やべと思いながらもふと目にとまった推薦。タイトルに「おっ」と思ってよく見ると作品のタイトルは…
『蒼天に羽ばたく翼』
初めての推薦に一瞬頭が真っ白になりました。
一体何を書いてくださったんだろうと緊張で震えて読み終わるのに3時間もかかりましたが、推薦を書いてくださったグレンさん、本当にありがとうございました!
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
ネクロムスペクターとゼノヴィア、二人の戦いの開始を横目に曹操が動いた。
「…さて、二人が始めたところでジャンヌ、ヘラクレス、ジーク。俺たちも始めようか」
曹操の言葉に待ってましたと言わんばかりの軽い足取りで三人が前に出る。ジークと共に進み出たのは軽そうな性格が表情に出ている金髪の女は橙色の鎧を纏って、腰には細身の剣を帯刀している。
その隣に立つ2mほどの背丈はある大柄な男は筋肉隆々とした太い腕を軽く回す。
「待ちくたびれたぜ」
巨躯の男が首をぽきぽき鳴らしながらにやりと笑う。
「彼らは文字通り、かの英雄ヘラクレスとジャンヌダルクの魂を継ぐ戦士だよ。曹操、僕は木場裕斗の相手をするよ」
銀髪のジークは危険なオーラ漂わせる漆黒のグラムとノートゥングを抜刀し、黒い切っ先を木場に向ける。
「了解、俺は赤龍帝かな」
「なら私はミカエルのAちゃんの相手をするわ」
「俺はあまりもんの銀髪の姉ちゃんか。随分気分が悪そうだが」
曹操はイッセー、ジャンヌはイリナ、そしてヘラクレスはロスヴァイセとそれぞれの視線が、戦うと決めた相手の視線と交錯する。
「…匙、八坂さんの相手を任せていいか」
「だろうと思ったよ。『女王』への昇格は済ませた…兵藤、死ぬなよ」
やれやれとため息をつくも、すぐに切り替えて神妙な面持ちで匙は軽く拳を突き出す。
「当たり前だ、お前も死ぬんじゃねえぞ」
イッセーと匙、二人の『兵士』は互いの無事と勝利を願って拳を交わし合った。
そして匙は駆け出す。獰猛な光で目をぎらつかせる九尾のもとへ。
「『龍王変化《ヴリトラ・プロモーション》!』」
掛け声と同時に匙の全身が漆黒の炎で燃え上がり、瞬く間に何倍はある巨大な大蛇のごときドラゴンの姿へと変じた。
これがグリゴリでの実験と訓練の末、匙が身に着けた新たなる力。ヴリトラ系の神器、匙がもともと所有していた『黒い龍脈《アブソーブション・ライン》』に加えて、『邪龍の黒炎《ブレイズ・ブラック・フレア》』『漆黒の領域《デリート・フィールド》』『龍の牢獄《シャドウ・プリズン》』の同じくヴリトラ系のグリゴリが保管していたつの神器を移植されたことでヴリトラの力が強まった結果、ばらばらに分かたれたかの龍王の意識がよみがえったのだ。
この能力は高まったヴリトラの力を一時的に表出し、その身をヴリトラそのものに変えるというもの。禁手とは違う、全盛期には及ばないながらも強力な龍王の力を行使できる匙の新たな力だ。
「グォォォォォッ!!」
龍がいななく。細長い体から発した漆黒の炎が瞬く間に魔方陣に燃え移った。そしてヴリトラは咢を開いて九尾に襲い掛かる。
九尾と龍王、怪獣対決が始まった。
その開始を一瞥したイッセーは後ろにいたアーシアと九重に声をかける。
「アーシアと九重は二人で行動してくれ」
「わかった、じゃが…」
その心配もわかっていると、優しくイッセーは九重の肩に手を置いた。
「…お前のお母さんは必ず助ける。約束だ!」
力強い声色に九重はこくりと頷く。その目には彼への信頼があった。
そして兵藤は曹操へと振り向く。聖槍を携える彼は、すでにいつでも来いと言わんばかりに不敵な笑みを向けていた。
「…さあ、行くぜ!」
背部のブースターから赤いオーラを迸らせ、イッセーは突き進む。小さき姫君と結んだ約束を叶えるために。
「行くよ、皆!」
「ゲロ吐いてばかりじゃないところ、見せますよ!」
木場たちもイッセーの後に続き、各々の相手のもとへ突撃していった。
