ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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大変長らくお待たせいたしました。ひと段落ついたのでちょこちょこ更新を再開しようと思います。

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第127話 「見出し、誤解、やばし」

翌朝、朝日が昇り照らす団地の中を登校中の俺とゼノヴィアは歩く。話題は当然、昨日の記者会見のことだった。

 

「昨日はお疲れだったな」

 

「ああ、私もこういう経験は初めてだからね。最初はどうすればいいかわからなくなってしまったよ」

 

会見が終わって彼女が帰って来たのは深夜も深夜、俺が寝た後だった。朝になり疲れ切った彼女がぎりぎりの時間に起きれば今度は朝食、学校の準備とドタバタし、登校時間にようやく昨日のことをゆっくり話せるようになったのだ。

 

「でも、受け答えはいつも通りの感じでよかったぞ」

 

「ありがとう。でも、私はいいが問題は…」

 

話している間に兵藤の家の前を通りかかると、ちょうど兵藤が慌てて家から出てきたところだった。こちらが声をかけるよりも早く、兵藤の方が気づいてこちらに駆け寄って来た。

 

「よっ、深海。昨日のテレビは見たか?」

 

「ぶちゅう」

 

「いや違うんだよ!部長って言おうとしたら向こうが勝手に!!」

 

その一言で兵藤は慌てふためく。ことの発端は記者の質問だった。おっぱいドラゴンとして知られる兵藤に記者の一人が、「今回もリアス姫の胸をつつくのか」という質問をぶつけたのだ。

 

会見に慣れない兵藤は緊張と、普段からリアス姫を部長と呼んでいることもあり部長と発言しようとしたところなんと、記者に「ぶちゅう」という言葉に聞き違えられてしまったのだ。なんともおかしな聞き間違いだが、そもそも兵藤が彼女のことを部長呼びしていることまで知っている記者はいなかっただろう。

 

それはつつくのではなく胸を吸うのか、吸ったら何が起こるのかとたちまちに部長さんはもちろんサイラオーグすら巻き込む記者たちの興奮と質問の嵐が巻き起こり、画面の前の俺と紫藤さんもこれにはたまらず笑うしかなかった。

 

「へぇ…」

 

「まじだかんな!!」

 

「わかったわかった、昨日は紫藤さんと一緒に見たよ。普段とは違う緊張をした皆が見れて面白かったぞ」

 

グレモリーはもちろん、サイラオーグの眷属メンバーも一名を除いて勢揃いし、試合に向けたそれぞれの意気込みを集まった大勢の記者たちの前で語った。兵藤はもちろんアーシアさんなどこういった場が初めてのメンバーも多いので、さぞみんな緊張したことだろう。

 

俺は本当に行かなくてよかったと思う。緊張のあまり変なことを言ってしまうかもしれないから。

 

「はぁ…これがでかでかと新聞の見出しに載るんだしよ…」

 

と、兵藤はげんなりと息をつく。おっぱいドラゴンなんて名前つけられて今更だと思うのは俺だけか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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放課後、部室に集まったオカ研メンバーはその人が来るのを待つ。

 

「よっし、お待たせ。そろそろミーティングすっぞ」

 

がちゃりと扉を開けて入って来たアザゼル先生が手を叩いてみんなの注目を集める。

 

そう、俺たちが集まったのは学祭の準備もだが、同時に迫っているバアル戦に備えてのミーティングもあるからだ。学祭の準備とバアル戦に向けてのトレーニング、この二つのイベントを前に俺たちは大忙しの大忙しだ。

 

先生は奥の部長卓にずかずかと腰を掛けると、両手を組んだ。ドアを開け放った時の軽口をたたいた飄々とした表情が一転して神妙なものに変わる。

 

「ゲームのミーティング前に、お前らに英雄派の動向について色々話しておかなければならないことがある」

 

「英雄派だと?」

 

「曹操の奴らか…」

 

と、表情を険しくするゼノヴィアと兵藤。特に俺たち二年組にとっては楽しい修学旅行に面倒ごとを持ち込んできた嫌な相手だ。

 

