ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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いつの間にかUAが9万を超えていました。いつも読んでくださってありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします!

同時進行で登場人物紹介のゼクスドライバーオリジンの項目を書いていますが書いててこれやべえなと思っています。

Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス



第135話 「学園祭のライオンハート」

「オムレツいっちょ上がりィ!」

 

ウェイトレス姿でせわしなく料理をする俺は厨房で元気のいい声を上げながらカウンターへ出来立てほやほやの料理を置くと、オムレツ3つとすでに出来上がっていたチョコパフェをウェイトレス姿の紫藤さんが客席へ持っていく。

 

「お待たせしました!オムレツ三人前とチョコバナナパフェです!」

 

カウンターの向こうから、聞くだけで元気が出るような紫藤さんの快活な声が聞こえてくる。

 

バアル戦から数日経ち、いよいよ駒王学園の学園祭が始まった。旧校舎は学生やその家族で大賑わいで、特に学園の中でも随一の美人な女子生徒が集うオカルト研究部ということもあり、盛況を極めていた。

 

各部員は大まかな担当が決まっているが、手が空いたらどこか別の忙しいコーナーの手伝いに回るという方針を取っている。今の時間は俺と紫藤さん、アーシアさん、部長さんの四人でメイド喫茶を回している。

 

「はい、チーズ」

 

そしてこのメイド喫茶の目玉として部員と写真撮影ができる特典付きのセットメニューがある。人気で言うなら部長さんと朱乃さんの二大お姉さまがツートップに君臨していた。もちろん他の部員も人気でギャスパー君もニッチな人気があるようだ。

 

俺?一度も呼ばれたことはないよ?兵藤だって呼ばれてないし部員内でワーストツートップ張ってるよ?

別に悔しくもないしィ?

 

塔城さんは怪しげながらもキュートさのある衣装に身を包んで占いの館コーナーを、朱乃さんは着慣れた巫女服でお祓いコーナーをそれぞれ空き部屋を今回の学祭に向けて改装してやっている。開始前に二人のコーナーを見に行ったが二人の衣装、そして俺たちが大工作業で作り上げた内装が合わさりかなりレベルが高いように思えた。調理が忙しくて見れていないが、聞こえてくる生徒達の会話を又聞きするにかなり列が並んでいるらしい。

 

その他の男子組はオカルトの定番とも言うべきお化け屋敷コーナーで足を踏み入れた生徒たちを脅かす仕事をしている。兵藤はフランケンシュタインの怪物役、ギャスパー君は当然ながらドラキュラ、木場は白装束のお化け役だ。兵藤の奴、女子に殴られたりしてないだろうか。

 

それらのコーナーのチケットを販売するのはゼノヴィアとレイヴェルさんの仕事だった。今頃飛ぶ鳥を落とす勢いで売れていることだろう。

 

そういうわけで、オカ研が旧校舎を丸々使用した催し物は大好評だ。おかげで休む間もなく料理三昧である。

 

「深海君、そろそろ交代の時間よ。私が代わるから給仕をお願いね!」

 

「了解!」

 

と、厨房のドアからひょいと顔を出した紫藤さんに声を掛けられる。ちょうキリよく調理が終わったところなので、すぐに服を整えて紫藤さんとバトンタッチで入れ替わる。

 

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」

 

入れ替わるなり、こちらに向かって手を上げた三人組の生徒のもとへ向かうが、よく見ると…。

 

「ど、どうも」

 

「随分忙しそうね」

 

「もうかりまっか?」

 

「ぼちぼちでんな」

 

俺を呼んだお客さんは天王寺、上柚木、そして御影さんだった。見慣れた三人の顔を見て、今まで調理で集中してこわばっていた表情が緩むのを感じた。

 

「ま、一時間以上は立ち仕事してるぞ」

 

「大変ですね…」

 

「御影さんもウェイトレスやってみる?上柚木もそろってぴったりだと思うけど」

 

御影さんはどちらかというと可愛い系で、上柚木はクール系というベクトルの違いこそあれど、どちらも美人であるとは思っているので紫藤さんたちが着ている服を見てもかなり似合うと考えたのだが。

 

「お、僕も見てみたいな!」

 

「私は天王寺くんがそう言うなら…」

 

