Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
13.フーディーニ
〈BGM:アポリアの合体(遊戯王ファイブディーズ)〉
「はっ!」
振るわれるジークルーネの剣閃、横一文字に綺麗に描かれたそれを上体をそらして躱す。
ジークルーネの攻撃は激しかった。その一撃一撃に彼女のロキへの忠義、そしてそれを討った俺たちへの怒りが込められており、強い思いが込められた分一撃が重い。
こちらに何もさせない、息もつかせぬ怒涛の剣戟の暴風雨に対し、それを受けるのに防戦一方になっていく。
力強く振り下ろされた上段斬りをガンガンハンドで受け止める。がしんと剣の重みが衝撃と共にガンガンハンドから拳に伝わり、やや痺れを感じた。
そしてジークルーネは思いがけない攻撃を繰り出す。剣を叩きつけたまま、俺の腹に突き刺すような蹴りを叩きこんだのだ。
「ごふ!」
蹴りの勢いのままに後退する俺にジークルーネは追い打ちをかける。滑り込むように懐に潜り込むと、俺が右手に握るガンガンハンドに剣戟を入れ、弾き飛ばした。
「なにっ」
「はぁぁ!!」
手元から離れたガンガンハンドに意識を一瞬奪われる。その隙に、ジークルーネは俺の胴に袈裟切りの連撃をこれでもかと放つ。
「おわっ!」
その勢いに押され、やや湿り気のある地面を転がってしまう。変身しているおかげで俺の生身を切られずに済んだか、衝撃で地味にひりひりと痛む。
「まだだ!」
地に尻をつける俺にジークルーネが剣を振り上げて果敢に飛び掛かる。慌てて横に転がるように回避し、体勢を整えて飛び退って距離を取る。
「今度は魔法で貴様を消し飛ばす!」
剣技で俺を追い詰めたジークルーネの次なる手は魔法だった。周囲に次々に魔方陣を展開していく。おそらくロスヴァイセ先生と同じ魔法のフルバーストで勝負を決めるつもりだろう。
それならこちらも対抗策がある。
〔カイガン!ニュートン!リンゴが落下!引き寄せまっか!〕
こちらがニュートン魂に変身したのと同時にジークルーネは魔方陣からロスヴァイセ先生のように各属性のフルバーストを放出する。試合や渡月橋での戦いでロスヴァイセ先生が放ったのを見たが、それを受ける側に回るのは初めてだ。
だが、それを受けるつもりは毛頭ない。
〔ダイカイガン!ニュートン!オメガドライブ!〕
「はっ」
オメガドライブにより増幅した霊力を右手のグローブに集中、炎、雷、氷、風とあらゆる属性を網羅したフルバーストに右手のリパルショングローブから斥力フィールドを放ち、ぶつける。
「ぬぉぉぉぉぉ…!!」
雪崩のように押し寄せる魔法、気を抜けば押しつぶされそうな威力にこちらは唸りながら全力で霊力を解放する。強大な斥力に阻まれた怒涛の魔法は徐々に勢いを削られ、殺され、やがて消失する。この結果にジークルーネは目を見開いて驚いた。
「なに!?」
そして今度は左手のアトラクショングローブから引力を放ち、ジークルーネをこちらの間合いにぐいんと一気に引き寄せる。
「渾身の一発だ!」
「ぐ!」
引き寄せたジークルーネを斥力フィールドで吹き飛ばすのではなく、グローブで直に右ストレートを放って殴り飛ばす。本来格闘戦には向いていない特殊能力型のフォームだが、それでも常人のパンチの数倍以上の威力は出る。土煙を巻き上げながら奴は横転していった。
「ハァ…結界は得意かもしれないが…攻撃魔法はあまり得意じゃないみたいだな」
さっきのフルバーストも試合で見たロスヴァイセ先生のほうが魔法の数、威力で圧倒的に勝っていた。もしジークルーネのフルバーストがロスヴァイセ先生と同等であれば、もっと粘っただろうし場合によっては押し負けたかもしれない。
「…貴様ァ!」
ジークルーネは鬼の形相で俺を睨んでくる。完全に冷静さを失っているな。
〈BGM終了〉
「よし、お前の番だ」
ふと俺が取り出したのは黄色い眼魂、エジソン眼魂だ。ロキ戦以降手元に渡ったがプライムスペクターの力もに手にしたこともあって単体で使うことがなかった。せっかくなので使ってみるとしよう。
〔アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!〕
早速ベルトの眼魂と取り換え、ゴーストチェンジする。
〔カイガン!エジソン!エレキ!ヒラメキ!発明王〕!
