ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

10 / 196
第5話です。

予告に登場したエボル、なかなかかっこいいですね。
動くところが早く見たいです。ドライバーの声は誰なんでしょうかね。


Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は……

S.スペクター
11.ツタンカーメン(+)
12.ノブナガ(+)


第5話 「グレモリー」

「まさか神器を使える人間だったとは思わなかったわ……」

 

忌々しそうに堕天使は呟き、手に持った槍をくるくると回す。

 

「ますます放って置けなくなったわねぇ」

 

先手を打ったのは堕天使。急降下し弾丸のような速さで突撃してくる。

 

「あなたもお友達のもとへ送ってあげるわ!」

 

鋭く槍を突きだす。

 

「ッ!」

 

紙一重のところでかわし、後ろに跳んで距離を置く。

 

「速いな…」

 

速い。明らかに前に戦った堕天使と格が違う。あの槍にしてもそうだ。以前の堕天使が使っていたものと比べて鋭さも輝きも上だ。

 

〔ガンガンハンド!〕

 

ガンガンハンドを召喚し、構える。目には目を、武器には武器を。

 

駆け出す俺と、突撃する堕天使。

互いの武器がぶつかり合い火花を散らす。

 

「ぬぅぅ…!」

 

「ハァッ!」

 

がら空きになった俺の腹に、鋭い蹴りが入る。

 

「うっ!」

 

さらに槍の払いも続けて受けてしまう。

 

「がっ…!」

 

堪らず倒れる。苛立ちをぶつけるように地面を殴る。

 

「ハァ、ハァ、ならっ!」

 

今度はポンプアクションで銃モードに変形させたガンガンハンドの銃撃を放つ。が、撃てども撃てども銃弾は虚空を切るのみ。

 

「……一体どこを狙ってるのかしら?」

 

当たらない。最初に戦った時と同じだ。狙いをつけて撃ったつもりでも銃弾はかすりもしない。

 

……ここまでくると認めるしかない。俺は銃が下手くそなようだ。他の人が同じ距離ですれば必ず当たる、そんな距離で銃撃をはずしている。

 

屈辱だ。その事実がギリギリ保っていた僅かな冷静さをついに失わせた。

 

「くそったれがぁ!!」

 

ガンガンハンドを投げ捨て、自棄気味に殴りかかる。

 

「アアアアアアアッ!!」

 

感情の昂りに反応してか全身のエナジーベッセルが光だし、パンチを放つ右手に青いオーラが宿る。

 

「ラァッ!!」

 

怒り、力、憎悪の乗った渾身の一撃。しかし、横に体を素早くひねって回避され、空を切った右腕が捕まれる。

 

「ッ!」

 

「腰の入ってないただ力任せなだけのパンチ……やはりずぶの素人ね!」

 

ニヤリと笑うと足払いをかけて転ばされる。堕天使は翼を広げて飛翔し、槍を一つ、投擲した。槍は地に刺さると光が弾け衝撃波を発し地を這いつくばる俺を大きく吹き飛ばした。

 

「がはぁっ……!」

 

地を何度もごろごろと転がる。

 

「さっきのパンチもまともに当たればひとたまりもないでしょうけど……どんなに強力な神器でも使う人間が無能ならここまで弱くなるものなのね」

 

余裕だからと今度は俺まで馬鹿にするのか。

 

攻撃が全く当たらない。やはり経験の差が物をいうのか。それとも俺自身のスペックが低すぎるために力を引き出しきれていないのか。

 

(どうしたんだ俺は……!アイツをぶっ潰すんじゃなかったのか!?)

 

「くそっ……ん?」

 

苛立ちを拳にのせて地面を叩く。その時ビチャという音が叩いた右手から聞こえ、思わず目を音の聞こえた方に向けた。

 

物言わぬ骸になった兵藤。俺の右手が、胸に空いた風穴から流れ出た血に濡れている。

 

「兵藤……」

 

アイツはあの堕天使に騙され、そして殺された。きっとこの日のデートを心待ちにしていただろう。初めてのデート。楽しくないわけがない。

 

『実はな!俺、彼女ができたんだ!』

 

脳裏にあいつの笑顔がよぎっては消えていく。まだまだあいつと遊びたかったのに、あいつと喋りたかったのに。だが、その願いが叶うことはもうない。

 

……そうだ、俺はあいつの仇を討つために今戦っている。

どうせ敵は神器関係で俺を殺すつもりでいる。諦めるなんて選択肢は最初からなかった。

 

あれだけ好き放題に言われたんだ。かすり傷の一つでもつけなければ気が済まない!

