黎明の光より   作:砂門

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お久しぶりです。
半年以上ぶりでしょうか
久しぶりに産みの苦しみを思い知りました

今日からまた少しずつ進めていけたらと思っております



第十七話〜至高の浄化術者

ジークフリートside

 

 

俺とカルナは、コイド殿を筆頭に『神聖なる七騎士(サークレット・セプテッド)』というチームに在籍している。この世界に来て、フレアフルールに所属して初期の頃にコイド殿の誘いで結成された。しかし、最近はそれぞれが忙しくなっていき、初期のようにともに任務を遂行することが少なくなってきてしまった。一年前ならば、この任務は七人で熟していただろう。それだけ成長したと思うべきなのだろうか。五人の代わりにシャンティ殿とヴァジュラ殿というのは新鮮というよりかは違和感しかない。しかし、この任務は余計なことを考えてはいられない。俺たちは、先日の合同任務と同様、世界中枢組織(セントラル)の一角インフィニティ(政府)が関わっていると見ている。因みに、カルナ曰く、インスパイア(立法府)とトレミエ(司法府)に動きが見られないという。それに関して気掛かりだ。いらない法律を作り、どう考えても違法としか思えない裁判を行う。最近はそういったことをしていない。動くのはインフィニティばかり。何か企んでいるとしか思えない。そして、今回の任務、そのインフィニティに関係すること。これで成果が見られれば弱みを握ることもできる。隠蔽しそうな気がしないでもない。

 

 

「捕まったという外交官長・・・死ぬぞ」

 

「死ぬ?」

 

「おそらく」

 

 

カルナがぽつりと呟いた。インフィニティによって真実が語られるより前に殺されるだろうと。そして、それすらも隠す。

 

 

「インフィニティがこの国にいるのか?」

 

「工作員がいる」

 

「マジか。浸食され始めてんじゃねぇか」

 

「今日も一人、巡回中に見かけたな」

 

「わかるのか?」

 

 

カルナが頷く。そういえばと思い出す。エデンも工作員とこの国の人間との違いを嗅ぎ分けることができたはずだ。インフィニティと少しだけ関わる機会のあったものだけが分かる空気でもあるのだろう。

 

 

「警察にいる」

 

「は?」

 

 

シャンティ殿とヴァジュラ殿が驚きと呆れの表情を見せた。俺も同じような顔をしているだろう。この国を守るべき警察内部に隠れているというのだから。

 

 

「魔術師がらみの事件で関わった。警察内部の人間によるものだった」

 

「ほう」

 

「もう怖えよ」

 

「無罪になった」

 

「やはり」

 

 

十人もの刑事を殺したという刑事。本当なら有罪で、処刑されてもおかしくない。にもかかわらず、無罪になったうえに真実が語られることはなく、その件は事故だったと書き換えられた。裁判所もかかわっていたという恐るべき事実付きだ。しかし、カルナが独断ではあったが、調査任務に移行していたことでレポートがマスターの手に渡り、そのことをコイド殿とユーリがマスコミだけでなく、法務省にまでリーク。エデンは王にそれを伝えた。新聞、雑誌などで取上げられ、国民に伝わった。裁判所は一時解体。警察はその事件に関わった全員を解雇及び逮捕。一年前の話である。

 

 

「フレアフルールすげぇよ」

 

「このギルドがしたということはどこにも言っていない」

 

「ギルドにまで接触されてはたまったものではないからな。それにしても、フレアフルールのなんと優秀なことか」

 

 

俺たちのギルドを誇らしく思う。しかしなるほど、有罪となるのか無罪となるのか。そこが分け目なのだ。それから、微妙にバッジが違うことだそうだ。

 

 

「バッジの違いか。私には見分けられん」

 

「逢ったことがほとんどないからな」

 

 

そのとき、俺の目の前を黒い影が駆け抜けた。カルナやシャンティ殿さえ気付いていないのか。

 

 

「今誰かいなかったか?」

 

 

カルナたちに確認した。どうやら気付いていないらしい。この二人すら気づけない相手。気配を消せる相手。アサシンか?

