ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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外伝 「その眼鏡は見抜く」

ディオドラ・アスタロトが旧魔王派と手を組み、各神話のVIP達を巻き込んだテロから数日が経った。

 

元の日常に戻った俺たちはいつまた起こるかわからない事件への備えをしながらも、一時の平穏を享受する。

 

「っしゃあ!俺の勝ちだ!」

 

「くそ、そのコンボ強すぎだろ!」

 

我が家の近所にそびえ立つ兵藤宅。グレモリー家にリフォームされて劇的過ぎるほどのビフォーアフターを遂げたそこにたまには二人で遊ぼうということで、兵藤の部屋に訪れた俺は兵藤と対戦ゲームで賑わっていた。

 

互いに鎬を削る激闘を繰り広げ勝利を収めた俺は喜びに腕を掲げる。

 

「紀伊国お前そのキャラの使い方うますぎるんだよ、他のキャラでやってくれ」

 

「仕方ないな」

 

そう言って俺はセレクト画面で俺が先ほどまで使っていた最も得意とするキャラから違うキャラに変更する。

 

まあワンサイドゲームが続くのは俺にとっても望ましいものではない。単なる勝ち負けだけではなく色んなキャラを使ってこそ、ゲームを楽しめるというもの。同じキャラを使い続けるのも飽きるし、気分転換も兼ねてキャラを変えるか。

 

それから数分後。

 

「どうだ見たか、俺の勝ちだ!」

 

「ちょっとキャラを変えただけでボロ勝ちしやがってこの!くそぉー!」

 

さっきとは真逆にボロ勝ちしてニヤニヤする兵藤と、対照的にボロ負けして悔しがる俺。立場が一気に逆転していた。

 

「やっぱ必殺アイテムを取れたのが大きかったな」

 

「あのアイテムを取れていれば…くそぉ、悔しいッ!!」

 

テンションが上がっていたのもあり、あと一歩、あと一歩で兵藤を倒せるといったところでアイテムを取れず一気に敗北してしまった先の試合の悔しさのあまりぶんぶんと頭を振り上げる俺。

 

丁度その時の俺はゲームに熱中していたこともあって、汗をかいていた。そのため頭を勢いよく振り上げた瞬間、鼻当てが汗でするッと滑って勢いのままに宙に飛び出してしまった。

 

「あっ」

 

床かに転がるような音が二、三度聞こえた。そして眼鏡が外れた途端に、俺の瞳が映す世界は一気に様変わりした。

 

「あ、やべっ、ごめん」

 

「…あれ」

 

視界が兎に角ぼやける。目に映るあらゆるモノの輪郭がぼやけて認識不能になり、全てが曖昧なヴェールに覆い隠された世界に自分の位置感覚すら曖昧になっていく。

 

先ほどまでの悔しさを忘れ、何も視認できない漠然とした世界に囲まれた不安に襲われる。

 

「どこいった、眼鏡」

 

そんな世界の中で、自分の元居た世界を取り戻そうと、必死に辺りを触りまくって眼鏡を探す。しかし探せども探せども、求めている手に馴染んだ金属の感覚は得られない。

 

「おい兵藤、俺の眼鏡どこ行ったか知らないか?」

 

「…お前壁に話しかけてるぞ」

 

「えっ?まじ?」

 

「まじ」

 

「またいつものか…」

 

俺が不慮の事故で眼鏡が外れた時はいつもこうなる。特に激しく運動する体育の授業で起こりやすいことから、学校のクラスメイトからは理解を得られている。しかし理解を得られたところで、完全にこのような事態を起こさないようにすることはできない。

 

「悪い、何も見えないから代わりに探してくれないか?」

 

「もちろんだ任せろ。取り敢えず今の状態で動くと危ないからじっとしててくれ」

 

「済まないな、せっかく盛り上がってた時に」

 

「気にするな、すぐに見つけてやるからな」

 

兎にも角にも俺一人ではこの事態はどうすることもできないので、周りの人間に助けてもらうしかない。そういうわけで俺は兵藤に全てを任せた、いや任せるしかなかった。

 

「えっと、どこだ…?」

 

この目に関しては前の世界と比べて本当に不便になったと感じる。前の世界ではそこそこ視力がよく眼鏡を付ける必要もなかったが、この世界では眼鏡がないと何もできないのだ。もし、この眼鏡を完全に紛失したり、割れたりしようものなら俺は一体どうすればよいのやら。