「嫌よ、御影さんもやめておきなさい。とりあえず注文は私は御影さんがミニパフェ、飛鳥はカレーよ」

 

天王寺も賛成するのでやってくれるかと思ったが上柚木の意志は固かった。

 

「OK、ミニパフェ二人前、カレー入りましたァ!」

 

威勢のいい声を上げて厨房にいる紫藤さんにオーダーを知らせる。

 

「悪い、見ての通り忙しくてな。後で話そうな!」

 

「頑張りや!」

 

飛鳥の声援に頷き返して、俺は業務へ戻る。短いながらも彼らとの会話で少しはリラックスできた。

 

調理の次は給仕でてんてこ舞いするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ようやく訪れた休憩時間。人込みから距離を置けるがらんとした空き部屋で、たまたま時間が重なった兵藤と一緒に二人で茶を飲みながら一息をついていた。

 

「イヤー疲れた…」

 

これまでの働きでたまった疲れがため息を一緒に出てくる。

 

「深海もお疲れだな」

 

「ずっと調理しっぱなし、給仕しっぱなしだったからな。鍛えてなかったらもう無理だったよ」」

 

ある種の単純作業、とはいっても戦闘と同じで体力を使うことには変わりないのだから

 

「俺も給仕の手伝いをしたけど大変だな。それにお化け屋敷だとびっくりされた女子に何度か叩かれたしよ」

 

「ああ、やっぱりか」

 

「やっぱりってなんだよ!いや俺も思ってたけどね!?」

 

学祭の苦労話で盛り上がる最中、ふと兵藤の表情が若干思いつめたものに変わる。

 

「…さっき、先生からサイラオーグさんのことを聞いたんだけど、支援していた上層部が手を引いたんだってよ」

 

「そうか…あれほどの舞台を用意しておきながら、いざ負けたら素っ気ないもんだな」

 

尊敬の念すら抱いた男が容赦なく切り捨てられるのは辛いものを感じた。兵藤も俺と同じことを考えていたようで、その声色から悲しみの感情が滲んでいた。

 

「俺たちが優しいだけで悪魔は本来そういうものらしいんだけど…それでも、勝ったのにもやもやする。幸いにもまだ次期当主の座は揺らいでないみたいだ」

 

「それだけでも救いと考えるべきか。流石にあれだけ強いバアルの男はいないだろうしな」

 

大王なんて呼ばれる家系だからその初代や現当主も相当腕っぷしが強いとは思うが、それ以外のバアルの悪魔で彼より強い者はまずいないだろう。試合会場でもらったリーフレットによると、滅びの魔力を持っていた異母弟を打ち倒したことがあるらしい。容易に彼を超える者は現れない…と思うが。

 

「ところで、お前も昨日先生と何か話してなかったか?」

 

と、ボトルを飲み干した兵藤に不意に尋ねられた。

 

「ああ、あれか…」

 

学園祭前夜、俺は先日のゲーム関連の仕事がひと段落ついた先生に呼ばれた。その要件と言うのが…。

 

「バアル戦の裏でのアンドロマリウスの一件で先生に説教喰らってた」

 

「ええ!?…あ、でもサーゼクス様もおっしゃってたな」

 

「そうだよ。とにかくお前は報告、連絡、相談の報連相を身に着けろって。…結局、あの状況で一番誰にも迷惑をかけずにうまくやる方法ってなんだったんだろうな」

 

会話の中身は説教半分、振り返り半分だった。

 

振り返りと言うのは当時の状況を振り返り、ここはこうする、そこはこうしろと先生の熟練した知識と過去の経験をフィードバックするものだった。もう一人の赤龍帝の登場にはそれこそ口と目を大きく開いて驚いていたが。

 

「ともかく、戦闘では相手に合わせたフォームチェンジや能力の判断が得意なのにそういった場面をより広く、その先を見据えた状況判断能力がまだまだだ。今回の件でそれを痛感した」

 

今まで俺の強みは英雄眼魂でのフォームチェンジを生かした幅広い対応力と最適なフォームを導ける判断力だと思っていた。だがそれは俺個人での戦いに関してはの話に過ぎなかった。

 