かくしてグレモリー眷属と英雄派の激闘の幕が上がった。
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エクスデュランダルのすさまじい先制攻撃により、雅な景色は一変し殺風景な戦場へと変わった。
その焦げた土を踏みしめ、二人の剣士は相対する。
木場とジーク。木場にとって、ジークは性格は反対ではあるが瓜二つの顔と銀髪からかつてフリードをいやでも思い出す相手だ。だがそんなものは手加減する理由にはならない。
敵と定めた以上、全力で斬り伏せるのみ。
「前と違って助けは来ないよ、勝てるかな?」
ジークは挑発的な言葉を投げかける。前回の渡月橋の一戦では木場に加えてゼノヴィア、イリナの三人がかりでようやく互角かそれに近い状況に持ち込めた相手だ。
しかし今は木場一人。彼一人でどこまでやれるかとジークは試す口調だった。
だが対する木場の表情には迷いも、恐れもない。
「勝てるかじゃない、勝つんだ!」
果敢に木場が吠え、馳せる。よく言ったと満足そうな笑みを一瞬浮かべ、ジークも駆け出す。
〈BGM:闇の戦(仮面ライダーW)〉
「ハァ!」
「ふっ!」
ガキンと甲高い金属音が鳴り響く。グラムと聖魔剣。一歩も引かず、両者の戦意を乗せた剣戟がぶつかり合う。
滝を上る龍のようなジークの切り上げ、敵の血を欲すグラムの凶暴なオーラを纏う一撃を一歩身を引いて躱し、お返しに横に薙ぐ一閃を繰り出す。腹を断つ鋭さを秘めたそれはノートゥングによって防がれる。
一閃、袈裟切り、突き。互いの持てる技をすべてぶつける。雑念など入り混じる余地もない。何度も何度も切り結び、切り返す。二振りの聖魔剣、魔剣の攻防が星の瞬きような一瞬でいて美しい火花を散らした。
以前はジークの飢えた獣のように獰猛な攻めに圧倒された木場だが少しづつジークの動きに対応し、食い下がるようになってきていた。
「あの一戦で僕の動きを少し読めるようになってきたみたいだね。やはり君は剣士の才があるよ」
しかしジークが狼狽することはない。むしろ敵の成長を喜んでさえいた。
鋭利な突きを躱し、ジークは上段からの斬り下げを放つ。それをもう一本の聖魔剣でガードし、がら空きになったジークの腹に回し蹴りを入れた。
「うっ!」
蹴りの反動を利用して木場は後方へ跳ぶ。打ち合う相手から距離を離されたジークが蹴られた腹部についた土汚れをはたいて払う。
「…なら、少し本気を出そうか」
集中のために一度息を吐いて、力強く呟く。
「『禁手《バランス・ブレイク》』」
一瞬ジークの剣気が膨れ上がり、彼の背から龍の腕が新たに3本ずいっと生えた。
「亜種禁手、『阿修羅と魔龍の宴《カオスエッジ・アスラ・レヴィッジ》』だ。そして増えた腕を生かす剣も…」
新たに生えた腕が起用に動いて腰に帯刀されていた剣を抜刀する。妖しい緑色のオーラを纏う魔剣と、反った刀身の赤紫色に輝く魔剣。どちらもノートゥングやバルムンクに劣らぬ危うさを感じさせる。
「魔剣ディルヴィングとダインスレイヴ、君も知ってる協会の戦士が使う光の剣だ」
「名のある魔剣を5本も…」
敵が見せたさらなる札に戦慄に冷や汗を垂らす木場。
魔帝剣グラム、ノートゥング、バルムンク、ディルヴィング、ダインスレイヴ。伝説に名を残す魔剣たちが今、全て敵の得物となり彼の眼前に脅威として立ちはだかっている。
「ふふ、さあ、どこまで持つかな?」
〈BGM終了〉
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〈BGM:一騎打ち(遊戯王ゼアル)〉
ジークと木場が互いの禁手を発動した激闘を繰り広げている頃、ロスヴァイセは猛々しいヘラクレスの攻撃に押され気味だった。
「オラオラオラァ!どうした姉ちゃん!得意の魔法はそんなもんかァ!?」
