そして最近発表された鉄血のオルフェンズG参戦のMS、新ヴァルキュリアフレームのジークルーネですが…困ったことに同名のヴァルキリーが原作D×Dで登場する可能性が出てきてしまいました。
何故かというと原作者の石踏先生がご存知の通りガンダムファンであり、アザゼル杯のアポロンチームのメンバーのヴァルキリーたちは鉄血のオルフェンズに登場したグリムゲルデやヘルムヴィーゲ、オルトリンデと言ったヴァルキュリアフレームと同名のヴァルキリーです。他にもヴァルキリーがいる中でのこのチョイスは間違いなくオルフェンズ由来でしょう。
そのため、今後原作D×Dで新しいヴァルキリーのキャラが登場した場合、今回鉄血のオルフェンズの新MSとして登場したジークルーネの名が選ばれる可能性が否定できません。えっ、真神のティアマトと龍王のティアマットはどうなのかって?それはまた追々…。
万が一の場合、蒼天に登場するキャラ、ジークルーネの名前を変更します。今はまだ可能性の段階ですが、もしかするとそうなるかもしれないとだけ言っておきます。
ただ蒼天を抜きにした一鉄血ファンとしては新ヴァルキュリアフレームとガンダムフレームの登場は非常に嬉しかったです。いつかは両方コンプする日が来るといいですね。
Count the eyecon!
現在、スペクターの使える眼魂は…
S.スペクター
1.ムサシ
2.エジソン
3.ロビンフッド
4.ニュートン
6.ベートーベン
7.ベンケイ
9. リョウマ
10.ヒミコ
11.ツタンカーメン
12.ノブナガ
23.コロンブス
京都での決戦ぶりに遭遇した英雄派のリーダー、曹操。奴は俺たちの敵意の視線を一身に浴びてなお、その余裕の態度を崩さずに座ったままぱちぱちと拍手を始める。
「先日のバアル戦での勝利、おめでとう。戦いを求める者としては禁手の鎧を纏っての殴り合いなどこれ以上ないほどに興奮する一戦だったよ。やはり君たちグレモリー眷属は素晴らしい。若手悪魔ナンバーワンの称号に恥じない実力だ」
「テロリストに褒められてもうれしくないわね」
曹操の賛辞になびく部長さんではない。毅然とした態度で厳しい言葉を返す。
「おっと、あなたは初めまして…ではないな。リアス・グレモリー、京都での初対面は中々に刺激的だったが」
「言わないで!思い出すだけでも恥ずかしいわ…」
曹操が過去を思い返して苦笑いすると、名指しで呼ばれた部長さんは顔を羞恥の感情に赤らめて声を上げた。
後から聞いた話では二条城での決戦にて着替えの真っ最中に部長さんが魔方陣で召喚され、奴らが見ている前で兵藤が彼女の乳首を押したのだとか…話がぶっ飛びすぎて聞くだけで頭が痛くなりそうだ。
相も変わらずの神々しい存在感を放つ聖槍を携えた曹操の視線が、俺たちの後方にいるオーフィスへじろりと動いた。
「そして…オーフィス。ヴァーリたちに連れられてどこにお出かけかと思ったら、まさか彼らと行動を共にしていたとはね。驚いたよ」
「驚いたのはこっちもにゃ。ヴァーリの方に行ってくれたと思ったんだけどねん」
「向こうには別動隊を送った。今頃彼らと交戦しているだろう」
曹操と黒歌。普段は余裕をその面持ちにたっぷり浮かべる彼らの視線が交錯し、静かながらも火花が散ったように見えた。
別動隊だと?バアル戦の前のヴァーリからの曹操側をけん制しているようなメッセージからあまり仲がよろしくないのは感じていたが、いよいよ本格的な喧嘩を始めるのか?
「…なあ黒歌、ルフェイ。お前らの間で何が起こってんだ?」
状況をイマイチ飲み込めていない兵藤が、後方のルフェイに話しかけた。その傍にはいつの間にかに出現したのか、大型犬サイズのフェンリルが控えており曹操たちに鋭い睨みを利かしていた。
「えっとですね。ことの発端はオーフィスさまが『おっぱいドラゴン』に興味をお持ちだったということで、ヴァーリさまがアザゼル総督を通じて出会いの場を提供されました。それと同時に、ヴァーリさまはオーフィスさまを狙う輩がいるという情報を掴んでいたため、それをあぶりだすためにオーフィスさまを囮にして今回の行動に出た、といったところです」
「仮にもお前らのボスを囮にするのかよ…」
自由人の集まりであるヴァーリチームの一員らしく、こんな状況でも自分のペースを崩さない明るい声色のルフェイの説明に珍しく兵藤の突っ込みが入る。
しかし派閥の対立のみならずそれを総括するボスをつけ狙う輩まで現れたか…禍の団、ほっといたら俺たちが戦わなくても自壊するんじゃないか?