銀色に袖が黄色く縁どられたパーカーゴーストを纏い変身完了する。両肩に黄色い電球のような装置が取り付けられており、頭部のヴァリアスバイザーには電球の模様が浮かび上がる。
仮面ライダースペクター エジソン魂。電球などを発明した発明王と呼ばれるトーマス・エジソンの力を宿すフォームである。
右手にガンガンセイバー ガンモードを召喚し、次なる攻撃に備える。
〈挿入歌:GIANT STEP(仮面ライダーフォーゼ)〉
「私の魔法を打ち消したからと…思い上がるなぁ!」
激昂したジークルーネが吼え、再び剣を握って切りかかってくる。それにこちらは牽制の銃撃を放つ。当然、エジソン魂という電気を操るフォームであるゆえに、雷属性が付与されている。
当然、それを俊敏に回避しながら奴は向かってくる。鎧という重量ある物を装着しながら軽々と動いて見せたのは彼女の鍛錬のたまものなのだろう。
そして間合いに踏み込んできた彼女の剣戟。怒りを込めた一閃をガンガンセイバーの銃身でがきんと受け止め、無防備な彼女の腹に電撃を纏わせた掌底打ちを見舞う。夏の合宿で学んだ八極拳の要領で放った一撃のため、その威力がずんと電撃と共に彼女の腹を突き抜ける。
「うぅっ!」
彼女が転がる間にガンガンハンドを拾い上げ、銃モードに変形させて右手のガンガンセイバーと合わせて二丁拳銃にする。かなり右と左の銃のサイズのバランスがおかしいことになっているが。
〔ダイカイガン!ガンガンミロー!ガンガンミロー!〕
そして左手のガンガンハンドをドライバーにかざしてアイコンタクト、必殺待機状態に移行し増大した痺れる雷の霊力がガンガンハンドの銃口に集まっていく。
「!」
流石のジークルーネもこれはまずいと慌てて大きな防御魔方陣を展開する。よくわからない文字が所狭しと並んでおり、かなり強固なものに見える。
当然、二丁拳銃というからには片方の銃だけしか使わないということはあり得ない。ガンガンセイバーもドライバーにかざし、ダイカイガンを発動させる。
〔ダイカイガン!オメガシュート!〕
〔オメガスパーク!〕
黄色い霊力の魔方陣から溢れ出したエネルギーを銃口に収束させ、トリガーを引くと同時にジークルーネめがけて解放する。二丁の銃口から強力な雷を帯びたビームと見まがうような激しく眩い霊力が一斉に放出され、魔方陣に激突する。
弾ける電撃があちこちに飛び散り、地面を焼き焦がす。拮抗の末、光が一際明るくなると、派手な爆発を起こして俺の攻撃は一度終わりを迎える。
〔ダイカイガン!エジソン!〕
さっきの攻撃は前座だ。前座にしては少し霊力を派手に消費したが、この一撃で決める。
濃密な煙が充満し、視界を覆う中で邪魔な二振りの武器をドライバーに戻すと本日四度目のオメガドライブを発動、大地を蹴り空高く跳躍して煙幕から抜け出る。
「邪魔だ!…いないだと!」
地面を見下ろすと防御魔方陣を一旦解いたジークルーネが風魔法で煙を払うも、消えた俺の姿にどこだどこだと首をあちこちに振り探す。そして首を上方に向けてようやくこちらの存在に気付いた。
だがもう遅い、この瞬間に勝負は決まった。
「そんな!」
「はぁぁぁぁ!!」
〔オメガドライブ!〕
激しく消耗したところに痛烈な二撃目。霊力を纏った飛び蹴りをジークルーネに見舞う。
「ぐあっ!!」
蹴りを受けた彼女は地面を平行に数mは吹っ飛び、やがて土にまみれながら横転する。
すたっと着地して蹴り飛ばした彼女を見ると、額から血が流れ、その綺麗な顔が土と血に汚れている。ヴァルキリーの鎧も破損しボロボロになってしまっており、肩で息をしており消耗も激しい。