「今度は何を企んでんだ?」

 

京都の戦いからそう日は経っていない。またあれだけの事件を起こすほどの力は戻っていないと思いたいが、懲りずにまだ悪だくみをしているというのか。

 

先生は面倒極まりないという感情をはっきり表に出しながら、開口一番に意外な言葉を口にする。

 

「どうやら最近、一般人の神器所有者や転生悪魔の神器所有者を探し出してはそいつらに禁手に至る方法を教え始めているそうだ」

 

「禁手に至る方法!?」

 

「どうしてそんな…」

 

俺はもちろんのこと、アーシアさんたち神器所有者組は特に驚きと困惑の入り混じった表情を見せた。

 

禁手に至る方法なんてあいつらからすれば苦難の末にようやく見つけ出した研究成果だろうに、どうしてそれを易々と流布するような真似をするのだろうか。

 

「一般人が禁手と言う強大な力を手に入れたら何が起こるか…知っての通り、神器所有者は往々にして迫害を受けたりする負のパターンが多い。神器を保持した転生悪魔は道具のように取引され、人間を見下す上級悪魔に不当な扱いを受ける。誰もかれもがリアスのように情のある悪魔じゃねえ、イッセー、アーシア、木場、ギャスパー。お前らは本当にラッキーなんだよ」

 

「すべての悪魔が良心的ではないもの。本来、悪魔は合理的な思考をする生き物よ。人間界の文化を取り入れ始めたと言っても、まだ精神的な面では依然変わらない悪魔は多い。当然、眷属に理不尽な待遇を強いる者もね」

 

部長さんの言う通り、文化が変化しつつあるとはいえ特に上級悪魔に深く根付いた精神の変化は浅い。魔力や長寿と言った優れた能力を持っているがゆえに能力的に劣る人間という種族を見下し、蔑む悪魔はたくさんいる。

 

それが如実に表れているのが眷属悪魔の待遇だ。過度な労働、パワハラ、強化のための人体実験、人身売買じみた眷属のトレード。そういった思想を持つ上層部や貴族が圧力をかけているのか公に取りざたされることは少ないが、転生悪魔のはぐれ悪魔の中にかつて逃げ出した主からの仕打ちを訴える者は数多いのだ。

 

悪魔の駒という画期的なシステムが生んだ光がレーティングゲームなら、これらの問題は闇と言えよう。

 

「理不尽な目にあわされてきた所有者が、禁手という大きな力を手にしたらどうなるか…わかるか?」

 

「抑圧してきた者たちへの復讐ですか」

 

真っ先に答えたのは木場だった。彼もまた、神器ではないにせよ特別な力のための実験で辛い目に遭い、復讐に走った過去がある。一番に理解できたのは必然とも言えた。

 

「そうだ、既に何件か起こったみたいだ。悪魔なら主への反逆、人間なら迫害してきた者への復讐にな」

 

「…つまり、神器使いたちの心の闇を利用した嫌がらせというわけね」

 

「まったく、してやられたってわけだ。サーゼクスたちは今頃頭を抱えているだろう。こんな方法で俺たちに嫌がらせしてくるたぁな…人間の恐ろしさってやつを改めて思い知ったよ」

 

先生は事態の深刻さを表すように深くため息をついた。

 

この問題に対処するのは正直、俺たちでは不可能だ。一件一件鎮圧したとしても、神器使いの迫害の問題が解決しない限りは必ず後に続き暴走する者が現れてしまう。よくもまあ、曹操はとんでもない作戦を思いついたものだ。

 

だがこれは逆に利用できるはずだ。

 

「先生、逆にその方法でこちらの陣営の神器所有者を強化できないでしょうか?」

 

「!」

 

「そうか!アーシアとギャスパーも禁手が使えるようになればもっと心強くなるな!」

 

「私もイッセーさんと同じバランスブレイカーに…?」

 

「ぼ、僕も大活躍できるんですか!?」

 

