ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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長かったパンデモニウム編(ラグナロク編と比較するとかなり短い)もいよいよ終わり。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ



第119話 「修学旅行はパンデモニウム」

三日ぶりの駒王町に戻って修学旅行の解散式が終わってから、早速俺たちは我が家の近所にでかでかと聳える兵藤の家に来いと部長さんに呼び出された。

 

そしてなぜか彼女の説教が始まり、俺たち学生組は彼女の前で全員正座させられるのだった。

 

「…全く、こっちもこっちで忙しかったから仕方ないけど、戦力が足りないなら一声かけてほしかったわ」

 

ふんと腕組みして俺たちを見下ろす部長さんが半眼で鼻を鳴らす。

 

どうやら俺たちの非常時にもっと早く連絡を寄こさなかったことを怒っているらしい。

 

「私たちでなくとも、ソーナは知っていたのよ?彼女なら助っ人に行けたのに」

 

「水臭いです、先輩たち」

 

「でも、せっかく無事に帰ってこられたんだからいいじゃないですか」

 

ギャスパー君や塔城さん、朱乃さんも不満はあるものの部長さんほど立腹ではないようだ。

 

…正直に言うと、曹操の聖槍やジャンヌの聖剣と悪魔に必殺の効果がある武器を使う相手が多いから呼ばなくてよかったかもしれない。兵藤は一度聖槍の聖なる力をもろに受けて消えかけたらしいし。

 

「おまけにイッセーは現地で新しい女を作ってきたからな」

 

と、わざとらしく余計な情報を口走るアザゼル先生。先生はここでゆっくりした後はすぐに京都の会談の準備に向かわないといけない。

 

「「!?」」

 

「しかも九尾の娘だ」

 

驚きの波が走る居残り組。そして一人、塔城さんが兵藤の前に進むと…。

 

「……」

 

「ごふっ!!?」

 

無言の正拳付きを腹にかました。俗にいう腹パンというやつだった。

 

「ナ…ナゼニ…?」

 

「なんとなく殴り心地がよさそうだったので」

 

呻く兵藤を見下ろして、塔城さんはやや不機嫌そうに殴った手をはたはたさせる。まったく、兵藤ガールズはライバルは減りはしなくとも増えはするのだから大変だな。

 

「まーまー、イッセーも新たなパワーアップをしたんだし許してやれや」

 

「そうね…でも、いきなり京都に召喚されて…む、胸を……」

 

先生のフォローに、部長さんは一応頷きはしたが、言葉がだんだん風船がしぼむように恥ずかしさで声量が小さくなっていく。何気に知らない情報が出たんだけど。

 

「えっ、部長さん京都に召喚されたの?」

 

「それ以上は知らない方がいいよ」

 

知らない情報だったので聞いてみようと思ったら木場に止められた。

 

部長さんのことも深く詮索したらだめなのか?本当に俺の洗脳が解ける直前に何が起きたんだ?

 

「イッセー、お前はいい選択をしたと思うぜ。『覇龍』を極めようとするヴァーリと反対に、お前は『覇龍』に頼らない新たな進化の道を進もうとしている。『王』を目指すんなら覇道でなく、王道で行け」

 

「…それはそうと、先生。プライムトリガーの解析結果はどうなったんですか?」

 

「ああ、あれか」

 

決戦前に先生がプライムトリガーと一緒にもらったという解析結果の入ったUSB。そろそろ中身を知りたいと思っていたところだ。

 

椅子に腰かけ、足を組む先生はグラスのワインを呷る。

 

「ざっと要点をまとめると、まあどうにも急ごしらえで作られたみたいで、かなりエネルギーの出力設定が大雑把になってたみたいだ。最初の変身でお前が死にかけるほど反動で苦しんだのはそれが原因だな」

 

こっちであのドラゴンが慌てるほどの事態が起こったから急遽これを作って送ったってところだろうか。

恐らくタイミング的にアルルか、ポラリスさん曰くイレギュラーになったというロキだと思うが…。ロキに関しては向こうが干渉してこなかったらまず積んでいたし。

 

「…それともう一つ。トリガーには15の眼魂を揃えたときのみに発動する謎のシステムがあるらしい。解析結果でそれらしいものを発見したが、その術式が複雑怪奇かつ厳重にロックがかけてあってポラリスも手を出せず、結果詳細不明のままだとよ」

 

「謎のシステム?」

 

15の眼魂が揃った時に発動するシステム…英友装でないのは確かだ。あれは全てそろってない今でも使えた技だからな。

 

となれば、ヒントはあのロキ戦か。…特に思い当たる節はないな。あれはパワーと英雄の能力の組み合わせでごり押しだったし、特殊な能力を使った覚えもない。

 

「グリゴリで解析できないの?」

 

「いや、トリガーのシステム全体の根幹部分にあるから下手すると壊れかねん。仮に解析に回すとすると相当な時間がかかるし、いつまた英雄派が仕掛けてくるかわからん現状はやめておいた方がよさそうだ」

 

部長さんの提案を先生はかぶりを振って一蹴した。

 

先生の言う通り、またトリガーを預けるのはよした方がいいな。プライムスペクターでようやく相手をできるレベルだし、信長もトリガーなしでは歯が立たなかった。また自力で15個揃えるしかない。

 

「…まあそれ以外は多分、お前が知っている情報だったな」

 

「そうですか…」

 

一応初変身の時にあらかたのスペックは頭に入ってきたからな。むしろそれにもない隠されたシステムとはどのようなものなのだろう。

 

朱乃さんがふと思い出したように言う。

 

「そういえば深海くんも新しい能力を手に入れたのよね?私たちをパワーアップさせられるっていう…」

 