 

 

「姫さんが気づけないやつってマジか」

 

「ふむ・・・」

 

「ヨミ?」

 

 

カルナがふと呟いた。しかしひとつではなかった。二つある。もう一人は誰だ。ヨミの親友ヤトか?

 

 

「何故ヨミが?」

 

「・・・」

 

 

カルナが黙った。どうやらヨミやヤトは何らかの企みがあるのだろう。それを黙認している可能性もある。それはカルナだけでなく、おそらくエデンやキラも。

 

 

「調査を開始しようか」

 

「そうだな」

 

 

シャンティ殿とヴァジュラ殿が頷いた。ヨミの企みはともかく、まずは目の前の任務を優先しなくてはならない。

 

 

「侵入したか・・・」

 

「カルナ?」

 

 

どうやら先程の影ヨミとヤトが侵入したということなのだろう。これはいい事なんだろうか。ヨミとヤトはインフィニティどころかセントラル自体を嫌っている。そのセントラルの傘下であるノワールアームのアジトがここにあるとわかり飛んできた。殺すか壊すかどちらかを遂行しそうだ。

ヨミお手製の透明になれるローブというものを着用し、俺たちも侵入した

 

 

「いや、ヨミすげぇな」

 

「透明になれるローブなんてどんな素材で作るのか・・・」

 

「企業秘密だろう」

 

「わかっても真似できる気がしない」

 

 

俺たちは侵入するなり走り出した。そんなに広くないアジトだ。走ってもそこまで体力は消耗しない・・・はずだ

さすがに案内はしてくれない。

 

 

「カルナさん」

 

「ヨミか。さてはエデンから聞いたな?」

 

「まあね。気になって気になって。今回は壊す気は無いからね。場合によるけど」

 

「そうか」

 

 

カルナから見て嘘をついているようには見えないらしい。ならば問題ないだろう。

 

 

「ヤトは?」

 

「一緒に来たんだけど手分けして探すことにしたんだよ。急に手分けしようとか言い出したんだ、どう思う?」

 

「まあ、効率はいいような気はするが」

 

 

不服そうなヨミを、シャンティ殿が慰めるように言った。いつも一緒に探し回ってるんだろうか。

 

 

「いつも一緒なのか?」

 

「二人で潜入する時はね。オレより弱いからさ」

 

「ヤトに同情するぜ」

 

「ん?」

 

 

ヴァジュラ殿はヤトの気持ちがわかるようだ。自分より強いシャンティ殿。自分より弱いと断言されているヤト。信用されて別々でも問題ないヴァジュラ殿とは違う気がする。

 

 

「信用していない訳では無いのだろう?」

 

「うん、もちろん」

 

「そういやシュヴァルツの時なんか言ってた気がするな」

 

 

ヴァジュラ殿はその時のことを思い出したようだ。俺は知らないが。ヤトはヨミ思いなのだろう。

 

 

「一緒になったが、強かったぜアイツ」

 

「強いのは強いよ。耐久あるし。筋力もある」

 

 

毒を纏った拳で殴られたらと思うと溜まったものでは無いが、鎧があるので無効化できるかもしれない。

 

 

「ジークフリートさんの言う通り。吸うか飲むかさせなきゃ効果ないんだからね。鎧壊すくらいの破壊力はあるけど」

 

 

細いシャンティ殿からしたらそんな拳最悪ではないか。現にシャンティ殿が顔を顰めている。それよりさらに上のヨミの拳など俺でも受けたくない

そのとき、どこかから爆発音が聞こえてきた。

 

 

「ほらもう!」

 

「爆発音というか、打撃音のような気がするが」

 

 

殴り合いか?鬼神と殴り合うとはどういう相手なのか。

さらに、突然穴が開き誰かが落ちてきた。

 

 

「・・・なんでここにいんの?」

 

「ヨミか?」

 

 

見覚えのない金髪の男。衝撃を受けているのはヨミだけだ。

 

 

「ヨミ!」

 

「ヤト!これどういうこと!?」

 

「知らねぇ。急に喧嘩売ってきたんだよ」

 

 

侵入したヤトに喧嘩を売るということは、あちら側の人間なんだろうか。耳が尖っている。まさか鬼神か?