俺は早速我ながら妙案だと思いながらも提案する。時間停止ができるギャスパー君と、強力な回復能力を持つアーシアさん。今後激化するであろう戦いにおいて前線に立つ俺たちだけでなくサポート側の二人のパワーアップは必須ともいえる。

 

だが先生は渋い顔をして首を横に振った。

 

「だめだ。俺も同じことを考えたさ。だが奴らが神器のセンシティブな部分に踏み込んで編み出した方法なんて危険すぎる」

 

「ですよね…」

 

盛り上がりかけた雰囲気が一気に静まる。

 

先生の言うことはもっともだ。神器に一番詳しい先生に言われたら反論のしようもない。ひょっとすると、と思ったのだがやはり地道に強くなるしかないみたいだ。

 

「それともう一つ、どうにもあいつらは世界各地で偉人にちなんだ品々を収集しているらしい」

 

「はぁ?」

 

「どういうこと?」

 

思いもよらない奴らの動向に皆の頭に一斉にクエスチョンマークが浮かび上がる。テロに精を出す傍らでコレクター活動も始めたのだろうか。

 

「奴ら、英雄じゃなくて泥棒を目指すのか?」

 

「さあな、これについては俺もどういう目的があっての行動か皆目見当もつかん。ただ、入手経路は盗みだけじゃなく正式に金銭で購入してるものも多いそうだ。まあ宝石を作る神器があるあいつらは金に困ってないだろうからな。そういう動きがあるとだけ伝えておく」

 

「絶対裏があるに違いないですね」

 

「そっちの活動にも目を光らせた方がいいでしょうね」

 

自ら英雄になるだけじゃなく、過去の英雄に関する品々のコレクション…これからは熱狂的な英雄マニア

と呼称すべきか。

 

「…ま、英雄派の話はこれくらいにしてゲームの話に移ろうか」

 

曹操たちの話ですっかり忘れるところだった。もう本番まで数日だ。ここ最近は特に皆がトレーニングにより熱が入っていくのを間近に感じている。

 

「今回、お前らに俺がついているようにバアル眷属のアドバイザーとして王者ベリアルがついている。正式なゲーム参加を目指すお前らにとっちゃ、避けられねえ壁だ」

 

「王者ベリアル…!」

 

その名に兵藤達グレモリー眷属の表情が引き締まる。レーティングゲーム1位の王者。全プレイヤーの頂に立ち、誰もが渇望する輝かしい栄光を手にするもの。

 

そんな男と間接的に戦うことになるのだ。否応にも気は引き締まる。

 

「そんで、お前ら。ちゃんとバアル眷属のリストはしっかり覚えてきただろうな?」

 

「せんせー、リストもなにも全然知らないんですけどー」

 

「右に同じくですー!」

 

びしっと非転生悪魔の俺と紫藤さん二人で挙手する。俺たちは試合には出ないし顔ぶれも昨日の会見で見たけど、どうせ観戦するなら相手選手の情報もしっかり知っておきたい。

 

「イリナと深海はゲームに参加しねえから渡してないが…せっかくなら軽くおさらいでもしとくか」

 

先生はやれやれとぱらりとカバンから資料を取り出すとばっとテーブルの上に置いた。そこには選手の顔写真と経歴、戦闘スタイルなどが事細かに記載されている。

 

「『王』のサイラオーグは十分知ってるだろうから省略して、まずは『女王』のクイーシャ・アバドンだ。番外の悪魔のアバドン家出身の彼女はアバドン特有のあらゆる攻撃を吸収する『穴』を使う」

 

先生が最初にピックアップしたのは金髪ポニーテールの女性悪魔だった。写真の真っ直ぐな目つきから真面目な性格が窺える。

 

「レーティングゲーム三位のビィディゼと同じ家ですか」

 

「そうだ、流石にビィディゼ・アバドンほどではないにせよ強力な魔力の持ち主だ。『穴』の使い方も卓越していてグラシャラボラス戦では数人の眷属を一気に仕留めていたな」

 

