太陽が昇り始める午前五時頃、俺の目覚まし時計が鳴った。昨日の夜、フラウとライトがカルナの朝のルーティーンを知りたいと言った。いつも八時頃まで寝ているフラウとライトがしっかり起きてきた。
「本当にこの時間に起床してくるとは思わなかった」
カルナはすでに昨日フラウに貰った服を纏っている。太陽に照らされ、カルナの髪の色が朝日の色に染まる。フラウやライトも滅多にそういうところを見ないからか、好奇心に溢れた目で見ていた。
そんな二人の視線に気づいたのか、カルナが振り向き困ったように笑った。確かにジロジロと、しかも二人に見られているというのは照れる。ここに来てから、カルナは表情を変えることが多くなった。初めて会ったときは、無表情だったというのに。別に笑わないというわけではないのだが。最近は少し明るくなったのではと思う。しばらく歩いていくと青々とした森が見えた。カルナは、迷うことなくどんどん進んでいく。まっすぐ行った先には、美しい泉があった。空を仰げば、まだ昇り切っていない太陽があった。
「来ないのか?」
「カルナさーん!」
「ヨミか」
嘘だろう。この男の接近に気付けなかった。カルナはすでに知っていたようだ。声をかけられようやく後ろにヨミがいることに気づいた。気配を消すうえに、物音ひとつ立てない。アサシンの才能があるかもしれない。
「こんな朝早くにどうした」
「朝食取ろうと思ったら、牛乳もパンもなかったから買いに来たの。その途中にカルナさんたちを見かけたから、ついて来たの。ここで沐浴してたんだ」
「お前はしないのか」
「まちまちだね。ピクニック日和だね」
透き通るような青が頭上に広がっていた。雲一つない。確かにピクニックには最適かもしれない。ここには、人はあまり立ち入らないうえ、聞こえるのは鳥たちの囀りだ。
「なんか・・・別世界に来た気分だよ。白皙の美人さんと太陽っていう組み合わせを見ながらパンを食べられる日が来るとは思わなかったよ」
今、とんでもない言葉を発しなかったか。カルナは全く動じてもいないし、おそらく気にしてもいないだろう。どっかり座ったヨミは、俺たちにパンを分けてくれた。
「ここのパン美味しいんだよ」
カルナは、沐浴が終わったのか俺たちの近くまで来た。タオルを持って来なくてよかったのか。すると、カルナが魔力放出(炎)を発動した。それで乾かしていた。そんなスキルの使い方があるのか。「さすがカルナさん」とヨミは嬉々としていた。何がさすがなのかわからない。
「カルナさんもパンどうぞ」
「ありがとう」
「うん」
カルナは、華奢だがかなり大食いだ。一体どこに吸い込まれていくのか
「すべて魔力になるんじゃないかな。カルナさん燃費悪そうだし」
「そうなのか?」
「ヨミとキラにも燃費が悪いと言われた」
一度に放出する魔力が尋常ではないのだろうとヨミは言った。食事が魔力供給の源にもなるらしい。俺はふつうに消化されている気がするのだが。ほとんど燃料なのか、食事は。俺の隣でフラウとライトがパンを頬張っていた。
「これうっめぇ!」
「うん、美味しいね」
子ども二人がキラキラとした瞳でパンを頬張っていた。牛乳とパンがなぜかよく似合うが、それは子どもだからなのか。こう見ると、この二人は子どもにしか見えない。見た目とは裏腹に立派な魔術師だというのに。
「そうそう、今日オレ、カルナさんのところのギルドから出動要請入ったんだよ。カルナと・・・それから灰色の髪のでっかい人と行けって言われた」
「灰色の髪のでっかい人、とは俺のことか」
俺はギルドでそういう認識なのか。知らなかった。
「オレもか」
「うん。オレ、魔術師認定証ないんだけど」
「非正規魔術師なのだろう。マスターが言っていたぞ」
「まあね。でも、カルナさんと一緒ならいいや」
「では、ギルドに戻るか」
「うん」
体格はカルナよりもしっかりしているが、身長はカルナよりも低いかもしれない。
「今、ちっちゃいって思ったよね?」
「うむ・・・」
というか、子どもだと思っているとはっきり言うと、少しだけ怒られた。
「カルナさん、今日は何で戦うの」
「せっかくだからな、お前が作ってくれた弓を使わせてもらおう」
やったねと言って