その鬼神がヨミに迫った。その拳をサッと躱すヨミ。攻撃する気は皆無だ。

 

 

「どういうつもり?」

 

「すぐにここを出ろ」

 

「は?ミツシャクどういうこと?」

 

「頼むから。友人を傷つけたくないんだよ!」

 

「そういう事だ」

 

「ナラエン・・・」

 

 

何かに侵食されているような。まさか毒を飲まされて操られているのか。キラを呼ばなければ

 

 

「キラか、呪いならエデンか・・・」

 

 

「いや、私は?」と言うふうな目でカルナを見るシャンティ殿。確かにシャンティ殿の浄化ならかなりの効果を得られる

 

 

「エデンの浄化はシャンティより上だ。おそらく」

 

「ほう」

 

「マジか。そんなふうに見えねぇけど」

 

 

シャンティ殿とヴァジュラ殿はエデンが神聖歌唱の歌い手であることを知らないのか。祈祷、シャンティ殿とエデンでしたらどうなるんだろうか。

 

 

「操られてんの?」

 

「情けないことに」

 

「本体をやれば・・・」

 

「いるのはアイツだ」

 

 

ヨミとヤトはそれを聴くと目を見開くなり、やる気をなくした。

 

 

「わかった・・・帰るよ。それまでに逃げるなりなんなりしてね」

 

「帰るのか?」

 

「レベル制限かかってるうちはアイツは無理だと思う」

 

「なに?」

 

「神だからね」

 

 

一気に熱が引いた。このアジトにいるのは神。だとすれば、今の俺たちが戦略もなしに首を突っ込むのは危険だろう。ここにはシャンティ殿がいるし、祈祷もある。

 

 

「帰るよ。ここに来るのは・・・祈祷の後」

 

「承知した」

 

「なるほどそういうことか、わかったぜ」

 

「申し訳ない気もするが、作戦なしは危険そうだな」

 

 

俺たちはかなり未練を残してアジトを出た。その後、樹海を歩いているとエデンとキラがいた。ヘケトに注射を打っていた。

 

 

「よし、これでいいですね」

 

「よかった。病院に連れていきましょうか」

 

「そうですね。エデンさんの歌のおかげで効果が増しました。流石です」

 

「いえいえ、あなたの治癒が素晴らしいのです」

 

 

仲のいい姉弟にしか見えない二人に俺たちは近づいた。見る見るうちにヘケトが人間の姿に戻っていった。それからしばらくしてかなりの人を乗せられそうなドクタージェットが着陸した。予めエデンが呼んでいたらしく、隊員が速やかに乗せ、微笑みながらありがとうございましたと頭を下げて帰って行った

 

 

「エデン、マオ」

 

「おや、カルナさん。その様子ですと・・・ノワールアームのボスが発覚したのですね」

 

「うん、さすがだね」

 

「内部まで侵入出来たようですから、詳しくはあとでお聴きします。お疲れ様でした」

 

「なんとも任務をした気がしない」

 

 

これ以上入るのは憚られる。それだけ重大な事態になっていた。その時、エデンの背後に何者かが現れた。

 

 

「エデンさん!」

 

「えぇ、わかっていますとも」

 

 

木が突然動きだし背後の男を捕らえた。木を操った?エデンは操作系だっただろうか。風魔法だったような。

さらにその男をキラが射程圏内に入れた時

 

 

「ちょっと待った!」

 

「はい?おや、これはこれは・・・」

 

「なんだ、ヨミさんのお友だちだったんですね。操られてますけど」

 

 

といいつつエデンの後ろに隠れるキラ。警戒しているらしい。先ほどの男ふたりだった。ここを出ろとか言っていた気がするが

 

 

「さては・・・」

 

「嗚呼、なんと美しい!」

 

 

急な展開に俺たちは目を点にした。カルナやシャンティ殿まで困惑していた。突然エデンの手に触れ、周りにキラキラと薔薇を散らせながら褒め称えた。これはどういう状況なんだ。