ロスヴァイセが何度も魔法を放ってもヘラクレスは恐れなく真っすぐにロスヴァイセへ猛進し、魔法を受けてなお衰えぬ勢いと闘志を拳に乗せて放ってくるのだ。
「私の魔法を真正面から受けて突っ込んでくるなんて…!」
眉を顰めるロスヴァイセはヘラクレスの猛烈な拳のラッシュを体裁きでどうにかやり過ごす。
「そいやぁ!!」
拳を振り上げ、一気に振り下ろす。この一撃にロスヴァイセの本能が危険だと叫ぶ。それに従い彼女は反射的に大きく飛び退って距離をとった。
空振った拳はそのまま地面にたたきつけられると、手榴弾が起爆したかのような爆炎を上げた。
自らが巻き起こした爆炎の中から、ヘラクレスは立ち上がる。
「俺の『巨人の悪戯《バリアント・デトネイション》』は攻撃と同時に相手を爆散させる能力だ!鬼ごっこしてるだけじゃあ俺には勝てねえぜ?」
昂る闘志にぎらつく笑みを、ロスヴァイセに向けた。
「あの男…イッセー君と同類のパワータイプ…」
ここまでのヘラクレスの攻撃を振り返り、彼女はそう結論付けた。神器の爆発的な力と鍛え上げられた己のパワーの合わせ技で、強引に相手を突破する戦闘スタイル。
(正直、私が最も苦手なタイプだけど…)
彼女の最大火力はゆえにそれが通用しない、あるいはものともせず向かってくる相手には苦戦を強いられてしまう。
「でも、やりようならある!」
だが彼女が学んだ魔法は攻撃だけではない。素早く魔方陣を展開し、そこからいくつも光の縄を伸ばし彼の太い腕に巻き付かせた。
「んおっ?」
「このままあなたを縛り、360度からの魔法のフルバーストを受けてもらいます!これならさすがのあなたでも…」
いくら頑強な体でも身動きの取れない状態で全属性全神霊の魔法のフルバーストを全身にくまなく、長時間受け続ければひとたまりもないはず。彼女は反撃のチャンスだと魔法の準備を始めるが…。
「ほう、そいつぁ面白そうなアイデアだな」
にやりと笑うヘラクレスがぐいと光の縄で縛られた腕を上げる。
「魔法の縄…こんな柔な拘束で俺を止められるなんて思っちゃいねえだろうなァ!!」
そして腕に力をこめて雄たけびを上げ、ぶちっと縄をいともあっさりちぎってしまった。これには流石のロスヴァイセも驚愕を禁じ得ない。
「力づくで!?」
さらにヘラクレスは身をかがめ、全身に力を込める。
「ウォォォォ!!『禁手《バランス・ブレイク》』!!!」
腹の底から出す叫びと同時に彼のオーラが大きく弾け、背中や四肢からヤマアラシのように鈍い輝きを放つ突起物が次々と生えた。
「全身からミサイルを!?」
「こいつが俺の禁手、『超人による悪意の波動《デトネイション・マイティ・コメット》』よォ!限界までぶち上げた爆発力であの世の果てまで逝っちまいなぁ!!」
全身から突き出たミサイルが着火し、続々と発射される。しゅるしゅると煙と炎の尾を引いて無数のミサイルが海中で血の匂いを嗅ぎつけたサメのようにロスヴァイセめがけて殺到する。
「通常であの破壊力なら…このままじゃこの場が!」
よぎる悪寒、そうはさせまいと悪魔の翼を広げ、ロスヴァイセは激戦が繰り広げられている二条城跡地の外に向けて飛び立つ。ミサイルも彼女の動きに反応し、サバンナで獲物を追うライオンのように方向転換をした。
内数発が彼女の動きを追うことなくそのまま地面に着弾すると、ド派手な爆発を巻き起こし地面を焼いた。離れながらも爆発を見たロスヴァイセは爆発の威力に唖然とする。
「なんだなんだ?爆発に味方を巻き込みたくないってか?だったらいいぜ…その余裕もなくなるくらいぶっ飛ばしてやるよォォ!!」
〈BGM終了〉
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〈BGM:MIMICKING BATTLE(黄昏メアレス)〉
そしてイリナとジャンヌ、教会に縁の深い二人の戦いは。
「もうっ!天使なのにハエみたいな鬱陶しい戦い方しちゃって!」
