ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

106 / 208
いつもの分割。後編も含めると13000字を越える長さに…。

世界の終わりは彼女の始まり。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ



第97話 「End Of The World」

「!!」

 

ポラリスさんの世界は滅ぼされた、重い響きを伴うその言葉にその場が静まり返る。

 

「滅んだ、というのは…」

 

「文字通りの意味じゃよ、妾の世界はディンギルによって滅ぼされた」

 

ポラリスさんは様々な感情が渦巻く顔を一旦伏せると、再び上げた。

 

「少し昔話をしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは大都市だった。多くの人が大通りを行きかい、我々の世界に存在する高層ビルが建ち並ぶ現代の街並みとは違って、虚空に浮かぶ数々のスクリーンが街を彩り、行き交う人々が経済活動で賑わう。現代のビルとは全く毛並みが違う建造物など、まるでSF作品に登場するかのような、人間が科学の発展によって思い描く未来の大都市そのものだ。

 

しかし賑わう街の至る所に、焦げたような大きな跡や瓦礫の山などなどまるでかつて街一つが戦争の舞台となったかのような跡が残っていた。そんな建造物を再建したり、せっせと瓦礫を運ぶロボットたちは完全に街の風景に馴染み、人々はそれよりも自分たちの生活だとロボットたちの仕事には目もくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『妾の生まれた世界は科学とネットワークが高度に発達した世界じゃった。天使や神のような異形は存在せず、ひたすらに人間の文明が発展し続ける世界じゃ』

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは物質としての形を持たぬネットワーク上に存在する電脳空間だった。

 

0と1の数字の羅列がどこに繋がっているかもわからない無窮の夜空に似た空間に消えていく。

 

肉体と言う枷に縛られた生物が足を踏み入れるはずもないこの領域に四人の男女がいた。その中の一人が、ポラリスだった。

 

「集まったね」

 

深い青のパワードスーツの上から白衣をマントのように肩にかけた茶髪の青年が、その性格を如実に表す快活な笑みをふっと浮かべる。

 

「今回はポラリスがビリだな」

 

そう言って男女の中に混ざっているポラリスに細い目を送るのは赤紫色のラインが随所に走る黒のパワードスーツ

の上に白衣を着こなす銀髪の青年だ。

 

「やかましいわい、カノープス。妾はデスクワークが山積みなのじゃよ」

 

カノープスと呼ばれた男の若干のからかいの意を込められた視線をムッとした表情でポラリスは流す。

 

「まあいいじゃないですか、それくらい許してあげましょう。それよりアルタイル、始めてください」

 

と、銀髪の二人を宥めるのは薄い青髪をショートカットにした女性。その白と青の入り混じる衣装は日本の忍者をサイバーチックにブラッシュアップしたものだった。

 

「デネボラの言う通りじゃ。仕方なかったのじゃよ、直前まで仕事に追われていてな」

 

「…ふん」

 

デネボラの仲裁にまるで水を得た魚のごとくどや顔を見せ、カノープスは仏頂面で鼻を鳴らした。

 

「そうだね。軽い挨拶はこのくらいにして定例会を始めようか」

 

茶髪の青年、アルタイルの言葉に四人はこくりと頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

『しかしそれら文明の発展は暴走したスーパーコンピューター『シャスター』の支配管理下によって行われたものだった。妾は志を同じくする仲間たちと共に人の未来を人の手に取り戻そうと革命を起こし、シャスターの破壊に成功した。その後、シャスター破壊による社会混乱からの復興が始まった』

 

 

 

 

 

 

「怜亞たちはどこにいる?最近見かけないが…」

 

カノープスはふと話題を振る。

 

戦斗怜亜、その少年は時空の歪みに巻き込まれて偶然過去の世界からこの未来世界にやって来てしまった。境遇を同じくする雷鳥超と獅子島・L・七尾とともにポラリスたち革命軍に協力して三神器と呼ばれるロボを操縦し、シャスター破壊を成し遂げた革命軍の英雄である。

 

実を言うと怜亜は少年時代のアルタイル、超は少年期のカノープス、七尾は少女時代のデネボラなのだが過去からやってきた彼らは自分達の味方が未来の自分達であることは知らない。

 

「いつの間にかいなくなっていました。先日、時空の歪みが本部付近で検出されたのでおそらく…」

 

「彼らは帰ったのじゃな」

 

「それでいい。彼らの戦力に頼った自分達が言うのもなんだが、子供は戦争に巻き込まれるべきじゃない」

 

