黎明の光より   作:砂門

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第五話〜洞窟調査の醍醐味

ジークフリートside

 

洞窟に入った瞬間に異様な雰囲気を感じた。どんよりとしていて、やる気をなくしてしまいそうなくらいの重い空間だった。

 

 

「なんだこの空気」

 

 

少し歩くとすぐに分かれ道。この先のどちらかにシュヴァルツか、シュヴァルツの抜け殻か、素材の宝庫か

 

 

「洞窟探検にありがちだよね、分かれ道」

 

 

どんよりとした空間で、場違いでしかない飄々とした声音。だが、この明るさが助かっている節はある

 

 

「お前すげぇな」

 

「なんで?」

 

「普通こんなところで燥げねぇって。見た目通りガキなんだな」

 

 

ヴァジュラ殿の揶揄するような物言いに、探検だ探検と笑っていたヨミがムッとした顔で振り向いた。子供が拗ねているようにしか見えない

 

 

「誰がガキなのさ!」

 

「むきになるのはガキの証拠だな」

 

「ガキって言う方がガキなんだよ!」

 

 

どっちもどっちのような気がするのだが。クシティ殿とサーガラ殿も頭を抱えていた。エデンからプンダリーカの説明を受けたとき、硬派なギルドなのだろうと思っていたのだが、思いの外楽しそうなギルドだ。親近感が湧いて来るような湧いてこないような

 

 

「しかも、ちっせぇし」

 

「君こそ、なにその髪型。ライオンかよ!」

 

「んだとてめぇっ!」

 

「ヴァジュラさん、いい加減にしなさい」

 

「ほーら怒られた~だっさいの」

 

「ヨミ、お前もやめろ」

 

 

やはりどっちもどっちではないか。こんな初対面でこれだけ仲良さげな会話を繰り広げられるのもすごいと思うが。仲が良いなというと、仲良くない!と返ってきた。声が重なっているあたり、やはり仲が良い

 

 

「硬派な感じで行きましょうって言ったじゃないですか」

 

「そうです。そのうち親近感が沸くとか言われてしまいます」

 

 

もう思われている。常時ピキピキした状態よりも、こうして賑やかな方がいい。特に、この空間のようなどんよりとした雰囲気のなかでは

 

 

「二人ずつ分かれて探さないか?」

 

「うん、そうだよね。それこそ醍醐味だよね」

 

 

これは洞窟探検が目的ではないはずなのだが。シュヴァルツの鱗を収穫してようやく任務は終了する。しかし、ヨミが言うように実験が行われていた場合は、依頼者ではなくそれぞれのマスターから判断を仰ぐことになるだろう

 

 

「出会したとしても戦闘は避けようぜ」

 

「一番に喧嘩を売る方が・・・しかし、その意見には賛成です」

 

 

敵の姿を見つけると空かさず飛び出していくのはヴァジュラ殿だという。そのヴァジュラ殿からの「戦闘は避けようぜ」という提案。槍の雨が降りそうですねとサーガラ殿が言った。そんなにも珍しいことなのだろうか

 

 

「この洞窟が崩れかねないからな。オレも賛成だ」

 

「シュヴァルツ下手したらウン100メートルくらいあるからね。そんなの暴れたら最悪だよ」

 

 

ウン100メートルか。そんなものを隠せるほど、この洞窟は広いのだろう。これはシュヴァルツの居場所を特定するのも一苦労するだろう。

 

 

「組み合わせはどうするの?」

 

 

どんな組み合わせでも大して変わらないだろうということになり、くじ引きで決めることになった。

 

 

「えぇー」

 

「マジかよ」

 

 

カルナとクシティ殿。オレとサーガラ殿。やはりと言うべきだろうか、ヨミとヴァジュラ殿だ。

 

 

「なんでお前なんだよ」

 

「それはこっちのセリフなんだけど」

 

「よろしくお願いいたします」

 

「ああ」

 

「少しだけ興奮致しますね」

 

 

・・・あなたもなのか

嫌そうなヴァジュラ殿とヨミ。真面目なクシティ殿と手短な返事で済ませるカルナ。興奮すると発言したサーガラ殿。ヨミほど燥いでいる訳では無いが、心のなかはワクワクしているらしい。

 

 

「帰ったら絶対シャンティに俺の運だけでも上げてくれって頼んでやる」

 

「そんな魔術あんの?」

 

「シャンティなら持ってそうじゃねぇか」

 

 

持ってそうというだけで頼まれようとしているシャンティ殿に少しだけ同情する。シャンティ殿はどのような魔術を使うのだろう。サーガラ殿に後で聞こう

 

 

「さて、抜け殻を見つけたらどうする?」

 

「そこで待ち合わせじゃない?」

 

「しかしそうしますと、またここに戻ってくることになるのでは?」

 

「その前にね、途中でまた分かれ道あったらどうする?」

 

 

内部の構造がわからないこの巣窟だ。他に分かれ道があるとみていい。そうなると迷子になってしまいそうだ。

 

 

「真っ直ぐでいいと思う」

 

「何でだよ」

 

「単純に、迷うからだ。ここにエデンがいないことが救いだな」

 

「ホントだよね」

 

 

ヨミなら分かるが、カルナまでもがため息をついた。ヨミ曰く、エデンの方向音痴は重症だという。二人一組であれば問題なく進めるが、一人で調査に出かけようものなら、辿り着くまでに少なくとも二日掛かるらしい

 

 

「ヨミはよく依頼を受けるのか?」

 

「うん、受けるよ。一番多いのは武器錬成だけど、偶に他国の島だったりするんだ。その国の王に許可貰わないといけない。その時に付いてきてもらうんだよ」

 

 

武器の素材が他国の島でしか採れない場合、許可の交渉するのはエデンの仕事だ。基本的にエデンの任務は王族関係。王からの依頼と、王への交渉がほとんどらしい。繋がりもあるから許可も下りやすいそうだ。

 

 

「危険な、それこそシュヴァルツより暴れる生物を相手にする時は着いてきてもらうこともある。そこで基本迷子になる」

 

「エデンが用意するマップもひどいものだ」

 

「親切に道順に線を引いておいてくれるんだ。ただ、その道が遠回り過ぎたりするんだよ」

 

 

そもそも最寄り自体が最寄りになっていないこともあるという。例えば駅ならば二十分ほどで辿り着く所を、港からナビが始まっていたりする。その港からは一時間もかかる。そのようなことが何度もあったという。俺は、ヨミが頻繁にギルドに来ていたことに密かに動揺していた

 

 

「ヨミは、よくギルドに来るのか?」

 

「うん。そんなに存在感ないの?」

 

「気配を消してくるお前が悪い」

 

 

何度も来ているのに、気付けなかった自分に落胆する。

 

 

「内輪話を楽しむのはいいんだが・・・そろそろ行かね?このままだと日跨ぐぞ?」

 

「その意見には賛同するよ。あ、とにかく真っ直ぐ突っ切ってね」

 

「わかりました。抜け殻が見つかったら念話で報告をお願いします。呉々も、独断で調査に踏み込まないようにして下さい」

 

「承知した」

 

 

俺たちは、ようやく洞窟の探索に踏み込むことにした。内輪話は必要だったのだろうか

 

 

 

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