ハイスクールS×S  蒼天に羽ばたく翼   作:バルバトス諸島

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初見の方用にウロボロス編まで追いつけるあらすじ回を執筆中です。既存の読者の方にも話を整理するのにぴったりな内容にしようと思っています。

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第137話 「学生の天敵」

数日後の学校の休み時間、普段なら生徒たちの談笑で賑やかな教室もその賑やかさが一段と沈んでいた。それもそのはず、中間テストが近づいているので真面目な学生は早くもその対策に取り組んでいるからだ。

 

そんなテスト間近でも賑やかさを失わない男たちはいる。

 

「素晴らしい提案をしよう。お前もAV鑑賞会をしないか?」

 

「なあ、もうテストなんて忘れてすんばらしい人気作品を一緒に観ようぜ」

 

と、勉強に励もうとする兵藤に悪魔のささやきをする松田と元浜。悪魔はどっちだ。

 

「くそ、勉強はしないといけないけどそれも死ぬほど見てえよ…!!」

 

二人が見せてくるAVのパッケージを血涙を流して歯を食いしばる兵藤。あいつの良心は今戦っている、欲望のままに女体を拝みたいという邪な感情と。

 

特にあいつは中間テストに加えて中級悪魔昇格試験が控えているのでなおさら勉強しないといけない。もはやそんなものに時間を割く余裕はないのだ。一応レイヴェルさんのおかげか、サーゼクス様の試験説明のやり取りでその時だけかと思っていたやる気が今でも継続して出ているみたいなので安心した。

 

「あーらあら、テスト前なのにエロ三人組はさかんねぇ、アーシアはどう思う?」

 

「はうう…そ、そんなものに頼らなくてもいいようにイッセーさん、私もエッチになりますから心配しないでください!」

 

もうだめだ、ピュアなアーシアさんの逃げ場がねえ!ゼノヴィアも桐生さんも全方位でアーシアさんをエロい女の子にしようとしてくる!

 

「アーシアちゃんたち、なんかえらいスケベな話しとるな…」

 

「き、気にするな、こっちはこっちで勉強しようぜ」

 

隣の席の天王寺が向こうを気にかけているが、こっちまで巻き込まれるわけにはいかない。

 

これまでロキ戦、修学旅行、バアル戦、学園祭と濃密なスケジュールを送って来たがさらにこれからは中間テストという学生の忌むべきビッグイベントが控えている。学生の身である以上は異形関係の仕事ばかり注力するわけにはいかない。メリハリをつけるためにも、ここできっちりいい成績を出さねば。

 

「天王寺、テスト勉強はどうだ?」

 

「必死こいてやってるで。いい大学行くために今のうちから勉強せなあかんしな」

 

天王寺は兄の援助に報いるためにいい大学を出て、一人で家族を養う兄の負担を減らすためにいい会社に勤めたいと常々語っていた。その将来の夢のような目標を本気で達成しようとする彼の姿を見ていると、彼の頑張りがむくれれるように、応援したいと強く思う。

 

「ま、そんなイケメンで成績優秀なら文句なし、彼女の一人はできるだろ」

 

「いやいやそんなぁ…!」

 

と、軽口をたたいてやると天王寺は照れくさそうににやにやしながら顔をそむける。天王寺の彼女と言えばと思い…正確には天王寺が鈍感すぎてその関係に発展できてないのだが、上柚木の方をちらりと一瞥する。

 

「…」

 

テストを控えているということで普段以上に勉強に集中しているかと思いきや、細い手でペンを握ったままそれをノートに走らせることもせず、ただ虚空をぼんやりと見つめている。いつもは冷静な上柚木だが、平時と違いどこか悲し気に肩を落としているように見えた。

 

「上柚木、元気ないな」

 

「せやな…どしたんやろ」

 

彼女の異変を気にかけるや否や、天王寺は早速上柚木の方へ足を運ぶので俺も彼の後を追う。

 

「綾瀬ちゃん、浮かない顔しとるけどどないしたん?」

 

「…実はパパが行方不明なの」

 

「えっ!?」

 

「ほんまか!?」

 

こちらに話しかけられると物憂げな双眸を向ける上柚木は元気の失せた調子で言う。こちらもまさか身内が行方不明になっているという家族の大きな問題を抱えていたとは思いもしなかったので、声を上げてしまう。

 

