ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第7話です。

DⅩD HERO最新話。
遂に曹操来たァァァ!!
と、画面の前ではしゃいでしまいました。

後半は、お好みでEGO~eyes glazing overを流しながら楽しんでいってください。


Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は……

S.スペクター
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ






第7話 「復讐の刻」

「で、オカルト研究部はどうだ?」

 

帰り道、俺は兵藤に尋ねる。

 

「あぁ、まあ大変だよ色々と……」

 

いかにも苦労しているといった顔で返事する。

 

ドーナシークとの戦いから数日が経った。

あれ以来収穫はなし。その間俺は鍛え続けた。レイナーレとの戦いに備えて。変化があったとすれば兵藤がリアス・グレモリーのオカルト研究部に入ったことぐらいだ。

 

時々探索に出た相棒が夜の住宅街を兵藤が自転車で駆ける姿を見かける。あれもオカルト研究部の活動の一環だろうか。

 

「学校の人気者と一緒の部活なんてよかったじゃないか」

 

「活動は大変だけどな……」

 

そういえば、

 

「お前最近朝になると顔色悪いけど大丈夫か?ちゃんと寝てるのか?」

 

「ん?ああちゃんと寝てるし大丈夫だよ」

 

思えば生き返った(?)後からコイツは毎朝少し気だるそうな顔をしていた。生き返る代わりに朝が苦手になる術とかか?いや、生き返る代償に朝が苦手になるなんて代償としてはおかしすぎる。

 

そもそも完全な蘇生というものは存在するのだろうか。アニメや漫画で大切な人を亡くして生き返らせるために良からぬことをするキャラもいるが、結果としては何かしら大きな代償を背負うことになったり、不完全な状態での蘇生というのが大半だ。

 

…俺の場合はどうなんだろう。魂だけの蘇生というべきだろうか。

前世の体じゃないわけだし。そうなれば俺も不完全な蘇生なのだろうか。完全な蘇生というのは神の力をもってしても叶わないというのか。

 

「──!?」

 

突然、後ろから悲鳴が聞こえた。

何事かと思い振り向くと、シスター服の少女が転んでいた。

 

「…おい」

 

「君、大丈夫?」

 

俺と兵藤は駆け寄った。兵藤が手を差し出し起き上がらせる。

 

「────────────」

 

……ん?今なんて言ったんだ?日本語じゃなかったし、英語でも無さそうだ。困ったな。

 

いきなり風が舞うと、シスターの顔を隠していたベールがさらわれていった。

 

ブロンドの髪と翠眼が夕焼けの光に輝く。上柚木もなかなかだがこの人も綺麗だ。

美少女とはこの人のことを言うのだろうか。

 

「……」

 

「─────?」

 

兵藤がボーっとしてる。まあ、気持ちはわからんでもない。

いきなりこんな美少女と会えばな。

 

「え、あ、ああゴメン……もしかして旅行かい?」

 

「──────────」

 

ん?え、いやいやちょっと待って。このシスターさん、日本語通じるの!?

試しに俺も聞いてみるか。

 

「君、どこから来たの?」

 

「───?」

 

だめだ、通じてない。なんで俺はだめで兵藤は通じるんだ?

 

「なあお前、このシスターさんの言ってることわかるのか?」

 

「え、まあわかるけど……」

 

わ か る け ど 。

この五文字が俺を絶句させた。

 

なんだと……!?

コイツこんなにグローバルな奴だったのか…!?

 

そういえば英語の授業でこいつがさされたときすごいペラペラだった。

もうこの世界に来て何度こいつに驚かされただろう。

 

「お、お前すごいな!!通訳してくれよ!!」

 

「お、おう…」

 

驚く俺の前でシスターさんが困惑してる。

 

「───────────────」

 

何か言ってるが全く俺にはわからない。なのに──

 

「教会か…そういえば町の外れにあったな」

 

こいつにはわかる。って、教会?