 

「あった!あっ…」

 

唐突に上がった兵藤の喜びの声が一瞬で冷える。何事だろうか。

 

「どうした?」

 

「…眼鏡、真っ二つになってレンズが粉々になってる」

 

「えっ……」

 

兵藤の報告に肝も頭も冷える。

 

眼鏡、割れたの?フレームが折れただけじゃなく、レンズが粉々?じゃあ、俺はこれから一体どうすれば…。

 

「ようイッセー、暇だから久しぶりにゲームでもやろうぜ!」

 

ゲームで盛り上がっていたムードが完全に冷え切る。そこにそんな雰囲気とはつゆ知らず、声からして先生が陽気な調子でずかずかと部屋に入り込んできた。

 

「あ、アザゼル先生!実は…」

 

「おん?何かあったか?」

 

 

 

 

 

 

 

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部屋に来た先生に魔法の応急処置で一時的に眼鏡を修復してもらった俺は、兵藤と一緒に先生とこの眼鏡のことについて話をした。

 

「なるほど……事情は大体わかった」

 

ふむと先生は黒髭を生やす顎に手をやる。

 

「まあ今まで激戦続きだったから、戦いの衝撃や熱でかなり消耗したのかもな。むしろ普通の眼鏡がよく今まで耐えてこられたと不思議なくらいだ」

 

思えば戦いの中で色んな目に遭った。変身後とはいえ空中から一気に叩きつけられるわ、ヒミコの高熱の聖なる炎を纏ったノブナガの一斉射撃を浴びるわ、変身解除後は猛烈に風が吹く中で船にしがみつくもあえなく落下するわ。

 

…あれ、今の全部凛絡みじゃね?俺、妹にそんなひどいことされてたのか。てことはつまり、俺の眼鏡を割ったのは凛ってことなのでは?

 

「お前の眼鏡、よくあれだけの戦いの中で割れなかったよな…」

 

「一年経ってこのまま割れなかったら異能生存体か何かかと思う所だったぞ」

 

悪魔や堕天使の攻撃を受けたり、何があっても壊れない普通の眼鏡ってもはや凄いを通り越して逆に怖いぞ。

 

「そうだな、この際折角だ。俺が戦闘にも耐えられるように特殊な眼鏡を用意しよう」

 

「本当ですか?」

 

まさかの先生の提案に思わず声が上ずる。先生はどんと胸を叩いて、自信満々に請け負った。

 

「任せろ、俺がグリゴリの技術を結集していろんな機能てんこ盛りの最高の眼鏡を用意してやるよ。それまで、その眼鏡を使っていてくれ」

 

「いいんですか!?ありがとうございます!!」

 

先生のありがたい厚意に俺は感謝の念を込めて頭を下げる。もしかすると、新しく出来た眼鏡が今後の戦闘の一助になるかもしれない。大きな期待に俺は胸を弾ませた。

 

「なんか、妙に嫌な予感がするんだよなぁ…」

 

だが一方で兵藤はやや不安げな顔をしていた。俺はとにかく眼鏡を新しく作ってもらえることが嬉しくてそんな不安は考えもしなかったが、彼の不安が的中するのは数日後のことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「待たせたな」

 

数日後、先生から眼鏡完成の報が届いた。早速兵藤の家の一室に足を運んだ俺は先生から金色のグリゴリの紋章が入った黒い眼鏡ケースを手渡される。

 

異形の技術で製造された眼鏡。一体どれほどの品かと恐る恐るケースを開く。

 

「…意外と普通ですね」

 

感想も、眼鏡の外観も至ってシンプルだった。市販の眼鏡と全く変わらない黒縁眼鏡が若干大仰なグリゴリ印のケースに収められていた。想像以上のシンプルさに拍子抜けして、自分の中でややテンションが落ちるのを感じる。

 

「外観は普段使いするって言うからシンプルにした。それより、かけてみろ」

 

「はい…」

 

外観はさておき一番大事なのは度だ。特殊な事情を抱える俺は専用の眼鏡を必要とする。視力が一般人の比ではないほどに低い俺の目に合うものでなければ、この眼鏡を作った意味がない。

