ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ



第122話 「最上フォームVS三叉コンボ」

〈挿入歌:GIANT STEP(仮面ライダーフォーゼ)〉

 

無機質で広大な空間がどこまでも果てがないと錯覚するほどに続く。

 

ここは冥界のグレモリー領の地下にあるトレーニングルーム。トレーニングルームと呼ぶにしてはあまりにも広く、相当な強度を誇る。それ故、俺たちの模擬戦の場所にはこれ以上ないほどにうってつけだ。

 

「よし、来い」

 

「じゃ、行くぜ」

 

プライムスペクターへと変身を遂げた俺は、相対する鎧姿の兵藤に挑発がてら指をくいっと上げる。

 

腕をぶんぶんと回して準備運動を終えると言葉よりも早く、兵藤はブースターをふかして猛進してきた。

 

〔エジソン!〕

 

〔ロビンフッド!〕

 

対するこちらは前方に突き出した左手からエジソンの無数に枝分かれする電撃を迸らせて広範囲に弾幕を張り、迂闊に近づけないようにする。

 

「おっと!」

 

すんでのところでスピードを殺して電撃の範囲ギリギリでとどまった兵藤に、格好の餌食だとガンガンセイバーアローモードの射撃を見舞う。

 

「モードチェンジ!『龍星の騎士』!」

 

兵藤の宣言で赤い鎧のフォルムが小さく、そして鋭い形状に変化した。飛来する翡翠の矢を俊敏に回避すると、増設された背部のブースターがごうっと激しく赤いオーラの息を吐いて俺との距離が瞬く間に消し飛んでいく。

 

真正面から相対してわかるがなんてスピードだ。だが、スピードが出る分、急な方向転換は厳しいのはわかっている。

 

〔フーディーニ!〕

 

〔ムサシ!〕

 

〔リョウマ!〕

 

ガンガンセイバーを二刀流モードで召喚し、フーディーニの力で飛翔して突撃を躱す。突撃を躱された兵藤が今度は龍の翼を広げてブースターをふかして空へ舞い上がる。

 

「そらぁ!」

 

漲る霊力を刃にまとわせて、斬撃を続けざまに飛ばす。しかし超スピードを得た兵藤の前では飛ぶ斬撃などのろまでしかなく、容易く避けられてしまう。

 

やはり飛行速度も早いな。何より脅威なのが直線でのトップスピードだ。今までの数倍は跳ね上がっている。

 

そしてあっという間に兵藤は俺を近接格闘戦の間合いに収めてしまった。だが間合いに収めたのはこっちも同じだ。

 

すぐさま剣を振り下ろし迎撃する。が、鎧が軽くなったおかげで身のこなしも軽やかになった兵藤は身をよじって回避し、カウンターの一発が襲ってきた。それをもう一本の剣を叩きつけてそらす。

 

「…!」

 

直後、鈍い痛み。兵藤の膝蹴りが腹にめり込んでいた。痛みにより生まれる隙、今度は右ストレートが俺を吹っ飛ばした。

 

「ぐぅ…!」

 

吹っ飛ぶ俺を逃すまい、休む隙も与えまいと、持ち前の加速力を鎧をパージして底上げし一瞬で追いついてきた兵藤。

 

「モードチェンジ、『龍剛の戦車』!」

 

〔ベンケイ!〕

 

二人の能力が同時に発動する。兵藤の両腕が数倍にも膨れ上がったようなごてごてした形状に変化し、こちらはパワーと防御力を向上させるベンケイの能力を兵藤と同じく両腕に集中させる。

 

「ぬぅん!」

 

腕が重くなった分、鈍重になった向こうよりこちらのほうが素早く攻撃を繰り出せる。こちらは撃たれる前にと真正面から突き抜けるように拳打を繰り出す。

 

しかし、それを防いだのは分厚くなった籠手であった。籠手の横幅も増したことで防御範囲も増えたのだ。そしてこちらの拳打は籠手にヒビを入れること能わず。

 

「お返しだ!」

 

入れ替わるように今度は兵藤のパンチが飛んでくる。ぶんと重量感たっぷりに振るわれるそれを咄嗟に両腕を交差させてガードする。

 

「う…うぉぉぉぉぉ!!」

 

続けざまに籠手に仕込まれた撃鉄が押し込まれ、更なる衝撃が襲う。ごり押しもいいところなパワーにいよいよガードは突破され、俺は木っ端のごとく吹き飛んだ。

 

「いっつ…次だ!」

 

地べたに倒れるも、痛みをこらえて立ち上がる。

 

模擬戦とはいえ戦闘なのだから多少の痛みは覚悟の上。それになるべく本番と感覚を近づけることこそが本番で最良のパフォーマンスを発揮する方法だと俺は思っている。もちろん殺すわけにはいかないので、全力は出さない。

 

全力を出さずに、全力を出す実戦に感覚を近づける。なかなかに難しいところだが、こちらはポラリスさんやイレブンさんとも模擬戦を重ねてきたので大分加減は覚えた。

 