そういえばそんな技を使っていた悪魔がいたな。空間に穴を生み出して攻撃をやり過ごしていたやつ。

最後のサイラオーグとゼファードルの一騎打ちがあまりにもサイラオーグのフィジカルが強すぎてワンサイドゲームになっていた印象が強すぎたので他の眷属悪魔のことが頭に残っていなかった。

 

先生はぱらと資料をめくり、解説は次の選手に移る。今度は西洋の甲冑を着た、騎士という言葉を体現したかのような男だ。

 

「そして『騎士』のベルーガ・フールカス。こいつは地獄の最下層に住まう『青ざめた馬《ペイル・ホース》』を駆って戦う槍使いだ。試合を見るに、鍛え上げられた『騎士』の速度はかなりのレベルだった」

 

「木場よりも騎士してるな」

 

「僕も彼を見た時同じことを思ったよ」

 

兵藤の感想に木場がくすりと苦笑いした。多分兵藤だけじゃなくみんな同じことを思っただろう。鎧に槍、そして馬。まさしく騎士を体現するかのような外見だ。

 

続いて、ライトアーマーを着こなす、金色の長髪が美しい青年。女性受けしそうなルックスの中に、勇ましさを秘めた眼差しが輝く。

 

「もう一人の『騎士』、リーバン・クロセルは神器使いだ。『魔眼の生む枷《グラビティ・ジェイル》』はギャスパーの目のように、視界に収めた空間に重力場を発生させる。視線を意識した戦い方が必要だ」

 

「木場よりも騎士っぽい奴の次は木場っぽいやつが来たぞ」

 

「魔法で目くらましするのが良さそうね」

 

部長さんはもう対策を思いついたようだ。ギャスパー君という似たタイプの神器使いがいる以上相手がどう対処してくるかを考えるのは当然とも言える。

 

そして次は三メートルはある、体も岩のようにごつごつとしており悪魔よりはゴーレムと呼ぶのが相応しい巨大な男。前腕が兵藤のトリアイナ・ルークのように極太だ。

 

「『戦車』のガンドラ・バラム。巨体と怪力は凄まじいが、『戦車』の特色である防御力も相当なもんだ。生半可な攻撃は通らないな」

 

「見た目だけならサイラオーグよりもパワーが強そうね!」

 

「おっかないこの人とは戦いたくないですぅ…」

 

「ギャー君は度胸がまだ足りないね。ニンニクいってみる?」

 

「ひぃ!?」

 

こらこら、ニンニクはニオイがあるんだからやめてくれ。部屋にニオイがこもる。

 

資料をめくり、次なる眷属悪魔を示す。今度はビジネススーツで身を包むも隠し切れない抜群のスタイルによる色気を放つ金髪の美女と、白いローブをかぶった淡いミント色の髪をした小柄な少女だ。少女の右手には赤紫色の禍々しい印象を与える杖が握られている。

 

「『僧侶』のコリアナ・アンドレアルフスとミスティータ・サブノックは両者ともに駒の特性を生かした魔力、魔法攻撃が得意だ。しかし二人とも、神器使いだという情報はないし、これといって特筆すべき点は今のところは見当たらないな。が、今回の試合で隠してきた神器を使ってくるかもしれないな」

 

「…」

 

ちらりと横を見ると、兵藤の視線がコリアナ・アンドレアルフスの画像一点に向いている。その視線と表情にどこか熱といやらしいものを感じたのか。

 

「イッセーさん、エッチなこと考えていませんか?」

 

「えっ!?そ、そんなことない…よ?」

 

アーシアさんの指摘を受けると図星と言わんばかりに兵藤は狼狽えだした。

 

「イッセー君は年上のお姉さんが好みなのね」

 

「…」

 

嬉しそうにする朱乃さんとは反対に、部長さんの表情は冷えていた。いつもなら喜ぶだろうに、どうしたんだろう?