 

「……」

 

ゆっくりと起き上がり、堕天使を仮面の下から睨む。

 

「あら、まだ戦うというの?大人しくすれば楽に殺してあげるというのに」

 

「……お前には絶対に屈しない」

 

眼魂を一つ、取り出して見せる。

 

「…それは」

 

「こんな弱っちい俺にも意地がある!」

 

眼魂のスイッチを押すと12の数字が浮かび上がり、ドライバーから既にセットされたスペクター眼魂を抜き取る。今まで纏っていたパーカーが消え、トランジェント態に戻る。

 

そして起動した眼魂を入れ替えるようにドライバーに差し込み、カバーを閉じる。

 

〔アーイ!〕

 

現れたのは新たなパーカーゴースト。紫色に金の装飾がその豪華さを際立たせる。

 

〔バッチリミロー!バッチリミロー!〕

 

周囲を旋回しながら先程投げ捨てたガンガンハンドを拾い、こちらに投げた。それを掴み、ドライバーのトリガーを引く。

 

〔カイガン!ノブナガ!〕

 

新たなパーカーゴーストを纏い新たなフォームへと変身する。

 

〔我の生き様!桶狭間!〕

 

仮面ライダースペクター ノブナガ魂。

両腕を布上のシールド『バテレントコート』が覆い、パーカーのフード部分である『テンマフード』は特殊な振動で変身者の戦意を昂揚させる。ヴァリアスバイザーに浮かび上がるのは紫色の二挺の火縄銃の模様『フェイスデュアルアーキバス』。頭部に装着された通信装置『ヒナワファイアヘッド』は日本のヘアスタイル、ちょんまげさながらの形状だ。

 

「…状況に応じて姿を変える、それがあなたの神器の能力というわけね……!」

 

「ああ、今度は今までのようにはいかない」

 

ガンガンハンドの銃口を堕天使に向け、撃つ。

堕天使はどうせ外すだろうとたかをくくったのか動く気配もない、が──

 

「うっ…!?」

 

銃弾は太股をしっかりと撃ち抜いた。傷口から血が流れる。

 

やはり、思ったとおりだ。銃を撃つとき、何かが俺の射撃をアシストしてくれるのを感じた。今なら──

 

「確実に銃弾を当てられる!」

 

「銃の腕はあんなに下手くそだったのにこんな……!」

 

明らかに動揺している。そうだ、その顔が見たかった。お前の度肝を抜かれたその顔が!

 

「反撃の時間だ!」

 

気を改め、攻勢に出ようとしたその時。

 

「この光は……!」

 

突然兵藤のポケットから紙が飛び出したと思うと、次の瞬間、紙から紅い光が漏れだした。その光は紙に描かれた紋様から放たれている。

 

「グレモリーか!」

 

堕天使はその紋様を見たとたん、戦闘体勢を解いた。

 

「悪いけどあんたと遊んでる場合じゃなくなったわ、命拾いしたわね!」

 

「ッ!待て!」

 

出し抜けに翼を広げ、夕焼けの空へと飛んでいった。

 

結局逃げられてしまった。この場で仇を討つことは叶わなかった。

 

「俺は…弱い……!」

 

唇を噛み、己の非力さを呪った。一体何のための力だ、何のための決意だ、何のための戦いだったんだ。

 

そう思っていた矢先、先の紅い光が魔方陣を形成し、一際強い光が溢れた。光が止むと……

 

「……なかなか面白い状況になってるわね」

 

見慣れた駒王学園の女子用の制服を着た紅髮の少女。その凛とした瞳を俺に向けている。

 

(この人は……)

 

話に聞き、何度か学園生活の中でも見かけたことがある。

3年のリアス・グレモリー先輩。駒王学園二大お姉様の一人だったか。

 

俺を捉えていた瞳が今度は兵藤の死体に向く。死体を見ても驚かないあたり、既にこういう世界に踏みいっているのだろうか。

 

「彼を殺したのはあなたかしら?」

 

…まさかそう言われるとは思わなかった。

 

「違う、それは……」

 

「だとしたら、その手に付いた血はどう説明するのかしらね?」

 

「!!」

 

しまった、そこを突かれるとは。

 

たまたま、と言ってもこの場では信用してもらえないだろう。

 

「あなたにはこの件も含めて聞きたいことが色々あるの」

 