「はい。…でも、レーティングゲームじゃ使えないですね。俺、参加できないので」

 

仲間を強力にパワーアップさせられるあの力も、俺がゲームに参加して戦闘に居合わせなければ使えない。完全に実戦向きの能力だ。

 

「だとしても、イッセーのパワーアップがある。私たちも負けてられないな」

 

そう、俺がいなくてもイッセーがいる。曹操を単騎で追い詰めるほどのパワーアップだ、近くに控えたバアル戦で大活躍してくれることだろう。

 

「ところで、『乳龍帝おっぱいドラゴン』が妖怪の世界でも放送が始まるらしいです」

 

と、リビングで腰を下ろすギャスパー君。ネットでいち早く情報を掴んだみたいだ。

 

「なんだかハーレムの前に、子供たちに囲まれそうだなぁ」

 

「いいんじゃないのか、子供に囲まれるヒーローってのも」

 

もう悪魔の子供たちの心や九重の心を掴んだくらいだから妖怪の世界でもすぐに人気になりそうだ。

 

「あ、そういえば学園祭前にフェニックス家の娘がうちに転校してくるそうだな」

 

何気ない先生が口にした情報で、大いにこの場がざわついた。

 

「えっ!!?」

 

「レイヴェルが!?」

 

「フェニックス家のレイヴェルって…あ、もしかしてライザーの妹か?」

 

多分フェニックス家の娘ってだけだとわからなかったな。俺がライザーにとどめを刺そうとしたときにあいつをかばった妹だ。

 

皆の反応を見る限り、俺の知らないところでレイヴェルと交流があったみたいだが。流石にあの試合だけの関係ならここまで驚きはしないだろう。

 

「なんでも、リアスとソーナに刺激を受けて日本で学びたいと申し出たらしい。学年は高等1年だから、ギャスパーと小猫の同学年か」

 

「しかしなんだって急に転校を…」

 

兵藤のふとした言葉で、俺と兵藤以外の皆がやれやれと盛大に息を吐いた。

 

「?」

 

兵藤はまだぴんと来てないみたいだが、俺はもうわかったぞ。これはまた、愉快なことになりそうだ。

 

「まあそういうこった。頑張れよ、リアスたち」

 

楽しそうににやにやする先生。先生も俺と同じことを考えているに違いない。

 

「帰ってきても安心できないんですね…」

 

「私もそろそろ攻める術を見つけるべき…?」

 

「攻めのギアをもっと上げなきゃですわね」

 

九重とレイヴェル、新たな二人のライバルの出現に兵藤ガールズは更なる手を考えるみたいだ。

 

さて、一年後は何人に増えていることやら。そろそろ皆の攻めがヒートアップして子供ができましたなんてことになっても驚かないぞ。

 

「…さて、そろそろ学園祭も近いわ。修学旅行の間に準備を進めてきたけど、皆が戻ってきてからが本番よ。それに、サイラオーグとの若手交流戦もあるわ、皆、気合入れていくわよ!」

 

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 

締めの言葉に、気合を入れんとする俺たちの返事が揃う。

 

悪魔でないがゆえに試合に参加できない俺にも、できることはある。俺は俺のできることをやるだけだ。

 

確かに俺と天使や悪魔である皆には様々な違いがある。能力、文化、寿命…だがそれすら超えて、俺は今の仲間という関係を築けた。

 

信頼には信頼を、俺は俺のできる方法で皆を支えていく。この先も、俺の思いは変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「休暇はどうだったかしら」

 

「久しぶりにリラックスできた。思いがけず弟の顔を見ることもできたしな」

 

「そう。休暇が終われば何が始まると思う?」

 

「…何が始まるんだ」

 

「知らないの?仕事が始まるのよ」

 

「はぁ、また宝探しか。今回もはずれじゃないだろうな」

 

「さて、どうかしらね。でも今回はかなりアタリの可能性が高いわ」

 

「だといいが」

 

「…さあ、奈良に行くわよ。神祖の仮面は近い…そんな予感がする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「曹操、彼らにネクロム眼魂は返してきたよ。約束どうり、引き換えに例の術式を受け取った」

 

「ふっ、約束はしっかり守ってきたか。今回限りの協力関係だったが…結局、彼女らのことはわからずじまいだ」

 

「んなもんどうでもいいだろ。それよりこれで俺たちは紀伊国悠の持っているのと同じ眼魂ってもんを作れるようになったんだ」

 

「ああ、我々で眼魂を作れるようになれば、英雄になるという我らの大望に大きく近づける」

 

「明らかに彼女らは僕らを利用する気満々だったけど、いいのかい?」

 

「構わないさ。彼女らが我らに害をなすなら、その企みごとこの槍で滅するのみだ」

 

「…それと、旧魔王派に協力してもらった例のプロジェクトも進んだ。お披露目は近いよ」

 

「それは何よりだ」

 

「約束通り1つは僕がもらう…君たちは?」

 

「俺には槍がある。それで十分さ」

 

「いーや、俺はいらないね。使わなくても俺の防御は絶対だからな」

 

「君たちらしい断り方だよ。赤龍帝にやられた右目も代わりと交換しよう、フェニックスの涙を使えばすぐに治るだろうに」

 

「いい、この傷は自身への戒めと赤龍帝と戦った記念だ。ヴァーリと兵藤一誠、まったく、二天龍は飽きさせないな。最高だよ」

 

 




これにてパンデモニウム編は完結。

次に生徒会関係の外伝をやってからライオンハート編に入ります。外伝の最後には次章予告もあるのでそちらもお楽しみに。次章はいろいろすごいことが起こります。

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