ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第6話です、サブタイはサイコガンを撃つあの人や、裏切りに定評のあるあの人とは関係ありません。


Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は……

S.スペクター
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ





第6話 「コブラ」

「えっ」

 

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!

朝起きて学校に来たら昨日死んだ友達が普通に生きてて席に座っていた。

何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何が起こったのかわからなかった……

 

「は、ちょ、これどういうこと?」

 

今の俺は友人の無事への喜びより驚きの方が勝っている。

誰だって目の前で死んでいた人が次の日になると生きてたなんてことが起きれば驚くだろう。

 

おかしい。

 

確かに昨日公園にいたときには死んでいた。

あの出血量で死んでないはずがない。呼吸もしてなかった。なのに今のあいつときたら普通にピンピンしてる。若干気怠そうな顔をしているが。どういうことだ?

 

もしかして今流行りのタイムループってやつか?

腕時計を確認するが日付は確かに昨日から進んでいる。

 

(その線はないか)

 

なら俺が公園を去った後に何らかの方法で生き返った?多分そうだろう。

可能性があるとしたらリアス・グレモリーだ。

 

俺が隠れている間にリアス・グレモリーがこいつに何かの術をかけて生き返らせた。

一番有力なのはこの説だろう。

 

あれこれ思案しているとこっちの存在に気付いた兵藤が話しかけてきた。

 

「なぁ紀伊国、お前夕麻ちゃんのこと覚えてるか?」

 

奇妙な出来事の中心である人物が奇妙なことを質問してきた。

 

「えっ、あ、ま、まぁ覚えてるけどそれがどうかしたか?」

 

「ほらやっぱりな!おい松田、元浜!確かに夕麻ちゃんはいたんだよ!」

 

「紀伊国はいいやつだからお前の妄想に付き合ってやってるだけだって」

 

「紀伊国氏もわざわざそんなこと言わなくてもいいんだぞ?」

 

ん……?

 

「兵藤、これどうなってんだ?」

 

「俺にもわかんねぇ、学校に行ったらみんな夕麻ちゃんのこと覚えてないって言うんだよ」

 

「天王寺は覚えてるか?」

 

「んー、夕麻ちゃんって人の名前は初めて聞いたで」

 

今日は次から次へとおかしな出来事が起こっているな。

まあこれに関してはあの堕天使が証拠隠滅で自分と関わった人間の記憶を消したんだろうが。

 

「俺の携帯にも写真が残ってないんだよ」

 

堕天使って機械にも通じてるのか?

 

「ってか、正直言って俺も記憶が曖昧なんだ」

 

「と言うと?」

 

「昨日のデートで夕麻ちゃんと別れたときのことが思い出せないんだ」

 

……殺された時の記憶を消されている。

 

言わない方がいいだろう。幸せなデートだったという記憶で済ませた方がいい。彼女に殺されたとか言ったところで信じられるはずもない。知らない方が幸せなことだってある。

 

「そういえば、なんで紀伊国だけ夕麻ちゃんのことを覚えてるんだ?」

 

「えっ、あ、あぁなんでだろうな?」

 

話が終わろうとしたとき、チャイムが鳴り出した。

 

何はともあれ兵藤の無事は喜ぶべきだ。だが……

 

『バカは考える頭もないのね』

 

『ごっこ遊びにしては傑作だったわ!』

 

あの堕天使は許すべきじゃない。殺したことを抜きにしても俺の目の前でさんざんコイツを馬鹿にした。俺の復讐の火は、まだ消えそうにない。

 

 

 

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「きゅ…う……じゅ……う…!」

 

腕立て伏せを目標の10回をこなし、床にそのまま倒れる。

 

「ハァ、ハァ、疲れた……」

 

10回だけで息切れするほど疲れる、この事実が入院生活で相当体力が落ちたことを痛感させる。

 

帰宅した俺は早速トレーニングに励んでいた。昨日、堕天使に勝てなかった理由は二つ。

 

一つ、変身する俺の筋力やら脚力やらが低すぎること。解決法は単純明快、鍛えることだ。

 

