黎明の光より   作:砂門

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第四話〜合同任務開始

ジークフリートside

 

 

今回のプンダリーカとの合同任務において、集合は現地でということになっていた。現地でとは言うが、その場所は船でようやくたどり着けるような場所だ。Lv5以下の魔術師は侵入禁止。それだけの危険地帯だ。最寄りの駅を下り、そこから1キロほど歩いてようやく湖が見えた。その中心にある島が今回の現場。しかし、無人の船しかない。

 

 

「すみません、フレアフルールの方々でしょうか」

 

 

俺たちは一斉に振り向く。3人の男がいた。濃い茶髪の男。黒髪短髪の男。深い青の癖っ毛の男。全員見たことの無い服を着ている。ヨミ曰く、袈裟だそうだ。青髪の男だけかなり着崩している。

 

「プンダリーカの者です。遠いところからおいでいただき、ありがとうございます。詳しくは、船内でお話致します」

 

「どうぞ、お乗り下さい」

 

 

丁寧に船内へ案内してくれた茶髪の男と黒髪の男。しかし、青髪の男は無愛想に俺たちの後ろを歩く。プンダリーカが所有する船に乗せてもらえることになった。無人と思っていたが、彼らの船だったのだ。案内してもらった船内は、俺のギルドの部屋よりも広い。上等そうなカーペットが敷かれ、ソファが置かれ、テーブルも置かれ、奥にはキッチン。過ごしやすい空間だ。しかし、これから任務に向かう船とは思えない

 

 

「主も乗りますからね。狭い船内に乗せる訳にはまいりません」

 

 

彼らのマスターはかなり高い身分のようだ

 

 

「さて、まずは自己紹介から。クシティと申します」

 

 

濃い茶髪の男がクシティ。土の使い手。ヨミ曰く、クシティとはサンス語で大地を意味するそうだ

 

 

「私はサーガラと申します」

 

 

黒髪短髪の男がサーガラ。水の使い手。サンス語で海を意味する。

 

 

「ヴァジュラだ」

 

 

どういう魔術を使うのか教えてくれなかった青い髪の男がヴァジュラ。サンス語でダイヤを意味する。おそらく硬質系の魔術師だろうとカルナが言った。空かさずクシティ殿が硬質系の魔術師ですと教えてくれた。カルナの予想通りだった。

 

 

「サンス語の意味が分かればほぼ答えだよ」

 

「そうだな」

 

「マスターの名前は?」

 

「シャンティ・プリハスパディ」

 

「うそでしょ・・・」

 

 

少しだけ渋ったクシティ殿だったが、合同任務をするからと教えてくれた。非常に申し訳ないことだが、このギルドの人物の名前がなかなか覚えづらい。特にマスターは名前が長い

しかし、出てきた名前にヨミだけでなく、カルナまでもが驚いた様子だった。シャンティという名前に覚えがない。カルナ曰く、嫌でも名前を聞くという

 

 

「シャンティとは?」

 

 

今度は俺を見て全員が驚いた。Lv8でこの世界最強の魔術師であるということは、エデンから聞いて知った。そんなにも有名な人物なのか

 

 

「二ーロートパラ王国の国王だよ」

 

「お、王だったのか・・・」

 

 

サンス語で睡蓮を意味する二ーロートパラ。その国の王の顔は、国民以外で知っている者はいない。しかし、聖王と呼ばれ、慕われているという。世界中枢同盟(セントラル)の組織が嫉妬するほど大人気らしい。世界最強の男が国王。さらに、この世界で唯一皇帝という称号をもう事が許された男。

 

 

「シャンティ・プリハスパティ。平和を祈る主っていう意味なんだって。まさかそんな人がマスターだなんて」

 

「そのような王が我々を頼るとはな」

 

「ええ、我が主はフレアフルールを推されました。今回の任務を合同としたのは、手が空いている人間がこれだけしかいなかったというのもあるのですが」

 

 

