黎明の光より   作:砂門

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第十三話〜はじめて

ヨミside

 

 

昼頃にギルドに来て、シャンティさまをどうするべきかを相談し合う。来ることは別に構わない。アポとってきなさいなんてことも無い。この人の場合は、家出とか遊びでは済まされないところがある。窮屈な生活なのかもしれないなとは思う

その悩みの種は、静かに本を読んでいた。ここに来た意味はあるのかと思うほど静かだ。本人も本人で迷惑をかけている自覚があるのだろうか。

広い部屋で一人ベッドに座って読んでいる。なんとなく、いつも休日はこうしているのだろうかと勘繰ってしまう。

 

 

「あ、ヨミさん」

 

「なに?」

 

「遊び知らないんじゃ・・・」

 

 

子どもの頃なにかしていたはず。トランプはないだろう。積み木、それは幼児だ。公園でかけっこ。なんか違う。小さい頃からともだちいなかったのか?

 

 

「キッチン借りてもいい?」

 

「え?はい、どうぞ」

 

 

天井の色を映し琥珀色になっている長髪を靡かせながら奥に消えた。コイドさんやユーリンちゃんもそっと覗こうとする

 

 

「鶴の恩返しかな?」

 

「ある意味」

 

 

インフィニティから助けた子どもがギルドに来て料理を振舞ってくれる。これでは聖王の恩返しになってしまうけど

それから数時間ほど出てこなかった。倒れているのではないか、と思って慌ててキッチンに入ろうとすると、入っちゃダメと可愛い声で言われた。

 

 

「なに、妖精か天使かな」

 

「シャンティ」

 

「あ、カルナさん、ジークフリートさんまで」

 

「もう、入っちゃダメだってば」

 

 

という声が聞こえてきたかと思えば、どこから引っ張ってきたのか可愛らしいエプロンをつけたアーリアくんが、カルナさんとジークフリートさんを押して出てきた。カルナさんとジークフリートさんも優しい笑みを浮かべている。

 

 

「できた」

 

 

今度は明るい声だ。キッチンから出てきたと思えば、後ろからお皿がついてきた。

作ったものをテーブルに置いた。それは

 

 

「おや、パウンドケーキ」

 

「へぇー、ケーキなんて作れるの?」

 

「王とは料理をするものなのか・・・」

 

 

パウンドケーキは比較的簡単ですからね、とエデンさん。アーリアくんに扮したシャンティさまも頷いている。どうやって処理しようかと悩んでいたドライフルーツを使ったフルーツパウンドケーキだった。

 

 

「なるほど、フルーツケーキという手がありましたね」

 

「うん。食べよ」

 

 

街中で会ったコイドさんとユーリンちゃん、カルナさん、ジークフリートさん、俺、エデンさん、マオくん、フラウくん、ライトくん、ヤトに振舞ってくれた。

 

 

「お、おいしい・・・」

 

 

絶品だった。店に出していい。けれど、王という身分の人がこんなものを作るのか。オレは料理のりの字もできないのに。基本的にヤトがやってくれるしね。

 

 

「ずっと本を読んでいたな。遊ばないのか?」

 

「遊び方知らないんだ。どういうことをするものなのだろうか」

 

 

再び広い部屋に通す。

 

 

「子供の頃は何して遊んでたんですか?」

 

「剣習って、侵略の仕方を習って、治め方を習って、字の読み書き」

 

 

全然遊びじゃなかった。それよりも侵略の仕方や統治の仕方を子どもに教えてどうする。この人の親は一体何をしているんだ。子どもに遊ばせてもあげないのかとステータスの幸運Aが早くも怪しい。

 

 

「うぅーんどうしよ」

 

「さっきマーケットやってた」

 

「あー、そういえば忘れていましたよ。このギルドはパトロールですしね。パトロールしながらシャンティさまをご案内するというのは?」

 

 

