ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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第133話 「獅子王と紅龍帝」

転移魔方陣で会場に戻った俺は、広い廊下をばたばたと大急ぎで駆け抜ける。幸い変身していたおかげで服はボロボロになってはいないが、受けた攻撃の衝撃は生身に伝わっていたせいで全身が痛い。だが、それを気にする時間はない。

 

第7試合が終わった時点で既に多くの選手がリタイヤし、ゲームはクライマックスを迎えようとしていた。

 

つまり、今まで以上に盛り上がる見せ場が控えているということだ。皆の応援のために観戦に来た手前、それを見逃すということはまず許されない。

 

会場に戻って早々に、先ほどのアルギスたちの襲撃の一件をアザゼル先生は実況解説に回っているのでサーゼクス様に報告することにした。いくら公になればゲームに大きな影響が出るしそれだけは避けたいとはいえ、何も言わないというわけにはいかない。

 

コブラケータイ越しにサーゼクス様が驚いていたのがよく伝わったが、俺の意を汲むようにこっちで内密に処理し、警備を強化することを約束してくれた。俺だけでなくゲームを楽しんでいる観客に水を差さないようにする心遣いも本当にありがたかった。

 

そうこう走っているうちにようやく観客席に出た。すぐにレイヴェルさんと紫藤さんを見つけ出し彼女らのもとへひた走って戻った。

 

「すまない、遅れた…」

 

「あら、深海君?」

 

「随分遅かったようですが…何かありましたの?」

 

戦いのダメージとここまで走ってきたことでぜえぜえと息を切らす俺はすぐに返事はせず、こっちに来てと手を軽く振って二人を間近に集める。そしてずいと顔を近づけた。

 

「アルギスと出くわして戦闘になった」

 

「「えっ!?」」

 

話が周りにばれないように小声で言ったのに二人は声を上げて驚いた。

 

「それは本当ですの?」

 

「ちょっと、どうして早く連絡してくれなかったの?言ってくれたら駆け付けたのに」

 

今度こそ小声になってくれた二人は咎めるような口調で詰問してくる。だがそういう反応が返ってくるのは想定内だ。

 

「言えるわけないだろ。下手に騒ぎになればゲームが中止になりかねないし、そんなことを冥界のみんなが望むか?一般人はもちろんVIPの方々はがっかりだし、バアルやグレモリーも面目丸つぶれだ」

 

「それは…」

 

この観客でごった返し、熱中の渦中にある会場を見ればわかる。このゲームがどれほど期待されていたものなのかが。ゲームについてはほぼ知識のない俺ですらその人気っぷりは理解できた。それを台無しにすることなど愚の骨頂だ。

 

それにアルギスたち本人は口にしなかったがその目的の中にゲームを中止させることも含まれていると俺は考えている。そうでなければ他に襲うタイミングはあるだろうに、わざわざこの試合中に襲撃を仕掛けようと考えないだろう。大勢の前で冥界のヒーローを殺せば、大きな混乱が生まれることは間違いなしだ。

 

奴らの思惑通りにさせないためにも内密に片づけ、ゲームを続行させなければならない。

 

「安心してくれ、もう撃退した。かなりの深手を負ったみたいだからもうちょっかいはかけられないはずだ。一応サーゼクス様にも連絡してるから、他のVIPにも情報が行っているはず。警備のレベルも引き上がるだろう」

 

「…それなら、まあ」

 

二人はまだ納得はいっていない表情だが、これ以上の追及はせず渋々といった様子で引き下がった。

 

「それより、試合の様子は…ってか、なんだあの金ぴかの鎧は」

 

「あれはサイラオーグ様の『兵士』ですわ」

 

「…え?」

 

「サイラオーグ様の『兵士』、レグルスは神滅具の一つ、『獅子王の戦斧《レグルス・ネメア》』でしてアの鎧はその亜種禁手『獅子王の剛皮《レグルス・レイ・レザーレックス》』だそうです。今発動したばかりですわ」

 

「あの兵士がロンギヌス…!?てか、あれって元々は斧だったのに鎧になるとか変わりすぎだろ…!それに、人間に化けていなかったか?」

 