勝負あったな。ロキの側近というだけあって手こずりはしたが、どうにか対処できた。
〈挿入歌終了〉
「…さあ、大人しくお縄についてもらおうか」
これ以上時間をかけていられない。大会関係者に連絡しようかとコブラケータイを取り出したその時だった。
急にジークルーネの背後の空間がバチバチと弾けるような電気を放ちながら歪み、そこから男が勢いよく飛び出してきた。
「ふうっ…ラファエルめ、あんな結界を用意していたとは」
「アルギス…!」
地に片膝をついて着地し、額の汗を拭い息を吐く男は間違いなく、アルルの配下であるアルギス・アンドロマリウスであった。対面するのは若手悪魔のパーティー以来だが、ロキ戦にも姿を現していたと聞いている。
こちらに気付いたアルギスは一瞬視線をこちらにやると、すぐに足元のジークルーネへとくすりと笑いながら移す。
「おや…意気揚々と彼を討つと宣った割には手こずってるみたいじゃないですか。まあ最初から彼を倒せるとは微塵も思っていませんが」
「そういう貴様こそ、失敗したようじゃないか」
「レーティングゲームのフィールドにアルル様の助力を得れば侵入できると踏んでいましたが、まさかラファエルが従来のフィールドの術式に手を加えてさらなる結界を張っていたとは予想もできなかったのでね。時間と力を無駄に消費すると踏んであなたの方へ行ったのですが」
血と土にまみれながらもなお輝きを失わないジークルーネの研磨された刃のように鋭い眼差しに奴はわざとらしく肩をすくめる。
「なに…?」
こいつ、レーティングゲームのフィールドに侵入しようとしていたのか?だとしたら、さっきのアンドレアルフスとの第三試合は非常に危なかったのでは?ストリップショーで完全に周囲に対しては不注意になっていたし、あの状態で襲撃されたらまず間違いなく…。
「兵藤一誠がサイラオーグとぶつかる前に潰したかったんですが…こうなった以上は仕方ありません。あなたの首だけでも持ち帰るとしましょう」
「はっ、パワーアップしてるのはこっちも同じだ。前のようにはいかないぞ」
「ならば、私の新たな力を披露しましょう」
アルギスが妖艶な手つきで腰を撫でると発光し、信じられないことにゴーストドライバーが現れた。形状も何もかもが今俺が腰に巻いているものと同じだ。
「なんだと…」
どうして奴が俺と同じゴーストドライバーを持っているのか。それはこの世界ではあの駄女神の特典を受け取った俺だけが持っているはず。
ありえないと驚く俺をよそにアルギスは黒と白の眼魂を起動させると、カバーを開いたドライバーに差し込んだ。
するとドライバーから黒地に白いラインの入ったパーカーゴーストが出現し、夜のとばりが下りた森をに飛び回る。いつもはこちらが出現させる側だったのでかなり新鮮な絵面だ。
〔アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!〕
「変身」
俺の反応を楽しむように口角を上げるアルギスは、ドライバーのレバーを押し込んだ。
〔カイガン!ダークライダー!闇の力!悪い奴ら!〕
ドライバーから溢れ出した霊力が強化スーツとなって奴の体を覆い、その上にパーカーゴーストが覆いかぶさる。
全身に骨のような白いラインが走り、胸部には赤い一つ目の紋章が妖しく輝く。一本角のアンテナを生やす頭部の『ヴァリアスバイザー』には鬼火と蝙蝠の翼が混ざったような模様が浮かんでいる。
奴の姿はまさしく、仮面ライダーゴーストの原作において天空寺タケルたちと敵対したアルゴスが変身した仮面ライダーダークゴーストのものだ。