「モードチェンジ!『龍牙の僧侶』!」

 

鈍重な籠手が元の形状に戻り、入れ替わりに背部に二問の大きなキャノン砲が現れる。すぐさま砲撃のチャージが始まり、砲口が光を蓄え始めた。

 

〔ノブナガ!〕

 

〔エジソン!〕

 

実際の戦闘ではわざわざこちらのチャージを待ってくれる敵などいない。そう思いつつガンガンハンドと実態ある幻影と共に電撃を付与された集中砲火をチャージ中の兵藤に浴びせる。

 

向こうは回避しようと移動するが、チャージに集中力を奪われるために満足に動くこともままならない。

それにノブナガの銃撃は横に広い範囲を攻撃できる。ちょっとやそっと動いた程度では逃れることなどできない。

 

どのみち、こちらの攻撃を受けて耐えてチャージを完了させるしかない。

 

「ぐ…うぅぅぅぅ…!」

 

銃撃の雨を浴びながら、兵藤は懸命にチャージを続ける。しかし反撃もままならず蓄積するばかりのダメージに集中を妨害され、それが限界を迎えるとついには砲門の光がバシュンと弾けて消えてしまった。

 

〈BGM終了〉

 

「…ここまでにしとくか」

 

「…ああ」

 

頃合いだと終了の合図を出して、互いに変身を解いた。地面に膝をつく兵藤に歩み寄って手を差し出す。

 

「お前の『戦車』、やはりすごいパワーだ。本気で言ったら骨は確実に行ってたな」

 

「そういうお前だって、英雄の能力をすごい使いこなしてるじゃないか」

 

俺の手を取り立ち上がる兵藤。互いに先ほどの戦闘で見えた良さを褒めたたえた。こうして互いのいいところを褒めるのも信頼と実力を伸ばすうえで重要な行為だ。

 

しかし兵藤はすぐ思いつめた表情を浮かべた。

 

「…どうしても『僧侶』でうまくコンボがいかない」

 

「『戦車』で大ダメージを与えた敵にダメ押しで砲撃を見舞うのはいいんだが、どうもテンポが崩れるし…」

 

「砲撃を曲げられるのは大きいけど、『騎士』からの『戦車』、あるいはその逆が完成されていてどうも『僧侶』が浮いてしまうんだよな。特にチャージが必要なのが…」

 

『騎士』の猛スピードで突撃をかけてから『戦車』で一気に重い一撃を叩きこむ。曹操戦でも披露したがこの完成された流れに『僧侶』を組み込むのは難しい。

 

現状は戦車のパンチで相手に大ダメージを与えて動きを鈍らせ、その間にチャージする方法しか思いつかないが…今のようにダメージが足らず、まだ相手が動ける状態であればチャージで無防備をさらしたまま、相手の攻撃を受けてチャージを妨害されてしまう。

 

「これを使うのは集団戦前提になってしまうか。他の仲間に前衛でチャージの時間をカバーしてもらって、確実にチャージを通して後衛から強力な砲撃で一気にゲームエンドに持ち込む。あれに耐えられるのはバアル眷属でもまずいないよ」

 

そう、砲撃自体は強力無比な威力を持っている。ただ、それを発射するまでのチャージがタイマンだとかなりのネックになってしまう。集団戦でないとこの『僧侶』の出番は厳しいものがある。

 

「木場の新技はカバーにぴったりだと思うが」

 

「僕も同じことを思ったよ。我ながらいい禁手に仕上がったね」

 

兵藤が三叉コンボに悩む一方で木場は見事に新技を完成させた。そちらの技は個人的には『英友装』と組み合わせると面白いだろうなと思っている。

 

「体力の消耗はどうだ?三叉コンボの後でまだきついか?」

 

「ああ、目覚めたてに比べたらマシにはなったけどそれでもしんどいな」

 

体力の消耗の解決も難しい、か。特に連続での昇格は負担も増えるようだ。やはりこのコンボは短期決戦向けになるのか…話に聞く限り、頑強な肉体を誇るサイラオーグを一撃で倒すのは至難に思えるが。

 

「あの…一ついいですか?」

 

おずおずと挙手して注目を集めたのは見学に来ていたレイヴェルさんだった。

 

「『僧侶』の砲撃を、オーラではなく譲渡の力を打ち出すことはできませんか?そうすれば、仲間のサポートもできると思うのですが…」

 

彼女の提案がしばしの沈黙を生んだ。それは気まずさや彼女を馬鹿にする意味でもなく。

 

「「それはいいね!」」

 

むしろ今まで考えもつかなかったアイデアへの驚きによるものだった。木場と兵藤が揃ってサムズアップした。

 

なぜ今まで思いつかなかったのか。俺自身も、レイヴェルさんの新しいアイデアに感嘆の念を覚えた。

 

「なるほど!それなら打ち出すのは砲撃か、倍加かで相手に揺さぶりをかけることもできそうだ」

 

「確かに、仲間のサポートもできるならますます集団戦に向いた能力になるね」

 