「…僕は色々彼らと話したかったな」

 

「私もです、彼女にロボット作りのことで教えておきたいことがあったのに」

 

ドライな反応をするカノープスの一方で寂しそうな表情を見せるアルタイル。同じく過去の自分と背中合わせに戦ったデネボラもアルタイルと同じ胸中であった。

 

「三神器はどうする?あれは彼らでなくては動かせない代物じゃろう?」

 

三神器、それはカノープスが開発した人型巨大戦闘兵器、『メタルフォートレス』の中でも最新最高の技術で作られた特別な機体。該当するのはローレンシウム、サイクロトロン、そしてシンクロトロンの三機である。デネボラとの共同開発で作られたシンクロトロン以外は列車への変形機構を備えている。

 

他のメタルフォートレスと同じく暑苦しい思考をするAIを搭載し、パイロットの操縦を必要とするが三機ともにパイロットの精神の高ぶりをエネルギーに変換する特殊なエンジンを搭載しており、シャスターとの決戦では目まぐるしい活躍を見せた。

 

「俺とデネボラでどうにか動かせないか試してみる。あれを廃棄するのはもったいないからな」

 

「そのうち、僕もローレンシウムに乗ってみたいな…」

 

「ああ、すぐにその願いを叶えてやるさ」

 

「本当かい、カノープス!?」

 

と、アルタイルは少年みたくワクワクに目を輝かせる。大人になった今でもアルタイルのロマンを求める思いは変わらない。

 

「とはいえ、まだまだその他課題は山積みじゃな…」

 

ポラリスは難しい表情で唸る。

 

「復興も勿論ですがソルの行方も知れず…。彼の足取りがつかめないのが一番の気がかりです」

 

ソルとは革命戦にてシャスター陣営のリーダーとなっていた科学者のことだ。しかし革命戦では一切の姿を見せることなく戦いは終わり、今は行方をくらませている。

 

「あの男のことだ。きっと今もどこかで良からぬことを企んでいるに違いない。あの戦争で潰しておきたかったが…」

 

「ソルの件は妾の諜報機関に一任しておく。仕事がひと段落すれば妾も調査に力を入れるとするかの」

 

「そうだね。とにかく、今は復興に注力しよう」

 

 

 

 

 

 

 

『そんな時じゃった。ディンギルたちが現れたのは』

 

 

 

 

 

 

 

東京に建つ革命軍本部のオペレーターが、指令室で声を張り上げて異常事態を知らせる。

 

「中東イラクで大規模な空間の裂け目が発生しました!」

 

「何じゃと!すぐに映像を回せ!」

 

ポラリスは驚きに駆られながらも状況把握に努めんと迅速に指示を出し、すぐに映像がモニターに映し出される。

 

映像に映ったのは荒涼とした大地の中に建つ都市。その上空に全てを吸いこむような大きな裂け目がその奥に混沌の闇をたたえる口を大きく開けていた。

 

「これは…超達の時とは桁が違い過ぎる…」

 

想像をはるかに超えるスケールに、ポラリスだけでなく指令室にいた全員が圧倒され呆然とモニターを眺めていた。

 

「ん?」

 

その映像の中に、小さく映っていた青い何かにポラリスは気付く。

 

「画面中央に映像を拡大しろ」

 

ポラリスの指示でオペレーターが映像を支持された箇所にズームし、その青い何かの正体を明らかにする。裂け目の下、宙を浮いているのは青い鎧を纏う三つ又の槍のような武器を携えた男だった。

 

「男…?バトルドレスではないのか?」

 

この世界における主流の兵器であるパワードスーツ『バトルドレス』にしては機械っぽさがない。むしろファンタジー作品に登場する勇者の鎧のようだ。それを纏う男もまた、そのような物語から飛び出してきたような勇ましさを感じる。

 

ふいに男が槍を天に掲げた。そして何かを口ずさむ。

 

ポラリスは読唇術で、すぐに彼が口にした言葉を理解した。

 

『人類よ、滅亡せよ』

 

次の瞬間、彼が見下ろす都市に雷が突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ディンギルに対抗すべく、故あって世界を束ねる地位についておった妾は再び仲間たちと共に立ち上がり、神と戦った。それがこのレジスタンスという組織の前身なのじゃよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

ディンギルの出現により、シャスターからの解放による混乱から立ち直ろうとしていた世界に再び混乱の風が吹き荒れた。彼らは世界各国の都市で大規模な破壊活動を起こしては人類側の戦力を落とし、さらにはみじめにも命乞いをする者達や内に抱える不安や欲望を神に気に入られた者は叶えし者という自らの眷属に加えることで戦力を拡大しつつあった。