 

「どういうこと?」

 

「この町に赴任してきたばかりで言葉も通じなくて困ってたんだってさ」

 

赴任か。案外シスターの世界も社会人とそう変わらないものなのだろうか。

 

「案内しようか?」

 

「!」

 

兵藤がそう言うと涙を浮かべながら喜んでいた。

 

……天王寺もそうだが、お前もお人好しだな。

 

 

 

 

 

公園に差し掛かると、子供の泣き声が聞こえてきた。

 

「うわあああん!」

 

それに気づいたシスターさんが子供に駆け寄る。俺達もそれに続く。

足を擦りむいているようだ。皮が少しだが剥け、血が滲んでいる。

 

「──────」

 

シスターさんが優しげな声で子供に語りかける。

そして、患部に手を当てた。

 

「い!?」

 

次の瞬間、シスターさんの手から仄かな緑色の光が放たれ、怪我が消えていった。

 

なんだ今の!?子供も兵藤も驚いている。

 

「──────」

 

「あ、ありがとう姉ちゃん!」

 

子供が笑顔で礼を言うと、母親のもとへ駆けていった。

 

「ありがとう姉ちゃん、だってさ!」

 

「──!」

 

兵藤がさっきの礼を通訳(?)して言うとシスターさんも喜んだ。

 

魔法みたいだった。やはりこの世界の人間は魔法を使えるのか?

でも日常に魔法の存在が感じられるものはない。ますますわからん。謎は深まるばかりだ。

 

あれこれ考えても仕方ないので案内を続けるのだった。

 

 

 

 

 

「ここだよ」

 

数十分後、俺達は目的の教会にたどり着いた。

やや古ぼけた感じだが、壁に壊されたりヒビが入っている様子はない。

 

「────────、───────?」

 

笑顔でシスターさんが何か言ってる。

多分礼を言っているのだろう。

 

「え、い、いや大丈夫だよそこまでしなくても!」

 

言葉が通じている兵藤は何かを拒否する。心なしかその顔色は悪い。汗もかいている。

 

「俺は兵藤一誠!みんなからはイッセーって呼ばれてる」

 

なにやら自己紹介を始めた。俺も一応言っとくか。

 

「俺は紀伊国悠。なんか役に立てなくてごめんね」

 

兵藤が通訳してそれをシスターさんに伝える。

 

「──────、────────!」

 

「うん!じゃあまた会おうな!シスター・アーシア!」

 

どうやら別れるようだ。笑顔でシスターさんが手を振ってくる。

 

たまには人助けも悪くない。

そう思いながら、兵藤と他愛もない話をしながら再び帰路に着いた。

 

 

 

 

 

……あれ、今回俺いらなくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

数日後、俺は再び相棒を探索に送った。

 

今日の学校に兵藤は来なかった。なんでも足を怪我したとか。まさか骨折してないだろうな、あいつ。学校に行っている間干していた洗濯物をたたんでいたところ、スマホから通知音に似た音が鳴りだした。

 

確認してみると、相棒の方に何かがあったらしく、連絡してきたようだ。アプリを起動するとリアルタイムで相棒が捉えている映像が中継された。

 

『──行けば確実に殺されるわ、それが分かってて言っているの?』

 

どうやらオカルト研究部の様子を映しているようだ。ソファにカーペットと、旧校舎の外観も西洋風だが部室もそうだったのか。

 

兵藤とリアス・グレモリーが声を荒げて言い争いをしている。

ん?

 

「兵藤?あいつなんで学校にいるんだ?」

 

怪我をしてる様子もない。あいつズル休みしたのか!

 

『あなたの勝手な行動が皆に迷惑をかけるの!自分がグレモリー眷族の悪魔であることを自覚しなさい!!』

 

……ん?グレモリー眷族の悪魔?コイツらは人間じゃなくて悪魔なのか?

堕天使がいるくらいだから悪魔も当然いるか。それよりもやっぱり兵藤は……

 

『それでも俺はアーシアを助けたいんです!俺はアーシアと友達になった、友達を見捨てられない!!』

 

『いい、イッセー?彼女は私達悪魔と敵対する神側の人間なの、友達という理由でどうにかできるほど堕天使と悪魔の関係は簡単じゃないわ!』

 

『アーシアは敵じゃありません!!』

 

そこまで言ったとき、今まで見守っていた姫島先輩がリアス・グレモリーに何か耳打ちする。

 

『…急用ができたわ、私と朱乃はこれから外出する』

 

『そ、そんな…!まだ話は終わっ…』

 

『イッセー、あなたの『兵士』の駒には『プロモーション』という力があるわ』

 

…兵士の駒?プロモーション?兵士《ポーン》という言葉は聞いたことがある。確かチェスの駒の一つだったはずだ。

 

『『プロモーション』というのはチェスで『兵士』の駒が敵陣地に入ったとき『王』以外の全ての駒に昇格できるというルールですわ』

 

俺と同じ様にわからないといった顔をしている兵藤に姫島先輩が説明する。…チェスとかやったことないからわからなかった。

 