譲渡を打ち出して前線で戦う仲間を強化したり、場合によっては強力な砲撃で敵を殲滅する。これが実現できれば大きく戦略の幅が広がる。

 

「それなら、あとはゲーム本番のルールとフィールド次第かぁ…」

 

「今回の試合は大公アガレス家の空中都市、アグレアスで行われます。大勢の観客が来る以上は試合が長引くルールになることはないと思いますけど…」

 

「それだけ今回の試合は注目度が高いのか?」

 

「ええ、サイラオーグ・バアルとリアス・グレモリー。このお二人は眷属共にプロ並みの人気がありますの。試合が近づくにつれて両者を取り上げるテレビ番組の熱も上がってますわ」

 

大王家の次期当主と現魔王サーゼクスさんの妹、ネームバリューならかねてより二人の試合は衆目を集めるには十分。それなら客受けを考えて観客を飽きさせないためにも試合が長引くルールは避けると。レイヴェルさんの考えはもっともだ。

 

「なるほど…いいアドバイスをありがとうなレイヴェル!」

 

「そ、そんなっ…当然のことですわ!日頃厄介になっている身としてこれくらいは…!」

 

兵藤がお礼の言葉をかけると、わかりやすく照れ交じりに取り乱しだしたレイヴェルさん。ほうほう、やはりそういうことなんだな。全く、赤龍帝の魅力は止まるところを知らないな。

 

「よし、それじゃあさっきの譲渡の砲撃を試してみようぜ」

 

「残念だけど今日は終わりよ。明日は会見があるの」

 

と、早速新アイデアを試そうと兵藤が元気を出したところに部長さんが歩み寄ってくる。

 

さっきまで彼女はゼノヴィアとロスヴァイセ先生の模擬戦のアドバイザーをしていたのだが、どうやら終わったらしい。その証拠に、離れたところで二人がへばって地面に横になっていた。

 

「会見?」

 

「あれ、言ってなかったかしら?明日はテレビ中継で私たちとサイラオーグたちで記者会見があるのよ。テレビに映るのだから、疲れをためた状態で出るわけにはいかないわ」

 

「ええええ!!?」

 

どうやら本当に知らされていなかったようで、兵藤が大声を上げて驚いた。テレビで自分を取り扱った番組が人気になっているとはいえ、いきなり明日会見に出るよとなれば当然の反応だ。

 

「イリナと深海君には留守番をお願いするわ。私たちがいない間、よろしくね?」

 

「お任せあれ!」

 

「了解」

 

グレモリー眷属ではない俺たちは揃って快諾する。冥界のテレビ番組って、どうやったらうちのテレビでも見れるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〈BGM:ZAIAエンタープライズジャパン社長・天津垓(仮面ライダーゼロワン)〉

 

「…なるほど、ここが仮面の在り処ということで間違いないのか」

 

無機質な白で構成された『NOAH』の一室で、ポラリスは端末の画面に目を落とす。画面には、とある場所が示されている。

 

「はい、調査で集めた情報とスキエンティアの予測をもとに、ここしかないかと」

 

「わかった。ならば迅速に行動を起こすまでじゃ」

 

ポラリスはウェポンクラウドから一つのアタッシュケースをマテリアライズして白い卓上に置いた。

 

彼女に報告をしていたイレブンがケースを一瞥すると、すぐに主へと視線を戻した。

 

「イレブン、おぬしにはこれから日本の奈良県の山間部にある遺跡に行き、『神祖の仮面』を回収してもらう。やれるな?」

 

「当然です。私はあなたの右腕ですから」

 

イレブンは恭しく跪き、首を垂れる。イレブンにとって彼女に尽くすことは生まれ持った理由であり、今では心の底から望む意志でもある。

 

「頼んだぞ」

 

それに全幅の信頼を寄せるポラリスの言葉で、ケースを携えてイレブンは与えられた任務を全うせんと外へ出ていく。

 

「神祖の仮面を回収して構造を解析できれば大きな収穫になる…ウリエルは即時破壊を訴えるじゃろうがな」

 

一人部屋に残されたポラリスは頬図絵をついて呟いた。

 

久しくウリエルから頼まれていた神祖の仮面の調査。長らく難航していたが今回ようやくその一つの在り処を特定できた。

 

このチャンス、逃すわけにはいかない。ガルドラボークも言っていたがポラリス自身も仮面を解析すれば更なる兵器の開発につながるかもしれないのだ。

 

ウリエルは快く思わないだろうが、情報を蓄積させておくに越したことはない。それに、いざとなれば現魔王たちとの交渉材料にも使える。

 

こんな重要な任務、彼女にとってイレブン以外に任せられる者はいない。

 

「それと…ドレイクにもそろそろ動いてもらわねばな」

 

意味深な笑みを深めて、彼女はカップに注いだ紅茶を啜った。

 

〈BGM終了〉




悠河が聖剣使いの因子を持っていたら滅茶苦茶エクスカリバーの7つの能力を使いこなしてそう。さあ、次回はオリ展開です。

次回、「怒れる銃口」

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