もしあの時の俺の立場に、魔王サーゼクス様の妹でありグレモリーの次期当主である部長さんが立っていたならもっといい立ち回りができただろうと俺は思っている。関係各所のやり取りも経験しているだろうし、なにより眷属を指揮し、全体を見る力が必要とされる『王』の役割を勉強もしている彼女ならうまくやれたはずだ。

 

俺はある意味、考えることを放棄してこれまで俺たちを指揮し、作戦を立案してきた部長さんや先生に投げていたのだ。だから考える力が未熟だったあの時の俺は個人的な感情に囚われた判断しか下せなかった。

 

「強くなるって、戦うための力を伸ばすだけじゃだめなんだ。俺にはまだ知恵が足りない。心技体、そしてそれを効率よく、的確に使うための知恵も必要だ」

 

この一件で俺の欠点は見えた。今回アルギスには痛い目にあわされたが、気づきを得ることができた点だけは感謝してやってもいい。怪我の功名、とでも言うべきだろうか。

 

「…なんか悪いな、休憩中だったのに暗い話になってしまって」

 

「気にするな、お前ももっと上を目指すならさっきの話が参考になればうれしいよ」

 

申し訳なさそうに言う兵藤に、俺ははたはたと手を振るう。

 

最終的にこいつは部長さんと同じ上級悪魔を目指している。それなら今回の俺のような失敗をしないためにも俺の失敗から学んでほしいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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昼が過ぎるとともに、慌ただしかった客のピークも去った。ある程度喫茶コーナーが落ち着いたところで俺は休憩時間を利用してゼノヴィアと一緒に学園祭で盛り上がる新校舎へ繰り出した。

 

「これが学園祭か…!修学旅行もそうだったけど、こんなに楽しいイベントは初めてだ!」

 

ゼノヴィアは先ほど買った焼きそばを片手に、愉しそうにあたりの様子を見回す。

 

行きかう生徒たち、各教室に出された催し物、居慣れた学校が今までにないくらいに人でにぎわっている。教会の信仰に身をささげてきた過去の彼女の世界にはこのような賑やかで楽しいものは存在しなかっただろう。

 

これまで回って来た輪投げ、美術部の書いた絵の展示会、映像制作部の作ったミニ動画、などなどバラエティー豊かな催し物に彼女は目を輝かせて、笑顔が絶えない様子だった。

 

「よかった。せっかくだし一緒に回りたいと思ったけど大正解だったみたいだ」

 

楽し気な彼女の反応にふと笑顔がこぼれる。

 

短い休憩時間ではあるが、それを使って精いっぱい彼女に学園祭を見せてあげたかったし、何より二人でその楽しみを共有して少しでも思い出を作ってみたかった。彼女も楽しんでくれているみたいようで、誘った甲斐があったものだ。

 

彼女との時間を楽しみながら歩いていると、すれ違う人々の中に見慣れた顔を見かけた。

 

「あ、副会長」

 

「どうも、その節はお世話になりました」

 

声をかけるとこちらに気付くなり、律儀に礼の言葉を言う副会長の森羅椿姫さん。生徒会は見回りの仕事をしているはずだ。

 

その節というのは俺が前に木場のことで相談に乗った件だろう。なかなか大変な目に遭った出来事だが、面白い経験ができたとも今は思っている。

 

「いえいえ、それよりアガレス戦での勝利、おめでとうございます」

 

シトリー眷属で今ホットな話題と言えばバアル戦と同時期に行われた大公アガレス家の次期当主であるシーグヴァイラ・アガレス率いるアガレス眷属とのレーティングゲームだ。真っ向勝負となったバアル戦のダイス・フィギュアとは違い、より戦略的な駆け引きが求められる旗取合戦のスクランブル・フラッグのルール形式で行われた。

 

「ありがとうございます…と言いたいところですが、素直に喜べないことがありましてね」

 

「どうしてだ?」

 

浮かない顔をする副会長さんに疑問符を浮かべるのはゼノヴィアだった。

 

「最後に匙が龍王状態で暴走してしまって、フィールドが半壊してしまったのです。僅差で勝つことはできましたがゲームの見栄えなどで多方面からの悪評価が免れないようでして。やはり兵藤一誠君なしでは匙の龍王化は厳しいのでしょうか」

 

「そうでしたか…」

 