目の前のモニターに映るサイラオーグの鎧と勉強会で学んだ記憶の大きすぎる不一致は今日一番の驚きだ。

 

元来『獅子王の戦斧』とは大地を一撃で粉砕し、巨大な獅子にも変化できるという強力な力を秘めた神滅具の一つだった。ギリシャ神話に登場する英雄ヘラクレスの試練の一つに数えられる凶暴なネメアの獅子に由来するだけあり、飛び道具を受け付けない能力も秘めている。

 

先生曰く、ここ数年で所有者の足取りがつかめなかったとされているがまさかバアルの『兵士』になっているなど誰が想像できただろうか。

 

「すでに本来の所有者は死んでいますが、どういうわけか意志を持って動き出したそうです…ただ、サイラオーグ様は『兵士』の駒で悪魔にすることはできても、正式な所有者ではないために力が不安定で暴走の可能性もあったので今までの試合に出られなかったみたいですわね」

 

「お披露目の時は実況のアザゼル先生が大興奮してたわねー。『サイラオーグ!後でうちに連れて来い!』って!」

 

「先生ならそう言うだろうな…」

 

大興奮する先生の様子は簡単に想像できた。こんなイレギュラーな神器、本当は解説をすっぽかして今すぐにでも調べ上げたいだろう。

 

しかし、所有者がいなくなった神器自体が自律した意志を持ち悪魔に転生できてしまうとは…やはり先生の言う通り、今代のロンギヌスはイレギュラーが多発しているようだ。

 

「ゲームの流れはひとつ前の試合でイッセー様がサイラオーグ様の『女王』を倒したのですが、サイラオーグ様からの提案で総力戦を行うことになったのですわ」

 

「総力戦?」

 

「ええ、本来は二度出しできないルールでイッセー様は出場できず、『王』同士、あるいはリアス様とサイラオーグ様の『兵士』が戦うしかありません。でもそんな展開は簡単に読めてしまいますし、何よりルールでイッセー様と戦えないのは自分はもちろん観客も望むところではないだろう、と」

 

「アーシアだけは陣地に残ることになったみたいだけどね」

 

「…確かに。今回に関しては『王』同士の戦いよりサイラオーグと兵藤がタイマンした方が盛り上がるだろうしな」

 

サイラオーグと兵藤は悪魔にしては珍しい、肉弾戦を主体にした戦闘を得意とする悪魔だ。そんな物珍しい彼らのマッチングを、ファンなら誰もが期待するところだ。

 

『さあ、来い』

 

大体の状況を理解できたところで試合は動いた。サイラオーグは自信もたっぷりに兵藤を挑発する。

 

『モードチェンジ、『龍剛の戦車』!』

 

それに乗るように掛け声で兵藤の腕の装甲が大きく膨れ上がったような重々しい形状に変化する。そして、全力でサイラオーグ目掛けて拳を振り抜いた。鎧に仕込まれた撃鉄が発動し、ずがんとこちらの大気まで震えそうな重い音が響き渡る。

 

『…そんなものか?』

 

だが拳を受けたサイラオーグは1mたりとも動くことはなかった。それと入れ替わりで、サイラオーグの掌底が兵藤を打ち据えた。

 

たったそれだけで兵藤のトリアイナの鎧はがしゃんと粉々に砕け、大量の血を吐き散らしてがくんとその場に崩れ落ちた。

 

あれは間違いなく、体の芯に入った一撃だ。

 

『イッセー!!』

 

「そんな…!」

 

「嘘だろ…」

 

「イッセー様!」

 

モニターの向こうの部長さん、そしてそれを観る俺たち三人は信じられないとばかりに口をあんぐりと開ける。まさか新たな力であるトリアイナの中で最もパワーに秀でた『戦車』ですら、サイラオーグに通用しなかった。

 

間近で兵藤の力を見てきた俺たちにとって、この結果は容易に信じがたいものだった。

 

「おっぱいドラゴンがー!」

 

一瞬でやられたヒーローの姿に子どもたちも悲鳴を上げる。彼らにとってヒーローである兵藤の敗北は想像だにしなかっただろう。

 