「そのためにオーフィス様をアジトからお連れすると同時に、美猴さまにもニセのオーフィス様に変化して囮になっていただいている間に本物のオーフィス様をおっぱいドラゴンさんのもとへお連れしました」
「前々からオーフィスが今代の赤龍帝に興味を示していることは知っていた。それにヴァーリのことだから無策にオーフィスを連れ出すことはしないと思っていてね。俺と幹部の二手に分かれて両方に探りを入れ、奇襲を仕掛けてみたらこの通り、こっちは大当たりを引くことができた」
…みんな揃ってヴァーリの方に行けばよかったのに。奴らの勘が働いてこっちに出向いてきたことが心底残念でならない。
こちとらテスト期間なんだ。厄介事にしかならないお前らの顔は今のシーズン最も見たくない顔ランキング堂々の一位だというのに。
「内輪揉めならこっちを巻き込まないでもらいたいが」
「それがそうもいかなくてね」
「だろうな…それはともかくお前、眼魂を新しく作っているそうだな。何を企んでいる?」
アルルが俺のドライバーから抜き取った眼魂のデータをもとに編み出した眼魂を新たに創造する秘術。それは英雄派にも流出し、アルギス共々多くの新たな眼魂が生み出されている。ドライバーやメガウルオウダーといった眼魂を使用するためのシステムを持たない奴らが眼魂を増やす目的は何なのか?
「さらなる英雄の力だよ。英雄を目指すためには力が必要なんだ。君も我々のもとに来るなら、眼魂を譲ってもいいが?」
「しつこい男は嫌われるぞ」
「冗談だよ。今更俺たちになびく男じゃないのはわかっている」
嫌悪感を込めて拒否の回答を示すと、曹操はふふと笑う。半分冗談じゃないだろうに、よく言う。
「曹操、我を狙う?」
これまで沈黙を保ち続けていた奴らの長、オーフィスがいよいよ口を開いた。その声色には反旗を翻され、裏切られたことに対する失望も怒りもない。
「率直に言えばそうだね。我々にはオーフィスが必要だが、あなたは不要だと判断した」
曹操は悪びれる様子もなく、堂々と組織のリーダーに対して敵対宣言をしてのけた。
「そう」
「ああ。…物の試しだ、無限の龍神がどれほどのものか、少しやってみるか」
一派閥の行く末を決めるにはあっさりとしたやり取りののち、よっと言いながらようやくソファーから腰を上げた曹操。その槍の先端がかしゃりと開き、ビームサーベルのような光刃が伸びる。
その次の瞬間には曹操の姿は消えていた。
「消えた…!?」
ずぶり。驚く間もなく続けて生々しい肉の音が聞こえた。咄嗟に音の出どころへ目を向けると、いつの間にかオーフィスの間近に迫っていた曹操が彼女の腹に聖槍を深く突き刺していた。
「オーフィス!?」
「輝け」
そして追い打ちをかけるように龍神に凶刃を向ける聖槍が光を放ち始める。次第に増していくその光量は止まるところを知らない。
「これはまずいにゃね。ルフェイ、やるにゃ」
「はい!」
ヴァーリチームの二人が動いた。聞いたこともないような言葉をぼそぼそと共に呟くと、俺たちの周囲に禍々しい霧が発生し、ゲオルクの霧のごとく視界を覆い始める。ゲオルクの霧がひやり、ぬめりとしたものならこの霧はどろどろとした煙のようだ。
「光の力を大きく軽減する闇の霧です。かなり濃いのであまり吸い込まないようにしてくださいね!」
ルフェイの説明を聞いてすぐさま俺たちは口を鼻を手で覆った。
聖槍の光は悪魔に対して必殺の効果を持つ。その対策がこれか。今集まっているメンバーは大半が悪魔だし、ここで聖槍の力を解放されるのは非常にまずいな。
聖槍の光は霧が展開されていてもすさまじく、黒い幕の中から光がちらちら見え隠れする。さらには溢れる光がホテル内を一気に照らし出した。まるでこのままオーフィスを滅さんと言わんばかりに聖槍の出力を上げているのだ。
「なんて光だよ…!」
数十秒後、やっと光が収まると黒い濃霧も役目を終えたと言わんばかりに失せる。そして俺たちはどうなったとすぐに光の中心であったオーフィスと曹操に目線を向けた。
光が収まってなお、聖槍に貫かれたままのオーフィス。致命傷なのは見てわかるが、全く傷口から血は流れないし、彼女の表情に苦悶の色は全くない。
曹操がようやく聖槍を彼女の腹からずっと引き抜いた。明らかになった傷口は全く何もない、ただ向こう側が見えそうなほど綺麗な風穴であり、瞬時に傷は塞がっていった。