残り八人のギルドメンバーのうち、3人は非戦闘員。国の周りと国内を監視する役割を持つ。それでもレベル6なのだから恐ろしい。あとの5人のうち2人は当番制で門番をしている1人諜報部員として潜入調査中なので帰ってこない。そして外交のために他国に交渉に行った者がいるので1人減る。マスターを守る者が必要なので、1人減る。こうしてこの3人が任務に出る者として選ばれた。

 

 

「その3人のうち1人くらい出せなかったの?」

 

「監視の対象が違うのです。1人は結界に歪や亀裂ができていないかを終始監視。1人は怪しい人物がいないかを終始監視。1人は国内に呪いが蔓延していないかを終始監視」

 

 

結界に亀裂が生じた場合は、その1人が結界を補強。怪しい人物がいれば、即門番へ報告。万が一呪いが蔓延していたら、その1人が浄化する。3人いて国が守られている。つまり、1人として欠けてはならないのだ

 

 

「任務がどういうものかは、資料を読んでくださるとお解りになるかとは思いますが、確認しておきましょう」

 

「うん、確認は大事だよね」

 

 

シュヴァルツという蛇の鱗を持ち帰ることが任務だ。その鱗には猛毒があるという。鱗を持ち帰る任務をした者のうち、ギルドのなかで少なくとも2人は毒に侵され意識不明。その他のギルドは恐れて断ったという。そして回ってきたのがフレアフルールとプンダリーカ。プンダリーカは依頼者にとっても最後の砦なのだろう

 

 

「毒に耐性なんてないんだけど・・・」

 

「ご心配なく。シャンティさまからの恩恵により、我々は毒や呪いの効果を受けないのです。それはあなた方も」

 

 

自分が味方だと判断した者に等しく恩恵を与える『聖なる沙羅双樹』。他所のギルドの一メンバーにもその魔術をかけてくれたのだ。

 

 

「安心しやがれ、ひ――シャンティの魔術だ。信じて損はしねぇよ」

 

「まず、シュヴァルツの鱗に毒はないよ。シュヴァルツの鱗を毒でコーティングしているとかじゃない?」

 

「コーティング?どういうことだ」

 

 

カルナが尋ねた。ヨミには心当たりがあるらしい。実は、シュヴァルツの鱗を使った武器を過去に錬成しているというのだ。この任務の内容を読んだ際、ヨミは違和感を覚えていたという。ここで再確認をしたことで違和感の正体に気付いたのだ

 

 

「俺が違う場所で収穫したシュヴァルツの鱗から毒が検出されたことはないんだよ。マオくんに確認してもらったから間違いないと思う」

 

 

医療のスペシャリストであるキラだが、安全かどうかを検査する任務を受けることがあるという。人の手に渡る武器の素材に毒が付着していては大問題だ。そのため、収穫した素材一つ一つを精査してもらう必要があるのだ。そのキラが見ても鱗の表面から細部に渡って調べても毒は検出されなかった。そのシュヴァルツだけではと思ったが、ヨミがシュヴァルツの鱗を収穫したのは一度や二度ではなかった。兵士の鎧を造るために使われるため、かなりの量の鱗が必要となる。別のシュヴァルツからも検出されていない。「五体いて五体とも検出されなければ毒はないと見ていいんじゃねぇか」とヴァジュラ殿が呟いた

 

 

「そういえば、シャンティさまが仰っていました。シュヴァルツの抜け殻を見たことがないと」

 

 

クシティ殿が言った。蛇は普通脱皮する。しかし、何度もシュヴァルツの鱗を収穫してきたヨミでさえ、抜け殻を見たことが一度もないという。

 

 

「ならば・・・脱皮するときどこかに隠すということか」

 

「脱皮するときに襲われたらヤバいからね」

 

「しかし、抜け殻と毒にどのような関係がある?」

 

 