 

今まで使ってきた眼鏡をはずし、入れ替えるように緊張しながらも恐る恐る眼鏡をかける。すると一瞬俺の瞳を光が舐めるようにスキャンし、眼鏡が外れてぼやけた視界を鮮明な世界に変えた。

 

「これは…!」

 

「装着者の視力に応じて度を自動調節する機能が付いている。うちのデータベースから目に関する神器のデータを引っ張って来て応用してみた。どうだ?」

 

「すごい、バッチリです!前の眼鏡より馴染む…!」

 

前の眼鏡と比較してより見えるし、逆に度の強さによる見えすぎる負担もない。この心地よさすら感じる感覚を一言で言い表すなら、最適といったところだろうか。

 

「それはよかった。ついでにそいつは特殊加工をしているから風呂で使っても問題ない。存分に使ってくれ」

 

「本当ですか!?」

 

俺のとびっきりに、先生は満足そうにニヤリと笑う。

 

つまり寝る時を除けば一日中かけっぱなしでもいいということじゃないか。すごいな、これはもはや眼鏡界の革命だ。今後グリゴリは神器研究より眼鏡研究に重点を置けばいいのではないだろうか。

 

「いやこれ、凄くないですか!?」

 

「ふっふっふ、驚くのはまだ早い。その眼鏡には他にも役立つ便利機能がたくさんついている。脳波で操作できるからメニューを開いてみろ」

 

俺の反応にまだ足りないと言わんばかりに不敵に笑う先生。言われた通りに、メニューよ開けと軽い気持ちで念じてみると視界の端にいくつかの文字が表示される。さながらVRゲームのように視界の端に

 

「それと向こうの絵画に意識を向けて見ろ。ズーム機能で細部まで見れるぞ」

 

先生は右の壁にかかった金色の額縁に飾られた天使と悪魔、さらに堕天使が一堂に会する様を描いた絵を指さす。

 

言われた通り、普通に見えている絵画を注視する。すると動いてもいないのに間近に寄ったかのように視界がずいっと絵画へと移動した。まるでコンピュータの画像の解像度が上がったかのように一気に絵画が鮮明になり、細かい塗料の塗りムラまでも視認できるようになった。その代わり、絵画の周辺にあるものはややぼやけた感じに解像度が落ちている。

 

「すげえ!」

 

「さらには異形の戦闘能力を測定し、数値化する機能もある」

 

「ええ!!?」

 

追い打ちをかけるように先生は眼鏡の更なる機能を明かす。何だそれ、ド〇ゴン〇ールのスカ〇ターじゃないか!!グリゴリはそんな機能まで実装できてしまうのか!?

 

俺がそれを先生で試そうと起動しようとすると、それを止めるように若干慌て気味に付け加える。

 

「ただ、そいつは結構判定が甘くて強者を測定しようとすると強さによっては逆に測定不能になって壊れちまう可能性があるから、雑魚相手に使ったほうがいい」

 

いやそういうところまで同じにしなくていいんだよ!!それの通りだと眼鏡が爆発してしまうじゃないか!顔のあたりでそんな爆発起こったら怪我どころじゃすまないぞ!

 

「あと、悪魔や天使のような他国の言語を認識できる機能も付いている。これから異形絡みで色んな国の人間とあうだろうから必要になると思ってな」

 

「本当ですか!?」

 

それはありがたい。思えば悪魔になる前のゼノヴィアとは言葉が通じなくて意思疎通に苦労したな。今後ぶつかるであろう言語の壁がなくなると思えば本当に助かる。

 

「他にも機能はあるが、ここで全部説明すると時間がかかるから後で説明書でもゆっくり見てくれ。日常生活の中で色々試してみてくれや」

 

「先生、本当にありがとうございます!」

 

「なあに礼はいらねえよ、普段のお前らの働きに比べればこれくらい大したもんじゃないさ」

 

言われる程のことじゃないと先生は手をひらひらと振る。

 

こんなとんでも眼鏡を用意してもらえるとは…これからはグリゴリの科学力は世界一とでも言わないといけなくなりそうだ。

 

…どこかの異世界を旅する銀髪女がくしゃみしたような気がしなくもないが、まあ気のせいだろ。

 

「あ、悪い。説明書を本部に置き忘れちまった。今日明日は予定があるから明後日持ってくるわ」

 