曹操は塞がった風穴を見て、やはりとあきれ顔で鼻で笑った。そして俺たちの攻撃を予知したのか、軽やかなステップで後退した。
「君たち悪魔ならわかると思うが今の攻撃は悪魔であれば即死だ。それ以外の相手…神仏でも大ダメージは必須の一撃だった」
「…実体がないのか?」
「実体はあるさ、魂だけの存在ではない。紛れもなく彼女はここに存在している。最強の神滅具すら致命傷を負わせるには足りない。ダメージは与えているが、無限を削るには至らないんだ」
無限…つまり、どれだけ攻撃してもゲームで言う体力が減らない、ということか?ライザー以上の不死身じゃないか。
しかしそれを聞いていよいよオーフィスの恐ろしさを理解した。今まで最強のドラゴン、無限であることは聞かされてきたが無限とは具体的にどういうことなのか、実際の戦闘は見たことがなかった。
そんな彼女の無限を曹操はどういうものであるかを俺たちに見せつけた。信長のあらゆる攻撃をはねのける防御も脅威だが、やはり何をしても効かない、反応がないのが一番恐ろしいと気づいた。
「そして攻撃をした俺に反撃しない。何故か?簡単だよ、いつでも殺せるからさ。でもグレートレッド以外に興味がないからしないんだ。全勢力で二番目に強いとされている破壊の神、シヴァ神と一位の彼女の間には絶対的な差がある。これがオーフィス、無限そのものだよ」
「…なら、不要と言ったお前らでもオーフィスを倒せないじゃないか」
あれだけ偉そうに正面で啖呵切った割には自慢の聖槍も効いていない。このままだと俺たちとオーフィスに無様に返り討ちされる未来が待つだけだが?
「それがそうじゃないんだよ」
ニヤリと意味深に笑む曹操の言葉に割り込むように、ブンとルフェイと黒歌の足元に魔方陣が出現した。
「にゃにゃ、あんたがお喋りしてくれてる間に繋がったにゃ。行くよ、ルフェイ」
その魔方陣の中央にフェンリルが足を踏み入れる。同時に光が弾け、フェンリルと入れ替わるようにその男の姿があった。
「ご苦労だった、ルフェイ、黒歌。…曹操、久しぶりだな」
銀髪の憎き白龍皇、ヴァーリ・ルシファー。テロリストでありながら味方なのか敵なのかイマイチ釈然としない立場にあるやつは同胞たる彼女らの労を労う視線をかけた後、相対する敵たる曹操に視線を向けた。
「これはこれは白龍皇様のお出ましか。見たところ、フェンリルと入れ替わりで転移したみたいだが」
「フェンリルには俺の代わりにアーサー達と共に別動隊を叩いてもらうことにした。貴様がこっちに来ることは当然想定していたのでな。…しかし、オーフィスを相手に曹操とゲオルク、そして信長の三人だけとは随分とオーフィスと俺たちを甘く見ているようだが」
「君たちから見ればそうかもしれないが、事実、我々三人で十分なんだよ」
俺たちもヴァーリに味方の戦力として換算されているような物言いだな。あまり気に入らないけど、この状況なら事実そうだが。
「その強気の理由は例の『龍喰者《ドラゴン・イーター》』か?大方、龍殺しの神器か、新たな神滅具といったところだろうが…それか信長、貴様の禁手がそうなのか?だとしてもオーフィスを太刀打ちできるとは到底思えないな」
「ははっ、残念ながら俺の禁手は龍殺しじゃねえ。もしオーフィスを倒せる龍殺しならとっくに屠ってる」
見当違いもいいところだと信長は笑ってヴァーリの予想を否定する。今のやり取りを聞く限りヴァーリも信長の禁手を把握していないようだが…。
「違うんだよ、ヴァーリ。『龍喰者』は我々が作ったものじゃない、既に存在していたものに我々がつけたコードネームに過ぎないんだ。作られていたのさ、聖書の神によってね」
意味深な言葉に意味深な深い笑み。いよいよその龍喰者の正体が気になると、曹操は傍らのゲオルクを一瞥する。
「やるのか、曹操」
「ああ、龍神に二天龍、彼のお披露目の場としてこれ以上の舞台はない。今こそ、無限を食らう時だ」
「了解、地獄の釜の蓋を開けようか…!」
ゲオルクは待ってましたと言わんばかりの不敵な笑みで曹操に応じる。
瞬間、ゲオルクは魔方陣を開く。その規模は広いロビー全体を巻き込むほどだ。その次にホテル全体を激しい揺れが襲った。
「くっ…」
「なんだ…?」