特にバアルとグレモリーのパワー対パワーというイメージを持たれていたうちらの試合とは違い、シトリーとアガレスのマッチは両者が長けた知謀による巧みな戦略戦が期待されていたらしい。それを裏切るような内容はさぞファンを失望させただろう。

 

「…まあ、死ぬってわけじゃないから次がありますよ。失敗は次の成功の糧にすればいいんですよ」

 

「悠の言う通りだよ。それにイッセーが天龍の覇龍を抑えられたのだから、龍王は抑えられるはずだ。彼にできて、匙にできないことはないと思うけどね」

 

「…そうですね。あなたたちの言う通りです。アザゼル総督にも相談して彼の龍王化の安定を探ってみます」

 

俺たちの励ましの言葉を受けて、いつもは硬い表情の副会長さんの口元にふっと柔らかな笑みが浮かんだ。

 

餅は餅屋だ。匙の龍王化を覚醒させたのはグリゴリなのだから、制御は匙にぶん投げなんてことはしないはずだ。むしろそこはしっかり責任取らせてやったほうがいい、そこのボスはあのやりたい放題な性格のアザゼル先生なのだから。

 

「そういえば、あれから彼との進捗はどうです?」

 

「!」

 

俺がその話題を振るなり、目に見えて副会長さんの顔色が変わる。明確に言わずとも、彼が誰を指しているのかは理解できたようだ。

 

「そ、その…彼に振る舞う弁当の中身を考えたので…人に食べてもらえるレベルまで練習しようかと。彼をがっかりさせないために…」

 

「そうですか、でしたら今度考えてるアイデアを教えてくださいよ。一緒にブラッシュアップしていきましょう」

 

「ありがとうございます…」

 

いつも毅然とした立ち振る舞いの副会長さんが木場の話になるや声が小さくなり、どこか恥じらいのある表情で話すようになった。

 

なんというか、あれだけ女子部員が多いというのに木場に女っ気がなく、むしろ男方面に行きそうな気がして心配になっている。どうせなら副会長さんとくっついてほしいというか、そうなったら面白いのではという思いで俺は副会長さんを応援しているのだが。

 

「弁当?木場に自分の作った弁当を食べてほしいのか?」

 

「え、えぇ…」

 

と、話に食いついたのはゼノヴィアだった。

 

「うーん、私は悠に弁当を作ってもらってばかりだし、あまり料理しないからわからないな…とりあえず木場の好きな食べ物を詰め込めばいいんじゃないかな」

 

「か、彼に弁当を作ってもらっているのですか!?」

 

副会長さんはゼノヴィアの何気ない一言に酷く衝撃を受けた様子だ。それに至極当然と言った様子でゼノヴィアは返す。

 

「そうだが?」

 

「う…うう、羨ましいぃ!失礼します!」

 

いよいよ顔を恥ずかしさで真っ赤にして、ばたばたと半分逃げるように副会長さんは早歩きで去っていくのだった。廊下で走らなかったのは流石優等生と言ったところだ。

 

「?」

 

ゼノヴィアはどうしてこうなったかあまり理解していない様子だった。自分のことはちゃんと気づいたのに、人の恋路になると途端に鈍感になるのな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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夕暮れ時になると学園祭も終盤に突入する。校庭の中心でキャンプファイヤーが焚かれ、集まった生徒たちはオクラホマミキサーを踊ったり、楽しかった学祭を振り返るように歓談を始める。

 

そんな俺は疲れがたまっていたのもあって、喧騒から離れて一息つこうと部室のある旧校舎へ足を運んだ。

 

本当に大変な学祭だった。給仕も料理も、一度ゾンビの仮装をしてお化け屋敷の手伝いにも行ったりと大変なことばかりだったが濃密な時間でいい思い出になった。

 

だがそれもあと数時間と経たないうちに終わる。楽しい時間とはいつだって、あっという間で、思い返せばすぐに終わるものだ。

 

そんなことを考えながら2階へ上がり、部室を目指してゆっくり歩んでいた時だった。俺はその奇妙な光景に思わず足を止めた。

 

「…何してるの?」

 

レイヴェルさんとアザゼル先生、そして兵藤と部長さん以外のオカ研メンバーが部室の扉の前に集まっていた。皆、ほんの少しだけ開いた扉の隙間から懸命に部室の中を覗き込んでいるようだ。

 

話しかけた俺に対し、皆は慌てて口元に人差し指を立ててシーッというジェスチャーを返してくる。

 

「…?」

 

どういうことだろう?部屋の中に野良猫が入り込んで、気持ちよさそうに寝ているのか?