「ばかな…どうして、お前がそのベルトを…」
眼前の信じられない光景に驚愕しながらも、絞り出すように言葉を吐く。アルギスは俺の反応を心底愉快そうにふふと笑い答えた。
「ふっ、アルル様が力を回復されたことでその権能もパワーアップしましてね。あなたがネクロムスペクターになったときにネクロム眼魂を通して得たゴーストドライバーと眼魂のデータを使い、ドライバーを新規で創造できるようになったのですよ」
「なら…やはりお前たちと曹操は!」
「想像通りですよ。さあ、始めましょうか」
〈BGM:アンチノミーのテーマ(遊戯王ファイブディーズ)〉
その言葉を皮切りに、第二ラウンドが始まる。
さっと駆け出すアルギスはあいさつ代わりの右ストレートを放ってくる。それを咄嗟に顔を横にそらして躱して拳を叩き落とし、拳を突き出す。
「ふん」
胸部にヒット、しかし奴は動じない。俺の拳をばっと素早い手の所作で払い飛ばして今度は俺の胸に強烈なパンチを打ち込んできた。
「ごはっ!」
よろめく俺。そして次に来るのは突き刺すような鋭いハイキックが腹に炸裂して、地面を横転していく。
「くそ」
初動で俺を圧倒してきた。やはり断絶した家とは言っても上級悪魔の血を引く悪魔だ。決して油断はできない。
「ふふ…」
悠然とこちらに歩みを進めながら、奴はガンガンセイバー ブレードモードを召喚する。
〔カイガン!ヒミコ!未来を予告!邪馬台国!〕
対するこちらはヒミコ魂に変身し、ガンガンセイバーをナギナタモードに変形させる。悪魔にとって必殺の効果を持つ聖なる炎を使えるこのフォームなら戦闘を有利に運べるはず。
「ふっ!」
こちらの間合いに入って来たダークゴーストがガンガンセイバーを振るう。それをナギナタで受け止め、返す刃で切り返す。
しかし斬撃を受けてもものともしないダークゴーストはこちらの顔面に拳打を繰り出してカウンターしてきた。
「ぬぁ!」
よろめく俺に奴は追い打ちにとハイキックをかまし、ジークルーネとの交戦でところどころ焼き焦げた地面を転がされる。
追い打ちはまだ終わらない。今度はガンガンセイバーをガンモードに変えると倒れた俺に無慈悲に銃撃を連射してきた。
「ぐぁぁ!」
「ははっ!」
立ち上がろうとする俺を力づくで地面に押し付ける雨のように弾丸が降り注ぐ。アルギスは加虐の喜びに浸りながらもこちらに容赦なく銃撃を浴びせてくる。
「このままッ…やられると思うな!」
銃撃を受けながらも意地でどうにか手をアルギスへ突き出し、邪悪を焼き焦がす聖なる炎を勢いよく放出する。
「おっと!」
これには流石のアルギスも驚いたらしく、ステップを踏んで空を舐めるような炎の舌を躱した。
「うおお!!」
その瞬間、銃撃の雨が止む。これを逃してはならないと力を振り絞って立ち上がり、アルギスに聖なる炎を纏ったナギナタの一閃を放つ。それも奴は最初の格闘戦のように攻撃を受けるのではなく、地面を蹴って跳躍、距離を取ることで躱した。
「今…躱したな」
「はい?」
「躱したってことは…喰らったらまずいってことだろうが!」
変身して攻撃が生身に直接届かない状態でも、この炎は奴にとって喰らえばまずい攻撃だということだ。そうでないならわざわざ躱したりしないはず。
〔ダイカイガン!ヒミコ!オメガドライブ!〕
一気に深手を負わせんとオメガドライブを発動させて高めた霊力を刃に纏わせて振るい抜き、膨大な聖なる炎の波を繰り出す。
邪なるものの一切合切を焼き尽くさんとする神聖な炎の分厚い波が、アルギス目掛けて押し寄せる。
「そんなもので私を倒せるとでも?」