揺れにこらえながらも俺たちは魔方陣から注意を離さない。すでに直感で悟っている。あの魔方陣は奴らの作戦の根幹であり、とてつもない何かだということを。
「来るのか…龍喰者《ドラゴン・イーター》…!」
〈BGM:怨讐の魔刃、尽きぬ恨み(覇眼戦線2)〉
不意に魔方陣からどす黒い臭気のようなものが発せられる。あれはオーラだ。普段は変身しなければオーラを認知できない今の俺にもはっきり認識できるレベルの濃密なオーラ。
そしてこれほどまでに禍々しく、嫌悪感を感じたものはない。体の芯まで凍てつくような寒気がする。それだけではない、この場から一刻も早く退避したい強い忌避感に駆られる。
まだそれは姿を現してない。オーラだけでこれだ。一体何がお出ますと言うのか。
そしてそれは徐々に魔方陣から浮上していく。
巨大な十字架。それに磔にされた何か。それをさらにきつく、頑丈に縛る不気味な文様が刻まれた拘束具。
それだけでも十分異様だが、その全貌が完全に明らかになった時、俺はあまりの異様さに心が恐怖で震えた。
「なんだ…これ……」
本能で理解した。これはこの世にあってはならないものだ。存在そのものが世界を冒涜している。
はだけた上半身は黒い翼を生やした堕天使だが、下半身は鱗のある蛇の姿。目にも取り付けられた拘束具の隙間から血涙が流れ、全身の至る所に太い釘が打ち込まれている。
こいつははたして堕天使なのか、蛇なのか。どれほどの所業をすればこんなにも惨い仕打ちを与えられるのか。その見ていられない姿に、何者かの強い怨嗟がひしひしとオーラと共に肌に伝わってくる。
『オオオオオオオオオオォ…!!』
苦悶の呻きにも自身の仕打ちへの怒りともつかない堕天使の不気味な低い叫びが、フロア内に響き渡る。叫びと同時に口から唾に混じった血が飛び散って、床にべちゃりと落ちる。
さらに奴の全身から、しゅうしゅうと黒いオーラが滲み出るように溢れ、ロビー中に広がり始めた。触れただけでも不快感がこみあげてくるオーラに、意識せず一歩ざりと下がってしまう。
「そんな…コキュートスの封印を解いたのか…なんてことを…!!」
先生は異形の存在を見て、驚きに肩を震わせると曹操たちを強く非難するような言葉を振りしぼった。
「かの者は『神の毒』であり、『神の悪意』。蛇とドラゴンを嫌った、今は亡き聖書の神の呪いを一身に受けた天使でありドラゴン。名を『龍喰者《ドラゴン・イーター》』サマエル。その存在を抹消された禁断の存在さ」
「なんですって…!?」
「なに!?」
「こいつがサマエルだと…!!」
堕天使兼ドラゴン…?そんな珍妙なものが世界に存在していたのか!聖書の神に呪われた上に存在を抹消されたなんて一体過去にこいつは何をしでかしたんだ…?
曹操が口にしたその名が俺と兵藤以外の全員に凄まじい衝撃を与えたらしく、みんな目を見開いて驚愕に支配された。
「聖書の神の呪いだと…?」
曹操の解説だけで十分に危険な存在であるのは理解できるが、俺と兵藤以外にはそれ以上の意味がある存在のようだ。でなければここまでサマエルの名だけで驚いたりしないだろう。
「先生、あれは何なんですか?ドライグも怯えているし、見るからにヤバそうなんですけど…」
不気味なサマエルを前にした兵藤が先生に問いかける。赤龍帝のドライグが怯えるなんてよほどのことだ。
「お前でもアダムとイブの話は知っているだろう?」
「ええ、まあ」
「蛇に化けて、二人に知恵の実を食べるように仕向けたのがあの天使だ。奴の行動は聖書の神の怒りにふれ、神聖である故本来ありえないはずの神の悪意や呪いを受けた。その一件以来、神はドラゴンや蛇嫌いになってな、その影響で聖書にもドラゴンと蛇が悪として描かれるようになった」
「マジですか!?」
「そして何より、奴にかけられた呪いのせいで存在自体が最悪の『龍殺し《ドラゴンキラー》』になっている。おまけに奴の強すぎる猛毒はドラゴンを絶滅させるだけでなく、ドラゴン以外の生物にも影響を与えかねない。存在そのものが危険なため、地獄の最下層のコキュートスで永遠に封印されるはずだったんだが…」
「最悪のドラゴンスレイヤー…!!」
アダムとイブの知恵の実の話は俺も知っているが、まさかあの堕天使が事件を引き起こした張本人だったとは…!とんでもない大物を用意してきたな!