スペクターに変身して身体能力が向上してもベースになる俺の身体能力が紙ならあまり意味が無い。鍛えて筋力、スタミナを向上させれば変身時のパワーとスピードも自然と上がるはず。

 

そして二つ、戦闘経験の不足。

 

これは早々に解決できるものではない。まずは戦う相手を探さないといけない。それも俺が変身して戦う相手だ。英雄眼魂を使いこなすのも課題の一つだ。

 

だが、そこらへんに堕天使がいるわけでもないし向こうからの接触を待つしかない。会おうと思って会える連中でもないのは確かだ。ネットで調べたが一般人には堕天使という存在は聖書とかに登場する架空の物程度の認識で実在することはみんな知らないようだ。

 

「今は鍛えるしかないのか……」

 

こなせるかもわからないトレーニングメニューをあれこれ考え始めた矢先、

 

「シャーッ!」

 

どこからかそんな音が聞こえた。いや、鳴き声というべきか。

 

「なんだ今の音?」

 

音の発生源を探し始める。たしかテーブルの方から聞こえたような……

 

「あっ」

 

いた。テーブルの上にいたコブラ。正確に言えばコブラのような物だ。どこか機械的なフォルムをしたそれは、その丸く黄色い目で俺をじっと見つめている。

 

……不覚にも首を傾げる動作が可愛く見えた。

 

「コブラケータイ」

 

それがそのコブラの形を持つガジェットの名前。その名の通り携帯電話の機能も合わせ持っている。そしてテーブルに無造作に置かれた俺のスマホに忍び寄り噛みついた。

 

「っておい!まて噛むな!」

 

急いでスマホを引き離し無事を確認する。電源は……ついた。

画面には……

 

「…なんだこれ」

 

何かのアプリをダウンロードしていることを示す画面が表示された。丁度終わったようだ。気になるアプリを起動し内容を確認した。

 

スペクターの紋章がそのままアイコンになっている。

 

機能は大まかに言えばコブラケータイとの連動。

コブラケータイが捉えた映像をリアルタイムで中継でき、その位置情報も確認できる。

 

「おぉ、すげぇ便利だ!これなら…」

 

学校生活の間、こいつを町に忍ばせて、堕天使の捜索ができる。

小柄なこいつなら俺が直接探しに行くよりも細かく、広い範囲をサーチできる。

希望が見えた。

 

「よし、今日は外食に行くか!」

 

少しは気分の入れ換えが必要だ。最近は辛い出来事が多すぎた。精神的にも肉体的にもボロボロ。リフレッシュしたいと思っていた頃だ。コブラケータイは明日から早速使ってみるか。

 

「シャーッ!」

 

「これからよろしくな、相棒」

 

新しい同居人(?)の登場に歓喜した夕方だった。

 

 

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「じーっ」

 

教室に入ってくる兵藤が一斉にクラスのみんなの視線をあびる。かく言う俺も視線を浴びせるクラスメイトの一人なのだが。

 

なぜこうなったかと言うと兵藤がリアス・グレモリーと共に登校してきたからである。

学園の人気者と嫌われ者の組み合わせはみんなの注目を大いに集めた。

 

昨日の間に一体何があったというのだろうか。最近驚きすぎて逆に驚くことに慣れてしまいそうだ。二人の間にどういう関係が……

 

「えらく目立ってんな、兵藤」

 

「グレモリー先輩とどういう関係なんや!?」

 

兵藤はドヤ顔でふっと笑みを浮かべると

 

「お前らは生乳を見たことがあるか?」

 

俺と天王寺に雷に打たれたかのような衝撃が走った。

 

「何だと!?」

 

「何やて!?」

 

いつの間にそういう関係を結んだんだこいつは!?

今までの出来事と比べればまだ日常味はあるがまさかこいつもう……!?