「えっ」

 

この先生はなぜ良い感じの雰囲気で終わらせられないのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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眼鏡を受け取った後、街に買い出しに出た。そこで早速このグリゴリ特製眼鏡は大活躍してくれた。なんと視界に映した野菜や果物、肉の鮮度を数値化し、栄養まで表示してくれるのだ。おかげで食材選びが捗る捗る。つい楽しくなって今日は使わない食材まで買ってしまった。

 

この機能だけでも付けた眼鏡を主婦に売りつければ巨万の富をグリゴリは得られるのではなかろうか。全国の主婦の方々が泣いて喜ぶぞ。

 

「それにしても随分と買ったみたいだね」

 

「つい買い物が楽しくなってな、いつの間にかこんなに増えてた」

 

「そんなに買っちゃってパーティーでも開くの?」

 

「いやまさか、うちには俺を含めて二人しかいないのに」

 

「それもそうね!」

 

そうした帰りがけ、ばったり木場と紫藤さんに遭遇した。木場は別のスーパーへの買い物の帰る途中。紫藤さんは

街にいる天界のスタッフと打ち合わせに行っていたという。

 

「紀伊国君、眼鏡を変えたんだね」

 

眼鏡を変えてから最初に出会ったこの二人。一番に俺の眼鏡チェンジことメガチェンに気付いたのは木場だった。

 

「ああ、アザゼル先生が作ったんだがこれがまたいい意味でトンデモ機能満載でな」

 

「え、アザゼル先生が!?」

 

「変な機能もついていたりしないのかい?」

 

先生の名前を出した途端に二人はぎょっと驚く。

 

「いや、今のところは何も」

 

「あの先生のことだから、絶対何かあると思うんだけど…」

 

木場は怪訝そうな表情で俺の顔…いや、俺がかけている眼鏡を見る。兵藤が浮かべていたものと同じ不安の色だ。

 

「アザゼル先生って信用されてないの?」

 

そんな木場の様子に不思議に思ったらしく紫藤さんが言う。

 

「いや、信用していると言えばしているんだがあの人の発明は滅茶苦茶で…」

 

「前に先生の発明が原因でイッセー君のドッペルゲンガーが大量発生したこともあったね」

 

「あー、あれは大変だった。あいつのドッペルゲンガーが学校中に発生して女子生徒をドレスブレイクしまくって、最終的には先生をボコしてゲンガーが消えて終わったんだよ」

 

「そんなことがあったの!?」

 

「騒ぎは何とか収まったけどあの人の性格上、またそういうものを懲りずに作りそうなのが怖いんだよな…」

 

他にも部長さんとアーシアさんが幼女化した時は『マオウガー』なんて巨大ロボを出してきたな。世界中の人間の憎悪が動力とか言いながら、いざ戦闘になればロケットパンチが戻ってこないとか強いのか欠陥品なのかよくわからないロボだった。

 

先生、面白い物を思いついたらなんでも実現してみようなんてザ・研究者な性格をしているからこれからもそういうものをどんどん作っていくんだろうな…。それはもう俺にはどうしようもないし、あの先生の天才的な発想がグリゴリひいては三大勢力に貢献していくのだから決して悪いことではないが、失敗の尻拭いに巻き込まれるのは御免だ。

 

「ま、まあ先生のことは置いといて折角だから何か使って見せてちょうだいな!」

 

「OK、ただ俺もまだ全ての機能を把握したわけじゃないし…これはなんだろう」

 

たまたまリストの中から目に留まった機能を試しに使ってみる。すると周辺の建物に注釈が付くように次々に数字が浮かび上がる。その数字につけられた単位は全長を表すmではなく¥だ。

 

「何が見えるの?」

 

「これは…土地の地価がわかる機能らしい」

 

「へぇー!すごい…のかしら?」

 

言い出しっぺの紫藤さんはすごいと喜ぶべきかと困惑したリアクションを取っていた。

 

「…それ、使うのかい?」

 

「絶対使わない」

 

ビジネスマンなら使うかもしれないが俺は学生だ。そういう進路を目指すつもりもない。なんでこんな無駄機能入れた。

 

 

 

 

 

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二人と別れ、目を見張るような夕陽が空を照らす夕方になった頃にようやく家に帰りつく。