俺は単純に疑問に思った。脱皮すれば抜け殻が放置される。脱皮する際に襲われるのを恐れて洞窟で身を潜めて脱皮したとする。しかし、この時点で毒との関係性が見当たらない。

 

 

「そこだよなぁ」

 

「シュヴァルツの抜け殻は溶けるとも仰っておりましたよ」

 

 

 今度はサーガラ殿が言った。シュヴァルツの鱗は脱皮した後は柔らかいが、少しずつ空気に触れることで硬度を増す。しかし、抜け殻は空気に触れれば触れるほど柔らかくなっていき、ゆっくり溶けていくという。

 

 

「溶ける・・・空気に触れて溶けるって・・・腐ってない?」

 

「腐敗した抜け殻は毒を発生させるということか」

 

「いや、それでもおかしい」

 

 

島に着いた俺たちは、話しながら船を降りた。クシティ殿が疑問を投げかける

 

 

「確かに、腐敗した抜け殻から毒が発生するのはわかります。しかし、人を意識不明にさせるほどの毒だとは思えないのです。元々毒を持たないシュヴァルツが腐敗したところでたかが知れています」

 

 

クシティ殿の言いたいことはわかる。確かに、腐敗した物質から毒が検出されることはある。しかし、精査に精査を重ねて何も出なかった物質が意識不明になるほどの毒を発生させるのかと問われればそうではないと考える

 

 

「コーティング」

 

 

ふとそれまでほとんど話さなかったカルナがポツリと呟く。ヨミが始めに推した説だ。

 

 

 「毒を塗るなら検出はできる。しかし、意識不明になるほどかはわからない」

 

 「その可能性が一番高いか・・・」

 

 「どうしてここに来るときに、シャンティさまは抜け殻の話をなさったのでしょう」

 

 

 長い付き合いであるギルドメンバーが分からないなら、俺たちはさらに分からない。そこで、ヴァジュラ殿がハッとしたように顔を上げた

 

 

 「抜け殻が何かに利用されているってことはねぇか?」

 

 「そんなデカいもの・・・あ」

 

 「お前にもわかるか?」

 

 「脱皮する際隠れる。そこを隠れ蓑にして例えば・・・実験とかしてたりさ」

 

 

全員がハッとする。実験。隠れて実験を行うのならば、巨大なシュヴァルツの抜け殻は絶好の場所。ただ採取するだけであれば、生きているシュヴァルツから収穫しようとは思わない。しかし、この洞窟で生きているシュヴァルツと抜け殻がある場所は別々だろう。ヨミは、目がいいのもシュヴァルツの特徴だという。そんなシュヴァルツの視界に入ろうものなら襲われる覚悟をした方がいい。しかし、意識不明の状態であるのに無傷だったという。依頼の内容欄とは別紙で資料もある。

 

 

 「戦っていなかったってことだね」

 

 「こうなると・・・話しているよりも探す方が賢明ではと思えてきましたね」

 

 「ああ。じゃあ、さっそく行こうぜ」

 

 

 俺たちは、考えることをやめ、まずはシュヴァルツを探すことにした。

 

 




登場人物
クシティ
二ーロートパラ王国の国王の使用人の一人で、プンダリーカの構成員。土系統の魔術師。特技は庭の土を変えること

サーガラ
二ーロートパラ王国の国王の使用人の一人で、プンダリーカの構成員。水系統の魔術師。特技は掃除。年末は鬼と化す

ヴァジュラ
二ーロートパラ王国の国王の親友であり右腕。プンダリーカのエース。硬質系の魔術師。特技は昼寝(おいおい解説)

シャンティ・プリハスパティ
二ーロートパラ王国の国王であり、プンダリーカのギルドマスター。この世で最強のLv8の魔術師。(おいおい解説)


サンス語(サンスクリット語)解説
二ーロートパラ・・・睡蓮
プンダリーカ・・・白い蓮
カマラ・・・紅い蓮
シャンティ・・・平和、静寂
プリハスパティ・・・祈祷の主


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