それに究極のドラゴンキラーという特性は今回曹操が本気で俺たちを潰しにかかっていることの証拠だろう。二天龍という強大なドラゴンをエース戦力にする俺たちを相手にするにあたって、これ以上に最適なものはないだろう。
「…コキュートスに封印された奴がどうして…いや、まさか、ハーデスの野郎」
「察しの通りだよ、総督。ハーデス神殿と交渉し、何重にも制限をかけたうえで召喚を許可していただいた」
「野郎…!そんなにゼウスが俺たちとの協力体制に入ったのが気に入らなかったのかよ!!」
非情にも自身の推測は正解だと告げる曹操に、先生の顔が怒りにゆがむ。
「ハーデス神が裏切っただと…」
サマエルが封印されているという地獄はハーデス神の管轄。そこで厳重に封印されていたであろうサマエルを引っ張り出すなんてそれこそハーデス神の一存がなければ不可能だ。
バアル戦の前に会ったあの骸骨神が曹操側に付いた事実に俺も動揺を隠しきれなかった。ギリシャ神話の冥府の神、ハーデス神。知名度も実力もトップクラスの神が曹操たち英雄派の内通していた。全勢力でも上位の力を持つハーデス神のこの行動は世界を揺るがしかねない。
オーフィスと曹操、禍の団の内部分裂だけかと思いきやとんでもない事態になってきた。あの神が俺たちに対していい感情を抱いていないのは感じてはいたけどまさかこんなことをしでかすほどに迷惑がっていたとは思いもしなかった。
和平を求める俺たちのやり方を良しとしない連中がいるのは知っている。このサマエルはその連中の怒りと不満の象徴とでもいうのか。
「さて、聞いての通りサマエルは究極の龍殺しだ。ドラゴンなら確実に殺せる。赤龍帝、ヴァーリ。君たちの対策としてサマエルよりもうってつけな相手は他に存在しない。赤龍帝が持ってるアスカロンなんて、彼と比較すれば爪楊枝だよ」
「アスカロンが爪楊枝かよ!」
十字架に縛られたサマエルを見上げる曹操が視線を下ろすと、槍の切っ先を兵藤の左腕目掛けて指す。
仮にも名のある聖剣のアスカロンが爪楊枝呼ばわりか。究極のドラゴンスレイヤー、もしや二天龍も一撃で殺せる代物か…!?
「…さて、前振りはほどほどに実験を始めようか」
〈BGM終了〉
説明は十分だろうと愉快気な笑みを浮かべた曹操が、ぱちんと指を鳴らした。
「喰らえ」
その一言で、俺たちの間を糸を縫うようにして俊足で何かが潜り抜けていく。遅れてそれを目で追えば、オーフィスがいた場所にどす黒いぶよぶよした塊があった。それから一本だけ伸びた触手はサマエルの口へとつながっていた。
「オーフィス!?」
「なんなのこれ!?」
その光景を見てようやく理解した。奴らの真の目的は二天龍ではない。究極のドラゴンであるオーフィスに、究極のドラゴンスレイヤーであるサマエルをぶつけることだ。今まで誰かがこの二匹が戦えばどうなるだろうかと想像はしたものの決して実現することのなかった最強対最凶の組み合わせが今、現実のものになっていた。
「おい、オーフィス!返事をしろ!どうなっている!?」
先生は必死に黒く濁った液体の中のオーフィスに呼びかけるが一向に返事はない。何がどうなっているのかはわからないが、とにかく非常にまずいことが起こっているのはすぐにわかった。
それを見た木場が即座に聖魔剣でサマエルとオーフィスを繋ぐ黒い液体を斬りつけるが、液体は何ともなく、逆に液体に触れた聖魔剣の刃が綺麗に消える結果に終わった。
「切れない?いや、この触手は攻撃を消し去るのか?」
刃がなくなった聖魔剣を消して、新たに作り直した聖魔剣で今度はサマエルとオーフィスを繋ぐ触手を切るが、やはり刃が消失するという同じ現象が起こるだけだった。
「俺がやる」
次に動いたのはヴァーリだった。禁手を発動しないまま、背中に神器の光翼を顕現させる。
〔Half Dimension!〕
音声と同時に半減の力が周囲に広がり、黒い塊に浴びせられる。ロキ戦や和平会談の時にも見た技だが、どうやら禁手を使わずとも発動できるようになったらしい。奴もまた進化したようだ。
白龍皇の特性である『半減』の効果で空間がめきめきとゆがむが、黒い塊だけは何事もなく健在のままだった。
空間に作用する攻撃が聞かないなんて一体この触手は何でできているんだ…!?