「電話をかけても出ないし、LINEも既読すらつかないの。一週間以上もこんなに音信不通になることなんてなかったから、パパと同じ遺跡の調査をしている考古学者の方に連絡を取ってみたけど、同じく会ってないし連絡がついていないみたいなの」

 

「それは大変やな…」

 

「向こうが捜索願を出してくれたみたいだけど…それでも音沙汰なし。テスト前なのにパパのことで気が気じゃないわ」

 

そう言って上柚木はブロンドヘアーの麗しい頭を深刻そうに抱える。勉強には人一倍真面目な優等生の上柚木が勉強に手がつかないほどだ。それだけ父親を敬愛していて今回の件がショックなのだろう。その傷心のほどは想像しきれるものではない。

 

だが彼女の父親は遺跡を調査している考古学者と聞いている。だとしたら…。

 

「…もしかして、遺跡の調査で事故に巻き込まれたとか?」

 

「遺跡の方も調べたけど事故の形跡は何もなかったそうよ。本当に警察もお手上げらしいわ…」

 

一番ありえそうな可能性だと思ったがそれもなしか。

 

…もしかすると、異形関係だろうか。それならここまで全く手掛かりがないのもうなずける。だとしても確証がない以上オカ研を動かすことはできないだろう。

 

「パパ…一体どこに行ったの?」

 

上柚木はともすれば涙をこぼすのではないかと言うような心細い、寂しげな声を漏らす。親しい人の悲しみに満ちた表情は俺の胸に深く堪えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ここに来るのも久しぶりな気がするね」

 

「ああ、本当にあの人は大丈夫なのか心配だが…」

 

その夜、俺はゼノヴィアを連れて久方ぶりにレジスタンスの母艦『NOAH』に足を運んだ。ヴァーリの襲撃を受けて艦内がだいぶやられたと聞いているが、特にその傷跡を廊下で見受けられることはなかった。

 

しかし、ポラリスさんは元気なのだろうか。話を聞く限り相当なハードスケジュールをこなしていたらしいからあった時には顔を真っ青にしてダウンしているのではないだろうかと心配でならない。一応来る前に一報は入れており、応接間で待つという一文だけがメールで帰って来たがそれだけでは今の彼女の体調を推し量ることはできない。

 

そして俺たちは彼女がいるであろう応接間にたどり着いた。ドアを開けると、そこはソファーやテーブルなど、華美さを抑えながらも客人を迎えるに相応しい内装と木造家具の独特な落ち着く香りが視覚と嗅覚へ一緒に飛び込んできた。

 

「久しぶりじゃの」

 

と、部屋に踏み入れたこちらを椅子に腰かけながらも軽い調子で出迎えたのはポラリスさんだった。一人スクリーンに向き合ってかたかたとノートPCのキーボードを叩いて作業に打ち込んでいたが、こちらの入室に反応してくるりと椅子を回して俺たちの方へ向き合う。入るまでの想像と違って以前と変わらない元気さを見せる彼女に俺は驚いた。

 

「…」

 

「なんじゃ狐につままれたような顔をしおって」

 

「いや、思ってたよりは元気な顔をしててびっくりした。相当忙しいからやつれてるんじゃないかと思って」

 

対ディンギル用の兵器開発にヴァーリ戦で壊れた艦内の修繕と彼女の仕事は彼女だけしかできないものが多く、寝ずに薬や魔法を使いながらずっと作業に打ち込んでいたと聞いている。ようやく対面した時には顔が見るからにやつれて酷い隈が目元にできているのではと思っていたのだが、全くそのようなハードワークを感じさせない健康っぷりだったので大いに驚かされた。

 

「忙しかったことは忙しかったのう。まあ妾の体は気にするな」

 

「…そうか、元気そうで何よりだ」

 

魔法や薬込みとは言え、ハードワークの後でここまで普通の状態でいられるものなのか。普段と変わらない様子の理由を深く教えてはくれなかったが、本人に問題なさそうならこちらもとやかくは問い詰めまい。

 

「それよりあんた、ゼクスドライバーオリジンだっけか。とんでもないものを作ったな」

 

ポラリスさんに関する話題で今一番熱いものといえばこれしかあるまい。ガンマイザーを一撃で倒し、アルギスを圧倒したあのドライバー、ゼクスドライバーオリジン。神滅具の一つにも数えられる赤龍帝の力を宿しただけあってその力は驚異的だった。