 

「あの気味の悪い杖が神器だったりしてな」

 

「俺もそうじゃないかと思ったが、一般的な魔法の杖だったよ。あのサイラオーグの眷属だ。そう思ってしまうのも無理はない」

 

いかにもって感じだったけどそうじゃないのか。匙の神器も同じようなベクトルのデザインだったからついそう思った。

 

次に紹介されたのはひょろっとした長身が特徴の中年の男。見た目だけなら一番力なく、弱そうにも見えるが。

 

「そしてもう一人、『戦車』のラードラ・ブネはドラゴンを司るブネ家の末裔だ。ブネ家の悪魔はドラゴンに変化する能力を持っているが、それを使ったというデータはない。隠し玉にしているのか、あるいは使えないのか…。後者なら試合に向けて会得し、今回の試合で披露してくる可能性は大いにある」

 

資料をぱらぱらとめくるロスヴァイセ先生は何かに気付いたように発言する。

 

「アバドン以外の悪魔はみんな元七十二柱の悪魔なんですね」

 

「そうだな。元七十二柱一位の大王バアルらしいといえばそうだが、どいつも鍛錬と血筋が合わさって強者ぞろいだ」

 

元七十二柱の悪魔を率いる大王。そしてそのアドバイザーを務めるのもゲームの王者。そう言ってみると、なんとも強大な相手に感じる。

 

最後の一枚に載っているのは仮面をかぶっている以外は目立つ特徴のない少年悪魔だ。しかしこれまでの悪魔と違い、形式ばった証明写真のような顔写真一枚しかデータがない。

 

「最後の一人は、どの試合にも出ていませんでしたね」

 

「昨日の会見にもいなかったぞ」

 

「記者に質問もされたけど、彼にしては珍しくごくあいまいな答えしか返さなかったね」

 

「そうだ。こいつに至ってはほぼ一切の情報が不明、駒の数は6か7だという噂だ。記録映像もなく、どうやらサイラオーグはこの兵士と外部との接触を避けているらしい。虎の子といったところか。こいつには特段注意が必要だな」

 

「6か7!?」

 

「兵士の駒をそこまで消費する悪魔なんて、きっと何かありますね」

 

駒の数に驚愕する兵藤とロスヴァイセさん。龍王ヴリトラの力を封じた神器を持つ匙ですら駒4つを消費したのだ。それ以上ともなれば…

 

「駒の数が6か7…一体、どれほどの力を持っているのでしょうね」

 

「使った駒の数ならイッセーの勝ちだぞ」

 

「いや、駒の数で勝負なら誰もイッセー君には勝てないよ…」

 

そんなルールならみんな兵士を一人だけにしてしまうだろ。そうなったらいよいよ兵士8人体制のライザーが色物扱いされるぞ。

 

「サイラオーグも含めて、全員悪魔にしては珍しい修行をするタイプの悪魔だ。自分の血統に胡坐をかかず、研鑽を怠らない。お前らのように禍の団の戦いにも参加していて実戦経験もある。グラシャラボラス戦で見せてない能力もあるだろうし、資料に記載されたスペックの数段上は本番で発揮してくると考えておいた方がいい」

 

先生はそう言うが、実際のところ修行しないのではなく、厳密にいえば修行する必要がないのだろう。ライザーやディオドラのように修行せずとも生まれつき強力な魔力があるから自分を磨く必要がない。ディオドラはきっと修行する俺たちに勝ちたいが、かといって泥臭く修行するのをめんどくさがってオーフィスの蛇に手を出したんだろうな。

 

「ちなみにですけど、俺たちが将来的にゲームに正式参戦したとして王者と当たる可能性ってありますか?先生の目測でいいので、聞いてみたいです」

 

と、兵藤は率直な疑問を先生に投げかけた。

 

「十分あると思うぜ。何せサイラオーグも含めて異例尽くしの若手世代だ。参戦前から世界クラスの強敵とやり合ってきて、なおかつ全員生き残って来た。運もあるが、俺は実力が大きいと思っている。お前らならトップテン入りは時間の問題だろうよ」

 

お、身内びいきもあるかもしれないがそこまで兵藤達のことを評価しているとは。というよりは贔屓がなくともこれだけの実戦経験があれば誰でもそう評価するか。

 