「無駄か…!」
「なら消滅魔力で!」
部長さんが黒い液体目掛けて得意の赤い消滅の力を秘めた魔力をぶつけるが、やはり液体が失せる様子はない。
俺たちが攻めあぐねている間に、オーフィスを包む黒い塊から触手を通じてごくり、ごくんと何かがサマエルの口へと流れていく。まるでストローでコップの中のジュースを吸うように。
あいつ、まさか無限のオーフィスを食っている?力をそのまま吸収しているのか?
もしそうなら、究極のドラゴンスレイヤーが無限の力を得たら俺たちでは到底太刀打ちできなくなってしまう。一刻も早く、サマエルを止めなければ。
「俺が行く!」
「おい待て!!」
そう思っていると、話の間にカウントを終えた兵藤が赤い禁手の鎧を装着して飛び出そうとするのを俺は大慌てで肩を掴んで止める。
「どうしてだよ!?」
「兵藤、お前は手を出すな!ドラゴンのお前が戦うわけにはいかない!ここは俺がやる!」
相手は究極のドラゴンスレイヤーだ、オーフィスを閉じ込めるこの物体はその一部と言ってもいいだろう。恐らくドラゴンにとってはほんの一滴浴びるだけでも即死する猛毒だ。肉弾戦主体の兵藤とは相性が絶望的に悪い。
だが、手数の多くドラゴンでない俺なら対処できるかもしれない。すでに一つだけ策が思いついている。
〔ソウル・レゾナンス!〕
その策を実行するべくドライバーにプライムトリガーを接続し、素早く眼魂を装填する。
〔アーイ!ヒーローズ・ライジング!〕
「変身!」
〔カイガン!プライムスペクター!英雄!裂空!勇壮!激闘!ブレイヴ・イグニッション!〕
ドライバーから溢れ出す英雄ゴーストたちと解放された霊力を纏い、プライムスペクターへと変身完了した。
「これならどうだ」
〔ダイカイガン!ガンガンミロー!ガンガンミロー!〕
手元に召喚したガンガンハンド 鎌モードをドライバーにかざし、10体分の英雄眼魂が生み出す増大した霊力を鋭利な刃に宿す。出力を上げれば空間を切り裂けるほどの刃がギラリと輝いた。
〔ハイパー・オメガファング!〕
「ハァ!!」
光刃煌めく鎌を振り抜き放たれた斬撃が宙をひた走りながら形状を変えて、やがて黄金に輝くピラミッド型に変化する。
レイナーレを倒した時のように、サマエルを別次元へ幽閉して次元ごとオーフィスと奴を隔てれば吸収を止められるはず!
空中で存在感を放つピラミッド状のエネルギーが別次元へとつながる黒い穴をぽっかりあけた瞬間、殺到した光の刃がピラミッドを両断し、無残にも消失させてしまった。
「これは看過できないのでね」
そうは問屋が卸さないと妨害したのは聖槍を振るった曹操だった。流石に奴も実験とやらを見物するだけではないか!