しかしアルギスは依然として冷静さを保ったまま、ブレードモードにしたガンガンセイバーをドライバーにかざした。
〔ダイカイガン!ガンガンミナー!ガンガンミナー!〕
魔方陣からあふれる白い霊力と奴自身の魔力が合わさり、ガンガンセイバーに宿る。その力を高めるようにガンガンセイバーをくるくると回し、流麗な剣舞を舞うと。
「はぁッ!」
〔オメガブレイク!〕
「なんだと!」
気合と共に一閃。繰り出された強力な斬撃が炎の波をずばんといともたやすく切り裂いてその先にいる俺に威力をそのままに直撃した。直撃と同時に爆発が起こり、大ダメージを負ったその衝撃で眼魂を二つほど宙に投げ出されてしまう。
「うぁ…くっ…!」
どさりと地に倒れこむ俺。今のはかなり痛い攻撃だった。しかも眼魂が…。
「ふっ…どうして同じベルトを使っているのに勝てないのか…わかりますか?」
眼魂を見事にキャッチし、奪ったアルギスがその感覚の余韻に浸るように手慰みながら問いかけてくる。
「ベースが違うからですよ。私は魔王ルシファーが選び抜いた優秀な初代の悪魔たち…元七十二柱の末裔。一方のあなたはただの人間だ。戦闘センスも、魔力も、生まれ持った素養に差がある。同じ神器でも使い手のレベルが違うならこうなって当然です」
「言ってくれるな…!」
〈BGM終了〉
マスクの裏でぷっと口内の血を吐き飛ばす。追いつめられた俺を見て楽しむかのような、お前が勝てるわけがないと遠回しに突きつけるような言い回しが癪に障る。
…いや、そこでイラついてはジークルーネと同じだ。冷静さを失った方が戦いで負ける。常に状況を正確に判断し、最善の手を出すための余裕を持たなければならない。
奴は自分は上級悪魔でお前はただの人間だから勝てるわけがないという。だが、生まれ持った素養で優位に立つ向こうが持ち得ないものがこちらにはある。
「だったらこれで勝負だ!」
ばっと立ち上がり、プライムトリガーを取り出す。こちらには英雄眼魂のフォームチェンジを超えた強化フォームがある。俺一人でダメなら英雄たちの力を一つにしてその差を埋め、奴を倒す!
「させるか」
だがこちらのパワーアップをみすみす許すアルギスではなかった。奴は瞬時に右手から魔力の衝撃波を放ち、俺を吹っ飛ばす。
「うぁっ!」
完全に不意を突かれた形になり、吹っ飛ばされる中でプライムトリガーを手放してしまう。トリガーは地面を滑り、俺との距離ができてしまう。このまま回収に行けばもちろんアルギスはその隙を見逃さないだろう。
〈挿入歌:Wish in the dark(仮面ライダーエグゼイド)〉
「だったら!」
〔アーイ!バッチリミロー!バッチリミロー!〕
地面に伏しながらも眼魂を入れ替える。アルギスにある程度ダメージを与えて隙を作り、その間に回収するしかない。
「ぐはっ!」
唐突にアルギスの足元から我が愛機(一度も運転したことはない)マシンフーディーが地面を突き破るように飛び出すとアルギスに猛烈なバイクアタックをくらわせ、今度はアルギスが地面を横転することとなった。
流石にバイクの衝突は効いたみたいだな。これで効かないなら頑丈すぎるだろといよいよ考え出すところだが。
〔カイガン!フーディーニ!マジいいじゃん!すげえマジシャン!〕
そしてドライバーの操作と共にフーディーががちゃりと開き、中の群青色のパーカーゴーストが姿をさらし俺に覆いかぶさる。そのまま背部のユニットを起動させ、空へと飛び立つ。
このフーディーニ魂で上空から攻撃を仕掛け、一方的に奴を追い詰める。
「…ふっ」