 

「聞いたか紀伊国、天王寺!あいつは俺たちモテない軍団を裏切ったんだ!」

 

「憧れのリアス・グレモリー先輩を手籠めにするとは……おのれ……!」

 

血涙を絞る松田と元浜。

 

てか俺もモテないことには自覚はあるがストレートに言われると流石に傷つく。

本当にそれだけの関係なのか?これもまた調べる必要があるな…って相棒は今、堕天使を捜索中だった。

 

早速相棒には動いてもらってる。結果が出たらいいのだが。

今は学校生活を楽しむべきだ。勉強はイマイチだが。

 

 

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「んじゃ、またな天王寺、上柚木」

 

「気いつけてな!」

 

「ええ、気をつけて」

 

放課後の帰り道、天王寺と上柚木と別れる。天王寺はカフェのバイトへ、上柚木は自宅へ。

 

上柚木はドイツ人の母と日本人の父とのハーフなんだそうだ。

時々考古学者の父が外国の遺跡の調査に出て、お土産にと持って帰ってくる物の中には貴重な品もあるとかないとか。

 

「さてと、収穫はあったのかな」

 

花壇に視線をやると、するすると相棒が現れる。

相棒は頷くと、体をくねらせて案内を始めた。

 

「はてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

まあ、案内してるのはコブラなんだがな。

 

 

 

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「ここは……」

 

案内されてたどり着いた場所は忘れもしないあの廃工場だった。

俺が初めて変身して戦った場所。初めて命を殺めた場所。

 

相棒は工場の中に入っていき、俺もついていく。

 

「!」

 

一瞬脳裏にあの光景がよぎる。

断末魔の悲鳴、死への恐怖に染まり切った顔。

頭を振り、かき消す。今回来た目的は自分の傷をえぐることではない。

 

ここで相棒が何かを見つけて、その何かを探しに来たのだ。

 

そこにいたのは男だ。

黒コートに黒い帽子を被った男が、献花している。

この場所に献花をしているということは……

 

「…あんた、堕天使か」

 

俺が投げた声を聞いてようやく俺の存在に気付いたらしい。

 

「ほぅ、我らのことを知っている人間か」

 

声からして中年だろうか。堕天使が人と同じ様に老いていくものなのかは知らないが。

男の足元には白百合の花束。

 

「我らの仲間、ミッテルトは人間に殺された」

 

「……」

 

「そうレイナーレ様は言っていた、あの方が先日戦った人間の紋章とここで同じものが見つかったから間違いない、とな」

 

どこか哀愁を感じさせる静かな声で男は語る。

 

…レイナーレ、それがあの堕天使の名前。そしてミッテルト、それが俺が殺した堕天使の名前か。

 

「……もし、そいつを殺したのは俺だと言ったら?」

 

「……ほぅ、そうかお前がその人間か」

 

黒翼を生やし、光の槍を生み出す。

こちらもドライバーと眼魂を出現、起動させる。

 

「ならば敵討ちをさせてもらうっ!」

 

〔アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!〕

 

突撃してきた堕天使の攻撃をパーカーゴーストが防御する。

 

「変身!」

 

〔カイガン!スペクター!〕

 

〔レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キゴースト!〕

 

変身し、お返しにとパンチを見舞うがかわされる。

 

今回の目的は戦闘経験を積むことと、無力化して情報を聞き出すこと。前者はまだしも後者は逆にこっちが追い詰められて無力化と言ってられなくなる可能性がある。

 

その時はまた、命を奪う覚悟をしなければならない。

 

「チッ!」

 

〔ガンガンハンド!〕

 

ガンガンハンドを召喚し、連続して突きを入れるが、槍を以ていなされる。向こうは手慣れた様子だ。

 

「なるほど、素人か、厄介になる前に今の段階で始末すべきだな」

 

今までと違って俺をあまり侮っていないみたいだ。これは厳しい戦いになりそうだ。

 

まだ鍛え始めたばかりでスタミナはあまりない。よって短期決戦を狙いに行かせてもらう!

 

「はぁぁぁ!!」

 

裂帛の叫びとともにロッドを振るい、光の槍と打ち合う。

ガッ、ガッと音を立てて一合、二合、三合。四合目で鍔迫り合う。

 

「くぅぅ!」

 

「ぐぬぬ……!!」

 

拮抗しているように見えたが次第に俺のロッドが押し始めた。

ここは性能で押し切る!