『そのプロモーションという能力を部長が敵陣地と認めた場所に入れば、実際に使えるんだよ』

 

別のクラスの木場君がそれに続けて説明した。そういえばこいつもオカルト研究部だったな。

 

『それから、あなたの神器の力を強く引き出すのは想いの強さよ、あなたの想いが神器を強くする』

 

『最後に、兵士でも王を取れるというのはチェスの基本よ』

 

そう言ってリアス・グレモリーと姫島先輩は魔方陣を展開し、その光に消えていった。

 

『一人で教会に行くつもりかい?』

 

部室を早足で出ようとする兵藤を、木場君が呼び止める。

 

『止めるなよ木場、俺は一人でもレイナーレをぶっ飛ばしてアーシアを』

 

『僕も行こう』

 

えっ。ってなんで俺が驚くんだろう?

 

『君一人にして放っておけない。友達を助けるんだろう?それに堕天使や神父は嫌いでね』

 

『木場…お前……』

 

『私も行きます』

 

今までソファに座って駄菓子を食べてた塔城さんが立ち上がる。

 

『…私も二人を放っておけません』

 

『……!』

 

塔城さんの言葉に兵藤がニッと笑う。

 

『よし!じゃあ行こうぜ!待ってろ、アーシア!』

 

そのまま三人が部室を出た所で中継が終わった。

 

……なんというか、すごい熱いシーンを見た。

いつのまにか手汗を握っていた。

 

それよりもあいつらは教会に行くのか。悪魔が教会に行くというのも変な話ではあるが。

 

レイナーレをぶっ飛ばしてアーシアを助けるとか言ってたな。

つまり教会にあいつがいる。ようやく掴んだ。敵の本拠地。

 

決戦の時は近い。

 

「…俺も覚悟を、決めないとな」

 

急いで準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

「わざわざガジェットを遠隔操作した甲斐があればいいのじゃがな」

 

既に日が落ちた外にいる誰かの呟きは、風に消えた。

 

 

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「……」

 

やや湿った土を踏みしめ、夜の林のなかを歩く。

 

目的の教会は、この林を抜けた先にある。

以前会ったシスターさんを送った町外れの教会。

教会に行くだけなら同じ道を通ればいい。

 

わざわざ林を歩いて行こうとしているのは、作戦のためである。作戦といっても、教会に裏から侵入し、タイミングを見計らって戦いに乱入、レイナーレを倒すという至ってシンプルなもの。

 

夜の闇が林に静寂をもたらし、不気味さを際立たせる。だが、今の自分には夜風の涼しさとこの静寂はありがたかった。おかげで落ち着いて集中できる、目的を達成することに。

 

「っ!?」

 

突如として静寂を破るようにガラスの割れる音が響く。

向こうで動きがあったか。

 

「急ぐか…!」

 

歩きから走りに変える。

 

間に合ってくれたらいいのだが、いや間に合ってくれないと困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林の中を走る。時に生い茂る草をかき分け、つまずいて転びかけたこともあった。

 

木々の間から教会が見え始めた。裏から見ると随分と寂れている。

先日見たのは表口だけだったから気づかなかった。

 

そして、声が聞こえた。

 

「ハァ、ハァ、クソッ……あの下級悪魔のクソガキにあんな……!」

 

荒立った女の声。忘れるはずもないあの女の声だ。

林を抜けると同時にその姿も見ることになる。

 

ボンテージ姿には変わりないが無数の細かい切り傷と痣がある。

さっきのガラスの割れる音はこいつが吹っ飛ばされた時のものか。

体を強く打ち付け、ガラスの破片で切り傷を負った。大方そういったところだろう。

 

「っ!お前は!」

 

こちらの存在に気付いた。

まさかここで会うとは思っていなかったらしく驚いている。

 

「無様な姿をさらしている私を笑いに来たのかしら?」

 

「……」

 

こいつが…

こいつが兵藤を……!