 

どれどれとみんなと同じように部屋を覗いてみると、そこにいたのは部長さんと兵藤だった。二人きりの空間で、気まずいような、どちらかが喋るのを待っているような空気が流れていた。

 

「あっ」

 

だが俺はすぐにその原因に思い至る。おそらく、あのサイラオーグ戦での告白以来二人っきりになるのは初めてではないだろうか。それがきっかけでこのような言葉にしがたい絶妙な雰囲気になっているのだ。となれば、これから二人は…。

 

「…り、…リアス」

 

「!」

 

もじもじとしながら切り出したのは兵藤だった。泳いでいた目を、どうにかといった調子で部長さんへと向ける。唐突に名前を呼ばれた部長さんは茫然となる。

 

扉の向こうで俺は衝撃を受けた。今まで彼女を部長と呼び続けた兵藤が、彼女を名前で呼んだ。つまり、始まるんだな?

 

俺の中でこれから始まるであろう展開への期待が急激に高まる。やるんだな?今、ここで!?

 

…正直に言うと、覗かない方がいいんじゃないかとやましく感じる気持ちもあるが俺は見たい。兵藤が、己のトラウマを超える、克己の瞬間を。

 

「俺、ずっとそう思ってたのに…レイナーレのことで怖くなって…自分でも気づかないうちに逃げてて…前みたいに傷つけてしまって…でも、もう気づいたから言いたいんです」

 

緊張で言葉が拙いものになりながらも、一生懸命に兵藤はこれまで思ってきたことを言葉にしていく。

 

「リアスのことを一生守っていきたいです!俺…初めて会った時から、惚れてました!リアスのことが大好きです!だから俺と…付き合ってください!」

 

来たぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

どうにか感情が声に出ないように必死に押さえて、内心で絶叫する。友人が意中の女の子に告白する瞬間をまさかこの目で見る時が来ようとは。自分が経験したからこそわかる、もしかすると拒否られるのではという恐怖と好きな人ともっと一緒にいたい、親密な仲になりたいという思いのせめぎ合いが。

 

だが興奮したと同時に、あの兵藤がレイナーレの件から立ち直り、こういう形で大きな一歩を踏み出したことに大いに感動を抱いた。うんうんと頷きながら拳を握って軽いガッツポーズを取る。やればできるじゃないか。

 

告白を正面から受けた部長さんの表情は茫然としたままで、彼女の瞳からぽろりと一滴の涙が流れた。

 

そしてそのまま顔をくしゃっと歪めると、手で顔を覆って静かに泣き始めた。

 

唐突に泣き始めた部長さんに兵藤は顔を真っ青にして大慌ての様子だ。

 

「え、俺またまずいことを言って…!?」

 

「違うの…私、嬉しくて…ダメだと思ってたのに、やっと名前で呼んでくれたから…!」

 

涙を手で払った部長さんが、涙にぬれながらも晴れやかな笑顔を浮かべて兵藤へ一歩近づいた。その手を差し伸べ、兵藤の頬を優しくなでた。

 

「それって…」

 

「私もあなたのことを愛してるわ、イッセー。誰よりもずっと、あなたのことが…」

 

告白を受け入れてもらえた喜びで兵藤の口元がほころぶ。そっと二人の顔が近づき、重なろうとしたその瞬間。

 

「――ッ!」

 

いよいよ盛り上がって来た二人に興奮したのか、紫藤さんがキスの瞬間を目撃せんとずいと前に出た。

 

「ふごぁッ!?」

 

「待てイリナ、前に出すぎ…!?」

 

それに押され、俺は奇声を上げて思いっきりドアに顔面をぶつけた。するとごつんと俺の顔面がドアを一気に押し開け、隠れて二人の様子を窺っていたみんなの姿が二人の前に晒された。

 

「あっ」

 

突然の俺たちの登場に二人はぎょっとした様子で俺たちを見る。

 

一連のやり取りを見られた二人は固まるが、俺たちもまさかこんな形でバレるとは思わなかったので驚きの感情で固まった。

 