 

「ふっ、あれは妾の集大成とも呼べる兵器じゃ。試作型とはいえあれくらいやってもらわねば困るわ」

 

「試作型ってことは…完成型はあんたが使うつもりか?」

 

「勿論じゃ、妾はこの手でディンギル共を葬ってやらねばならぬのじゃからな」

 

ポラリスさんは自信たっぷりの笑みと共に頷く。あのドライバーの完成型を未だ力の底を見せないポラリスさんが使った時何が起こるのか楽しみだ。

 

そして話題の兵器を持つ男は、この部屋の壁に背を預けて俺たちのやり取りを静かに眺めていた。ゼノヴィアの視線が、ドレイクを捉えた。

 

「仮面の男…お前がドレイクか」

 

『…』

 

男の返事はない。答えるまでもないだろうというように喋らなかった。

 

「ゲームの裏で悠を助けてくれてありがとう、感謝するよ」

 

『…気にするな、あれは彼女の命令でやっただけだ』

 

男の態度はどこか素っ気なく、馴れ合いを避けるような冷めた調子だった。この男もポラリスさん同様、いや顔すら見せない時点でそれ以上に謎めいた存在だ。

 

「ポラリスさん、この男は何者なんだ?どういう理由でレジスタンスに所属し、テスターになった?」

 

「ふむ…」

 

早速とばかりに飛ばした俺の問いにポラリスさんは顎に手をやる。レジスタンスのリーダーはこの人だ、ドライバーのテスターにも選んだ以上この人はドレイクの全てを知っている、いやそうでなくてはならない。

 

もったいぶるように逡巡するポラリスさんの口から出る答えを、俺たちは今か今かと待つが…。

 

「あえて言うなら、この男には何もない。それ故妾は彼を選んだ。それだけのことよ」

 

「…つまり、秘密ってことだな」

 

「そうじゃな、ただ彼におぬしらに危害を加えようという意思はない。そこは安心してほしい」

 

相も変わらず秘密主義なことで、まあそんな返答をするだろうとは予想していた。が、逆に何も変わっていないということに俺は安心した。いつも通りのポラリスさんだ。

 

さて、ポラリスさんの元気を確認できたところでそろそろ本題に移るとしようか。

 

「…話はそれぐらいにして、あんたに頼みごとがある」

 

「言ってみろ」

 

俺の面持ちが真面目な色に一変したのを見て、ポラリスさんも応じる。

 

「アルル達のアジトを特定してほしい」

 

単刀直入に今やるべきこと、やりたいことをはっきりと言い放つ。それが今回彼女に会った最大の目的だ。

 

「ふっ、それくらい言われずともやっておるわい。まずは改めて進捗を報告しようか」

 

ポラリスさんは軽く笑うと虚空を撫でてスクリーンを出現させる。そこには冥界の地図などの様々な情報が所狭しと表示されていた。

 

「アルルのアジトが冥界の悪魔領にあることは確定じゃ。これまでの行動を調べ上げた結果、その可能性が極めて高い。アルギスの奴は冥界において高頻度で旧魔王派の名を騙るテロをやってくれたようじゃからな。あやつの意図は知らぬが、おかげで調査を進めることができたよ」

 

「そうか…」

 

やはり悪魔領にあることは間違いないか。サーゼクス様の見立ては正しかったようだ。

 

しかしこれまで俺たちと敵対してきたアルギスだが、そこだけが理解できない。派手にテロを起こすそれならわざわざ旧魔王派を名乗る必要もないだろうに、なぜ旧魔王派を名乗ったテロを起こすのか。

 

アルルに忠誠を誓っているようだからアルルの命令と言えばそれまでだが、あのアルルが俺たちイレギュラーや特異点と全く関係のないところで暴動を起こさせるとは思えない。俺としては、あれはアルギスの独断ではないかと思っている。ただその理由が全く持って今の時点では推測できないのだが。

 

「しかし冥界のどこにあるのかが未だに掴めておらぬ。ガルドラボークたちも動いてくれてはいるが、叶えし者を尋問してもアジトの場所だけは特定できずにおる」

 

「口が堅いのか」

 

「いや、表で動いている奴らは末端の存在、トカゲのしっぽよ。アジトも知らされずあくまで通信魔方陣で指令を受けて動いているにすぎないようじゃ。おそらくアジトを知っているのはアルギスのようにアルルと近しい側近のみじゃろう」