両手を突きだし、紅いオーラが収束する。今まで見てきた堕天使の光とは全く毛色の違う力。

 

「少し大人しくしてもらうわ」

 

紅いオーラが嘶き、食らいつかんとばかりに放たれる。

 

「ッ!ヤバっ!」

 

本能が訴える。あの攻撃は危険だと。

 

即座に横に跳んで回避する。俺という獲物を見失ったオーラはさっきまでいた俺のいた石畳に食らいついた。

 

「嘘だろ……!」

 

紅いオーラに触れた箇所がごっそりとなくなっている。俺の代わりに食らいつかれた全てがきれいに抉られている。

 

さっきの堕天使といい、本当に今日はツイてない。

こんな恐ろしい攻撃をする相手とも戦うことになるなんて。

 

「ハッ!」

 

俺を休ませまいと、その手から凶暴なオーラを次々と放ってくる。

 

俺もかわすばかりでなく、ときに銃撃を放つが銃弾は全てあのオーラに飲み込まれて消失していった。

 

「ハァ、ハァ、きついな……」

 

俺の圧倒的不利は明白だ。さっきの戦いもあってこれ以上は体力がもたない。向こうはさっき来たばかりで体力も、攻撃力も大きく上回っている。

 

「さて、どうするのかしら?」

 

両手に紅いオーラをたぎらせたリアス・グレモリーが聞いてくる。

 

これ以上の戦闘は危険、向こうもあまりこちらに対していい感情を抱いてないようだし捕まれば何をされるかわからない。

 

なら、打つ手は一つ。

 

「こうするんだよ!」

 

ガンガンハンドを構え、銃撃する。

 

「っ!」

 

向こうはオーラを放たんと手を突きだす。

残念だが、狙いはあんたじゃない。というよりは何かに当たりさえすればどれでもいい。

 

銃弾はリアス・グレモリーではなく、石畳の地面に当たった。

瞬間、眩い光が弾ける。

 

「くっ、目眩まし……!」

 

どうやら目眩まし程度にはなったようだ。

 

「今のうちに──!」

 

打つ手は一つ、逃げるんだよォォォーーーーーッ!

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

「……逃げられた」

 

謎の戦士が放った光が止んだとき、公園には先程まで戦っていた謎の戦士の姿はなかった。

 

ようやく掴んだ手掛かり。あの戦士の胸に描かれた紋章と先週廃工場で見た足跡の紋章は同じだった。廃工場の出来事とあの戦士が絡んでいるのは間違いない。だが、今ここに来ることができたのは……

 

「…あなたが私を呼んだのね?」

 

死体を一瞥し、紅いチェスの駒を取り出す。幾度か旧校舎の近くでたむろしていたのを見たことがある。

 

兵藤一誠。

 

「どうせなら、私が拾ってあげるわ」

 

チェスの駒が輝き始める───

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

リアス・グレモリーが魔方陣を展開して公園を去った一分後。

何もない虚空から突如としてその姿は現れる。

 

「行ったか……」

 

スペクター。俺は閃光弾を放って目眩まししている間に逃げたのではなく木に隠れ、スペクターの能力の一つである透明化を使ってやり過ごしていた。

 

「兵藤の死体がない……」

 

つい先まで確かにあったはずの死体が消えている。それだけでなく血だまりもそもそもそんなものはなかったかのように消え公園は元の美しい景観を取り戻している。

 

今までやり過ごすのに必死でその間リアス・グレモリーが何をしていたか窺う余裕はなかった。おそらくその間に死体は持ち去られたのだろう。

 

変身を解除し、地を強く踏む。

 

「クソっ、なんで……」

 

友達を殺されること。これは罰か。

 

命を殺めた罪から逃げて、挙げ句忘れようとさえしたことへの罰か。やはり力を手にした以上平穏な日常を手にいれることは出来ないというのか。

 

「だったら……俺は」

 

拳を握り、決心する。どうせこんな目に遇うくらいなら、俺は。

 

「アイツに復讐してやる」

 

どうせ戦わないといけないというのなら、友達の心を弄び、殺したアイツに報復するために戦う。

 

どす黒い炎が燃え上がる。憎悪と悲しみを糧に燃える復讐の炎。復讐せんがために、再びこの力を使う。そう誓った俺はこの場を去った。

 




Q.主人公が弱すぎるんだけど?

A.戦闘経験が無いのと本人のスペックの低さが原因です。
 話が進んで戦闘経験を積めば強くなる(はず)。


次回、あのガジェットが登場です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。