ヨミとヤト、さらにもう一人の男が頭を抱えていた。

 

 

「コイツ・・・」

 

「まぁ、ど真ん中だよな」

 

「その美貌だけでミツシャク特攻宝具だからね・・・ミツシャクだけじゃないけどさ」

 

 

ミツシャクという男でなくとも下手すれば宝具になるよと大真面目に言った。確かに美しいとは思うが。

 

 

「スキルに魅了がないのが不思議だよ」

 

「嬉しいような嬉しくないような・・・あら・・・」

 

 

手を握られているエデンは、なにかに気付いたのか急に魔力を込め出した。どちらかと言えば夕陽のような色だ。その夕陽色が黒く変色していく。そのついでにか、もう一人の男にも手を差し伸べた。騙されたと思ってなのかその手に触れた。

 

 

夜色の庭に夕陽色の一縷の光になりなさい

 

太く 弛まぬ 張り詰めた黒を染める光でありなさい

 

彼らを覆う黒き雄々しき翼よ

 

楽園より去りなさい

 

 

詠いながら魔法を編み上げるキリヤがいつもと変わらぬ涼しげで穏やかな表情でありながらも汗を滲ませていた。カルナとヨミがどこか心配そうに見つめていた。カルナもこんな顔をするのか。

 

 

あなたは未来に生きる者 今を守護する者

 

朝を知らない庭を 照らす朝陽(ひかり)でありなさい

 

祈り 慈しむ心でもって あなたを蝕むものを濯ぎます

 

 

涼しげな表情から変わり形のいい眉を顰めながら詠い続ける。二人からどんどん黒が抜けていくのがわかる。

 

 

さあ あなたの大切なものの元へ帰りなさい

 

そうそこは 夜を知らぬ昼の庭

 

 

不思議な調子の詠だが。これも神聖歌唱の一種なのか。途轍もない魔力を感じる。ここまで安らかで穏やかで優しい魔力はないかもしれない。

 

 

昼色の鎮魂歌(ジョルナータ・レクイエム)

 

 

さらに、森からもどんどん黒いモヤが消えていく。それがエデンの元まで集まって来る。浄化したのか、そのモヤが白くなり消えた。

 

 

「これは・・・」

 

 

ミツシャクとナラエンが絶句していると、エデンがフラフラと崩れ落ちかけた。

 

 

「おっと、だいじょうぶかい!?」

 

 

それをミツシャクが抱き留めた。「はーい、離そうか」と言ってヨミがすぐにミツシャクからエデンを取り上げた

 

 

「どうした?」

 

「大丈夫なのか、エデン」

 

「かなり闇を吸い込んだからな。ダメージは大きいだろう。こちらとしては止めたかったのだが・・・」

 

「まあ、無理だよねぇ」

 

「お前らに同情するぜ」

 

 

浄化するためには自分の元まで集めなくてはならないらしく、闇と相性の悪いエデンはかなりのダメージを受けるリスクがある。その度にカルナやヨミやキラは止めたくて仕方がないそうだ。止められたら苦労はしないとカルナまで言うのだからよっぽどだ。そして終わると決まって倒れる。気絶することはあまりないというが。

 

 

「まったくミツシャクもナラエンも、エデンさんに迷惑かけちゃって。起きたらすぐ土下座して謝りなよ」

 

「そ、そうだな」

 

「う、うん・・・」

 

「プロポーズしてる場合じゃねぇぞ」

 

 

身内であると思われるヨミとヤトにコテンパンにされているミツシャクとナラエンは、正座し項垂れた。それを俺たちは苦笑を浮かべながら見ているしかない。一方で、倒れてしまったエデンを介抱するのはヨミから託されたキラ、それからシャンティ殿だ。

 

 

「この森全体からも闇が消えている。すごいな」

 

「姫さんほど分からねぇけどマジすげぇんだなって思う」

 

「広いからね、ここ」

 

 