『な…なんということでしょうか!サイラオーグ・バアル選手の拳一発で、兵藤一誠選手がダウンしました!!』

 

『…やはり彼のパワーは飛びぬけていますね。拳だけでここまで強い悪魔は滅多にいません』

 

その驚異のパワーに驚愕する実況と、冷静に彼のパワーを評するベリアル。レーティングゲームの頂点に君臨する王者からそう言われてサイラオーグもさぞ鼻が高いことだろうな。

 

危機的状況の中、俺はあるルールを思い出す。フェニックスの涙だ。木場たちに腕を斬られてその治癒に使ったバアルと違い、まだこちらは使用していない。

 

使えば一気に兵藤を回復させられるはずなのに、部長さんたちは一向に使う気配がない。

 

「おい、なんで部長さんはフェニックスの涙を使わないんだ!?」

 

「リアスさんがサイラオーグの『兵士』に深手を負わされた時に使ってしまったのよ…」

 

「嘘だろ…」

 

あれだけのダメージを入れられた兵藤はおそらく戦闘不能、残った部長さんとアーシアさんは一体どう戦っていくのか?

 

今後の展開が読めなくなったその時だった。

 

ゆらり。ゆらり。

 

倒れた兵藤の体からふと小さいながらも黒いもやが滲みだす。見るだけで不穏なものを想起させるあれは一体何なのだろうか?

 

『おいおい、まさか『覇龍』か…?』

 

『アザゼル総督、覇龍とは一体?』

 

その正体に真っ先に気付いたのはアザゼル先生だった。冷や汗が垂れたと言わんばかりに、先生の面持ちは神妙なものに一変している。

 

「!!」

 

「なんでこのタイミングで…」

 

「『覇龍』?」

 

同じく俺と紫藤さんの面持ちが硬くなる一方で、レイヴェルさんは聞きなれない単語だとおうむ返しをする。

 

「そうか、レイヴェルさんは知らないんだったな。二天龍の神器には封じられたドラゴンの力を全開にして禁手以上の力を得る代わりに歴代所有者の残留思念に侵食されて命尽きるまで暴走する『覇龍』って力がある」

 

「なんですって…!?」

 

「イッセー君は過去にそれが発動して、助かりはしたけど寿命がかなり削られてしまったの。でも今回は発動するような出来事なんて起きてないのに…」

 

「そんな、どうして…」

 

この状況が如何に危ないかを理解したレイヴェルさんは顔を真っ青にする。よりによってゲーム中に発動してしまうのか…!

 

『噂に聞く二天龍の神滅具が持つ究極の力ですか…それがどうして?』

 

『恐らく、神器内にある歴代所有者の残留思念がイッセーが瀕死になって弱ったところにつけこんで活発になっているんでしょう。その怨念は封じられているドライグですら迂闊に近寄れないものだと聞いています』

 

先生は危機を目にしながら自らの仕事である解説をこなす。神器研究の第一人者である先生のわかりやすい解説により、観客たちも状況を理解できたらしく会場に不安の色が広がり始めた。

 

「おっぱいドラゴンが死んじゃったー!」

 

「やだよー!」

 

「立ってよー!」

 

倒れたまま不穏なオーラを出し始めた兵藤に子供たちは不安がり、ついには泣き出す子供も現れてしまう。

 

「まずいな…」

 

不安がる観客たちを見まわし、俺はぼそりと呟く。試合の雲行きもだが、なにより兵藤自身が危ない。

 

なにせ一度目の発動で寿命がかなり縮んだあいつがまた覇龍を使えば試合が台無しになることはもちろん、今度こそ命を使い果たして死んでしまう。

 

「このままだとイッセー君が…!」

 

「レーティングゲームでの死亡事故は決して少なくはありませんわ。ゲームとは言え戦いですもの…でも、こんな…」

 

レイヴェルさんの眼にきらりと涙がこぼれる。会場内を不穏な暗雲が覆い始めたその時だった。

 

「泣いちゃダメッー!!」

 