イリナの上空からの突撃を鬱陶し気にジャンヌは聖剣でいなす。いなされたイリナは再び翼を羽ばたかせて上空へ飛ぶ。
彼女の戦術はジャンヌら人間と違って飛行できる天使の特性を生かした、上空からのヒットアンドアウェイ作戦。上空から剣技を仕掛けてはまた戻り、時折光力で生み出した光輪や槍で攻撃する。
これにはジャンヌも苛立ちを隠せない。しかし、上空にいる彼女を攻撃する術がないわけではない。
ジャンヌの足元からずっと高貴なオーラ漂わせる聖剣が突き出る。柄を握って地面から引き抜くと軽やかな舞と共に剣を振るう。
「雷の聖剣!氷結の聖剣!」
聖剣から痺れるような弾ける雷と、凍てつく斬撃が放たれる。
「危なっ!?」
間一髪、イリナは回避運動をとって斬撃と雷撃の両方をやり過ごした。
「あら、今のをよく避けたわね」
「せぇぇい!!」
お返しにイリナは猛スピードで突撃をかける。今度こそ、ジャンヌに一太刀入れて戦いの主導権を握るために。
「でもそんな攻撃じゃだーめ」
次の瞬間、ジャンヌの周囲に無数の聖剣の刃が高く突き出る。まるで花園のように咲き乱れる聖剣が月明かりに照らされて輝いた。
ジャンヌを守るように出現した背の高い聖剣の花園に、イリナは慌ててブレーキをかける。
「きゃっ!」
「あらあら、このまま串刺しになってくれたら楽だったのに」
思惑が外れ、やや落胆したとつまらなさそうにジャンヌは鼻を鳴らす。
「あの神器、木場君の魔剣創造とよく似てるわ…」
突き出た聖剣を見てイリナはぽつりとつぶやく。聖剣を一気に解放して敵を串刺しにする攻撃は彼女の仲間の木場が使うものとほぼ同じだ。
「似てるも何も兄弟みたいなものよ?私の神器は『聖剣創造《ブレード・ブラックスミス》』。魔剣を創造する『魔剣創造』と反対に聖剣創造は自在に聖剣を生み出すの。…あれ、ジークはもう禁手使っちゃったのね。ならお姉さんもサービスしなくっちゃ」
聖剣に守られるジャンヌは恍惚に赤く頬を染めて、力を解き放つ一句を口ずさむ。
「『禁手《バランス・ブレイク》』♪」
彼女のオーラがはじけ、背後に聖剣の剣山が出でる。剣山はガキンガキンと硬い金属音を鳴らし、そのフォルムを翼の生えた龍の形へと変えていく。
「これが私の亜種禁手、『断罪の聖龍《ステイク・ビクティム・ドラグーン》』よ!易々と喰われないようにせいぜい足掻いて頂戴ね?」
聖剣でその体を構成されたドラゴンは聖なる力そのものと言ってもいい。金属質な輝きを放つドラゴンが、天上の天使めがけて咆哮する。
びりびりとする威圧感にややひるむも、彼女の戦意がくじかれることはない。
「…たとえ相手が聖人と崇められる方の魂を継ぐ者だとしても、ミカエル様のAという栄誉ある肩書にかけて負けられないわ!」
天使と聖人の戦いは、さらに激化する。
〈BGM終了〉
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〈BGM:残響Dearless(黄昏メアレス)〉
そして曹操によって操り人形に仕立てられてしまった悠ことネクロムスペクターと戦うゼノヴィアは苦い戦いを強いられていた。それもそのはず、命がけで戦う相手が大切な仲間であるため、全力を出せずにいる。
特に彼女の聖剣は攻撃力が高く、下手に曹操たちに見舞ったさっき以上の全力で攻撃すれば変身解除を通り越して中身の悠自身を殺すことにつながりかねないからだ。
元来強いデュランダルの攻撃力はエクスカリバーと合わさったことでさらに向上している。それに伴い殺害のリスクも上がり、彼女は威力を調整しながら彼を相手にしていた。その結果、彼女は満足に攻撃もできないまま防戦を強いられることになった。
「ぐぅ…!」
勢いよく振り下ろされるガンガンハンドの一撃をエクス・デュランダルで受け止める。もう何度打ち合ったか数えていない。ガンガンハンドとデュランダルを激しくぶつけ合い、強引に押し返し、蹴りを見舞う。
「ハァ…フォームチェンジはしない…いや、できないか」