「み、みんな…」

 

「見てたの…?」

 

震える声で告白シーンを覗かれた二人は問う。

 

「お、おめでとうございます!私も…これでお姉さまの後を追えますね!」

 

「あらあら、これから本格的に『浮気』を狙えますわね」

 

「ここからが本番だったりしますよね」

 

隠すことなく、アーシアさんや朱乃さん、そして塔城さんはようやく結ばれた二人を祝うと同時に次は自分だと盛り上がる。

 

「ごめん、僕も見てた」

 

「すごいものを見てしまったです…!」

 

「ついにやったのね、イッセー君!」

 

木場やギャスパー君、紫藤さんも笑顔をたたえて二人に祝福の言葉をかける。

 

「今夜だけは不純異性交遊を認めてあげてもいいですよ?」

 

ロスヴァイセ先生も教師としては見逃せないだろうが、二人の仲の邪魔はすまいとするのだった。

 

「おめでとう、二組目の誕生だね」

 

「俺たちは席を外すから、心行くまで二人の時間を楽しんでくれ」

 

俺とゼノヴィアも心の底から彼女らを祝福する。まあ、これから二人の募りに募った愛を存分に確かめ合ってほしい。

 

「皆様!家庭科室をお借りできたのでケーキを作ってまいりましたわ!」

 

と、吉報と大きなホールケーキを持って笑顔で現われたのはレイヴェルさん。祝福ムードに包まれていた空気をつゆ知らない彼女は、この状況にはてと首を傾げた。

 

「え、どうかしましたの?」

 

「もうあなたたち!私の大事な一シーンだったのに…!イッセーも…こ、こんなところで告白するなんて…!イッセーのおたんこなす!」

 

「ええ、俺のせいですか!?」

 

いよいよ恥ずかしさが頂点に達し、プルプル震える部長さんの顔がその髪色のごとく真っ赤になっていく。

 

バアル戦の勝利、学祭の成功、そして部長さんと結ばれた兵藤。ここ数日大変な思いばかりだったが、それに報いる十分すぎるほどのハッピーエンドが待っていた。

 

しばらくの間、旧校舎に俺たちの楽し気な笑い声が響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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旧魔王領にある森林の奥深くに存在する古びた屋敷。そこは神竜戦争で叶えし者となり、ディンギルに魂を売ったとある政治家の別荘でもある。アルルたちはそこを平時のアジトとして使っている。

 

「兵藤一誠と深海悠河の暗殺に失敗しました、大変申し訳ございません…」

 

その応接間でアルギスは深く主たるアルルに首を垂れ、その様子を後ろからジークルーネがつまらなそうに眺める。

 

「よい、お前たちの働きで当初の目的は達成できた。アザゼルたちの目がお前たちに向けられ、私はコキュートスに侵入することができたからな」

 

だがアルルは配下の失敗を責めるわけでもなく、感情の乗らない声で宥めた。

 

「しかし、私はあなた様から任された任務に失敗しました。如何なる処遇も受ける所存です」

 

「そう気に病む必要はない。まだ奴らを排除するチャンスはある上、お前の力が必要だ。お前の働きには今後も期待している」

 

今は断絶したアンドロマリウスの血族であり、ダークゴーストの力を得たアルギスは戦闘面で期待できる数少ない配下の一人。その他多くの叶えし者はは経済面など非戦闘面のサポートを行う者ばかりだ。彼を処断して貴重な戦力を失うわけにはいかない。

 

「もったいないお言葉でございます…」

 

アルルの赦しの言葉をかみしめるように、アルギスは瞑目した。

 

「ふん」

 

だがジークルーネにはそんなことはどうでもよかった。二人の始末を失敗したからと言って目の前のアルギスのように詫びる必要は全くない。彼女が忠誠を誓う存在は今は幽閉されているロキのみ。アルルとは上下関係はなく、あくまで利用し、利用されている横の関係と考えているからだ。

 

「…本当に奴を解放できたというのか」

 

「ユグドラシルの力を得た今なら容易いことだ。奴の回復には時間がかかるだろうがな。…アルギス、眼魂はどうなっている?」

 

「順調に進んでおります。英雄派も高いモチベーションで眼魂を増やしているようで、彼らが作ったものとオリジナルの15個を合わせると現在33個にまで増えているようです」