「俺たちの実験の邪魔をするんじゃねえよ」
曹操の仲間である信長もまた俺たちの動向に対して静観を決め込むばかりではなかった。黒い塊にもお構いなしに、神器で作り出した宝石の矢の驟雨を降らせる。その威力は渡月橋での戦いで馬鹿にならないレベルであるのは知っている。
「下がれ!」
先生の一声で俺たちは慌てて後退して矢の範囲から逃れる。ロビーの床に着弾した矢は、軽く床をえぐっていた。その範囲内にあった黒い塊に命中した矢はもれなく木場の聖魔剣のように消失した。
オーフィスを吸収するサマエルと、それを守る曹操と信長。敵の守りは盤石のようだ。
「先生、何かオーフィスを助ける手は!?」
「無理だ!!攻撃を無効化されるんじゃどうしようもねえよ!そもそもオーフィスが脱出できないって時点で相当ヤバい状況なんだよ!!」
この状況を打破する一手はないかと兵藤に問われた先生はこれまでにないほどの差し迫った焦りを見せている。
知っての通り、オーフィスは世界最強のドラゴンだ。それが力づくでも脱出できない攻撃を俺たちが対処するのは困難を通り越して不可能と言ってもいい。
だが奴らの思惑通り、不可能を不可能のまま放置するわけにはいかない。どうにもサマエルの様子を見ていると、奴らはオーフィスをただ倒すだけのつもりではないように思える。何としてでも奴らの目論見を阻止しなくては。
「奴もドラゴンなら、私がイッセーのアスカロンを使えば…」
「やめとけ、ドラゴンではあるが最凶のドラゴンスレイヤー相手じゃ何が起こるかわからん!!」
ドラゴンではないためサマエルの影響が少ないゼノヴィアが提案するが、それも一蹴される。
「しかしこのまま放っておけないですよ!!」
「わかってる!だが…!」
どうにか打つ手はないかと歯噛みして、サマエルにごくんごくんとゆっくりとだが吸収される黒い塊をねめつける先生。
「…さて、慌てふためく君たちの姿を見物するのも楽しいが、俺も動くとしようか。あまり邪魔をされて計画に支障をきたすわけにはいかないのでね」
サマエルへの対処法を模索する俺たちへと、聖槍を携えた曹操が一歩進み出た。
「上位神滅具持ち二名に高位の聖剣使い、聖魔剣、グレモリー家次期当主、堕天使総督…いやはや、口にするのも恐ろしい面子だよ。相手にとって不足なしだ」
首魁たる曹操自らが本格的な交戦の意志を見せたことで、ヴァーリもそれに応じるように禁手の鎧を纏う。先生も人工神器のファーブニルの鎧を装着し、交戦に備える。
「…奴らの行動を見る限り、恐らくサマエル本体には俺たちの攻撃が通じる。奴を守る曹操と信長をここで倒せば、サマエルを攻撃してオーフィスを解放できるかもしれん!それしか手段がない、ここで奴らと決着をつけるぞ!」
「「「「「はい!」」」」」
先生の指示に、俺たちは声を揃えて応じる。
黒い塊がどうにもできない以上、大元のサマエルを倒す以外の方法はなさそうだ。英雄派幹部に最強の神滅具、それの次は聖書の神の悪意。ハードな相手が続くが、それでも戦って勝つしかない。
「ふっ、そううまくはいくかな?」
そんな俺たちの意志をあざ笑うかのように奴はさっと見たことのない眼魂を取り出した。
「その眼魂は…!」
「曹操の魂が宿る眼魂だよ。念願かなってようやく彼の眼魂を作れたのはいいが、肝心の能力が前線での戦闘に不向きでね。英雄は選べても、能力は選べないようだ。君たちとの戦いで使いたかったのだがね」
しかしそれを使うことなく、心底残念がりながら折角の眼魂を懐に戻した。
曹操の眼魂…奴ら、そんなものまで作っていたのか。ただでさえ手ごわい奴がこれ以上のパワーアップするような能力でないことに向こうは残念だろうが、こっちはガッツポーズで喜びたい気分だ。
「だから、君たちは俺の禁手で相手をしよう」
「!!」
俺たちの安堵を消し飛ばすように奴はガッと槍の石突を床に力強くたたいた。
禁手というワードだけで俺たちの警戒心が最大まで引き上がる。神滅具の代名詞であり、始まりの神滅具でもある黄昏の聖槍。その禁手がどれほどのものなのか俺たちは知らない。
一応通常禁手の『真冥白夜の聖槍《トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング》』の能力は把握しているが、奴に限って通常の禁手を発現するなんてことはない。十中八九、亜種禁手を使ってくる。
事実、俺が戦った時に曹操は禁手を使ったが、凄まじい衝撃を出して吹っ飛ばす能力は通常の禁手にはなかった。禁手を見たと言っても一瞬で敗北したため、兵藤達と同じ初見と言ってもいい。
「ハーデス神から召喚の許可を頂いたのは一度だけでね。ここでうまく君たちを制圧しないと、計画が頓挫するんだ。ゲオルク、サマエルの制御を頼んだ。信長にはサマエルとゲオルクの防衛を任せる」
「了解」
「お前が本気を出すなら、俺の出る幕はねえな」
「そういうことだ。悪いね、信長」
「あいよ」
戦いへの喜びに口角を上げていた信長も曹操の意志に応じてゲオルクのもとへ引き下がる。そのやり取りに奴らが曹操というリーダーに寄せている確かな信頼が見えた。
「たった一人で俺たちを同時に相手しようってのか?」
「そうとも。この聖槍の真なる力を発揮すれば可能だよ」
くるくると槍を軽やかに回して地面に石突を立て、最後に曹操は静かにその言の葉を口にする。
「禁手化《バランス・ブレイク》」
カッ!!