 

当初、彼らの降臨は都市伝説程度にしか市民たちには思われていなかった。人類滅亡を謳う神など、所詮は本物かと見まがうほどよく作りこまれた映像の中の存在だと。

 

しかし多くの都市が彼らの力により壊滅し、大勢の人間が犠牲になっていったことで平穏を享受していた人間も認めざるを得なかった。人類を滅亡せんとする神は実在する、そして彼らにはその言を現実のものにするだけの力があるのだと。

 

そうして世界は大混乱に陥った。ディンギルの襲撃がなくとも暴動がおこり、いつ自分たちの街が標的になるかわからないと都市から田舎部への人口の流入が始まった。しかしその動きをディンギル側が見逃すはずもなく、下級神や彼らの眷属となって操られるままのバトルドレスをのどかな田舎へ仕向けては虐殺を繰り返した。

 

中にはディンギルはシャスターを生み出すほどに文明を発展させた人類のおごりへの罰だの言いだし、彼らを地球浄化の神だと崇める宗教団体も現れた。そうした輩はもれなくディンギルに利用され、彼らの手足となった。

 

無論ポラリスたちは動いた。軍を率いてディンギルに襲撃されている都市の救援に向かったがディンギルには敵わず到着した時には時すでに遅し、都市が壊滅した後だったことも何度もあった。

 

そして数か月後、世界中をディンギルへの不安が覆い、その都市の一つである東京にてついにその時は訪れた。

 

「5時の方角からバトルドレスとキラーマシーン、メタルフォートレスの大群、上級ディンギル反応を2つ確認!敵襲です!」

 

モニターにカメラがとらえた映像が映し出される。群れ為して東京へ進軍してくるのは機械とパワードスーツを纏う少女、それに入り混じるのは神話に登場する英雄のような鎧を纏う下級神たち。

 

バトルドレスを纏う少女たちの目は濁っており、キラーマシーンやメタルフォートレスたちも明らかに正常でない動作を起こし、文になっていない奇声を発している。

 

「ついに来たか…」

 

指令室に集まっていたポラリスたちは神妙な面持ちで互いの顔を見合わせると、覚悟を決めたようにうんと頷いた。

 

「直ちに都市全域にレベル6警報を発令しろ」

 

カノープスの冷静な指示が、オペレーターたちを一斉に動かした。

 

「バトルドレス、マーメイド、メタルフォートレスは直ちに出動準備せよ!繰り返す、バトルドレス、メタルフォートレス隊は直ちに出動準備せよ!」

 

「それから民間人の避難警報も発令させろ!本部の地下シェルターを解放し、市民の受け入れを急げ!」

 

オペレーターたちの声がせわしなく飛び交い、東京の街に戦闘の機運が基地を中心に風のように吹き始める。

 

「アルクトゥルスのイレギュラーX部隊、ベガのオリジナルⅩⅢ部隊も出動させろ!僕とカノープス、デネボラも三神器で出る!全戦力で、敵を迎え撃つぞ!」

 

普段は明るい調子のアルタイルは人もまとめ上げるリーダーらしく毅然とした表情で指示を飛ばすと、自分も戦闘準備を整えんと踵を返す。

 

「行くぞ、アルタイル」

 

「3つの心を一つに、です」

 

「ああ、この東京本部は人類最後の砦だ。絶対に堕とさせない!」

 

白衣のマントを翻す彼にカノープスとデネボラも続く。戦地に赴く彼ら三人の瞳には彼らが名乗る星のような強い意志の輝きが宿っていた。

 

「ポラリス、全隊の指揮は任せたよ」

 

「うむ。この戦い、必ずや皆で勝利を掴もうではないか」

 

アルタイルに指揮を託されたポラリスは指令室から出ていく三人を見送る。

 

彼らに勝利への希望を託すと同時に、彼らの中に混ざることのできない一抹の寂しさを彼女は覚えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃが、戦いの中で次々と奴等はまるでゾウがアリを踏みつぶすように仲間を蹴散らし、あるいは巧みな甘言で叶えし者にして勢力を拡大、妾達の勢力を押していった。高度に発達した科学も、神という超越的存在に敵うほどの域には達しておらなんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一部隊も全滅したか…」

 

オペレーターたちと共に指令室に残り、革命軍を指揮するポラリスは苦い顔で味方の被害状況を確認する。

 