シャンティ様が守る範囲と比べたらと言いそうだが。今はかなり苦しそうだ。かなりのダメージだったのだろう。まず起きる気配がない。

 

 

「神の闇だからな。相当強いだろう」

 

 

カルナに言われて思い出した。確かに、エデンが受けたのは神の呪術のようなもの。それを一瞬とはいえ溜めたのだから、闇耐性低めのエデンにとっては辛いだろう。

 

 

「すぐに寝かせてあげましょう」

 

「そうだね」

 

 

俺たちはすぐにギルドに戻った。その間横抱きにして移動したのはヨミだ。戻って来ると、すぐに寝かせた。ギルドNo.2が倒れたためか、不安げなギルドの空気。マスターはぎっくり腰。そのぎっくり腰のマスターを、キラが即治した。さすがにNo.1とNo.2が倒れるというのはまずい。あと報告がある。

そして、すっかり回復したマスターの部屋に俺たちは集まった。シャンティ殿はキラと一緒にエデンを看てくれているようだ。ミツシャクは行こうとしたがヨミに引っ張られていた。

 

 

「それで、ノワールアームの仕業だったのかい?」

 

「ああ。大蛇についても、ノワールアームによるものだった。開発した薬で変えられていた。彼らについてはキラが戻し病院に引き渡した。そのノワールアームのボスが・・・」

 

「神だった、と」

 

「うん。ミツシャクとナラエンが言うにはね。カルナさんフィルターに掛からなかったから間違いないと思う」

 

 

一歩間違えればヨミやヤトに怪我を負わせていたかもしれない。エデンがいなければどうなっていたのか。

コンコンコンと礼儀正しく三回ノック。シャンティ殿だ

 

 

「シャンティさま、エデンくんの様子は?」

 

「目を覚まさしたが様子が・・・」

 

「取り憑かれたとか?」

 

「いや、それは絶対にない。しかし・・・頭が異常に痛いと言っていて」

 

 

頭痛と目眩でベッドから起き上がれないという。熱も酷いらしい。よっぽど堪えたのだろうか。

エデンが心配になり、俺たちは医務室に来た。真っ白なベッドで額に手を当て微かに苦悶の表情を浮かべていた。

 

 

「苦しそうだね」

 

「ええ。元々身体強い方じゃありませんからね。とはいえここまではないですけど。頭痛と目眩で眠ってしまいました」

 

 

原因不明の頭痛と目眩。応急処置で鎮痛剤を打ったらしい。

 

 

「苦悶の表情も美しい」

 

「出たよミツシャクの変態嗜好」

 

「あのまま抜かれず襲ってたらどうなってたんだか」

 

「エデンには悪いが助かった」

 

 

倒れてしまっているが、助かったと言って貰えたからか少しだけ和らいだように見える。もしくは鎮痛剤が効いてきたか。

 

 

「美人の苦しそうな顔大好物なんだよねぇ」

 

「危険」

 

 

ミツシャクがキラにめちゃくちゃ睨まれている。相手は子どもだが、懐く前の猫のような警戒心の強さだ。

 

 

「エデンさんに手を出そうものなら容赦しませんから」

 

「この子怖いね、ヨミ」

 

「ミツシャクが悪いんだよ。操られるなんて詰めが甘いし、さっそくマオくんには警戒されてるし。エデンさんは優しいからね、笑って受け入れてくれるよ、友人としてね」

 

 

ヨミが容赦無くミツシャクを責め立てる。ナラエンまで巻き込まれている気がする。操られる方も悪いんだ、という考えらしい。同じ鬼神なのに情けないとヤトも便乗。少し同情する。シャンティ殿とヴァジュラ殿は苦笑を浮かべながら状況を見守っていた。ミツシャクに対して警戒しつつ、キラはエデンを心配そうに見つめた。

 

 

「はいはい、皆さんエデンさんを休ませてあげてください」

 

「そうだな。辛そうだし、寝かせてあげるのが一番だ」

 

 

シャンティ殿の言葉に頷き、目を覚ましたら呼びますからというキラに告げられ、安心しつつ医務室を退室した。

 


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