序章1~裁き~
「やめなよ、大勢で一人をいじめるなんて」
怒涛の飛び交う教室にひとつの声が走った。内一人の男子生徒が「あぁん??」とガンを飛ばして私の襟元を掴む。
「お前は確か
「彼女だって人間よ・・・同じ人間でもこれは過激すぎる」
やはり・・・このいじめに加担する奴は人であって人でははない。
ことの発端は半月前。当時人気アーティストツヴァイウィングのライブ中に突如特異災害ノイズが現れた。
次の報道の時点でノイズは殲滅されたらしいがその死者の数が夥しい数字を示していた。
―――観客やスタッフなどの会場関係者を含めて8割。
これが全体の死傷率である。更にこの中にはツヴァイウィングのメンバー一人も含まれており、解散するまでの時間はそう短くはなかった。
さて、どうしてこうなっているのかと問われれば私もあまり分からない。
ただそのライブには校内でも人気の高い生徒がおり彼もその死者の中に含まれていた。同じ学校の生徒なのに何故自分だけ助かったのか。お前が殺したのか。
と女子生徒が嘆きの言葉をわざわざ病室に押しかけて言った。
退院後は普通に学校に通っていたが校内どころか世間が間違った報道に先行され、彼女だけでなく家庭にも一生消えない傷跡を残した。
噂では父親が耐えかねて夜逃げしたらしい。
家族すら引き裂いたこの残酷な風評は裁判沙汰にもならなかったそうだ。
そして今も彼女はこのいじめに耐えている。ずっと見て見ぬふりをしていたがもう限界だ。
席を立って震える体を固定して言い放った。
―――そして今に至る。
「おいおい咲夜さんよぉ、これはあいつの弔い合戦なんだぜ?それとこんな噂を知ってるか?ここ最近ノイズの出没する頻度が多くなってるそうだ。もしかしらこいつがノイズ製造機なんじゃねえのかってな」
バカを言うな・・・それは人種差別よりも酷い言い草だ。こいつの頭の中は黒い花畑だ。同じ人間だと思えない。
「そんなことを平然と言えるあんたこそ人じゃない・・・あんたなんて・・・
「なんだとゴラァ!」
左頬に平手が叩き付けられた。その弾みで私は近くの机に叩き付けられる。
「は、今日は気分が乗んねぇな。今日はこのくらいにしておいてやるよ。それと咲夜!次はねぇと思えよ。おめぇらずらかるぞ」
子分たちが「ういっす」と言い、私にガンを飛ばしたり唾を飛ばして続々と教室を出る。
彼らが全員立ち去るのを見て彼女の元に寄った。
机には「死ね」「泥棒」「クズ」「一生呪われろ」などのまるで小学生並みの暴言がいっぱいに書かれていた。
それに薄く消えている字もある。消してもまた書かれる・・・残酷にも程がある。酷いよ・・・やっぱりこれは。
「・・・どうして庇うの?昨日まではそっぽを向いていたのに」
今にも枯れそうな花にも似た声が聞こえた。
「確かに私は目を背けていたよ。でも―――」
背中をやさしくなで。
「もう背けることは捨てたよ。私に何かできることがあったらどんな事でも相談に乗るよ立花さん」
「響で良いよ。咲夜ちゃん」
響は笑った。この笑い顔を見るのは久しぶりだ。・・・やっぱり私と同じように彼女だって人として生きる権利がある。
私が・・・響の心の支えになるんだ。ちょっとかもしれないが響の花が立ち上がっているような気がした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「じゃあ明日ね!」
「うん、また明日」
商店街前で響と別れ、私は一人商店街へ歩いていく。
ここも都会と比べて何にもなくてつまらない。
普通の田舎とは比べてでかいとは思うが何より商店街が今だ現役というのも何だか複雑とは思うが・・・
しばらく歩くと更地が見えた。前はここにも店が建っていたが、家主が死んだため建物は解体され、今の姿になっている。
・・・ここならいいだろう。鞄を端に投げ、発する。
「ずっと付けるんでしょ。出てきなさい」
その言葉をトリガーに一本道からぞろぞろと人が湧いて来る。
数は10人。全員が最早見慣れた顔だ。
「ここ最近静かだと思ったけど何か準備でもしていたのかしら?」
「ああそうとも。ノイズの駆除に工具やらをな」
男が「構えろ」と言うと各自が釘バットやらナイフやらを持つ。
中にはレプリカではなくマジ物のハンドガンを持っている。
これはちょっと不味いかなぁ・・・自分から喧嘩を売ったはいいが。
ここまで重武装化しているのは想定外。
私には万年予選敗退の剣道の腕しかないし木刀も学校に置いてきているがやれることはやる。
近くに落ちていた鉄のパイプを拾い、構えをとる。
そして一歩前進したその時―――
[ウィイイイイイイイインンンンンンン!!!!!]