どうにか距離を取った彼女はぽつりとつぶやく。彼女が所持しているプライムトリガーに、今彼が所有する10の英雄眼魂の全てが内包されている。それ故、今の彼がゴーストチェンジして戦法を変えることはない。
「そしてネクロム特有の液状化もしない、か」
何より彼女が気がかりだったのがネクロムが過去に交戦した際発揮した液状化の能力。ほぼすべての物理攻撃を無力化するそれをもし使われた、物理攻撃主体の自分では太刀打ちできないと危惧していたが幸いにも能力は使用不可だったようでほんの少しだけ安堵した。
「!」
だが状況は好転しない。ガンガンハンドの銃口が向けられ、火を噴いた。
「ちっ!」
エクス・デュランダルを盾にしてよせ来る弾丸を防御する。彼女がどう戦うべきか悩む一方で向こうは全く迷いもなく、彼女の命を狙ってくる。
「悠がアルルと戦う時、こんな気持ちだったのか…」
弾丸を防ぎながら彼女は思う。正体を知らず実の妹だと思っていた彼がアルルと戦った時、同じような心境だったのかと。きっと彼も殺さず、救いたい相手との戦いに大いに戦い方を悩んだに違いない。
「目を覚ませ悠!お前は曹操に負けるような奴か!?」
〔ダイカイガン!オメガスマッシュ!〕
ゼノヴィアの声に構わず、ドライバーにハンドをかざすネクロムスペクターがぶんぶんとハンドを振り回し、地面に突き立てる。すると迸る緑色のオーラが地面から次々に噴出してゼノヴィアに向かう。
ゼノヴィアは冷静にエクスデュランダルの鞘から一振りの聖剣を抜き放つ。
「破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》よ!」
かつて駒王町に任務で訪れた際の相棒。懐かしい握り心地に浸る間もなく力を込めて地面に叩きつけ聖剣特有の破壊のオーラを放つ。
地面を荒々しく砕いて突き進む破壊のオーラと翡翠のオーラが派手に激突し、爆発を起こして相殺される。
数秒後、二人を分かつ濁った煙が晴れる。向こうにいるのは変わらず心の戻らぬネクロムスペクターの姿。
「…悠、君はいつも私たちの窮地を救ってくれた。だから今度は…私がお前を止める!」
彼女は強い意志を以て彼に呼びかける。しかし彼が反応を見せることはない。
今までの激闘で幾度となくゼノヴィアは彼に救われた。彼なくして今の彼女はいないだろう、感謝してもしきれないくらいに彼女は彼に恩を感じている。
だが救われる一方の彼女は果たして逆に彼のピンチを救ったことがあっただろうか。いつも彼女は強敵に膝をつき、そのたびに彼やイッセーが助けとなり状況を打破してきた。
ウリエルによって時間が巻き戻ったため彼女自身に記憶はないが悠がロキとの戦いで一時的に変身能力を失ったとき、彼を守ろうとフェンリルの前に立ちはだかったが結果として返り討ちにされてしまったと聞いている。
歯噛みする思いだ。デュランダル使いたるものが味方に助けられるばかりで味方を助けることができないなど。ましてや意中の相手に何もしてやれないなんて。そしてその結果、このような事態を招いてしまった。自分が悠と一緒に行動していれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
だからこそ彼がたとえどんな苦境に立たされた時、真っ先に手を差し伸べるのは自分であろうと誓ったのだ。この刃は敵を屠るためだけでなく、仲間を守るためにも使えるのだから。
もう二度と、彼にこんな目には合わせるわけにはいかない。イッセーたちが他の英雄派の強者と必死で戦っている今、彼を止めるのは…。
「お前を止められるのはただ一人…!」
この刃に彼女を強く突き動かす決意を込める。力の調整は大体済ませた。後は思いのたけと共に自分の剣をぶつけ、未だ答えぬ彼を呼び起こす。
大地を踏み一息にて跳躍、彼めがけて剣を振り下ろした。
「私だ!」
〈BGM終了〉
次はおっぱいです。
次回、「反撃の光」