「当然だが、その分お前らは注目されている。現トップランカーも今回の試合でいよいよ将来的にお前たちと戦うことを想定して研究し始めるだろう。いい傾向だと思うぜ。あまり変動せず、面子が変わらない上位ランキングが動くかもしれないんだからな。お前らの先生としても、ゲームの一ファンとしても、お前ら若手が上位に食い込む日が来ると思うとワクワクするぜ」

 

対グレモリーの対策を練られるとかなり厳しいのではないだろうか。特にうちはパワーでゴリ押しするタイプが多いから搦め手を使ってくる相手が苦手だと以前先生から評されたこともある。実際、シトリー戦では部長さんの性格を織り込んだ策に嵌り敗北したのだから。

 

ただ、それを込みで考えても上位陣が警戒するだけのパワーを秘めていることには違いない。先生はそこに希望を見出しているのだろう。

 

「お前らなら、レーティングゲームの環境を変えてくれると信じてるよ」

 

先生は一人のファンとして、まだ見ぬ未来への期待と希望に満ちた眼差しを称えながらニヤリとほほ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ミーティングが終わると、休む間もなく学園祭の催し物の準備が始まる。俺たち男組は今日も力仕事だといつもの空き教室への移動をしようと腰を上げる。

 

ふと、部長さんを見やる。ぱらりとレーティングゲームの資料に目を通している彼女だが、どうにも普段よりも表情が硬い。試合が近いから緊張しているのか、だがそれにしては昨日と今日での変化が大きすぎる気もする。

 

不自然なものを感じてならない。絶対に何かある、普段はいまいちな俺の勘がそう強く告げている。

 

「…なあなあ兵藤」

 

「なんだ?」

 

他の人に聞かれまいとひそひそ声で兵藤に話しかける。同居しているこいつなら何か知っているだろう。

 

「部長さん、今日はご機嫌斜めみたいだが…何か知っているか?」

 

「いや…それが俺にもさっぱりなんだよ。昨日の風呂での出来事からさ」

 

兵藤は眉をひそめて首をかしげる。

 

「風呂?」

 

風呂…関係がこじれる…それはつまり…。

 

「…もしかして、初体験でやらかした?」

 

「ちげぇよ!どことなーくそれっぽい雰囲気だったかもしれないけど!」

 

なんだ、てっきり初体験が上手くいかなくて部長さんに痛い思いさせてしまったのかと思ったが。そうじゃなくてもそれっぽい雰囲気にはなっていたんだな、なるほど。

 

「なんか、よくわかんないことを言ってたんだ」

 

「…それは」

 

いよいよ核心に入ろうかというところに水を差すように、携帯電話の着信音が鳴りだす。リズムに乗れるようなEDM調の着信音はコブラケータイのものだ。

 

「深海くんの携帯の着信音って週一で変わってるよね」

 

「色んな着信音を聴けた方が楽しいからな」

 

実はポラリスさんのスキエンティアから色んなライダーの変身待機音を頂戴してコブラケータイに入れている。今回は仮面ライダーウォズ ギンガファイナリーの変身待機音だ。

 

普段、俺はスマホとコブラケータイと二つの携帯電話を所持し、使い分けている。スマホは学校や日常用、しかし今回コブラケータイの方にかかってきたということは異形関係だ。

 

如何なる用件かと怪訝に思いながら携帯を開いてみれば、通話をかけてきたのはなんとポラリスさんだった。流石にこの場で通話に応じるわけにはいかない。

 

「悪い、ちょっと離れる」

 

「おう」

 

断りを入れ、かつかつと足早に部屋から去る。部屋を出たところで壁に背を預け、通話に出た。

 

「こんなタイミングでどうしたんだよ」

 

『すまぬ、ついさっき色々あってな。ちょいと話しておこうかと思ったのじゃよ』

 

通話に出ると、しばらくぶりにポラリスさんの声が耳に入った。が、最後に聞いた時と比べるとやや疲れ気味の様子だ。

 

「どうした」

 

『つい昨日、ヴァーリチームの襲撃に遭った』

 

「…はぁ!?」

 