 

「近しい側近…そういえばあいつの配下ってアルギス以外知らないな。ジークルーネはあくまで協力関係みたいな感じだった」

 

これまで交戦した叶えし者はボスのアルルを除けばアルギスのみだった。話を聞く限りはそれ以外の叶えし者が出てきてもおかしくないのだが…他の叶えし者はどうしているのだろう。まさか戦える叶えし者がアルギスしかいないなんてことはないだろうし。

 

「…なら、どうやってアジトの場所を調べるんだ?お手上げじゃないのか?」

 

話の流れが見えないゼノヴィアが話に深く切り込もうとする。

 

叶えし者にすらアジトの場所がわからないようならいよいよどうしようもないのではないか。アルギスを捕えようにも居場所がわからないし、何よりその絶好のチャンスは失われている。

 

今思い返すだけでもあの時の自分にイライラしてくる。どうしてアルギスたちが逃走するよりも早く捕縛しなかったのか。捕縛できていればこんな状況にならずに済んだのに。

 

「策が尽きたわけではない。長らく足取りを掴めなかった奴らのことじゃ。慎重に動いてアジトを置くなら当然、そこを領地として治める叶えし者の悪魔に念入りに隠してもらう、あるいは手出しできないようにしてもらうと考えるのが普通じゃろう」

 

「…確かに、そうしてもらったほうが確実だろうね」

 

「これまでのテロを考えて拠点の位置は冥界の悪魔領、その上でさっき言ったようなことができる叶えし者の悪魔は神竜戦争時代から生きている古い悪魔しかおらぬ。彼らなら政治経験の浅い魔王を上回る政治力と影響力があるからのう。魔王さえ容易に手出しできないような拠点を置くにはうってつけじゃ」

 

「だったらどうすればいいんだ?」

 

彼女の話を聞いているとますますアジトに攻め入ることができないように思えてくる。ここからどう動けばいいのだろうか?

 

「簡単な話じゃ、隙がないなら隙を生み出せばいい」

 

「なに?」

 

俺たちの反応を面白がるようにニヤリとポラリスさんの口が三日月の形に笑む。

 

「具体的に言おう。アジトを提供しているであろう古い貴族悪魔の、ディンギルと通じている証拠とその他裏での悪行を暴いてリークし公表、その上でサーゼクスたち魔王がアジトにディンギル討伐と調査の名目でお前たちグレモリー眷属たちを送り込めばいい」

 

「おいおい…!」

 

「…!!」

 

俺が想像だにしなかった大胆すぎる策に俺とゼノヴィアは揃って驚愕した。

 

この人とんでもないことを言っているぞ。それは下手すれば魔王よりも影響力のある悪魔、あるいはその派閥に大きな社会的ダメージを与えるということになる。そんなことをすれば悪魔社会が揺らぐ事件になるのでは…。

 

「政治に疎い私でも恐ろしいことを言っているのはわかるぞ、それに待て、裏での悪行とは…」

 

「あの手の悪魔は必ず表沙汰にできないことの一つや二つはやっておる。長生きしておるのならなおさらじゃ。奴らはそれを権力と金で揉み消して闇に葬っているわけじゃが…それを勢力の垣根を無視でき、情報収集に長けた妾たちが手に入れ、サーゼクスたち現魔王派、そして民衆にリークして公表する。そうすれば政治力で奴らに勝てぬサーゼクスも強い民意の後押しを得て議会で積極的に追及でき、奴らを追い詰める突破口が切り開ける」

 

「確かに、昨日サーゼクス様たちも苦い顔をしていたからな…それならどうにかなりそうだ」

 

なるほど、昨日は厳しいと思っていたがポラリスさんの策のおかげで希望が湧いてきたぞ。

 

それに部長さんたちが違うだけで一般に悪魔とは欲深く残忍な面を持っているとされている。特に古い因習や固定観念にどっぷりかつディンギルに裏で寝返る程の強欲な面を持っている悪魔なら、突かれたら痛い箇所は山ほどあるはず。

 

事実、ディオドラだって聖女関係でえぐいことやらかしてたしな。深堀すればそれに匹敵する、あるいはそれ以上に醜悪な事実も出てきそうだ。

 