だがアルギスはそれすら予想の範囲内だと言うように嘲笑を漏らし、ばさりと背中から悪魔の羽を生やした。そして大地を強く踏みしめて跳躍、そのまま翼を羽ばたかせて俺のいる空へ舞い上がってくる。
「眼魂の力なくして飛べないあなたと違い、悪魔の私は自前の翼で飛べるのですよ!」
「だったな!」
こちらはガンガンハンド銃モードを召喚して、牽制射撃を行う。それを水中を泳ぐ魚のごとく華麗に躱しながら、アルギスはこちらとの距離を詰めてくる。
滝昇る鯉のようにこちらのもとへ駆け上がったアルギスがガンガンセイバーを振りかざし、ガンガンハンドをスライドさせてロッドモードにして防御する。互いの刃、銃身にコーティングされた霊力がぶつかり合い、スパークを起こす。
鍔迫り合いの最中、背部のユニットにある4つのタイヤ『シュトゥルムローター』からタイトゥンチェーンを射出し、至近距離の奴を絡めとろうとする。
「ぬ」
それを見たアルギスは迷うことなく翼をはためかせ後退する。それを追うチェーンの追撃をセイバーでうまく弾きながら、カウンターで蛇型の魔力を飛ばしてくる。しゅるりとアルギスの手元から、茂みから這いより、獲物を狙う蛇のように猛進する。
「くらうか!」
それに対抗してタイトゥンチェーンを蛇にぐるりと巻きつけると硬く締め付け、限界まで強く締め付けられた魔力はやがて爆散した。
「ははっ…やはり最初に戦った時と比べて強くなりましたね。能力の使い方もうまい。ゼノヴィアよりもあなたの方がエクスカリバーを使えるのでは?」
風が吹き目の前の爆炎が消える。翼をはためかせて爆炎を払ったアルギスは軽く拍手しながらこちらを褒めてくる。
「聖剣が使えなくて残念だよ。エクスカリバーがあったら、お前を叩き切れたのにな」
「その意地だけは変わらないようですね」
おもむろにダークゴーストは更なる眼魂を取り出す。15の英雄眼魂のどれにもその眼魂と同じ色はない。
「それは…」
奴はラメの入った脳紺色の眼魂をドライバーに差し込んだ。
〔アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!〕
するとドライバーから、トリコロールカラーのパーカーゴーストが出現し奴がドライバーのレバーを押し込むのと同時に覆いかぶさる。
〔カイガン!ナポレオン!起こせ革命!それが宿命!〕
赤と金色、さらに深い青の三色の色使い、金色の肩章、そして二角帽が中世ヨーロッパの貴族のごとき高貴さと将軍であったナポレオンの勇猛さを表現している。背中の赤いマントが夜風にはたはたとなびく。
顔面部には二頭の馬と二振りのサーベルの紋章が浮かび上がっている。仮面ライダー ダークゴースト ナポレオン魂だ。
「英雄眼魂までも作れるのか…」
少しも油断できない追い詰められた状況で相手が披露した更なる手に眉をひそめる。
奴がダークゴースト眼魂を用いた時からもしかするとそうではないかという想像をしていたが、やはりそうだったか。できれば当たってほしくなかった。
だがこのフォームは、それを聞いた時からまさかと思っていた可能性を確かにするものでもあった。
「…待てよ。そうか、曹操の最近の動きは!」
近頃、曹操率いる英雄派は世界各地の偉人にまつわる品々を収集しているという。その行動の目的は…。
「そう、彼らにもアルル様が編み出した眼魂創造の技法を教えましてね。最近の彼らの怪盗まがいの行動はそれに必要な材料集めです」
「やはりか…!」
奴ら、禁手使いだけでなく眼魂も増やしているのか!だが、各地で混乱を起こすという目的がある禁手使いの増加とは違い、眼魂を増やしたところでテロになるわけではない。奴らの思惑が見えないが…。