 

「ただいま」

 

「お帰り、今日の夕飯は何だ?」

 

ガチャと玄関のドアを開くとそこで待っていたのは同居人のゼノヴィアだった。ただいまの後に帰ってくるお帰りの言葉とちょうど玄関で帰りを待ちわびていたような彼女の姿に安心感を覚えた。

 

よっこらせと買い物袋を一旦置いて靴を片付ける。

 

「今日はカレーだ。レンコンも入れてみるつもりだけどどうだ?」

 

「レンコンカレーか、それは楽しみだ」

 

反応は上々、今夜はレンコンカレーで決まりだな。

 

「ところでアザゼルから貰ったという眼鏡はどんな感じだ?」

 

「眼鏡としての使い心地は満足だ。けどうーん、機能に関しては試した限りだと本当に便利な機能もあれば、いらないだろってものもあるな」

 

同居しているゼノヴィアには一応眼鏡を先生に作ってもらうという話はしておいたため、真っ先に眼鏡の具合を尋ねられた。買い物袋を拾い上げて廊下に上がりながら、俺は答える。

 

「例えば?」

 

「野菜の新鮮さがわかったり、相手の強さが分かったり」

 

「ほう、それはすごいな!」

 

わかりやすい機能を並べると、彼女もわかりやすく感心した反応を見せてくれた。

 

「他には…」

 

前髪を払って眼鏡のメニューを立ち上げる。短期間で急ごしらえで作ったからか、プログラムされた機能のリストがかなり煩雑だ。その辺りは今後時間を取ってアップデートしてもらいたいところだな。

 

取り敢えず彼女にその凄さを見せられる機能がいいなと思いつつ、軽くパソコンのマウスでスクロールするようにリストを探すとあった。リストの中に『透過』という機能を見つけた。

 

初めて見るが、どういう機能だろう。透過というには何かをすり抜けるというのだろうが、カバンの中身とか棚の中身、はたまた壁の向こうの部屋の様子を透視できたりするのか?

 

「透過って言うのがあるな、使ってみるか」

 

早速俺は透過を彼女の前で起動する。そしてすぐさま目に飛び込んて来たとんでもない光景に思わず肩をビクンとさせ、一歩後ずさった。

 

「いっ!!?」

 

裸だ。さっきまでラフなシャツを着ていたはずの眼前に腕組みながら立つ彼女が素っ裸に様変わりしていた。

 

バカな、俺は彼女から目を離さなかった。変わるまで一秒もかからなかったぞ。ドレスブレイクじゃあるまいし、ましてやギャスパー君の時間停止をくらったわけでもない。一体何が起こった!?

 

「どうした?私の顔に何かついているか?」

 

「い、いやぁ別に!何でもないから!!」

 

「…?」

 

言えなかった。俺が見ているものが彼女の裸だなんて。決して、絶対に。

 

わかった、透過っていうのは衣類を透過して相手の裸体を見る機能だ。いや、これは俺にとっては無駄だろうけど兵藤にとっては垂涎の機能だ。しかしあいつに教えると面倒なことになりそうだから言わない、絶対に。

 

しかしなんて恐ろしい機能をつけやがる…こんな破廉恥な機能は金輪際封印、あるいは先生に直談判して削除してもらうほかあるまい。

 

「取り敢えず、今夜はカレーにしようか!」

 

「あ、ああ…」

 

どうにか眼鏡の話を流そうと、取り繕ったハイテンションと夕飯の話で押し切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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翌日、旧校舎の一室、オカ研の部室にいつものように集まった俺はオカ研メンバーと一緒に何気ない時間を過ごす。部活動がなくとも、俺達オカ研にとっては暇があればここでたむろするのが当たり前になっていた。

 

ちなみにクラスで俺のメガチェンに真っ先に気付いたのは天王寺だった。オカ研以外だとあいつが一番俺と行動をしているだけあって、すぐに眼鏡のことを話しかけてきた。あいつ、俺のことをよく見ている。

 

そして今この部室に集まる俺たちの話題の種はもちろん、俺の新しい眼鏡のことだ。早速俺は色んな便利機能からいらない機能まで披露した。まあ、披露と言ってもそれを実際に見ることが出来るのは眼鏡をかけている俺だけだが。

 

「アザゼルが作ったっていうその眼鏡、他にどんな機能があるの?」

 

皆、俺の眼鏡にどんな機能があるのかと興味津々な様子だ。昨晩、色んな機能を試してみたが何も表示されないものもあり大いに首を傾げた。もしかして、その時は機能の対象になる物体がなかったり、条件を満たしていなかったのだろうか?