ディンギルたちを迎え撃つポラリスたちの戦力はバトルドレスとマーメイドの10個の混成部隊とメタルフォートレスとキラーマシーンによる7つの混成部隊。

 

それとは別にアルクトゥルスのイレギュラーX部隊とベガ率いる8人のオリジナルⅩⅢ部隊に加えてさらにアルタイルたちの三神器の遊撃部隊で構成されていた。それらの数は壊滅した都市の生き残りを取り込むことでさらに増えた。

 

ポラリス側とディンギル側の彼我戦力差は1000対400。数の上ではポラリス側が優位にあったがディンギルという人智を越えた戦力によってその物量の差は質という要素を以て埋められてしまった。

 

既に半数の戦力がディンギル軍との交戦によって失われ、残る部隊も苦戦を強いられいつ潰れるかわからないというかなり厳しい状況に会った。

 

ディンギルの戦略は非常にシンプルだ。叶えし者たちや下級神を前に出して突撃させ、自分達上級神は後ろで高みの見物を決める。時々大きな一撃を繰り出してはこちら側に手痛い被害を与え、主力が登場すれば上級神自ら出向いて相手をする。

 

これには自分達は人間を舐め腐っているのだという挑発、そして主力を出して来るのならこちらも直接相手をし、圧倒的な力で完膚なきまでに叩き潰すことで力の差を見せつけてやるのだという誇示の二つの意図があった。

 

これまで世界各国のバトルドレスやメタルフォートレスがディンギルの侵攻を終わらせんと戦いを挑んだ。神に力を授かった程度の叶えし者たちくらいなら、彼らでも多少の苦戦はあっても対処することは出来た。

 

だがどうしてもディンギル本体だけは落とせない。どれほど叶えし者となり敵側に回ったバトルドレスやメタルフォートレスたちを葬ったとしても最大戦力である上級ディンギルのマルドゥクとティアマト、その他中級下級の神々だけはどうしようもなかった。

 

イレギュラーXを越えるこちらの最大戦力、三神器で出動したアルタイルたちが全力で上級神を抑えにかかっているが、その激闘の中でデネボラのシンクロトロン、次いでカノープスのサイクロトロンと次々に破壊されていった。

 

今までの戦いと何も変わらない。こちらがどれほど策を弄しようと、それを策などなくとも容易く打ち破ってしまうほどのパワーを相手は持っている。

 

「ローレンシウム、大破しました!三神器全滅です!」

 

オペレーターが悲痛な声色で叫ぶように知らせる。カノープスのサイクロトロン、デネボラのシンクロトロンはパイロットの二人は脱出済みだった。

 

「くっ、三神器でもマルドゥクには敵わぬか…!アルタイルは無事か!?」

 

「事前に離脱した模様です!」

 

「そうか…!」

 

パイロットの無事に、ますます苦境になっていきながらも少々の安心に口角を上げた。

 

だがアルタイルが生き残ったとしても三神器という大きな戦力が失われたことには変わりない。兵士たちの士気も低下し、ますます戦況は悪化するばかり。

 

追い詰められた状況でポラリスは事前にアルタイルたちと話し合っていた計画の実行、それを決断する。

 

「…やむを得まい。カノープス、例の計画を実行に移す」

 

彼女はすぐさまサイクロトロンが破壊されてから別行動を取っているカノープスに通信を繋ぐ。

 

『そうだろうと思って、すでに作業に取り掛かっている。民間人の避難誘導も始めた』

 

「そうか、スキエンティアは?」

 

『無事だ、すでにファイブとスリー、デネボラが運び出している』

 

「よし」

 

スキエンティアはシャスター破壊後にポラリスたち4人が新たに作り上げたスーパーコンピューター。シャスターが保存していたデータを引き継ぎながらもシャスターの失敗を教訓に大きく機能を縮小し、あくまでデータ収集、管理に特化したものになっている。それ故、彼らは知恵を意味するラテン語を新たな叡智の結晶に名付けた。

 

通信を切ると今度は全てのバトルドレス、メタルフォートレスたちへとチャンネルを開く。

 

「東京にいる全バトルドレス、メタルフォートレス、マーメイドに告ぐ。これより我らは…」

 

一拍置いて、戦闘の結果を明確にする重大な宣言を口にする。

 

「東京本部を、放棄する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『奴等は瞬く間に世界各国の都市を攻め滅ぼし、叶えし者から集めた信仰心という力を使い天災を起こして人類を殲滅した。神が息をするように起こす超自然に人間が敵うはずもなかったのじゃ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木々が鬱蒼と生い茂る山奥に隠されたシェルター。そこはかつてシャスターの手から逃れた人間が作り出したものだった。