刹那、聖槍から溢れる目を開けていられないような閃光がロビー全体を照らす。その光が落ち着いた時、奴の禁手の全貌が明らかになった。
神器の本体たる槍に変化はない。しかし槍を扱う曹操の背に神々しい天使のような光輪が輝き、それを彩るように7つの光球が浮遊している。
〈BGM:THOUSAND DESTRUCTION(C)ザイア・エンタープライズ(仮面ライダーゼロワン)〉
「これが『黄昏の聖槍《トゥルー・ロンギヌス》』の亜種禁手、『極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルテイン》』だ。名称は転輪聖王にちなんでいるが、俺の場合は転生の『転』ではなく、天帝の『天』として発現させた。まだ未完成だけどね」
「名前が長い」
「ふふ、ジーク達にも同じことを言われたよ」
部下の意見くらい聞き入れてやれ。そんなに長い名前の禁手、お前のとこでもフルで覚えてる奴少ないだろ。
「アザゼル、彼の禁手は…」
「グリゴリのデータベースにないものだ、あの7つの球体は俺にもわからん!」
部長さんが神器の専門家たる先生に知恵を求めるも、先生はかぶりを振る。やっぱりデータがない新しい禁手か!
「あの7つの球体にはそれぞれに『七宝』という能力が付与されている。つまり、奴は七つの能力を操れる」
「なんだと!?」
「俺が知っているのは3つだけだが、どれも凶悪だ。あの聖槍は最強の神滅具であり、それを使うあの男は最強の人間と言ってもいいだろうな」
7つの球体を警戒する俺たちに情報を与えたのは意外にもヴァーリだった。
ヴァーリの奴、曹操の禁手を知っているのか?しかしあの戦闘狂をしてそこまで言わしめるとは、よほど恐ろしい禁手と見た。
「さて…」
攻撃に備える俺たちを見据える曹操の指がピクリと動く。
「みんな気をつけろ、いきなり吹っ飛ばされるぞ!」
俺は過去の二の舞を起こすまいと、声を上げて皆に注意を促す。
「ふっ、君が言っているのは『将軍宝《パリナーヤカラタナ》』のことかな」
と、曹操は人差し指の先にふわふわと背部の球体の一つを浮かせる。
「これはまだ調整が終わっていない能力でね。ただ強い衝撃を発して相手を彼方まで吹っ飛ばすだけ。まあこれを使わずとも君たちを制圧できるさ」
7つのうち6つの能力で、つまり全力を出さずに俺たちを倒すだと?俺たち全員を相手にして、随分と舐めたことを言ってくれる。
「こんな風にね」
次の瞬間、ガシャンと何かが砕ける大きな音が俺たちの耳に飛び込む。何事かと振り向けば、ゼノヴィアが構えていたエクスデュランダルの、6本のエクスカリバーで構成された鞘が見るも無残なほどに粉々に砕けていた。
「私のエクスデュランダルが…!?」
鞘が破壊されて本来の姿を晒したデュランダルを見て、あっけにとられるゼノヴィア。
俺も衝撃を禁じ得なかった。あのエクスデュランダルがたった一瞬で破壊されてしまうなんて。球体は相も変わらず曹操の後光と共に輝いている。動きも全く見えなかった。
「七宝の一つ、輪宝《チャッカラタナ》。能力は単純な武器破壊だ。相当な手練れでなければ逆らうことはできない…ちなみに、形状変化してこんなこともできる」
「ッ!!?」
次の瞬間、どしゅっと何かを貫くような音が聞こえた。デュランダルを構えたゼノヴィアがなすすべなく腹に先ほどのオーフィスのようにきれいな風穴を開けられていた。
「ごふっ…」
血が穴から大量に噴出し、どさりと彼女はその場に倒れこんだ。
彼女が倒れ行く衝撃的な光景に俺の世界は数秒止まったような錯覚を覚えた。そしてすぐさま、憤怒は噴火する前のマグマのごとく俺の内から一気に湧き上がる。
「貴様ァ!!!」
瞬間的に激情に駆られ、俺は飛び出す。
〈BGM終了〉
禁手の名前が長すぎる…
次回の更新は頑張って年内にしようと思います。
次回、「無限の消失」