなかった。

 

 

「あのガキ・・・シュヴァルツは下手したら100メートルあるとか言ってなかったか?」

 

「言ってましたね・・・」

 

「まさか・・・」

 

 

ヨミが「シュヴァルツは下手したら100メートルはあるからね」と言ったことをここにきて思い出してしまう。さらに、シャンティが任務出発前に言っていたことも思い出す。シュヴァルツは、約500年で成長が止まり、石化してしまうのだと。

 

 

「いや、でも100メートルは短ぇだろ」

 

「ですよね」

 

 

しかし、エデンを待っている最中にもヨミによるシュヴァルツ講座が行われた。その際

 

 

「シュヴァルツは、500年ほどで島を一周するくらい大きくなるんだよ。探検するにはもってこいなんだ。全てが石化するから、細胞がそれ以上分裂することもないし、消化液も出ない。安全だよ」

 

 

生きているシュヴァルツは、体長約100メートルまで成長。その後仮死に近い状態となるとただ巨大化が進み、やがて石化していく。そして出来上がったのがこの洞窟なのでは。ヴァジュラたちはそう推測を立てる。

 

 

「推測ってか、もはや確実だろ」

 

「あっ、扉です!」

 

「あった!」

 

 

ヴァジュラは、かなり強固なセキュリティを誇る扉を薙刀と魔力だけで吹き飛ばした。

 

 

「何者だ!」

 

「それはこちらのセリフです」

 

「アイツは!?」

 

 

魔力を最低限まで落としているであろう主を探す。子どもに変化することなど容易すぎる。三人は一斉に子どもを保護しながら彼を探す。

 

 

「ヤト!解毒剤」

 

「ああ、素人に注射させらんねぇからこっち連れてこい」

 

 

痛みに身体を震わせる子どもたちから毒を抜いていく。しかし、一度でも毒を入れられれば、体内のどこかが傷付いている。それを知っているヴァジュラは、頭を必死で回す。ここにその人がいればと願うばかりだ

毒を抜いたおかげで、これ以上溶けることは無い。しかし、虫の息である子どもたち。命の危機は今も続いている状態だった。

友を探しながら、研究員たちを次々と殴り飛ばしていく。どう見てもいない

 

 

「途中、別れましたよね?」

 

「マジか!ってことは・・・フレアフルールの方か!」

 

「あの五人なら問題は無いでしょうが」

 

「ちっ、とにかく、一旦洞窟の外に出るぞ」

 

 

そのとき、ヤトの耳に爆発するような音が届いた。暗に、音のする方にヨミたちが戦っていると知らせているようなものだ。

 

 

「そのお前らの主、あっちだと思う!でも、今はヤバい」

 

「は?何で」

 

「四人ともシュヴァルツと対峙したらしい」

 

 

つまり、今子どもたちを助ける人がいない。敢えて言うなら、キラくらいだ。

 

 

『プンダリーカの方達ですか?』

 

 

成長段階の子どもの声が聞こえてきた。それがキラであるとすぐに察した。

 

 

『ラボはひとつじゃないんです!』

 

「なんだと?」

 

『カルナさんたちは手が離せない状況です。黒髪の子が一人、そのラボに!』

 

「く、黒髪?」

 

 

黒髪は、どう考えても探している主ではない。しかし、連れていかれている時点で助けるという以外に道はない。ヴァジュラとヤトは、クシティとサーガラにこのラボを任せ、再び走った。

 

 

「こっちです!」

 

 

男たちが別れた道までキラが来ていた。幼い子ども二人を率いて。反対側に連れていかれた子どもは三人。そのうち一人だけがラボに連れていかれたのだ

 

 

「君たち二人は、この紫のお兄さんについて行って。まっすぐ走って。あのお兄ちゃんの言うことを聞くんだよ、いいね」

 

「うん!」

 

「お兄ちゃんって?」

 

「僕たちを逃がしてくれたの!」

 

「そうか、わかった。振り向くなよ」

 

 

幼い子ども二人をヤトに任せ、ヴァジュラはキラとともに再び走る。小柄な体で大量の解毒剤を背負うキラを傍目に見る。何も言っていないのに片一方持たされた。

 

 

「で、もう一つのラボはなんなんだ」

 

「魔力を持つ子どもが連れて行かれるそうです。もしかすると、あの黒髪の子」

 

「マジかよ。アイツ風邪引いてんだよ」

 

「はぁ!?」

 

 

若すぎる医者の額に筋が入る。明らかに怒っていた。怒っているのはヴァジュラも同じだ。子どもを逃がすために囮になった。何度囮になれば気が済むのかと

 

 

「ん?あっちは?」

 

「シュヴァルツと交戦中です。無視です、無視!」

 

「いいのか?」

 

「あの人たちは強いんですよ」

 

 

心から信頼を寄せていることがわかる。プンダリーカがお互いを信じあっているように、フレアフルールも信じあっている。

 

 

「子どもたち、助けましょう」

 

「仲間以外に興味ないと思ってたぜ」

 

「僕は医者ですから。救うためなら命を懸けます」

 

 

一見冷めていそうな少年の情熱に、ヴァジュラは畏怖の念さえ抱いた。それだけの覚悟を持っていたのだ

 

 

「そうか。心強いぜ」

 

 

二人は全力で駆け抜けた

 

 

 

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