思わぬ返答につい声を出してしまう。以前、ディオドラの事件で次元の狭間にNOAHがあることを認知したヴァーリチームだが、一体どういう流れでそうなったのか。興味本位で乗り込んで喧嘩でも吹っ掛けたのだろうか。

 

『どうにか撃退し記憶を消去して送り返したが覇龍を使われてな。おかげで船はボロボロじゃよ。まだ修理に時間がかかりそうじゃ』

 

「…そうか。というか、あんた覇龍をどうにかできるのか」

 

『当然じゃろう、覇龍をどうにかできぬようでは神を討ち滅ぼすなど夢のまた夢じゃよ。しかし、先に取り巻き達をのしたことで彼の怒りに火をつけて派手に暴れられてしまったがの』

 

「それはあんたの戦い方が悪い…って、あいつもそういう面があるんだな」

 

仲間がやられて熱くなるという今まで彼と接した中で見ることのなかった仲間想いな一面にほんのちょっとだけ感心した。それでもあいつはテロリストだからな。認めたわけじゃない。

 

『おぬしの報告を受けた時からこうなることは予想していたが…現時点での奴の力を図るいい機会になったよ。例の兵器も実戦投入できたことだしのう』

 

「例の兵器?」

 

『おっと口が滑ったわい。近々おぬしにも紹介するとしようかの』

 

「…はぁ」

 

前々から話に上がっていたテスター関係のことだろうか。どうして秘密にしたがるのか気になるところだが。

 

『というわけで、しばらくは船の修復に注力せねばならん。当面妾もイレブンも、おぬしらの稽古に構ってやることはできぬ。許せ』

 

「わかった…なあ、最近働きすぎてないか?時々そっちに行っても顔を見れないときもあるし、ちゃんと休んでるか?」

 

『休む間なんてあるわけないじゃろ。薬と魔法で騙し騙しやっておるわい。一秒も惜しいくらいじゃ』

 

思った以上に深刻なレベルに達していた。マジで大丈夫なのこの人。

 

『妾が踏ん張らねば計画の根幹は完成せず、全ての計画は泡沫に帰す。休むわけにはいかんのじゃよ。これは妾にしかできぬことなのじゃ』

 

「…そうか、体は大事にしてくれよ」

 

どんな状況でも休まないと人間ぶっ壊れるからな。適度な休息が作業効率の上昇にも繋がるというもの。

今度会った時には差し入れでも用意しよう。

 

『はぁ…学園生活を楽しめるおぬしらが羨ましいわい。濃密に詰まったスケジュールに目の前に山積の課題。いつになったら妾は楽になれるのじゃろうな』

 

「…」

 

深刻そうなため息をつくポラリスさんに俺はかける言葉もなかった。どうにか彼女の負担を軽減することはできないだろうか。

 

『…ああ、愚痴に付き合わせてすまぬな。これからやることがある、通話を切るぞ』

 

「本当に体を大事にしてくれよ」

 

『お人好しじゃのう、おぬしも』

 

くすりと笑うような声を最後に、通話が終わる。彼女が苦労から解放されることを願うばかりだ。

 

「イッセーの馬鹿ッ!!!」

 

「!!?」

 

それと同時に、なじるような叫び声が聞こえた。何が起こったのかと思うよりも先にばたんと部室のドアが勢いよく開けられ、部長さんが飛び出した。

 

「…!ッ!!」

 

目と目が合い、びっくりしたのも一瞬。そのまま今にも泣きだしそうな表情で廊下の奥へと走り去ってしまった。

 

とりあえず状況を探ろうと恐る恐る、部室を覗く。

 

咎めるような視線、兵藤だけが、俺と同じように状況を理解できずただただ困惑している様子だった。

 

「…何があった?」

 




ゼノヴィア「仮面ライダーデュランダルというのが出たと聞いたんだが…」

悠「青だしお前にぴったりだと思ったら聖剣じゃなくて聖槍使いじゃねえか」

曹操「呼んだかな」

悠&ゼノヴィア「「呼んでない」」

次回、「走る亀裂」
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