「既に怪しい貴族たちの後ろめたいスキャンダルの証拠は多く押さえておる。元々アジトの特定とは関係なく叶えし者を潰すために進めておいたのじゃが…脱税、恫喝、癒着、眷属悪魔への仕打ちや裏カジノ、闇組織との関係などなど言葉にできないようなものも含めて違法行為を上げればきりがない。これもすべてイレブンの働きのおかげじゃ、あやつの働きには頭が上がらんよ」

 

「おお!」

 

「イレブンの奴、やり手だな!」

 

それを後押しするような進捗報告が俺たちを喜びに沸かせ、ポラリスさんの作戦がいよいよ現実味を帯び始める。

 

俺たちの知らない所でイレブンさんはそんなことをやってくれていたんだな。今度労をねぎらうためにおいしいものの一つや二つ用意しておこう。というか、それだけの働きをしてくれたのだから一度ゆっくり休息を取ってほしいものだ。

 

「ただ、問題はアジトの場所及び領土内にアジトがある悪魔が誰なのかを特定しなければならないというところじゃ。そこが今難航しておる所よ」

 

「リスト内に上がっている悪魔なら一斉にリークしてしらみつぶしに攻めればいいんじゃないか?」

 

難しいと首を傾けるポラリスさんに疑問を投げかけるのはゼノヴィア。いずれにせよ奴らとはいずれ対決しなければならない敵なのだ。怪しい奴はモグラたたきのように片っ端から潰していくのも一つの手だが。

 

「ダメじゃ、スキャンダルで影響力が落ちるとはいえ老獪、同じ追い詰められた古株同士で対サーゼクスで結託されては不味い。あくまで相手を一人に絞りこむしかない」

 

ポラリスさんは険しい表情でかぶりを振る。政治力で差があるのは変わりないのだから複数を同時に相手するより一人に絞った方が確実で安全だということか。

 

古い悪魔には現魔王派も煮え湯を飲まされてきただろうし、その鬱憤を晴らすにも積極的にサーゼクス様やそれに与する悪魔の政治家たちが動いてくれそうだ。これには冥界のテレビやメディアが大賑わいするだろうな。

 

「だが、リークして追い詰めたとしても私たちがアジトに乗り込む前に奴らが拠点を移すのでは?」

 

「おそらくそれはできないと考えておる。何せ、奴らの現段階の目的は神域と竜域の接続じゃ。世界をつなぐという大掛かりなことを為すには何らかの大規模な装置あるいは魔方陣などが必要になる。当然、それを隠すのはアジトしかない。誰にも気づかれない間に長い時間をかけて用意したであろうそれを簡単に破棄、あるいは短期間での移動は困難じゃろう」

 

「なるほど…」

 

アジトにしっかり設備を置いてしまっているからまるまる移動はできないし、それと同じものを用意するのはまた時間がかかるから簡単にできないということだな。

 

「ざっと、今考えている作戦はこんなところじゃな」

 

「あんたの考えはわかった。サーゼクス様やアザゼル先生を頼れそうにない以上はあんたが頼みの綱だ…妹を助けると言っておきながらあんたに助けられっぱなしで申し訳ないがどうか、頼む」

 

「私からも頼む。悠の助けになってほしい」

 

俺が深く頭を下げ、真剣に頼み込むとゼノヴィアもそれに追随する。

 

正直、今の俺にはこのポラリスさんの策に頼るしか方法がない。いつ向こうから出てくれるかわからないのなら奴らのアジトに直接乗り込んで叩く、そうするほかに凛を助ける手はない。奴らのアジトにたどり着くために彼女が提示したプランはまさしく、迷える旅人を導く北極星のようだった。

 

「うむ、妾も手は尽くす。妾とて期限を設けようとも表で奮闘するおぬしの助けになりたいのじゃからのう。成果が上がるまで時間がかかるじゃろうが、どうか待ってほしい」

 

「ありがとう…!」

 

感謝の念が溢れて言葉が震えた。

 

10月の終わりまで刻一刻と近づくなか、この一夜で俺は大きな希望を得た。ポラリスさんの策が実現すればディンギルとの戦いで大きなイニシアティブを取ることができるし、何よりサーゼクス様たちとの協力関係を本格的に構築できる一歩になる。これは非常に大きい。

 

凛を必ず助ける、その決意をより固くして俺とゼノヴィアはNOAHを去るのだった。

 




ポラリスも裏でいろいろ動いています。

次回、「世界最強の来訪者」
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