その空気を切り裂くように一人の男の子が声を上げた。おっぱいドラゴンのフィギュアを握りしめている彼

 

「おっぱいドラゴンが言ってたんだ!男は泣いちゃダメだって!転んでも、何度も立ち上がって女の子を守れるくらい強くならなきゃだって!」

 

男の子は拙い言葉ながらも懸命に叫ぶ。無垢な子供の純粋な思いは、不安に揺れる会場においてかっと差し込んだ光明だった。

 

彼の必死の呼びかけは、不安の真っただ中にいる子供たち…だけではない、兵藤を応援する大人たちの心を揺り動かした。

 

「そうだ、おっぱいドラゴンは負けないんだ!おっぱい!」

 

「がんばって、おっぱいドラゴン!」

 

「おっぱいドラゴン!」

 

一人の勇気ある子どもの希望の炎は、別の子どもへと伝播した。そこから一人、また一人と一人のコールはやがて会場中の子どもたちへ広がる。

 

そうだ、子どもたちがこんなにあいつを応援しているというのに、どうして間近であいつと一緒に肩を並べてきた俺は何もしないでただ不安がっているんだ。

 

そう思い至った時、心の内で衝動が沸き起こる。衝動に駆り立てられ、居ても立っても居られなった俺は観客席を立ち上がる。

 

「立て、兵藤!お前がこの試合にかけてきた思いはそんなもんで折れないだろうがァ!!立って部長さんにいいところの一つでも見せてみろ!!」

 

俺も彼らの応援に心突き動かされ、力の限りモニター内で倒れている兵藤目掛けて叫ぶ。変身した状態で戦っていたので衣類は全く持って汚れたり破れたりはしていないが、受けた攻撃の衝撃でボロボロなため、正直なところ医者に見せれば安静にした方がいいと言われるだろう。

 

それでも俺は自分の身を顧みずに叫んだ。今のあいつに聞こえるかどうかはわからないが、リタイヤになってないということはまだ意識はかすかにあるということ。

 

可能性があるならやってやる、何度だって言ってやる。俺たちの声で、あいつを怨念から救い出してやろうじゃないか。

 

『これは…歴代の所有者の怨念か。今まさにお前は飲まれようとしているのだな』

 

会場でおっぱいドラゴンを呼ぶ熱烈な声が上がる一方、試合のフィールドで倒れたままの兵藤を見下ろすサイラオーグがぽつりと言う。

 

『どうした、兵藤一誠!お前はまだ終わるような男ではないはずだ!俺と真正面から殴り合った時の輝きはどこにいった!?お前の魂はあんな禍々しいものに負けるような軟弱なものではない!!さあ、立ち上がれ!!』

 

対戦相手のサイラオーグすら、叱咤激励し奮起を促す。威風堂々と黄金の鎧を身にまとい、その熱い魂を込めて呼びかける彼の姿に心動かされたのか、これまでバアルチームを応援していた観客からもおっぱいドラゴンと呼ぶ声が上がり始めた。

 

「おっぱい!おっぱい!」

 

「ちちりゅうてー!」

 

「…そうよ、おっぱいドラゴンは、イッセー君はどんなに苦しい時でも立ち上がって来たの!私たちのヒーローを!みんなで応援しよう!」

 

おっぱいドラゴンを求める子どもたち、観客たちを目の当たりにした紫藤さんは涙をこぼしながら、子どもたちに応援を促す。

 

「みんな!おっぱいドラゴンは好き!?」

 

『大好きー!!』

 

紫藤さんの問いかけに屈託のない笑顔を浮かべた子どもたちの合唱じみた返事が返ってくる。

 

「私も大好き!すごくドスケベだけど、人一倍努力してて、誰よりも熱くて、諦めなくて、いつだってみんなのために戦ってるの!だから応援しよう!おっぱいドラゴン!」

 

『おっぱいドラゴン!おっぱいドラゴン!』

 

『おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!』

 

紫藤さんの呼びかけで、おっぱいドラゴンのコールはさらにヒートアップする。俺とレイヴェルさんも恥も外聞も捨て、彼らと心を一つにして叫ぶ。普段の俺なら人前でおっぱいなんて単語を連呼したりはしない。