「お前たちは何の目的で眼魂を増やしている!?」
「そこまで話す義理はありません。ただ、それがわかるときは近いと思いますが」
〔サングラスラッシャー!〕
冷笑し、ガンガンセイバーをドライバーに戻した奴が次に召喚したのは、柄部に黒いサングラスのようなパーツが取り付けられた奇抜な赤い剣だった。原作において仮面ライダーゴーストが強化形態である闘魂ブースト魂が使用した武器、サングラスラッシャーだ。
「いきますよ」
弾丸のごとく、思い切りよく突撃してくる。こちらはガンガンハンドの銃撃と四本のタイトゥンチェーン
を射出して迎撃する。
縦横無尽に宙を滑る鎖と銃撃の弾幕を、奴は糸を縫うように突破してくる。鎖にからめとられそうなときはスラッシャーの剣戟で弾き、それに合わせてガンガンハンドをロッドモードに変形させ間合いに入って来たダークゴーストを迎え撃った。
がきんがきんと武器がぶつかり合う硬い音が繰り返し夜空に響く。しかしそれが俺たち以外の誰かの耳に入ることはない。ジークルーネの結界が残っているからだ。あれだけダメージを負って消えないのだから、結界魔法の腕はかなりあるらしい。
一号、二号と打ち合いを続ける。時に斬られ、時にガンガンハンドで殴りつける。両者一歩も譲らない激闘が誰にも知られず繰り広げられていた。
そしてついに、打ち合いの中で主導権を握ったダークゴーストが俺の両肩にスラッシャーとガンガンセイバーを叩きつけた。
「がっ!ぐぅぅ!!」
だがこちらもやられてばかりいるわけにはいかない。サングラスラッシャーを握るダークゴーストの右手をがしっと掴み、奴の腹に銃口をぐいと押し当てる。
「!」
そのままトリガーを何度も何度も引き、ひたすらにゼロ距離で銃撃を浴びせ続けた。道連れだと言わんばかりに右手を離さず、ひたすら撃ち続ける。その衝撃でバランスが崩れ、ふらふらと俺たちは地面への墜落を始める。
「ぐぁっ、やってくれますね…!」
流石に効いたらしく銃撃に呻きながらも反撃に出ようとダークゴーストは俺を何度も殴っては蹴りつけ、ついには拘束から離れた。そして空高く飛翔したところでドライバーのレバーを押し込む。
〔ダイカイガン!ナポレオン!オメガドライブ!〕
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ダークゴーストは悪魔の翼を羽ばたかせ、霊力でできた魔方陣をくぐり抜けて、勢いづけた強力なキックがバランスを崩して地面へ墜落しようとする俺の腹に叩きこまれた。
「ぐぁぁぁッ!!」
迸る霊力の光が流星となり、地面へ派手に激突する。爆発が起こり、ダメージのあまり通常のスペクター魂へと戻ってしまう。
「くっ…」
〈挿入歌終了〉
全身を支配する激痛に呻き、悶える。変身解除に追い込まれなかったのは奇跡と言ってもいいくらいだ。
奴がここまでベルトの力を引き出すことができるとは思わなかった。いや、それもあるがやはり奴自身のセンスが大きいのだろう。だが、ここまで奴がパワーアップするとは…。
「おやおや、落とし物ですよ。ダメじゃないですか、持ち物の管理はしっかりしておかないと」
ころころと転がっていったフーディーニ眼魂を奴が拾い上げた。この戦いで奪われた眼魂はこれで3つ目になる。
俺を見下ろすダークゴーストが、ふと別の方向を一瞥した。
「…ジークルーネ。とどめはあなたに譲りましょう。彼を殺した後は、兵藤一誠です」
「そうか…感謝するぞ」