それは遊びなのだろうか。ただただ王にフレアフルールの姿を見せるだけになっている気がする。二ーロートパラ王国には似ても似つかないような国だ。賑やかさを利用してどさくさに紛れて誘拐、窃盗、祭り中のトラブル。よくあることだ。

 

 

「オレが案内しよう」

 

「カルナが?」

 

 

カルナさんの言葉にジークフリートさんが反応。反応したのは全員だが。本当に、カルナさんがするの?という

 

 

「それは嬉しいな」

 

「自分で作ったケーキを食っていなかったな」

 

「え?ああ、断食だよ。一年に一度の祈祷の儀。我が宝具」

 

我、ただ祈る主である(ヴィッシュダマントラ)か」

 

 

シャンティと言ったらこの宝具だ。この宝具は世界でシャンティさまのみが使える宝具。攻撃しない。シャンティさまの宝具で攻撃性のあるものはほぼないんじゃないかと思う。

今のところ、オレが確認できているのは『我、ただ祈る主である』と『捧げよう、全てのものへ(シャンティ・トゥランガリア)』だけ。後者は、合同任務の際に見せた操作魔法のことだ。操作魔法は細胞だけではないから恐ろしい。『捧げよう、全てのものへ』は、その宝具だけで少なくとも二つ使い分けられる。細胞と調律だ。細胞操作は下手したら蘇生も可能とりす。だからセントラルが禁忌とした。使える者は一人しかいないのに。調律は、ピアノの調律ではなく、魔術の調律。好き勝手に魔術が使えてしまう。プリハスパティ家は神家系のなかでもとにかく破格。祈りが神格化した存在がプリハスパティと言われている。他にも、創造神として側面があるとヴェーダにはある。リグ・ヴェーダはもう省く。カルナさんと間接的に係わってはいるけれど、説明しないよ。

 

 

「そう。その宝具を一度解いて、もう一度編み直して強化する。そのために一日を要する」

 

「なるほど、じゃあ今日を含めて一週間は忙しくなると?」

 

「ああ」

 

 

今日は断食一日目。つまり今日自由に動ける日ということらしい。ただ、宝具を使った翌日は基本的に身体を動かせなくなるという。かなり身体に負担がかかる。

ちなみに、シャンティには平和という意味があるけれど、儀式やヨガなどでシャンティと三回唱える。一回目のシャンティは、自分の平和を願う。二回目のシャンティは、周りの人の平和を願う。三回目のシャンティは、自分の周りの環境の平和を願う。自分の平和とは『月色の無憂樹』、周りの人の平和とは『聖なる沙羅双樹』、周りの環境の平和とは『菩提樹の祈り』。プリハスパティ家の最高傑作とも謳われているシャンティさまだけの祈りの術というわけだ。ピッタリだね

そんなシャンティさまの休日は、ここでのお泊まりという。お城でゆっくりすればいいと思う。

 

 

「行かないのか?」

 

「行くぞ。あ、そうだ。換金しないと」

 

「ここで換金できますよ」

 

「じゃあおねがいします」

 

 

俺は今、物凄く嫌な予感がしている。そして嫌な予感が現実となる。エデンさんの顔が曇っていく。カバンから金色の板が。純金にしか見えない。一枚百万円。それを一枚、二枚

 

 

「い、一枚で足りますよ」

 

「え?」

 

 

純金が手に渡ったエデンさんは、お札を百枚数えていた。

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

天使が妖精に渡しているものがお金じゃなくて花だったらいいのに、と思ったら

 

 

「エデンのお花はこれ」

 

「おや、これは?」

 

「デルフィニウムだよ。花言葉は清明、高貴」

 

 

エデンさんにぴったりの花言葉と可愛いお花。ここは天国だったのか

 

 

「行こうか、カルナ殿」

 

「ああ」

 

 

カルナさんが優しく微笑む。カルナさんがだんだんお兄ちゃんに見えてきた。いや、お兄ちゃんだったね

 

 

「いってらー」

 

 

オレたちは、状況が状況であるため兄弟というよりかは、親子に見える二人を見送った

 

 

 

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