 

そこそこの広さはある空間に、ポラリスたちが戦場となった東京からどうにか非難させることが出来た民間人たちや戦線から離脱できた戦闘用パワードスーツ、バトルドレスを纏う兵士たちが集まっていた。

 

ある者は親しい者との再会に喜び、ある者は大きな傷を負って肉体的苦痛にうめき、またある者は帰らぬ者の死に涙を流して嘆いていた。

 

それらの様子を横目に、ポラリス達はそれでもどうにか脱出できたことにほっと息を吐いていた。

 

そんな彼らの元に、一人の少女が歩み寄る。その姿にポラリスは安心を覚えた。

 

「イレブン、無事じゃったか」

 

「はい、どうにか…」

 

顔はすすけ、腕につけられた細い傷から黒い血が流れている。これは病気でも敵の攻撃の影響によるものではない、戦闘用にチューニングされた彼女の血には老化抑制、身体機能向上のためのナノマシンが含まれており、その影響で黒い色をしているのだ。

 

「カノープス様、つい先ほど、ニューヨークが陥落したとの情報が…」

 

「ロンドンもディンギルが起こしたものとされる津波に飲まれたようです」

 

そう告げるのは薄青の長髪の少女、Type,Ⅶと露出度の高いバトルドレスを纏う少女、Type,Ⅲだった。セブンはカノープス直轄、スリーはアルタイル直轄の部下である。二人ともイレブンとうり二つの顔をしているがそれは彼女らが同じ人物のクローンだからだ。

 

「くそっ、三神器は破壊されベガとアルクトゥルスの部隊も全滅…」

 

セブンとスリーから絶望に追い打ちをかけるようにもたらされた情報にカノープスは歯噛みしてシェルターの壁に拳をドンと叩きつけた。

 

「ネットワークもソルの手に落ちつつあります。スキエンティアがあるとはいえ、我々の意識データのバックアップも失われました……」

 

「オリジナルⅩⅢとイレギュラーX、三神器、そして妾達が集う東京は人類最後の砦じゃった。それが落とされた今……」

 

「…勝てないのか」

 

顔を伏せるカノープスは諦念の言葉をぽつりと漏らした。

 

「諦めちゃだめだ!僕たちが諦めたら、死んでいった仲間たちはどうなる!?」

 

だがたった一人、アルタイルだけは諦めていなかった。勇気と戦意の炎を太陽の如く心に灯し、少年時代以来の友であるカノープスを奮い立たせようとする。

 

「…いや、もう奴等には勝てぬ」

 

それでもとアルタイルの言葉を否定したのはポラリスだった。

 

だがその太陽ですら熱しきれないほど、彼女らの心に吹き荒れる絶望と疲労の吹雪は冷え切っていた。

 

「ポラリスまで!」

 

「歯向かっていい相手ではなかった。人間では…神には勝てない」

 

絶望という重みを持つ言葉が、アルタイルたちに重くのしかかった。

 

 

 

 

 

『…そうして、下級神の一人すら滅ぼせなかった妾達は勝利を諦めた』

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝つ望みは潰えた。じゃが生き残る可能性は残っておる」

 

「!!」

 

何か考えがあると言わんばかりのポラリスの言葉に、アルタイルたちははっと目を見開いた。

 

 




捕捉説明しよう!

『マーメイド』:シャスターから逃れるために海に進出した人間たちの支援としてアルタイルが開発し、極秘裏に提供した水中用バトルドレス。もちろん男性用も存在する。

『キラーマシーン』:デネボラが開発した対人間用兵器。元々は人に寄り添い、コミュニケーションを取るというごく平和的な目的で開発されたがシャスターの暴走によりその制御、管理は奪われ在り方は歪んだ。工場で自動生産され、物量作戦で攻めてくる。

『ベガ』:シャスター陣営に属し、彼らと敵対した。ディンギル戦ではポラリスたちに協力していた。

『アルクトゥルス』:シャスター陣営に属し、戦後は電子牢獄に幽閉された。ディンギル戦にてポラリスたちに協力していた。

『イレギュラーX』:デネボラとアルクトゥルスが共同開発した10体のキラーマシーン。大量破壊を目的として開発され、シャスター破壊作戦ではアルクトゥルスがコントロールし革命軍に大きな被害をもたらした。

オリジナルⅩⅢは別の機会に説明します。

次回、「希望の箱舟」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。