 

『イッセー…みんながあなたを求めているのよ』

 

涙を流しながら、部長さんは動かない兵藤を抱きしめる。

 

だがこの瞬間だけは、そんな恥じらいも忘れてひたすらに叫び続ける。この場にいる全員の心が一つになり、冥界のヒーローを求める声が絶えず響き続けた。

 

皆が待っている、ヒーローの再起を。

 

そんなコールの中で、変化は起こった。

 

『…?』

 

兵藤を抱きかかえる部長さんの胸が赤く発光し始めたのだ。その色は、彼女自身と同じ真紅の色であった。

 

『…う』

 

変化は立て続けに起こる。果たして俺たちの願いが通じたのかくすぶっていた黒い靄が消えて、倒れ伏す兵藤の体がピクリと動いた。さらになんと、全身から赤い光が迸り始めた。

 

〈BGM:龍亞の覚醒(遊戯王ファイブディーズ)〉

 

いや、あの色は普段の鎧の色よりもっと深い、部長さんと同じ真紅の色だ。それに発光しているだけではない。光の中で、鎧が形状を変えていく。特に際立った変化として、これまでは生々しい龍のものだった龍の翼が、ヴァーリの神器のように真紅の光の翼へと変化していた。

 

『イッセー…その姿は』

 

『赤いオーラ…いや、真紅のオーラだ。リアスの、あの『紅髪の魔王《クリムゾン・サタン》』と称される男の髪色と同じだ。ははっ、また奇跡を起こしやがったか!!てか今度はおっぱいに触らずに進化しやがった!!』

 

解説に回っているアザゼル先生も、この奇跡を目の当たりにしたことで兵藤が復活したことへの歓喜を通り越して大興奮のようだ。

 

『この鎧…あれ、駒が『女王』になってる!』

 

兵藤自身も、己の変化に戸惑っているらしく、自分の体をあちらこちらとせわしく見回す。

 

「イッセー様は『女王』への昇格を果たしたのですね…!」

 

女王への昇格はこれまでのトリアイナではできなかったが、まさか女王への昇格がここまで劇的な変化をもたらそうとは。

 

『『真紅の赫龍帝《カーディナル・クリムゾン・プロモーション》』といったところか』

 

立ち上がった兵藤を前に、サイラオーグは好戦的でありながら彼を誇らしげに思うような笑みを浮かべた。

 

『よくぞ立ち上がった、兵藤一誠。歴代の怨念を乗り越え、さらに新しい力に目覚めたか!それに、その鎧の色は…』

 

『惚れた女のイメージカラーだ。部長は…リアス・グレモリーは俺が惚れた女だ。その人を守りたい、勝たせたい!だから俺は…!!』

 

一拍呼吸。息を大きく吸って、そしてこれまで胸に押し込め続けた思いのたけをあいつは叫ぶ。

 

『冥界の子どもたちと、リアス・グレモリーの前であんたを倒す!!子どもたちのために、彼女のために今から俺はあんたを超えていく!!俺はァ!リアス・グレモリーが大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

観客の目もはばからず、兵藤は腹の底からありったけの思いが乗った告白が叫ばれる。真紅の鎧へのパワーアップに次ぐ衝撃に、会場中がどよめいた。

 

「イッセー君!ついにやったのね!」

 

「まったく、イッセー様らしいですわね」

 

「ははっ…!」

 

あまりにも大胆すぎる告白に自然と笑いがこぼれた。惚れた女の子の髪と同じ色の鎧、なんてあいつらしいパワーアップだよ。それにこんな場所で告白するなんて。

 

「最高だな!」

 

吹っ切れた友の、反撃がいよいよ始まる。

 

〈BGM終了〉

 

 




サイラオーグが歴代所有者の怨念に気付けたのは過去に『覇獣』の習得に手を付けたことがあって、一度断念したときに同じような歴代の怨念に触れたことがあったからというオリ設定です。


最初は手出しできない最終決戦をどうしようかと思っていましたが観客サイドから書いてみたら意外と面白いように書けました。

次回、「始まる学園祭」
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