 

「順調そのものだな。これなら、予定までに数が揃いそうだ」

 

彼女らが英雄派に取引を持ち掛けたのは、彼らが京都入りする数日前のことだった。取引の内容は単純明快、ネクロム眼魂を紀伊国悠のドライバーに嵌めて曹操たちの操り人形にすれば、そこから得たデータをもとに英雄たちの力を秘めた眼魂を作る秘術を教えるというもの。

 

最初は情報がほとんどなく、得体の知れないアルル達に強い警戒心を抱いたが、紀伊国悠が持つ英雄眼魂と英雄という概念に強く興味を持ち、憧れを抱く彼らにとってそれは是が非でも受け入れたい取引だった。無論、戦力増強できる点からもこれから先、各陣営の強者やいずれはそのさらに上の神クラスとも一戦交えたいと考えていたため彼らは喜んで取引に応じた。

 

かくして彼女の目論見通り、ゴーストドライバーに嵌められたネクロム眼魂はゴーストドライバー内部のデータを読み取り、彼女らの手元に戻ることとなった。そして持ち掛けた取引通り、ユグドラシルの力を吸収したことで力を得た彼女は権能を駆使して眼魂創造の秘術を編み出し、曹操たちに提供した。

 

曹操たちが世界を股にかけて英雄たちの遺物から秘術を使って眼魂を増やす一方で彼女らも配下の叶えし者たちを動員して眼魂を増やしている。眼魂が増えればグレモリーと敵対する英雄派の戦力増強はもちろん、その力をより引き出せるドライバーとメガウルオウダーを持つ彼女らにとっても戦力の増強にもなる。

 

そして何より、彼女らの目的の達成に近づく。

 

「曹操たちにはもう少し頑張ってもらおうか。その次は…我らの番だ」

 

『創造』の二つ名を冠する神の暗躍は終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その戦艦は上も下もなく、距離感覚すらない次元の狭間にとって揺蕩う泡沫のような存在である。

 

次元航行母艦NOAHの来客を迎える応接間にてその男女は集っていた。

 

「兵藤一誠は真紅の鎧に覚醒したそうだな」

 

「今のところはシナリオ通り、ってところか?」

 

武器職人たちの頂点に君臨する武器職人、創星六華閃のガルドラボークとレーヴァテインが紅茶の注がれたカップを片手にポラリスと密談を交わしていた。

 

「ああ。アルギスたちに邪魔をされかけたが、悠がドレイクと共に撃退してくれたおかげでどうにか切り抜けられたよ」

 

紅茶を啜り、テーブルへそっと戻すポラリスは麗しい銀髪を撫でた。

 

ここ最近、艦の修理やアルル達の足取りを掴むための調査と激務を極めている彼女にとっては今回の彼らとの近況報告を兼ねた密談は半ば休憩のようなものであった。

 

「ほー」

 

「例のテスターのドレイクはなかなかやるようだな」

 

「当然じゃ、妾が手塩をかけてしごいてやったのだからのう。イレギュラーが多発する今、有事に備えて用意したもう一人の赤龍帝…オルタナティブ・レッド。それにドライバーは試作型じゃ。完成型ができれば、もっとスペックは向上する」

 

「頼もしい限りだ」

 

自信ありげに口角を上げるポラリス。その様子に安心感を得たとふっとガルドラボークは笑む。

 

彼女が作り上げたベルトはまさしくこれまでの旅の集大成でもある。その活躍は彼女の旅が無駄ではなかったことの証明にもなる。試作型のデータを集めて、より発展した完成型が出来上がるその時を彼女は心待ちにしていた。

 

「それより、いよいよだな」

 

「お、もうそんな時期か」

 

「そうじゃのう…さて、悠たちには悪いが…」

 

この時期で彼女たちが言葉にする例の時期を指すものは一つしかない。香り豊かな紅茶の注がれたカップを再びポラリスは手にする。

 

「兵藤一誠には、死んでもらわねばな」

 

赤い水面に、彼女の薄ら笑みを浮かぶのだった。




長いライオンハート編もようやく終わりました。めでたしめでたし。流石にミスラの話は盛り込めませんでした。

次回は英雄派のオリキャラ、信長メインの外伝になります。
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