離れた場所で休んでいたジークルーネが剣を手に取り、ふらふらと立ち上がるとこちらに歩いてくる。
そして俺を見下ろすと、その切っ先を俺の首に向けた。見下ろす眼には憎悪の業火が滾っていた。
「ロキ様への数々の非礼、死を以て償え!!」
「くそ…!」
刃と共に突き付けられた現実に精いっぱい睨らみながら、強く歯噛みする。
まさかこんなところでやられるなんて…。
このままだと兵藤が危ない。いや、兵藤だけでなく奴らがこのまま会場に向かえば大勢の犠牲が出てしまう。冥界の民衆が待ち望んでいた今日の試合という希望は簡単に崩れ去る。俺が負けたばかりに、皆が犠牲になってしまう。
すまない、兵藤、ゼノヴィア、みんな。非力な俺を…許してくれ。
月光にきらめく刃が、憎悪と共に振り下ろされたその瞬間。
横合いから飛んできた波動が彼女の手元から剣を弾き飛ばす。
「くっ…何だと…?」
波動が飛んできた方向に目線を向ける。そこにいたのはフルフェイス型のマスクをかぶって素顔を見せず、貴族服とサイバーチックな世界観が融合したような独特な衣装をまとった存在。すらっとしていながらも筋肉のついた体型からして男だろうか。
男は颯爽と森の暗闇から、月光照らす夜空のもとに現れる。
「誰です?」
『…』
邪魔をされ不機嫌なアルギスの問いに返答を寄こす代わりに、仮面の男は見たことのないドライバーを取り出し、己の腰に押し当てると自動で銀色の帯のベルトが巻き付いた。
〔Z/X DRIVER ORIGIN〕
「ゼクスドライバーオリジン…?」
ドライバーが発した電子音声をおうむ返しのように俺は繰り返す。左右に何かをはめるためのスロットのようなものがついていて、全体的に白と灰色という淡白な色で構成されたそのドライバーの中央には青い宝玉が輝く。
聞いたことも見たこともないドライバーだ。誰があんなベルトを…?
そして男は右手に薄灰色の歯車の中に赤い宝玉がはめ込まれたアイテムを握ると、それを捻った。
〔ELTANIN〕
〔SINGLE STAR〕
今度はそれをドライバーの二つあるスロットの一つに嵌めこむ。すると、ドライバー中央のコアに目まぐるしく何かのデータ…文字の羅列や図式が表示され、それと同時に男の周囲に光が集まって機械でできた赤いドラゴンへと形を成す。
いや、実際に存在しているのではない。全身がやや透明に見えるのであれはホログラムなのだろう。
『界装』
〔IGNITION!MODE AIN!〕
男はそう呟き、二つのスロットを中央へ押し込んだ。ドライバーから溢れた青い光の粒子が男の体に纏わりつき、体にぴったりと密着した白い強化スーツへと変わる。
続けて男の傍に控えていたドラゴンのホログラムががしがしと頭部、翼、胴、脚とパーツごとにバラバラになり、それぞれが男の体に装着されていく。
〔ELTANIN!DRAGON ROAR!〕
そうして男は変身を遂げた。背中から絶えず吐き出される赤い粒子はまるで蛍の光のようだ。
ドライバーを中心に全身に赤いラインが伸び、全身の各部を覆う白と灰色の装甲にも赤色の光るラインが走っている。そのシルエットは俺がよく知る兵藤の禁手の鎧に酷似しているが、今俺の目の前にいるそれはより形状がスタイリッシュなものになっている。
「お前は…誰だ?」
突然現れた謎の乱入者。彼は果たして味方なのか、それとも…。
ジークルーネの実力はロキの付き添いなだけあって高く、だいたい今のロスヴァイセと同等ですが攻撃力はやや劣ります。落ち着いて戦えたらいいところまでいけたかもしれない…けど結局プライムスペクターでボコられてしまうでしょう。
次回、「もう一人の赤」