 

「パワーなら俺の方が……!」

 

ジリジリと押し込み……

 

「上だっ!」

 

相手の胸の位置まで押し込み、ガンガンハンドを銃モードにする。

 

「何!?」

 

初見でこの機能は見抜けまい。迷わず引き金を引き銃弾を撃ち込む。

 

「ぐはっ!?」

 

よろめき、後ずさる。ついでに蹴りも見舞って大きく吹っ飛ばす。

流石の俺でもゼロ距離なら当たるか。

 

「よし!」

 

この隙にゴーストチェンジする。

 

〔カイガン!ノブナガ!〕

 

紫色のパーカーゴーストを纏う。

 

〔我の生き様!桶狭間!〕

 

チェンジしてすかさず連射する。

 

「オオオッ!!」

 

向こうは負けじと槍で弾く。が、その息は荒い。

先の攻撃の当たりどころが悪かったのだろう。

 

「なら、これはどうだ!」

 

肩の『テンカフォースショルダー』の機能を発動させ、ガンガンハンドを大量に生成する。これこそ、ノブナガ魂の最大の特徴。

 

元々火縄銃に寄せたデザインだったガンガンハンドが大量に並ぶその様は見るものに長篠の戦いの三段撃ちを想起させる。

 

「なんだと…!」

 

「ファイア!」

 

引き金を引き、一斉に銃撃が放たれる。ドドドと銃撃の雨が降り注ぐ。大きく土煙が上がり堕天使の姿を隠してしまった。

 

「やり過ぎたかな…」

 

目的はあくまで戦闘と無力化した堕天使から情報を聞き出すこと。殺してしまっては意味がない。戦闘になるとついカっとなってしまうのは悪い癖だ。

 

だがその心配も杞憂に終わった。

 

「無事か、ドーナシーク」

 

土煙が晴れたそこには堕天使の姿はなかった。

が、いつの間にか現れた新たな堕天使が、ドーナシークと呼ばれた先ほどまで戦っていた堕天使に肩を貸して飛んでいる。オシャレに着こなしていた黒コートも先の銃撃を何発か受けたのかボロボロになっていた。

 

「カラワーナか、俺は平気だそれより……」

 

二人の目線が見下ろす形で俺を捉える。二対一か、まずいことになったな。

どこぞの虫の王の如く「二対一は卑怯だろ」と言いたい気分だがそれを言うと本当に二人で仕掛けてきそうだ。

 

「加勢が必要か?」

 

「いや、ここは引こう、この人間を侮るな」

 

必ず同胞の敵は討つ、と言って二人とも飛び去ってしまった。

 

「ふぅ……」

 

変身を解除し、額の汗を拭う。

 

危なかった。ミイラ取りがミイラになるところだった。

やはり安易に戦うべきじゃないのか。だが、戦わなければ俺の復讐は達成できない。

 

とはいえある程度の情報を得ることができた。敵は少なくとも三人。ドーナシークとカラワーナというさっきの女堕天使。そして兵藤の仇であるレイナーレ。火中の栗を拾いに行った甲斐はあった。そして…

 

「…ミッテルトって言うのか、あんた」

 

白ユリの花束のもとへ歩を進め、かがむ。

殺した相手の名前も知った。

 

「……」

 

瞑目し、手を合わせる。

 

こんなことをしても許されないのはわかっている。だが、罪を悔やみ、殺した相手の冥福を祈る。それぐらいのことは許されるはずだ。堕天使が死んだらどうなるのかは知らないが。

 

俺がしたことの取り返しはつかないが、こうして手を合わせることで、少しはあの後悔から解放された気がする。

 

「さて、帰ろうかな」

 

腰を上げて鞄を持ち帰路に着こうとすると、シャーっと自分も忘れるなと言わんばかりに相棒が声を上げる。

 

「わかったわかった!今日はお疲れさん」

 

そっと頭をなでてやると嬉しそうな鳴き声を出す。

 

かわいい、やっぱりかわいい。

捜索担当のみならず癒し担当になるとは。

これからもたくさん相棒に助けられそうだ。

 

どこかスッキリとした気持ちで、初めて来た時とは反対の気持ちで俺は工場を後にしたのだった。

 

 




Q.コブラケータイがヒロインですか?

A.いいえ、癒し担当です。


気づいたらドーナシークがイケメンになってた。


次回、いよいよ決戦。

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