 

原因を知るためにも、これから使っていく眼鏡の全スペックを把握するためにも早く先生が本部に忘れたという説明書が望まれるところだ。

 

「えっと、実はまだよくわからない機能が色々あって、例えばA3Sって言うのがあるみたいですね」

 

「A3S…?何でしょう?」

 

首を傾げる朱乃さん。このA3Sはその何も起こらなかった機能の一つだ。

 

「試してみたらどうだ?環境が変わった今なら何か起こるかもしれない」

 

「そうだな…」

 

ゼノヴィアの勧めで早速起動する。すると昨日とは違い、視界に様々な数値が表示される。オカ研女性陣の周囲にのみ。

 

「えっと…部長さんの周りに97、58、88。塔城さんには66、57、72って数字が出てますね」

 

「ちょ!?」

 

「…ぶっ飛ばします」

 

俺が視界に映る情報をそのまま口に出すと、途端に今の今まで機嫌のよかった二人の血相がふっと変わる。

 

「え!?ナニ!?」

 

「あなた、乙女の秘密を公然と口にするなんてどういう了見かしら…?お仕置きが必要なようね…!!」

 

「いや、何を言って…」

 

怒りの眼差しで細い眉をピクつかせながら、ゆっくり握りしめた拳を上げる二人。彼女らの突然の怒りを鎮め弁解する以前に、俺には何故彼女らが起こっているかも理解できていない。

 

A3S…乙女の秘密?一体どういう…。

 

…まさか!!

 

その答えは、突然空から落ちてくる雷のように俺の脳に飛来した。

 

「今の数字って、スリーサイズのことか!!」

 

Analize 3 Size、女性のスリーサイズを解析する機能なのか!?女性が滅多に口に出さない秘密中の秘密を容易く暴いてしまう、なんて恐ろしい機能を先生はこの眼鏡に搭載したんだ!?

 

「万死に値するわ!!」

 

「先輩とて許しません」

 

乙女の秘密を無節操にも暴かれてしまった二人は怒りのオーラを纏いながら椅子とソファーから飛びあがり俺に向かってくる。迫りくる怒りと恐怖の権化を前に、もはや俺に逃げる以外の道はない。

 

「助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」

 

「待ちなさい!」

 

絶叫を上げてドアを開け放ち、ロケットの如く廊下へと駆け出す。力の限り走り抜け、ギャスパー君が依然閉じこもっていた部屋に飛び込む。

 

後で先生にA3Sの機能を外してもらうよう言うしかない。というか外さないと部長さんと塔城さんが許さない、絶対。

 

10分後、あっけなく見つかり見るも無残にボコボコにされた俺は二人にそれはそれは綺麗な土下座を敢行するのだった。

 

明後日、先生に眼鏡の機能について色々問い詰めると、先生がグリゴリの幹部たちと一緒に技術者たちに役立つ機能から面白機能、挙句の果てに無駄機能までもリストアップして詰めまくろうぜと頼んでいたことが発覚した。

 

 




裏話、設定の更新を挟んで次からいよいよ新章に入ります。







次章予告



「英雄派の曹操、私に協力しろ」

「仮面の本当の所在は…」





新章開幕


「さ、皆で京都を回ろうや!」

「これが日本の古都か…!」

学園生活の一大イベントがいよいよ始まる。


「昔の絵巻物の世界に迷い込んだみたいだ…」

彼らは京に住む物の怪たちの世界へ足を踏み入れる。


「怪物を倒すのはいつだって、英雄さ」

「信長対信長と洒落こもうじゃねえかァ!!」

戦闘に血沸き肉躍る英雄の魂を継ぐ者達が、立ちふさがる。


「お前を止められるのはただ一人…私だ!」

「これは俺一人の力じゃない…皆を繋ぐ力だ!!」

絆の力が、新たな奇跡を呼び覚ます。



英雄集結編『コード:アセンブリー』第一章 修学旅行はパンデモニウム
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