俺たちは、ヨミを連れてギルドに帰還した。そこで、すぐにマスターの秘書で、ギルドNo.2の権力者のおそらく男エデンに依頼書を渡された。エデンは、翡翠色のセミロングと緋色の双眸が特徴で、少なくとも男には見えない。
「ん?プンダリーカとの合同任務?」
「プ、プンダリーカって・・・あのプンダリーカ?」
どのプンダリーカなのだろう。カルナでもあまり知らないらしい。聞いたことがある気がしなくもない
「たった十二人で構成され、洗練されたギルド。それがプンダリーカ。構成員のうち十人がLv6を超えるんだよ」
「そして、あと構成員のうち一人がLv7。最強のギルドですね」
Lv7はこの世界で指折りしかいない。構成員の一人がLv7なのだ。このギルドのLv7はカルナのみだ。
「さらに、そのマスターは上をいくLv8。しかもLv9目前」
カルナまで目を見張る。事実上この世界においてもトップだ。
そのマスターのためにレベル制限が制度化されたのではないかと言われるほどだという。
「手合わせ願いたいものだ」
「もうマスターに関しては伝説だと思ってるからね、オレ」
プンダリーカが強過ぎるためにでっち上げられたのではと。出会った事がある者が一人もいないから余計だ。
「なんで俺なの?コイドさんとかいるじゃん」
「別の任務に行っております。ジュールさんは大工さんのお手伝い。ユーさんは治療。フラウさんとライトさんはレベルが足りません」
「素材取りに行きたいんだけど」
「素材採れますよ。たらふく」
「よっしゃ任せてよ」
すぐに意見が変わった。すぐにも程がある
「まぁ、せっかくのプンダリーカとの合同任務です。ステータスの更新をしては?」
「そうだったな」
「忘れていた」
俺たちは、このギルドで専属医をしている男のところへ向かった。ドアを三回ノックしてキーがカチャっと開いた。そこに居たのは、銀色の長髪の少年キラ・マオヴァだ。愛称はマオ。カルナがマオと言っていたが、俺はニックネームでは呼ばない、というか呼べない質だ。
「まずは、ジークフリートさんからですね。はい、カード」
俺は自分の魔術師認定証を渡した。
Name ジークフリート Siegfried
AGE ?
ATP 8100→8800
HP 9000→9500
Skill 筋力B+
耐久A
敏捷B
魔力C
幸運E
黄金律C
仕切り直しA
竜殺しA→A++
騎乗 B→A
宝具A
Lv6⇒
「ジークフリートさん」
「どうした?」
「もうすぐでLv7ですよ」
マオヴァ・キラの顔が晴れやかになったから何事かと思ったら、Lv7が目前だった。俺も心の中で大いに喜んだ。ただ、隣の男が上がっている可能性がある。
Name カルナ Carna
Age ?
ATP 11900→12500
HP 12900→13900
Skill 筋力B
耐久C
敏捷A
魔力B
幸運 自称A
対魔力C
騎乗A
貧者の見識A
魔力放出(炎)A
神性A
宝具EX
Lv7⇒Lv8
「みなさーん!!」
「どうしました?マオさん」
「Lv8到達しました」
ギルド内が騒然とし、同じ隊であるコイドたちがようやくか、と祝った。これは夜は宴だろうな。
「カルナさんすごい!」
「最速じゃね?」
「彼でもLv8に到達するまで五年はかかったのに、カルナさんはまさかの三年。一度戦ってみてほしいですね」
ギルド内でもかなり腕が立つエデン(隠れLv6)も、骨が折れる相手ですと言った。この人のことだから、そこまで本気でやってこなさそうだ。
「多分、骨が折れるの意味が違うと思う」
「ええ、物理的に」
「そっちか」
「久しぶりにわたしも行ってみたいものですね。任務」
「来るか?」
「お三人がいますし、ここに怪しい輩が来た時ぶっ飛ばす人が必要でしょう?」
天使のような微笑を浮かべる男からのぶっ飛ばす発言。この人は、笑顔でとんでもない爆弾を投下してくる。それにしてもプンダリーカのマスター、俺も戦ってみたい。レベル補正があるのが問題だ。
人物紹介
エデン
フレアフルールマスターハイリの秘書。翡翠色の髪と緋色の双眸の美人。
キラ・マオヴァ
フレアフルールの専属医。医者でありながら人見知り。怪我人や病人を治すためなら命を懸けるほどの情熱を持っている少年
用語解説
プンダリーカ
二ーロートパラ王国の首都カマラに位置するギルド。十二人からなる最強のギルド