とサイレンが鳴り響く。この音は・・・。ノイズが出現したことを知らせる言わば、
地獄の門が開いたとことを知らせる音だ。
「なッ!?おまえやっぱりノイズを・・・」
「そんなことはいいから早く逃げないと私達は!」
「うわぁ!!!」
私の目の前で一人が炭素となった。
奥には独特な電子音。
色はぐちゃぐちゃ。
そして気味の悪い形。
そう。ノイズが今私達の目の前に立ちはだかっている。
動揺した不良の一人が銃を発砲する。
が、その弾はノイズの体をすり抜けた。
反撃と言わんばかりにノイズは体を線状にして飛びかかる。
触れた一人がノイズ共々炭素になった。
このままだと殺される!
目の前の死に恐怖感を覚えた私は逃げるように塀を乗り越え、広い道沿いに出た。
だがそこは言わば地獄絵図だ。
辺りには炭素が一面に敷かれており、人類の無力さを
思い知らされている。
―――響は無事なのか。響だけでなく大友人の小日向未来も・・・
とりあえず私も避難用のシェルターに急がなくては。
移動しようとしたその途端、先程まで持たれていた壁からノイズがすり抜けてきた。
余興はなしか・・・。走りながら安全なシェルターを探す。
だが一番近いシェルターは真逆の方向だ。
命が惜しいが遠く離れたシェルターを目指すことにした。
追手のノイズはおよそ3~4体。それなら後ろを見て走れる。
時より攻撃してくるノイズを避け、9分を逃れ切りあとふたつの曲がり角を曲がれば
安全なシェルターがお目になる。
気づけばノイズもいない。振り切れるなんて運が良い。
一息置き、駆ける前の角のチラ見をした・・・ッ!?
慌てて首を引っ込める。
「(ウソでしょぉ!?)」
改めてゆっくりと見るとざっと10は超えるノイズが一台の車を包囲していた。
ノイズがこんな光景をするなんて・・・
幸いにこちらには全く気付いていない。
今のうちにばれないように慎重にゆっくりと忍び足で渡った。
が、半分を切った所で車が急に爆発した!なんでぇ!?
車の破片が雨のように降る・その中に赤いペンダントのような物が入り混じっていた。
それを興味本位で取ると急にノイズ達が一斉にこちらを振り向く。
「ち、ちょっと・・・なんの冗談よこれ・・・」
ノイズ達はゆっくりとこっちに歩き出す。反対に逃げようとしたが、
反対側にも正面と負けない数のノイズが向かってくる。
終わった・・・私の人生100%終わった・・・
ノイズに殺されるなら人間に殺された方が遥かにマシだ。
ごめん響。先に閻魔様にでも会ってくる。
―――そう言えばこのペンダントを握った時から頭に何か歌が浮かんだ。
なるほど、これが終歌ってやつね。
なら聞かせてあげる。私の唄を!
「axia Mjollnir to tron~♪」
唄い終わった直後、ペンダントが突如輝きを放ち、身に着けていた制服が消し飛んだ。
光は球体になり私を包み込む。
体にどんどん重みが増していく。
包みこんだ光が消えるとペンダントは消えていた。
近くに散乱していた車のガラスと合わせると・・・
私はなんだかよく分からない鎧を身に着けていた!!!
「な、な、な、な・・・なによこれぇええええええ!!!!!!!」
序章は2話完結
次回は主に戦闘回