黎明の光より   作:砂門

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第一話〜これが日常だ

俺は、願望機だった。

 

 

俺に縋る者たちの願いを叶えるために多くの人を殺した

 

 

それが悪が願ったことであろうと、叶えた

 

 

善人が願わなければ見捨てた

 

 

 そんな人生だった

 

 

 そんな俺が聖杯という無限の可能性を秘めた願望器に込めた願いは

 

 

 『正義の味方』になることだった

 

 

 俺たちが出会った聖杯大戦は全てが異様だった。赤陣営と黒陣営で殺し合い、聖杯を奪い合う。どこまでも激しい戦いだった。その初戦で撃ち合った相手が、他でもない太陽神スーリヤの子とされる半神半人赤のランサーカルナだった。俺は、彼のことをあまり知らない。というか、ほとんど知らないと言ってもいい。

 彼のことで俺が知っているのは、彼が強いということ。そして、『英雄』であるということだ。あらゆる不遇を受け入れ、人生で決して何者をも恨まなかった誇り高い大英雄。

 あの大戦で、カルナに勝利した。俺の身体ではなかったとはいえ、バルムンクを槍で受け流していた。力量も、技量も、そして意志の強さも、誰より強いと思ったのだ。

 現に、謎の現象によって限界してしまったこの世界で、彼は俺より一ランク上の立場なのである。

 決して見せびらかすふうでなく、決して自慢するふうでなく、誰かに褒められるでもなく、彼はいつも俺の上にいた。

 

 

ユ「ジーク」

 

ジ「ユーリか。どうした」

 

ユ「どうしたじゃないよ!もう十二時だよ」

 

 

カーテンを開け、空を見ればもう日が高く登っていた。あれが父親とは、やはりどこか浮世離れしている。というか、浮世離れしかして居ない。歯に衣着せぬ物言いは健在なのに、彼を嫌うものは誰もいない。カルナは生前とは比べ物にならないほどの歓迎っぷりだと言った。彼の本質を知っているからだ。このギルドで誰よりも神に近い存在でありながら、自分を特別なものとせず、それ故に全ての人が平等に救われるべきだと考えている。

 

 俺は、ユーリに呼ばれ、一階に降りた。そこには、一際目立つ(存在感だけで)あの男がいない。

 

 

ジ「カルナは?」

 

 

 名前で呼ぶのはまだ慣れない。この街へ来てすぐ、クラスで呼び合うのは褒められたものではないだろうという結論に至り、お互い名前で呼ぶようになったわけだ。

 

 考えてもみてほしい、相手は神の子だ。そんな神の子を馴れ馴れしく名前で呼ぶなど、若干小心者の俺には難しかった。

 

 

ユ「カルナなら、朝っぱらからミッションしに行ったわよ。ライトやフラウたちと一緒にね」

 

 

 ユーリは、「カルナにジークは一緒じゃなくていいのか」と問うと、昨日のミッションで疲労したのだろうから、休ませてやってくれと返されたのだ。確かに、昨日は久しぶりにBランク以上の任務だったために、かなり体力を消耗させる術を使っていた。しかし、その挙句に寝坊というのは、どう考えても言い訳にしかならない。何故なら、ここにいるユーリも、俺たちと共にミッションをこなした。ユーリは白魔法の使い手で、後衛に回ることが多く、レベル4の獣に一瞬とはいえ殺られそうになっていた。それを、ミッションのために訪れた塔の五十階まで炎だけで飛んできたカルナが助けたのだ。

 ユーリをここに置いて行ったのは、おそらく足手纏いになるからではなく、十分に休息をとり、万全な状態で戦えるようにしておけという今任務に出掛けている班の仲間たちの計らいなのだろう。

 

 

「今帰った」

 

ユ「カルナ!?・・・ということは」

 

フ「おう!終わらせてきたぜ」

 

 

ユーリを励ます青年の名はカルナ。類希なるどころか、比肩するものなどいるのか?と思うような人外地味た白皙の美貌と、銀髪。空色の双眸。そして一際目立つ黄金の鎧『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ・クンダーラ)』。この鎧が、彼の名を語るには外せない対人宝具だ。最強と呼ぶに相応しい槍兵(ランサー)クラスの英霊である。

 無邪気に笑う小麦色の肌をした少年が、カルナの背後から出て来た。カルナの装備によって隠れて俺たちに見えなかっただけなのだが。

 この少年は、フラウという。孤児で雨が降る中、このギルドのマスターによって拾われたらしい。ついこの間までは、満足にミッションに参加させてもらえなかったうえに、班にさえ加わることを許されていなかった。この少年がミッションに加わってもいいと許可を得ることが出来たのは、他ならないカルナの業だ。フラウがカルナに直接特訓してくれと言ったらしい。無論それを断るカルナではなかった。

 

あれだけコミュニケーションという言葉を苦手であると公言するような男が、今では魔術師を目指す子どもたちにとっては憧れとなっているようだった。カルナがそれを自覚しているかどうかはさておき、あまりにも差が開きすぎた。

 理由はなんとなく理解できた。俺もカルナも、世界中のどこかの英雄ではあるが、この世界ではほとんど認知されていない世界だった。土地からの認知度が高ければ高いほど、力は増幅する。しかし、ほとんどゼロに近い認知度の二人には、決定的な違いがある。仮令、俺が高い防御力を誇っていようと、僅かながらも筋力を凌いでいたとしても、カルナと俺とではそもそもの基礎から違うのだ。しかし、それで諦めたのではない、ライバル(カルナ)が強くなっていくと同時に俺自身も、向上心が上がるというものだ。そして、いつかこの男に勝つ。ステータスや身分的な差があろうとも、実力でライバルを負かす。そして、再び彼と肩を並べこのギルドに来た初めの頃のように彼の背を守れる以上の力が欲しい。

 

 

ラ「日輪の槍(カヴァーチャ・シャリヤ)・・・ほんと壊れないんだね、その槍」

 

 

 カルナに話しかけたのは、水魔法を得意とするレベル4の優秀な魔術師ライトだ。金色の髪を肩くらいの長さに切り揃えた髪型に、蒼色の瞳をしている少年だ。穏やかで、比較的無口。カルナや俺ほどではないが・・・

 

 

ラ 「お父さんからもらったの?」

 

カ「いいや、これは基本装備でしかない。光と純金を混ぜた。錬金術のようなものだな」

 

この槍から繰り出される技の苛烈さは凄まじく、俺のバルムンクを弾いたほどだ。この槍を作った鍛冶師に一度会ってみたいものだ。

 

 

フ「師匠、ジークフリート、このあと暇か?」

 

カ「オレは、今日はもうない」

 

ジ「俺は、予定はない」

 

 

すぐにでも任務がやりたいくらいだが。

俺たちは、この後は暇だということで、フラウとライトに連れられて街に出た。

 

 

 

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