 

復讐の炎が再燃し、自然と拳を強く握っていた。

 

『我らの仲間、ミッテルトは人間に殺された』

 

ふとドーナシークの言葉を思い出した。

誰かが死ねば、それを悲しむ人がいる。

 

俺が兵藤の死を悲しんだように、ドーナシークはミッテルトの死を悲しんだ。それは人間だろうと堕天使だろうと変わらないことだった。コイツを殺せば、誰かが悲しむのだろうか。俺はまた、同じことを繰り返すのか。そのとき俺は、ミッテルトの時と同じ様に殺したことを後悔するのだろうか。

 

そこまで思い至ったとき、身を焦がしていたはずの復讐の炎が冷めていくのを感じた。

 

「…れ」

 

「は?」

 

それでもなお滾る心を抑えながらも言葉を紡ぐ。

 

「兵藤を侮辱したことをこの場で謝れ、そうすれば見逃してもいい」

 

なんて俺は甘いのだろう。

自分の甘さを自嘲する。

あれだけ憎んだはずなのに、いざというときになって、非常に徹しきれないなんて。

 

「ふふっ、あははは!馬鹿にしないで頂戴!どうして堕天使が人間風情に謝罪なんてしなければならないの?」

 

……あぁ、そうか。

 

再び、復讐の火は燃え上がる。

 

「そうだ!今ここであなたの神器を奪えば、あのクソガキ達に復讐できる力が手に入る!『聖母の微笑《トワイライト・ヒーリング》』だってまだある、ここは再起を」

 

「もういい」

 

続く言葉を俺が遮る。

 

こいつはチャンスを捨てた。

 

結局、どこまでも自分のことしか考えない奴だった。こんなに外道な奴がこの世にいたのか。ただ悪意のままに、自分の欲望のためならどこまでも他者を踏みにじることができる女だった。

 

もう、情けをかける必要もない。

こんな奴に情けをかけようとした俺が馬鹿だった。

 

これで思う存分、復讐の炎に身を焦がせる。

 

「……お前、死にたいんだってな……!」

 

今まで出したことのないドスの効いた声で相手の下した選択を、それが俺にとっていかなるものか告げる。

 

「!?」

 

レイナーレは一瞬動揺するが、すぐに悪意に歪んだ表情を見せた。

 

「ふっ、だったらどうしたって言うの?人間風情に私が…」

 

「お前は折角のチャンスをドブに捨てた」

 

たぎる心の叫びが、喉を振るわせ発せられる。

 

「望み通りにしてやるッ!!」

 

ドライバーが腰に現れ、眼魂がSの記号を浮かべながら起動する。

 

〔アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!〕

 

「変身っ!」

 

トリガーを引き、眼魂に秘められた霊力が解放される。

 

〔カイガン!スペクター!レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キゴースト!〕

 

スペクターに変身する。夜の闇に全身のエナジーベッセルの青い輝きが映える。心なしか、以前よりも力の上昇を強く感じる。

 

「このガキ…以前よりもかなりパワーアップを……!」

 

俺のパワーアップを見て、ダメージを負った状態で戦うのは危険だと判断したのか、ジリジリと後ずさる。

 

お前の情報を得るまでの間に俺はひたすらに鍛えた。走り込み、腕立て、腹筋、スクワットその他諸々出来ることはすべてした。これくらいのパワーアップは当然だ。そうでなければ、困る。

 

「この……!」

 

たぎる思いを、溜めに溜めた憎しみをこの拳に込める。

 

「ひっ…!!」

 

己の危機を察したレイナーレは真っ青な顔飛び去ろうとするが、飛び去るよりも速く、瞬間的に、爆発的に強化された脚力で詰めより、渾身の一撃を叩き込む。

 

逃がすか。ようやく掴んだ尻尾を、離すものか!

 

「化け物がァ!!」

 

 

 




Q.フリードのイベントは?

A.色々悩んだ結果、絡ませないことにしました。
 考えて見てください。
 悠が例の一軒家に行く。

 グレモリー眷族とともに魔方陣で撤退できない。
    ↓
 フリードとバトる。仲間の堕天使たちが到着。
    ↓
 悠vsフリード&レイナーレ&ドーナシーク&カラワーナ。
 まず勝てない。
    ↓
 抹殺される\(^o^)/

仮に逃げたとしても住居への不法侵入と、残った家主の遺体で殺人容疑がかかる。
    ↓
社会的に抹殺される\(^o^)/

悠は鍛えたと言っていましたが、そもそも入院して相当体力筋力が落ちてるので帰宅部と運動部の中間くらいです。
期間は短かったけどそれでもかなりパワーアップしました。

悠は臆病かつ優しすぎる性格です。
その性格故に、例え自分を襲った相手だろうと殺しを恐れ、後悔する。戦う覚悟を決められない。
そんな彼が如何に自分の力と向き合い、戦士としての覚悟を決めるか。それまでの心の動き《ムーブメント》がこの戦士胎動編です。

次回、決着です。

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